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「金融×サービス×事業」のビジネスに新たな発想をもたらすオープンイノベーションー ー東京センチュリー

2025/02/19

世界的に脱炭素化やグリーントランスフォーメーション(GX)が求められる現代において、さまざまな業界のビジネスモデルに変革が訪れています。「金融×サービス×事業」を軸にビジネスを展開する東京センチュリーも例外ではありません。オープンイノベーション実現に向けて、Plug and Playが提供するアクセラレータープログラム、そして人材育成プログラムをどのように活用しているのか伺いました。


高野 信作氏(写真右端)

Interviewee(文中敬称略)

東京センチュリー株式会社 DX戦略部 担当課長 2022年に東京センチュリーに入社し、DXタスクフォースの事務局運営に携わりながら、社内体制の整備と事業展開の双方における、全社横断的なDX推進やDX人材育成業務を担当。


渋谷 雄大氏(写真左端)

東京センチュリー株式会社 環境インフラ営業統括部 GXビジネス推進室 マネージャー 2021年に東京センチュリー入社後、再生可能エネルギーへの投資業務を経て営業統括部。環境インフラ事業の営業推進、投資やM&Aの企画・検討を担当。


小宮 知佳氏(写真中央)

東京センチュリー株式会社 環境インフラ第二部 業務管理室 主任 2021年東京センチュリー入社。2024年より太陽光と蓄電池をセットにしたプロジェクトの運営ならびに第二部案件の開発を担当。


荒井 良史彦(写真中央左)

Plug and Play Senior Manager, Fintech

早稲田大学法学部卒業後、三井住友銀行入行。国内法人営業を経て、国際部門にて海外ファンドの対日不動産投資支援に携わる。2021年よりPlug and Play参画。Fintech領域の実務統括として、国内外スタートアップと金融機関連携を支援。米国Babson College MBA修了。


大村 早紀(写真中央右)

Plug and Play Manager, Fintech

東京・シンガポール・米国にて外資系大手IT企業等でゲーム系ビジネス開発担当として勤務後、シリコンバレーの投資会社にて勤務。Plug and Playでは、国内外スタートアップ企業と大企業とのパートナーシップ構築支援や仮想空間、暗号資産などに関連する業務を担当。


1. スタートアップとの連携の難しさを通じて見えてきた、真の課題

ーーPlug and Playに参画された背景を教えてください。

高野:当社は2021年7月に、国内外スタートアップ企業等とのネットワーク強化・新規ビジネスの創出、および、それらの実践的な取り組みを通じたDX人材育成を主な目的としてPlug and Playに参画しました。

東京センチュリーには、「国内リース」「オートモビリティ」「スペシャルティ」「国際」「環境インフラ」という5つの事業分野があり、事業として取り扱っている領域は非常に多岐にわたっています。私の所属するDX戦略部はこれらの事業分野に対する横串のような役割を担っており、出資先や協業パートナーとなりそうなスタートアップに対して事業分野の担当者連携しながらアプローチを進めています

ーーそのような取組みを通して課題に感じることはありましたか?

Plug and Playへの参画当初は、オープンイノベーションに不慣れながらも試行錯誤を繰り返し、様々な新規事業の仮説を立てながら、スタートアップと面談を重ねていました。しかし、途中までは順調に進む案件いくつか出てきたものの、残念ながら最終的には行き詰ってしまい、成果につながらずに消えていってしまうものが非常に多いなど、難しさを感じていました。

そこで検証を重ねた結果、オープンイノベーションの観点から事業を検討するための基礎力が足りないからではないかと考えました。参画当初に目的として掲げた「実践的な取り組みを通じたDX人材育成」は、実際にスタートアップとの接点を通して学びを高めていくことを想定していましたが、それだけではなく、社員のマインド形成やノウハウ習得を行うための機会の提供も必要だと考えたのです。そこでPlug and Playから提案をいただき、リーン開発手法等を学びながら、素早く効果的な事業立ち上げの流れを体感できるアイディエーション研修を試験的に実施いただくことになりました。

