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ディープテックスタートアップ海外展開支援とグローバル拠点間連携

2023/08/17

海外展開を目指すスタートアップの支援施策の一環として、6月12日~22日にかけてPlug and Play欧州拠点を訪問しました。今回は、Plug and Play Japanアクセラレータープログラムの卒業生である国内ディープテックスタートアップ2社にご参加いただき、ドイツ・フランス・イギリスのPlug and Play拠点訪問やスタートアップコンファレンスへの参加を通して、現地投資家や大手企業、研究機関とのコネクションを構築しました。

 

目次

  • ディープテックの海外展開が必要な理由
  • Plug and Play Japanの海外展開支援内容
  • 参加スタートアップからのコメント

 


Writer: Hayata Okubo

Senior Program Manager, New Materials


ディープテックの海外展開が必要な理由

ディープテックは日本の勝ち筋である

まずはじめに、ソフトウェアを中心とする近年のイノベーションにおいて、欧米諸国やアジアの中でも、資金調達額やユニコーン数などで日本は大きく遅れをとっています。日本の勝ち筋として、科学的な発見や革新的な技術に基づいて、世界に大きな影響を与える可能性のあるディープテックは、基礎研究力や強固なものづくり産業など国内保有アセットを活用し、従来ボトルネックになっていた文化や言語の壁などの影響を受けにくい有力な領域だと言えます。

図1 ディープテックが日本にとって勝ち筋である理由

 

なぜディープテックスタートアップにとって海外展開が大切なのか?

今後、グローバル志向のスタートアップを増やすことは、起業家の数が増えないという根本課題へのアプローチに繋がり、日本のエコシステム全体の活性化、国内市場が縮小傾向にある日本経済のさらなる発展において非常に重要な役割を果たします。

図2 日本のスタートアップエコシステム課題の因果関係

 

その中でもディープテックは、SaaSなどのソフトウェアと比較して、プロダクト自体は言語や文化に影響されにくいことが特徴です。SaaSスタートアップが、国ごとに言語や仕様をローカライズする必要があるのに対して、ディープテックは世界中どこでも同じ技術を展開することができ、国際特許などで権利を守ることができます。このような背景を踏まえて、ディープテックスタートアップにとってグローバル展開には以下のようなメリットがあります。

 

・共同研究機会・売上規模の拡大

日本の限られた市場だけでなく、欧州や米国などの海外市場でさらなる売上拡大をねらうことができます。また、ディープテックが解決する社会課題は気候変動などの環境問題やエネルギーの生産・効率化など世界共通であることが多く、より根深い課題を抱えた市場や社会的な圧力が強い市場へ進出することで、スピード感のある事業展開も期待できます。

 

・海外投資家・事業会社からの資金調達

ディープテックは研究開発に10年単位の時間を要するため、長期間にわたって資金を供給する必要があります。欧州では2022年約3兆円に達する投資実績があることに対して、日本国内のディープテック投資額は2,000億円程度に留まっており、資金調達に苦戦しているスタートアップも多く存在します。海外拠点設立や事業展開をおこなうことで、海外投資家や海外企業からの直接投資の可能性を拡大できます。

 

・優秀な人材や最新設備へのアクセス拡大

欧州や米国をはじめとする優秀な研究者ネットワークにアクセスでき、R&Dを加速させることができます。また、海外ではスタートアップへ最先端の研究設備を提供している公的機関や企業も多く、そういった最新設備へのアクセスもメリットの1つです。

Plug and Play Japanの海外展開支援

Plug and Play Japanでは、世界50箇所以上のグローバル拠点を通じたネットワークを活かし、スタートアップに対して以下のような支援をおこなっています。本記事では、日本から国外展開(アウトバウンド)の支援事例を取り上げます。

  • 日本から海外展開(アウトバウンド):海外拠点の大手企業パートナーや投資家、スタートアップ支援機関の紹介、現地イベントのピッチ登壇機会提供・ブース展示サポートなど
  • 海外から日本展開(インバウンド):アクセラレータープログラムを通した日本企業とのマッチングや投資家の紹介、メンタリングやウェビナーによる法規制やビジネス文化に関するインプットなど

 

訪問スケジュールと参加したスタートアップ

今回の欧州拠点訪問に参加したスタートアップは、両社それぞれ20社以上の大手企業やアクセラレーター、投資家と繋がることができ、NDAをはじめとする具体的なディスカッションも複数件創出することができました。

 

表1 参加スタートアップ

 

