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「消費者」から「ファン」をつくる次世代の銀行体験へ - Moneythor

2022/04/26

Plug and Play Japanでは、採択・Alumni(卒業生)スタートアップへのインタビューを実施しています。今回のインタビューでは、金融機関向けにパーソナライゼーション・エンジンを提供するシンガポール発のスタートアップ企業Moneythor Pte. Ltd(日本法人名:マネーソー株式会社、以下:Moneythor)の日本法人代表、米岡和希さんへお話を伺いました。
(本記事は2019年8月にPlug and Play Japan公式mediumで公開した記事です)


Haruka Ichikawa

Communications Manager, Osaka


目次

S/F 2019 Program Focus Weekでピッチされる米岡氏

ーー日本法人オープン、おめでとうございます!米岡さんは日本オフィスの立ち上げから携わっていらっしゃいますが、どのようなきっかけで入社されたんですか?

もともとはB2C向けの別のスタートアップをしていて、たまたま入居していたシンガポールのスタートアップハブにMoneythorが入居していたので2014年頃からMoneythorのメンバーとは面識があったのです。当時はMoneythorが何をしているのかよく知らなかったのですが、2017年にそこで当時Moneythor代表だったオリビエ(Olivier Berthier)にインタビューをする機会があったんです。ビジネスモデルがとても面白いと思ったことと、ちょうどMoneythorが東京都アクセラレータプログラム「フィンテックビジネスキャンプ東京」に採択されたりと、日本進出に向けて本格化していくフェーズで、日本市場参入をリードできる人が必要というお話になり・・・自分自身にとっても市場にとっても良いタイミングだと感じました。

ーー“タイミング”というと、米岡さんがPlug and Play Japanのアクセラレータープログラムへの参加決定のご連絡をいただいた際も「とても良いタイミングだと思う」と仰っていたことが強く印象に残っています。どのような理由から、市場参入に最適な時期と判断されたのでしょうか?

これまで私たち消費者が銀行を選ぶ際には支店やATMのアクセスの良さが判断材料になっていましたが、普段銀行で行うタスクが全てデジタル上で行えるようになると、支店やATMへのアクセスはもはや関係なく、いかにデジタル上で良い顧客体験を得られるかが選択のポイントになりますよね。海外ではその認識が常識になってきていて、多くの銀行では数年前から顧客接点のデジタルシフトに注力し、競合よりいち早くお客様のロイヤリティをデジタルチャネル上で勝ち取らなければというマインドセットが定着してきています。

一方で、昨年私が日本の銀行と接点を持ち始めた際には、まだその認識から程遠いと感じてましたが、この一年で意識の変化を実感するようになりました。日本の銀行はいま、テクノロジーを使った業務効率化に注力していたこれまでのフェーズから、お客さんの体験をデジタルで改善するという意識への移行を今年になってからより強く感じ始めていて、そこに対して支援ができるということにとてもわくわくしています。

銀行はこれからどんどん業態が変化していくという話を耳にすることが増えてきましたが、一個人ユーザーとして、大きなお金を預けておくときに一番信頼できるのが銀行だと思うんですよね。その「信頼」は例えば銀行以外のプレイヤーが銀行業に参入しても一夜で築けるものではないので、その信頼の基盤の上にをアップデートして、お客さんに感動体験をもたらすことで銀行の「消費者」を「ファン」に変えていくこと、顧客ロイヤリティを高めるお手伝いがMoneythorにできることだと考えています。

ーーMoneythorの事業を通して、どのように銀行の「ファン」をつくることができるのですか?

Moneythorでは行動科学の概念を取り入れたリアルタイムデータ分析を行なっています。その分析結果を元に、各金融機関のお客様のニーズに最適化したアドバイス(レコメンデーション)をタイミングよく届けることができます。

お金って毎日結構使うもの。だから残高を常に正確に把握できている人は少ないと思うんですよね。すごく理性的にお金を使っているという意識がある一方で、実は直感や感情に左右されているというのは、行動科学に基づいた根拠があります。Moneythorでは理性的ではない行動を助けてあげるアクションを起こすことができるんですね。例えば、人間には他人から低く評価されたあとに、自分の自尊心を高めるために何かを買ってしまうというような行動特性があります。また、将来的な貯蓄に対して、見通しが立てづらいと優先順位が下がってしまうという人間の習性に基づき、購買や貯蓄などの傾向や推移を可視化させ、将来へと意識させることができるようになります。

例えば、繁忙期で残業代を多くもらえた月があるとして、いつもより多かった給与分を貯蓄に回すレコメンデーションを送ることで、無意識のあいだに使ってしまうのではなく、意識的に貯蓄に対するアクションへと導くサポートができます。ちなみにMoneythorでは、毎月発生する取引をパターンとして自動認識するので、パターンに変化があった時に気づきを与えるアプローチが色々できるんです。

また、引越し等で大きな買い物が続くと翌月以降のやりくりが難しくなることもあると思いますが、取引額から残高予測をアラートで素早く伝えてあげることで、別口座からの資金振替えを促したり、クレジットカードの取引であれば「あとから分割/リボ」払い等の上手な活用方法を知らせるなど、状況に応じてやりくりを助けるレコメンデーションに加えて、必要な情報を提供することができ、金融知識を増やすことができます。

たくさんのお客さんの中から、本当に「自分」にとって必要な情報やサポートが得られると嬉しいですよね。金融機関は顧客感動体験をつくることが難しい、またお客さんにもその期待値がないように思われているかもしれませんが、生活から切り離すことができないからこそ「感動体験」が得られると嬉しいですし、銀行側の目線で言えばそのような「感動体験」を通して「ファン」をつくっていくことは可能だと思います。

ーー昨今、日本においても多くの金融機関がフィンテックを活用して顧客への訴求力が高いサービスの創出に取り組んでいますが、 Moneythorの強みは何でしょうか?

そうですね、我々の強みは大きく分けて2つあります。1つ目はDBS銀行さんやANZ銀行さんなど、デジタルシフトを数年単位で早く進めている海外の大手銀行に多くご導入いただいているので、そこで貯めてきているナレッジからお客様にどうレコメンドすれば効果的かあるいはNGか等をアドバイスできる点です。

2つ目は、短期間内でアジャイル形式に改善が可能になるというのが強みですね。お客様が今便利だと思ってくれるレコメンドが、1年後もそのように感じていただけるとは限りません。人間の行動や好みは変わっていくので、顧客体験を向上させるアプローチというのは、常に仮説検証をしてどんどん改善を繰り返すこと、早くアクションに起こすことが必要だと考えています。金融機関が保有するデジタルチャネル上で自由度の高い編集ができるので、独自性を活かしながら数時間〜数日、毎週など短期間内での修正が可能になります。これはそれぞれの金融機関が独自性を持ち、差別化したアプローチを取れるという意味でもあります。

S/F Program 2019 Fintech Orientationにて

ーー最後に、Plug and Playのプログラムも佳境に入りましたが、現時点での感想はいかがでしょうか?

やっぱりPlug and Playさんは企業からの信頼や信用があるなと感じています。外に出て「Plug and Playさんに採択されているのであれば!」と言っていただいたり、受け入れられ方が変わった気がしています。これからの期待としては、自分たちだけでアプローチしてきた方々に対して、細かな連携ができるようにフォローいただける点に期待しています。

Moneythor Pte. Ltについてもっと知りたいという方は、ぜひWEBサイトをご確認ください。

https://www.moneythor.com/ja/home/

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