現在、この研修はさらにグレードアップされた内容となっており、当社が志向する「デジタルなどの新技術を活用した顧客提供価値の向上(=攻めのDX)」に非常に役立つと考え、DX人材育成の研修コンテンツとして活用させていただいています。

(高野 信作氏 写真提供:東京センチュリー)

(高野 信作氏 写真提供:東京センチュリー)

2. 「サービス×事業」の観点を養うアイディエーション研修

ーー東京センチュリーのようにオープンイノベーションに取り組む大企業も存在していますが、多くの大企業では、依然としてスタートアップとの新規事業創出において自前主義も残ると聞きます。Plug and Playとしてどのようにこの課題を解決したいと考えていますか?

荒井:我々はベンチャーキャピタルおよびアクセラレーターとして、大手企業とスタートアップを繋ぎ、新たな価値創出に向けた協業を支援することをミッションとしていますが、単に紹介するだけではなかなか案件が具体化しないという課題を感じていました。特に、大手企業ではスタートアップの協業アイデアを既存事業と同じ基準で評価し、収益性やリスクを重視しすぎる傾向があります。加えて現場も含めた社内風土がハードルとして立ちはだかることも多々あります。そのため、我々は企業文化の変革を目指した人材育成プログラムを提供しています。  

我々はアクセラレーターとして様々な起業家やスタートアップと密接な関係を築いている点が強みです。その経験や知見をコンテンツに反映させ、実践的な内容でワークショップを実施しています。例えば、アメリカではスタートアップの失敗が科学的に分析され、フィードバックとして活かす事業開発手法が広く知られています。我々はその手法をアレンジし、親しみやすいフレームワークとして提供しています。

研修の特徴として、短時間で実践するグループ形式を採用しています。参加者に「誰もが有する既存の知識を活用すれば事業アイデアは見つけられる」と体感してもらうことが目的です。営業職の方々の参加も多く、顧客の課題について普段は意識しない視点から考える機会を提供しています。

ーー研修を実施してみて、ご自身や社内での反応はいかがでしたか?

高野:私自身は事務局の立場で参加することが多いのですが、毎回、趣向を凝らした研修内容から新たな学びを得ています。また、研修後の参加者からのアンケート結果においても、「非常に刺激的で学びの多い内容だ」というコメントをいただくなど大変好評です。

当社は祖業のリースを出発点に「金融×サービス×事業」を軸にビジネスを拡大し、現在は5つの事業分野で広範な事業を展開しています。ですがそれでもまだ金融の側面だけで物事を発想するカルチャーが少し残っているように感じます。アイディエーション研修におけるワークショップは、「サービス×事業」での複合的な観点で事業検討することに大きく役立つと考えています。

渋谷:ワークショップに参加して、視野が広がったと感じました。当時私の所属していた部署は太陽光に関する「投資」に焦点を当てていたため、顧客が抱える課題が明確に見えづらく、投資にどうつなげるかが難しい部分がありました。ワークショップを受けて、「誰のどのような課題を解決するのか」という視点があることが仕事の意味に直結するのだと改めて感じました。

3. Tensor Energy社との協業:太陽光併設蓄電池の運用新機能

ーーPlug and Playを通じて出会ったスタートアップとの協業事例について教えていただけますか?

小宮:DX戦略部から紹介されたスタートアップの中で、Tensor Energyが開発しようとしていた新機能と当社ニーズが合致したため、PoC(実証実験)を通じて新機能に関する協議を開始しました。

熊本県に当社の子会社が管理している太陽光発電所があり、FIT制度(固定価格買取)を活用した電力販売からFIP(市場連動型)制度に切り替え、蓄電池を併設し、運用しています。Tensor Energyは、発電量や市場価格の予測を行い、それに基づいて蓄電池の充放電計画を策定しています。この計画をもとに、実際の運用指示を現地のEMS(エネルギーマネジメントシステム)に送信し、蓄電池と太陽光の運用を実現しています。蓄電池付きの発電所は全国的に少なく、この業界では先行している事例だと思います。

