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京都から世界へ、地球上の全ての人を120歳までお連れする - HACARUS

2022/11/09

京都発のスタートアップとして大きく注目を集めているのが、 株式会社HACARUS(以下、HACARUS (ハカルス)) 。スパース・モデリングと呼ばれる軽量AI技術をもとに2014年に創業し、以来急速に成長しています。HACARUSは最近、大阪ガスが率いるシリーズBラウンドを提起し、京都大学と神戸大学とのプロジェクトを発表しました。藤原健真氏率いるHACARUSの持つビジョンや京都に拠点を置いている理由など、代表取締役CEOの藤原健真氏にお話を伺いました。

(本記事は2020年5月にPlug and Play Japan公式noteで公開した記事です)


Chiyo Kamino

Communication Associate, Kyoto


ーー起業に至った経緯について教えてください。

それまでニューヨークで経営していた会社を2014年に売却した後に、何か人々に対してポジティブなインパクトを与えられる事業はないかと考えていました。私の妻は料理が得意なのですが、料理を通じて人々に健康的でより良いクオリティの生活を与えることができている姿を見ていて、自分も人々に良い人生を与えられるような事業をしたいと思ったのがきっかけです。

ーー人々の生活にポジティブな影響を与える事業はいろいろとあると思いますが、なぜこの業界にしようと思われたのでしょうか。

当初は栄養や健康的な食事の重要性に着目していました。機械学習、特にデジタル・スマート・スケールを用いて、栄養についての理解を深めるようなソリューションを生み出せないかと始めたのです。その後の6年間で複数回のピボットを経て、今では製造業や医療業界の人がより優れた信頼性の高い意思決定を行うのを助けるためのAIツールの開発に注力しています。
当社のスパースモデリングで設計されたAIを活用することによって、画像を用いた診断などが容易になります。たとえばがんの診断では、今まででは画像を何十枚も撮影してそれをじっくりと見ながら見落としがないか人の目で確認しなければなりませんでした。医師への負担が大きいだけではなく、人間の能力の限界として見落としも起こる場合があります。

ーー複数回のピボットをご経験されたとのことですが、今の事業の背景にはどのような問題意識をお持ちなのでしょうか?

私たちが取り組んでいる課題というのは、突き詰めて言えば高齢化問題です。これは日本社会が現在直面している問題であり、世界中の先進国が近い将来向き合わざるを得ない問題です。現役を引退した高齢者が増える一方で、彼らを働いて支える側の人口は減っています。従って、私たちは効率的で生産性が高い仕事をしていかねばなりません。また、高齢者の方々は若い人よりも医療の必要性が高い。これは医療制度への負担が今以上に増えていくことを意味しています。私たちは、人々がより生産的で効率的になれるような未来を実現するためのソリューションを模索しているのです。

ーー御社がこれまでに直面した課題について教えてください。

これはAI業界全体に言えると思いますが、お客様の期待値をマネージすることは非常に重要です。AIについての報道は半ば誇大広告のようになってしまっています。
全ての問題を解決してくれる魔法のように捉えるのではなく、もっと現実的に私たちの日々をより良くしていくためのツールというレベル感で考える必要があります。
私たちは、AIがあたかも全能でなんでも解決出来ると思いがちです。しかしながら現実はそうではありません。医療現場の例を挙げれば、手術道具が剣から施術用刃物、そしてレーザーカッターへと段階的に進化したように、今では単なる目視だけではなくコンピュータービジョンやAIが支援できるようになってきました。しかしこれはあくまで従来の延長線上にある進歩であり、飛躍的・非断続的な進化が起きたわけではないのです。私たちのプロダクトも、大量のデータや複雑な問題を自動化して処理できる次世代のツールではありますが、必ずしも人間に取って代わるようなものではありません。

ーーもう少し詳しく教えていただけますか?

これは当社からのメッセージで特に強調したい部分ですね。我々は医師の代わりになるようなソリューションを構築しているのではありません。そうではなくて、お医者さんがより多くの時間を患者と過ごしたり、より重要な問題に集中したりできるように支援するソリューションを構築しているのです。例えば、脳卒中を発症した直後の患者さんのMRIスキャンを取り込んで、どのような症状なのかを迅速に診断することができます。脳卒中の患者さんにとっては数分間が早期回復と症状悪化のボーダーラインとなるので非常に大きな意味があります。
しかしながら、このソリューションでは脳卒中のタイプと重症度について示唆を得ることは出来ますが、具体的な診断や治療法への提案を行うことは出来ません。お医者さんのより良い診断をサポートしていても、代わりになるわけではないのです。

ーー御社の特徴、そして京都を選ばれた理由について教えてください。

当社の特徴の一つ目は常に改善を目指しているということです。古いやり方に囚われるのではなく、新しい技術を学んではプロダクトを改良していくことで、常に継続的な改善に取り組んでいます。格好良く言えば、イノベーションを実践しているのです。もう一つは、国際性豊かなことですかね。HACARUSの京都オフィスでは7〜8か国から集まった人々が働いていますし、フィリピンのマニラにも開発拠点があります。枠に囚われない自由な発想ができる人材を重視しています。

京都について言えば、自身のルーツに立ち戻りたかったのが直接的な理由ですが、京都の街は起業家にとって非常に魅力的な環境でもあります。人口に占める学生の割合が最も多いんですよ。全体の10%が学生で大規模な大学も多い。新しいアイデアを持った人々がいれば、大手企業的なマインドセットに染まる前にアプローチすることができます。イノベーションを起こすこそに人々はよりオープンですし、新しいアイデアにワクワクしています。スタートアップでは創造的な考え方を持った人材が必要ですので、その意味でも起業に適した場所ではないかと思っています。

ーー現在Plug and Playの企業パートナーとも連携されていますが、その後の進展はいかがでしょうか。

現在は製造業10社、医療関連4社と協業しています。そのうちの何社かはPlug and Playのネットワークによるものです。ここでは詳細にお伝えできないのですが、多くの皆様と密接に協業させて頂いております。

ーー最後になりますが、今後のビジョンについて教えてください。

今後5年以内には、医療分野以外にも展開していきたいと考えています。高齢化問題という大きな課題に対するソリューションは必ずしも医療分野に限りませんので、その先の様々な専門領域の方々にもサービスを提供していきたいと考えています。昨年にはPlug and Playのシリコンバレー本社でIoTプログラムにも採択されました。また、ドイツへの展開を足掛かりとして世界市場への拡大も考えています。株式公開も考えていきたいですね。

株式会社HACARUSについてもっと知りたいという方は、ぜひWEBサイトをご確認ください。

https://hacarus.com/ja/

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