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Portfolio Interview | 株式会社Liquid Mine

2021/06/07

国内の年間白血病罹患数は13,000人を超えていると言われています。白血病の検査には入院して実施する骨髄生検という手法が一般的ですが、強い痛みを伴うため患者さんの肉体的・精神的負担が大きく、長期生存率の低さにもつながっています。Liquid Mine社は、東京大学医科学研究所の遺伝子解析技術をもとに2019年に設立され、リキッドバイオプシー(液体生検)を用いたテーラーメイド医療の実現を目指しています。

2021年1月、Plug and Play VenturesではLiquid Mineに対し出資を行いました。Biotechnology分野のスタートアップに対しては国内初の投資となります(Deeptech分野ではA Star Quantumに続き2社目)。Liquid Mineの技術が持つ可能性、そして目指すビジョンについて、投資担当のHaruがインタビューを行いました。


近藤 幹也 氏

株式会社 Liquid Mine 創業者・代表取締役医師

1987年生まれ、大学卒業後は血液内科医として白血病患者の診療に5年間従事する。その後、東京大学医科学研究所の研究室に進学し、遺伝子解析、液体生検を研究し、研究室発の白血病生存率向上を目指す革新的な検査を社会実装すべく2019年11月に株式会社Liquid Mineを創業。


岸本 倫和 氏

株式会社 Liquid Mine 代表取締役社長

1981年生まれ、大学卒業後、新卒で大手旅行会社へ入社。その後、製薬会社、医療系ベンチャー企業で多くの営業経験を積む。近藤の熱意とビジョンに共感し、2020年7月から株式会社LiquidMineに参画。白血病の再発を早期に発見する低侵襲モニタリング検査システム「MyRD」を提供。


大岩晴矩(Haru)

Plug and Play Ventures

京都オフィスで国内投資、Healthプログラム、大学連携を担当。大阪大学大学院にて心不全の研究の後、臨床開発職として新薬の開発に従事。その後、シアトルのワシントン大学にビジネス留学、シリコンバレーにてライフサイエンスのコンサルを経験し、PnPに入社。 関心領域:DeepTech, Health, PetTech, FemTech


白血病に苦しむ人を1人でも多く救いたい ー 起業のきっかけとPlug and Playとの出会い

大岩

まずは起業のきっかけからお伺いできますか?

近藤

私は血液内科の医師で、臨床現場で白血病患者さんの診療に当たっていました。医療も日進月歩ではあるんですけども、実際に働いている中で白血病の検査や治療における課題を目の当たりにしていました。そのあと東京大学医科学研究所に入りまして、そこで入った研究室で研究されていた技術が、まさに医療現場で感じていた検査の課題を克服するものだったんです。これはぜひ社会実装し世の中に広げるべきだ、と考えて起業に至りました。よりたくさんの患者さんが救えるように、白血病患者さんの生存率向上を目指しています。

岸本

昨年の7月からLiquid Mineに入社しました。近藤とは転職活動中にウェブサイトを通じて知り合ったんですが、面談の際に彼の熱い思いを強く感じました。白血病ではないんですが、私自身も身近な人をがんで亡くした経験があります。がんに苦しむ人を救うこの検査サービスを広めて患者さんを救っていきたい、「この人と一緒に仕事がしたい」と思ってジョインしました。

大岩

Plug and Playのアクセラレータープログラムにも入っていただきましたが、参加の決め手は何だったのでしょうか?

岸本

正直にいうとPlug and Playさんの名前は知らなかったんですが、弊社のウェブサイト経由で連絡をいただいた時に、パートナー企業として島津製作所さんや京セラさんの名前があり、興味を持ったんです。それまでアクセラレータープログラムなどはあまり検討していなかったので最初は怪しい会社じゃないかと思ったんですが(笑)、そういった大企業さんとパートナーシップを結ばれているというところで、お話を伺ってみようと思ったのが経緯になります。

起業してから立ち向かったチャレンジ

大岩

起業してから特に大変だったことは何がありますか? 

近藤

医療サービスに対する規制ですかね。「これはやっちゃダメ」「これをするためにはこの手続きが必要」「この手続きには何年かかります」など、想定していたことの数倍、数十倍大変でした。それらの規制はもちろん理由あってのことだとは認識していますが、日本の医療系スタートアップにとって厳しい環境だなと感じました。

大岩

確かに、医薬品・医療系スタートアップにとっては、事業化にあたってクリアしなければならない規制は非常に細かくなりますね。イグジットから逆算して5年〜10年単位で計算する必要があるので、そこは大変な点ですよね。岸本さんはいかがですか?