表2 主要スケジュール

日程 都市 訪問先
6月12日 ベルリン ・Germany Trade & Invest / Motion Lab(ハードテックスタートアップ向けコワーキング施設)訪問
6月13日 ベルリン/エッセン Asia Berlin参加

・High-Tech Gründerfonds主催のEvonik本社で実施したChemistry Pitch Eventにピッチ登壇

6月14日 ベルリン ・日本企業の現地法人訪問

Fraunhofer IZM(ドイツ全土に75の研究所・研究ユニットを持つ欧州最大の応用研究機関)訪問

Asia BerlinにてINAMとInternationalising DeepTech Venturesイベントを共催

6月15日 デュッセルドルフ Plug and Play Dusseldorf “Japan Meetup”開催
6月16日 パリ Plug and Play Paris x Japan Event Part1開催
6月17日 パリ 欧州最大規模のスタートアップコンファレンスViva Technology参加
6月18日 オックスフォード 自由行動
6月19日 ロンドン Plug and Play UK x Japan Event共催/Intel Ignite Londonなど現地アクセラレーターとの面談
6月20日 パリ Plug and Play Paris x Japan Event Part2開催 / STATION F訪問
6月21日 シュトゥットガルト ARENA2036訪問
6月22日  シュトゥットガルト STARTUP AUTOBAHN参加

 

Plug and Playのグローバル拠点を生かしたサポート

Plug and Play Dussedorf:現地日系企業と欧州企業との交流促進イベント「Japan Meetup」を実施

ドイツのデュッセルドルフには日系企業が600社以上拠点を置いているとされており、製造業の中心になっています。Plug and Play Dussedorfでは、Digital Transformation & Sustainability をテーマとして活動しています。今回は、欧州企業と日本の大手企業・スタートアップ間の交流を活性化させるべく、現地チームの協力のもとJapan Meetupイベントを開催しました。

デュッセルドルフに拠点を有する日本企業3社に加えて、ドイツの化学メーカー2社、地場のスタートアップや支援団体など、合計23名が参加。プロダクトデモやネットワーキングを実施し非常にインタラクティブなセッションになりました。Plug and Play JapanとDusseldorfによる各拠点エコシステムの紹介・ベストプラクティスのシェアをおこなった後、ドイツ、オランダ、スイスなどに拠点をおく5社のスタートアップにご登壇いただき、プロダクトのデモなどを見せながらディスカッションを行いました。

ネットワーキングでは、オープンイノベーションにおける日系企業の欧州拠点活用法や欧州と日本企業のベストプラクティスなどのトピックで議論が盛り上がりました。

参加スタートアップ:マイクロ波化学TopoLogicFiberCoatPolysecureIncaptek

 

Plug and Play Paris:現地投資家が知見を共有するインプットセッションを実施

スタートアップに加えて日本の大手企業2社にご参加いただき、STATION Fを視察しました。Plug and Play Parisではリテールやファッション領域に特化したプログラムを実施しており、パイロットマネジメントやLCA分析*支援など深く入り込んだサポート体制があります。サステナビリティとファッションを専門とする投資メンバーYoobin Jung(Ventures Analyst)から、ファッションと化学の観点における素材のトレンド解説をおこないました。

また、モビリティセクターの脱炭素化に貢献するスタートアップへの投資をおこなうベンチャーキャピタルShift4GoodのMatthieu de Chanville氏(Co-founder & Managing Partner)に投資方針や欧州市場のトレンドなどをお話しいただきました。

別日には、Viva Technologyの出展スタートアップとフランスを訪問していた日本企業のマッチングイベントなどもPlug and Play Parisオフィスで実施しました。

*LCA:Life Cycle Assessmentとは、ある製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)又はその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法。

参加スタートアップ: MotorSkinsNanomadeIncaptek

 

Plug and Play UK:現地スタートアップとUKチームとのネットワーキングを実施

ジャガー・ランドローバーやベントレー モーターズ、British Telecom(BT)などが参画するPlug and Play UK。ロンドンのオフィスにて、イギリスと日本のスタートアップ、そしてPlug and Play UKチームとの交流会をおこないました。現地企業パートナーの紹介や日本企業との協業を希望するスタートアップとの情報交換、プロダクトデモなどを通して、お互いの理解を深めました。

参加スタートアップ: TopoLogicArda BiomaterialTG0

 

