お得な相乗りで、移動の悩みを解決 - NearMe
2022/04/25
Plug and Play Japanでは、採択・Alumni(卒業生)スタートアップへのインタビューを実施しています。今回のインタビューでは、タクシーの相乗りサービスで移動に関する社会問題の解決に取り組んでいる、株式会社NearMe(以下、NearMe)の代表取締役社長 高原氏にNearMeを設立した経緯や今後目指す展開などについてお話を伺いました。
Saori Nicole
Program Management Lead
株式会社NearMeについて
NearMeは、瞬間マッチングプラットフォームで地域のさまざまな瞬間的なニーズをマッチングするサービスを提供し、地域活性化に貢献することを目指すスタートアップです。現在は“タクシーの相乗り”というビジネスモデルで、タクシーで同じ方向に行きたい人同士を瞬間的にマッチングし、相乗りできるサービスを展開しています。 この相乗りサービスにより、ユーザーは終電を逃した後のタクシーの長い待ち時間を解消したり、より早くよりお得に目的地に到着したりすることができます。またこうした移動の手軽さを提供することで、郊外でも住みやすい住環境を構築し、電車遅延や運休時の代替輸送手段不足の解消・緩和を実現します。その他、観光におけるタクシーの活用を促進したり、高齢化が進んだ地域や買い物難民が多い地域での移動問題の解決を目指しています。
NearMe 代表取締役の高原 幸一郎氏(左)とCTOの細田 謙二氏(右)
ーー高原さんは元々楽天グループにいらっしゃったということですが、スタートアップとして新しくNearMeを立ち上げられた背景はなんですか?
楽天にいた時、買収した会社などスタートアップのファウンダーと働く機会が多くありまして、彼らの事業にかけるコミットメントや想い、働くスタイルにとても共感していました。こういう働き方、コミットメントの仕方いいなあと。また、僕は楽天での最後の3年間ぐらいアメリカに軸足を置き、買収した会社の事業に関わっていたんですが、その間も最後の一年は半分フランス、半分アメリカ、時々アジアといった形で移動の多い生活を送っていました。
いろんな国と地域に関わる中で、地域のいいものってたくさんあるのに現地の人が体験するような体験ってなかなかできないと気づいたんです。ネットで調べても現地の人が発信してる情報って少ないですよね。特に言語ができない国だと一次情報を取ってくるのは難しい。何か地方とそこを訪れる人を繋げる、現地体験ができるサービスを作れないか、と考えていました。そこから、結果的に地域活性化に繋げるよう仕組みづくりができないか、と。
じゃあそれをどういう形で始めるかを考えていた時に、タクシー待ちや移動の問題を思い出しました。僕は郊外に住んでいるのですが、都内から自宅に帰る時に最終のバスを逃してタクシーをよく使っていたのですが、大体の方が向かう方向が一緒にも関わらず一人ずつしか乗らないので、30分ぐらい待たなければならない状況でした。この移動の非効率を解決する方法として、まずは相乗りのマッチングをやろうと思ったんです。こうして地方の移動問題を解決することで地域活性化に繋げていけないか、と。地方とそこを訪れる人を繋げる、現地の人から発信する、というようなこれまでの一つひとつの原体験から得た構想の組み合わせを抽象化した時に、僕がやりたいことは「瞬間マッチング」だと気づきました。それで、楽天でさまざまなアントレプレナーと関わってきた経験を元に、自分でスタートアップとしてこのアイデアを形にしよう、と思ったんです。
ーー地域を軸に事業展開を考えていらっしゃるのかと思いますが、国内や海外でどのようなエリアをターゲット市場に見ていますか?