岸本

私が担当しているビジネス面でいうと、知財戦略ですね。自分たちで描いていたものではまだまだ足りないということが明確になってきました。そこは今後さらに積み上げていく必要があると思います。ただ、医療現場の先生方とお話させていただくと、サービスについては非常に良い反応が得られているので、そこまで不安には思っていないです。

大岩

知財面に関しては、弁理士の方やアドバイザーに入っていただいている方々からご意見をいただきながら進めていくことになりそうですね。

プロダクトについて、Plug and Play Venturesからの投資

大岩

技術の優位性、独自性についてご説明いただけますか?

近藤

世界的なトレンドとして、遺伝子解析技術が病気に限らず様々な分野で応用されています。ただそれぞれ一長一短があって、人間のゲノムを視る技術といってもほとんどが研究段階にとどまっていて社会実装されていないんですね。全ゲノム解析を導入した方が良いとみんなわかってはいるんですが、それを実際に見ることができていないのが現状です。Liquid Mineは自分たちの開発した技術でそれを見られるようにしているので、そこに優位性があるというか、みんなが目指しているゴールに向かって僕らが先んじて進んでいっているという感じです。また、最近では「テーラーメイド医療」という言葉が当たり前のようになってきていますが、治療に限らず検査においてもオーダーメイドになっていくというのは将来的な流れとして間違いなくあると思います。そこを先取って社会実装していきたいという思いは強いですね。

大岩

全ゲノム解析に関しては、技術革新が進み解析コストが10万円程度までとかなり下がってきていますので、それも先程仰っていただいた将来的な流れに繋がりますね。初めてのヒトゲノムシーケンスは3,000億円近くしましたから…。

岸本

そうですね。全ゲノム解析ができるという点と、その後の治療効果モニタリングにおいても骨髄液ではなく液体生検でできるという点が、他社にはない自社の強みかなと思っています。

大岩

Plug and Play Venturesとして出資に至ったポイントとしては、大きく3つあります。
1つ目は、患者さんのペインです。現行の骨髄生検は毎月数日間の入院が必要であり、肉体的・精神的・経済的なペインが非常に大きい。低侵襲性(手術・検査などに伴う痛みや発熱、出血などをできるだけ少なくすること)の検査による治療法の代替、白血病の遺伝子変異を早期に特定することで患者さんの治療オプションを増やし、5年生存率の向上にも寄与する貴社の大学発の技術は素晴らしいと感じました。

2点目は、米国での成功事例です。シリコンバレー本社のポートフォリオにGuardant Healthという企業があるのですが、2012年に創業して2018年にはIPOしています。ディープテック分野の上場としては比較的早く、現在の時価総額は既に約1.2兆円超えです。Guardant HealthもLiquid Mineと同じくリキッドバイオプシー技術を使っています。メインターゲットとしては、Guardant Healthや他企業の多くが胃・肺がんなどの固形がんを対象としているのに対し、Liqud Mineは血液がんの「白血病」に特化している。差別化戦略を取られているところも特徴的だなと思いました。国内の血液がん患者数は全がんのうち10%程度を占めます。人口が約3倍の米国では、約3分に1人が血液がんと診断されており、国内白血病の最大10倍程度のマーケットまで拡大が見込めます。また、今後固形がんまでパイプラインを拡充することができればさらに大きなマーケットが期待できると考えました。

3点目は、スタートアップエコシステム醸成において、大学との連携が非常に重要だと考えている点です。大学発のスタートアップは今後大きく成長していくと期待しています。弊社としてもアクセラレータープログラムに加え、以前ご登壇いただいた『STAGE』や京都大学との学生アントレプレナーシップ育成共催イベント、大学発技術シーズと国内外MBA生を繋げ事業促進を図るインキュベーションプログラムといった取り組みをしており、今後も様々な形で大学発スタートアップ を支援していきたいと考えています。

また、個人的な話になってしまい大変恐縮なのですが、学生時代にロータリークラブ青年部で献血を支援するボランティアをしていた経験がありまして。駅前に停めた献血バス近くで献血を呼びかけていたのですが、同時に骨髄ドナーバンクのご登録も案内していたので、白血病患者の方の支援というところで共感するものがありました。

今後の展望とメッセージ

大岩

貴社の今後の将来像について、意気込みをお願い致します!