Plug and Play Stuttgart:STARTUP AUTOBAHN EXPO2023への参加

Plug and Play Stuttgartが入居するARENA 2036は、シュトゥットガルト大学のキャンパス内にあるスタートアップ支援施設です。バリューチェーンの上流から下流まで50社以上の企業・研究機関が1つの屋根の下に入り、官民学が連携してサイエンスに関わるプロジェクトを立ち上げ、同施設内で研究開発をおこなっています。5G/6G環境や自動運転物流ロボットなどが実証できる環境が整備されている官民学連携の仕組みや事例を紹介しました。

Plug and Play Stuttgartでは「STARTUP AUTOBAHN」というモビリティ領域に特化したアクセラレータープログラムを実施しています。

今回はスタートアップ2社と大手企業2社を、プログラムの成果発表会であるイベント「STARTUP AUTOBAHN EXPO2023」にご招待しました。世界中から集まった1000人を超える大手企業や投資家、スタートアップに対してネットワーキングの機会が多く準備されており、欧州の企業パートナーのイノベーション活動や新規事業にふれ、オープンイノベーションや投資担当者とのコネクションを構築していただきました。

海外展開を狙う日本企業が海外視察を行う際に陥りがちな機会損失として、現地の施設や支援機関を訪問しても、いわゆる表敬訪問や施設案内に終始してしまい、具体的な事業成長につながるコネクションやフィードバックが得られない、スタートアップのニーズに応えられる担当者が見つけられないという課題があります。Plug and Play Japanでは現地拠点ネットワークやコミュニティを活かし、現地のスタートアップやVCとの適切なマッチングをおこなうことで、ローカルのスタートアップエコシステムにおける足がかりを提供し、実際のビジネスに直結した支援をおこなっています。帰国後も日本国内ディープテックスタートアップをPlug and Playの海外拠点の企業パートナーに紹介するなど、継続的なクロスボーダー連携を実施しています。

Plug and Play Japan 大久保 INAMイベント登壇の様子

 

Topologic 佐藤氏のAisa Berlinでの登壇の様子

 

マイクロ波化学 亀田氏のChemistry Pitch Event登壇の様子

 

INAM共催イベントでのパネルディスカッションの様子

参加スタートアップからのコメント

亀田 孝裕氏 / マイクロ波化学株式会社 ケミカルリサイクル事業室長

  • 今回、海外展開のポテンシャル調査と海外拠点候補地の探索の2つの目的を持って参加させていただきました。現地では複数のピッチイベントに参加し、スタートアップエコシステムを視察させていただき、期待をはるかに超えた成果が得られました。特に現地の大手企業と多く商談の機会を持てたことが収穫でした。
  • 海外にネットワークを持たない当社が単独で充実したスケジュールを組むことはできなかったため、Plug and Play Japanさんにこのような機会をいただき、非常に有り難く感じています。改めてPlug and Playさんのグローバルネットワークの強さに驚かされました。海外展開のきっかけを探しているディープテックの方々にとって、このプログラムはとても有益だと思います。

 

岩田 隆一氏 / マイクロ波化学株式会社 研究開発部長

  • Plug and Play Japan様の多大なご支援により今回の欧州視察が実現しました。現地企業や現地スタートアップとのネットワーキングイベントに参加させていただき、当社の持つ技術やビジネスモデルに対する評価や期待感を確認させていただきました。また、欧州企業の環境に対する意識の高さ、新たな規制への感度を実感することができ、非常に有意義でした。今回の視察をきっかけに海外展開に向けた取り組みを加速させていきたいと思います。

 

佐藤 太紀氏 / TopoLogic株式会社 代表取締役社長

  • 今回は弊社の熱流束センサ技術のアプリケーション先の開拓、共同開発先の模索というテーマをメインに参画させていただきました。現地企業の取り組みや、現地スタートアップとの協業の話を伺い、その進捗やスピード感に驚かされました。ただ、同時に、いくつかの企業様からも関心をいただき、いくつかの商談に繋げられそうという実感も持つことができ、弊社技術の適用可能性について、海外企業との共同研究に向けて弊社で行わなければならないことのイメージが具体化できたことが大きな収穫となりました。
  • ディープテックにとってはインダストリープレイヤーとのネットワークは非常に重要で、昨今の高度な技術を用いたスタートアップでは、日本のみのエコシステムでは足りないことも多くなってきていると思います。そのような中で、Plug and Play様の試みは多くの日本初ディープテックスタートアップのミッシング・ピースを見つけ出す鍵となるパートナーを見つける非常に面白い取り組みになるのではないかと思います。

最後に

Plug and Play Japanでは今後も、日本企業との実績創出だけでなく、世界50拠点以上のグローバルネットワークを生かしたスタートアップの海外展開支援をおこなってまいります。

ご興味のある方はお気軽にご連絡ください。

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