従来、発電所の管理はエクセル等で行われることが多く、複数の発電所を管理する際には手間がかかるケースが多いです。Tensor Energyのシステムは、発電所の導入検討から電力取引業務、予実管理等をプラットフォーム化し、複数の発電所を一元管理するサービスの提供を目的としております。

(実証実験がおこなわれた熊本・荒尾メガソーラー発電所 写真提供:東京センチュリー)

(実証実験がおこなわれた熊本・荒尾メガソーラー発電所 写真提供:東京センチュリー)

ーー検討段階においてリスクに対する懸念があったと思いますが、どのように社内を説得されたのでしょうか?

小宮:このプロジェクトに携わっていたメンバーの熱量の高さも社内への説得に寄与したと自負しております。Tensor Energyがこれから機能開発を進めていく段階だったので、その能力を確かめるPoC(概念実証)を行いました。実証で得られた数字を使うことで、上層部にも安心感を与えられたと思います。Tensor Energyは世界各国のデータサイエンスメンバーが集まり、各種予測算定のAI活用や計画策定/変更における自動生成等に優れており、予測値等の精度も高いと感じました。

ーー協業を通じて、オープンイノベーションの重要性について感じたことがあれば教えてください。

小宮:FIT制度からFIP制度に変更することで、月一回だった売電収入が毎日発生するようになり、それまで不要だった日々の運用業務を毎日行えるよう、社内体制も整備する必要がありました。こういった変化に対応するには、当社だけでは実現できない部分が多く、オープンイノベーションが重要だと感じました。

ただ他社へ委託するケースによっては各種予測値や計画策定のロジックがブラックボックス化してしまいがちです。Tensor Energyは情報の透明性を大切にし、当社の意見も取り入れてくれる柔軟さがありました。

毎週のミーティングではかなり細部まで議論しました。「こういう事象が想定されるから計算ロジックに○○を反映させよう」とか「ミスが起きそうだから△△な防止策をつけよう」といったような、積極的な意見交換を通じてプロジェクトに対する熱が高まりました。私の後輩も含めて若いうちからこのようなプロジェクトに携わらせてもらえたことで、今後の財産となるノウハウを得ることができました。

(小宮 知佳氏 写真提供:東京センチュリー)

(小宮 知佳氏 写真提供:東京センチュリー)

4. オープンイノベーションのハードルは高くない

ーー東京センチュリーが考える、オープンイノベーションを成功させるポイントはどういったところでしょうか?

渋谷:GXに取り組むスタートアップには注目していますが、その際に重視しているのは、「その企業にしかできないバリューを提供できるかどうか」です。同じような技術が他社からも提供されるのであれば、一般論としてより大きな企業と組むほうが信用力の面で安心感があります。しかし、スタートアップにしか提供できない明確な価値がある場合は強みやユニークな点を我々も聞き出していきたいと思っています。

小宮:他社とのミーティングでは、どうしても格式ばったり、「どこまで聞いていいか」「失礼にならないか」など気にしてしまい、踏み込んで議論ができないことがありますが、Tensor Energyは、私たちの疑問や懸念にいつも真剣に向き合ってくださいました。また、お互いに壁を作らず対等な立場で会話することができたと感じており、そういった時間を積み重ねていくことで、信頼感につながっていきました。

高野: オープンイノベーションとは、実はそれほどハードルの高いものではなく、「既存の知と知の掛け合わせ」だと考えています。ゼロから一を生み出す発想も大事だとは思いますが、お互いの持つ知識を活かして「今ある事業にどのように新しい発展を加えることができるか」を議論することが重要ですね。

参考:

*1) 再生可能エネルギー電源併設型蓄電池の運転開始について

https://www.tokyocentury.co.jp/jp/newsroom/news/004696.html

 

*2 )Tensor Energyが運用プラットフォームを提供する、熊本県の京セラTCLソーラー太陽光発電併設蓄電池が運転を開始

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000096424.html

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