全体的にライドシェアはリージョナル化が進んでいます。NearMeでは地域ごとの展開を考えており、まずは日本全体、そしてアジア。例えばベトナムなどでは、交通渋滞の解決方法として「相乗り」が有効な市場と見ています。
そもそもライドシェアでは自家用車かタクシーを使うかという2つの観点があると思うのですが、日本では実車率(タクシーの走っている距離に対して人を乗せている割合)がたった40%で、現状半分以上活用できていない資産があるのが現状です。ただでさえドライバーが不足している中で一台に一人しか乗っていない実車率の低さは深刻な問題で、この空いた資産を活用する上で相乗りは有効だと考え、タクシーを対象にすることを考えました。高齢化も進む日本で、相乗りは移動の問題解決に貢献できる方法だと思っています。
日本では地方など人口減少に伴う移動の効率化がターゲットになってきますが、アジアでは、相乗り市場として都心の渋滞緩和など、需要がありそうなエリアから優先的に入っていくのが良いと考えています。
ーー現在フルタイムの従業員が2名という中、マーケティング人材の採用に注力していると伺いました。アーリーステージのスタートアップではマーケティング人材の採用が後回しにされがちな中、この点を重視している理由はなんですか?
現在相乗り事業としてはタクシーの相乗りと、最大9人乗れるシャトルの相乗りを考えています。これらC to Cの事業は特にネットワーク効果が高いので、一気に認知度を広げていかなければなりません。そのため、C向けのマーケティングが重要です。時間帯と、エリアの組み合わせでターゲットを絞って、ある程度ユーザーを確保したいんです。ユーザーベースを増やすために効率的にドライブできる人が必要ですね。特に、0→1でサービスを作ってきた人の意見は非常に興味があります。マーケティングとして座組を考える人、そしてプロダクトを考える人、両方欲しいところです。
Plug and PlayのSelection Dayでピッチする高原さん
ーーNearMeはニッセイ・キャピタルのアクセラレーションプログラムにも採択されるなど、Plug and Playのみならずアクセラレーターを積極的に活用されていますよね。こうしたアクセラレーターを活用する理由はなんですか?
一つは資金調達ですね。プログラムに採択されたことで、ニッセイ・キャピタルから出資を受けることができました。あとは、企業との取り組みでシナジーがあることですね。Plug and Playの場合は世界26拠点を有しているので(2019年1月時点)、海外展開する際に企業との連携などスピード感を持ってできると考えています。NearMeとしては、企業の母集団をいかに早く取り込んで、消費者が使ってくれるものを作るかという戦略をスピード感を持って立てていくことが大事です。
ーーなるほど。現時点で、どんな企業と連携をしたいと考えていますが?
シナジーがありそうな業界としては、旅行、鉄道、不動産、タクシー、自動車会社などですね。消費者と多く接点が持てることが大事です。あとは、実証実験のための実際の場所を確保できて、将来のサービス化を検討できる機会があることも大事ですね。先に挙げた業界以外でも、実際に企業と話すことで想像していないシナジーが生まれる可能性もあります。
連携の案として、たとえば旅行会社とはインバウンド向け旅中の地域発見や移動サービスの共同開発、不動産会社であれば対象エリア価値を高めるために移動を便利するサービス化の検討、鉄道会社とは2次交通やラストワンマイルの移動という文脈で協業が考えられます。タクシー会社とはアプリ連携で送客する仕組みを検討できますし、自動車会社とであれば相乗りにちょうどいい人数を収容できるシャトルの最適化のためにルーティングを一緒に取り組むとか、車両の開発に生かしてもらえる流れを作ることができると思います。例えば9人乗りのシャトルを活用して、何ができるのか、共同で開発できればと思います。
ーースタートアップ同士の連携はいかがですか?
大いにあり得ると思います。 スタートアップ同士横の繋がりってすごく大事だと思ってるんです。瞬間マッチングの観点で、地域の人と連携できるような価値を一緒に生み出せたらいいですね。今は旅行レビューサイトとか、外部の人が評価した観光サイトはたくさんありますよね。そこで「いいね」が集まることでいいねスパイラルが生まれるんですけど、それって必ずしも地元の人の意見じゃない。地元の人が本当にいいと思う地域の情報が、資産としてとして溜まっていって、外部の人がそれを見られるような仕組みを作りたいです。移動という観点だけでなく、瞬間マッチングで地域貢献につなげていきたいですね!