近藤

まず絶対にクリアしなければいけない目標は、今弊社が持っているソリューションを日本で社会実装し、白血病検査のシェアをとることです。白血病患者さんがみな弊社の技術を使った検査を受けられるよう、また病院側でもこの検査方法が基本になるよう、弊社のポジションを確立していきたいですね。その先でいうと、固形がんでも同じ状況を目指していきたいですし、日本だけでなく世界でも同じサービスを提供できるようになっていきたいと思っています。あとこれは僕の個人的な考えですが、医療の発達につれてこのような新しい技術は将来的にもっと出てくると思っています。今の我々では思いつかないようなソリューションもきっと出てくるでしょう。現時点では弊社のテクノロジーを標準化するのがいったんの目標ではありますが、新しい技術が出てきたら、それがどんなものなのかはわかりませんが、その時点で患者さんにとって最良となるソリューションを提供できるようにしていきたいですね。

岸本

私も近藤と同じ考えです。私たちの液体生検システム「MyRD」は白血病患者様にとって非常に良いサービスになるので、まずは薬事法承認をとって、保険収載を目指して、一日でも早く白血病患者様に届けられるように社会実装できたら良いなと思っています。今は私と近藤の2人で仕事しているのですが、会社の将来像としてミッションに共感してくれる仲間を増やしていきたい、楽しく仕事ができるような会社をつくりたいと思っています。

大岩

米国に比べると日本はドクターによる起業の数が少ないので、そういった意味でも注目ですね。あえて挙げるとすれば、競合や目標となる企業はありますか?

岸本

全ゲノム解析を行っており、白血病をメインターゲットとしている会社は探してみたところなかったので、今の時点で競合となる企業は見当たらないと思います。パネル検査という点では一部大手製薬会社様が社会実装に向けて動いておられますが、パネル検査と全ゲノムだと解析の手法も違いますので、白血病患者様のために共に協力をしていければと思っています。

大岩

国内に関しては競合は少ないですね。今後海外展開されるにあたり、固形がん市場にも対象を拡大される場合は、競合優位性を強く意識していく必要があると思いますがいかがですか。

近藤

海外で固形がん、となるとそれこそGuardant Healthのように既に大きな会社がたくさんあるので、そこは今の時点であまり意識はしていないです。それよりも身近なところで刺激を受けているのは、僕らよりも数年先に起業した東大発のスタートアップですね。先輩じゃないですけど、それらの企業の活躍を見ていると刺激になり、追いつきたい、追い越したいという気持ちにさせられます。

大岩

貴社の技術を実際に患者さんに届けるには、病院に導入する必要があると思いますが、導入時の重要なポイントは何でしょうか?

近藤

お医者さんに弊社のソリューションを説明すると「それはいい技術だ、ぜひ使いたい」という反応が100%なんです。だからあとは使えるようにするだけだなと。

岸本

これまでに約60施設を訪問して現場のお医者さんたちに説明しているんですが、否定的な方は1人もいなかったんです。なのでそこには自信を持っています。薬事法を突破して保険収載できるようにして、手軽に使えるような状況を作れば、おのずと広がっていくサービスだと確信しています。もちろんこれからも現場への普及活動は続けていきます。

大岩

起業というキャリア選択に関して、身近に起業された方がいたことも大きい、また大学発の先輩スタートアップを見ていると刺激を受けると仰っていましたが、今後そのようなスタートアップの数も増えてくると思います。
これから起業を検討されている方に向けてお二人からメッセージがあればお聞かせください。

近藤

まだ何かを達成しているわけではないので、この段階で先輩のようなことは言えないですが、新しい検査サービスを世に広めようと思うと、起業という選択肢しかなかったんです。もちろん心のブレーキや周りの環境によって、そこまで至らない人も多いと思います。でもその障壁を取り払って、目的を達成するためには何が必要かと考えて、そこで起業が必要だったら、いろんなものを投げ捨ててでも飛び込む勇気をぜひ持っていただきたいなと思いますね。

岸本

私は近藤が作った会社に参画した形になるんですが、立場が人を作るのかなと思っています。私自身はLiquid Mineの技術に自信を持っていますし、これから起業を考えておられる方も自分で考えた事業内容やプロダクトに自身を持っていればきっと成功すると思います。私自身もPlug and Playさんに「成功したぞ」と言えるように頑張っていきたいですね。

大岩

ありがとうございます!白血病患者さんに一日でも早く貴社の技術を届けられるように、Plug and Playとしても最大限のお手伝いができればと思っています。

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