• Corporate Partner
  • Mobility

Partner Story | アイシン精機株式会社 × アイシン・エィ・ダブリュ株式会社

2020/07/29

Plug and Play Japanは2020年7月14日に3周年を迎えました。3周年を記念し、3年間を支えていただいた皆様からPlug and Playとの関わりについてのお話を伺いコンテンツを制作しました。企業パートナーの中から、株式会社アイシン(旧アイシン精機株式会社/アイシン・エィ・ダブリュ株式会社)様にインタビューを実施しました。

(2020年7月29日公開、2024年7月18日一部修正)


Interviewee


勝田 洋行氏

アイシン精機株式会社 

15 年間のアイシングループ海外研究法人(英仏独)勤務を含むキャリア全ての期間で研究開発に従事。2018 年からの全社レベルでのオープンイノベーション推進活動に、研究開発以外の初めての業務として参加し、現在に至る。


鈴木 展生氏

アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 

アイシン AW に入社後一貫して知的財産業務に関わり、2004 年から 2007 年にかけてアメリカワシントンにある特許法律事務所で研修を積み、特許訴訟、ライセンス交渉なども担当。2018 年にアイシングループファンドの設立に関わり日本側キャッチャーとして参画。現在はパワートレーン分野を中心にオープンイノベーション推進担当。


オープンイノベーション取り組みのきっかけ

ーーPlug and Play Japanのパートナーとして参画いただいていますが、もともとの貴社でオープンイノベーションを開始された時期やきっかけを教えてください。

鈴木:

もともとシリコンバレーの方でスタートアップの活動、起業が活発になっているという情報を入手したこともあって2016年にAW Technical Center U.S.A., Inc. という子会社にシリコンバレーオフィスを立ち上げ、新技術探索、新規事業開発の活動を始めていました。その過程で、シリコンバレーにあるPlug and Play本社との接点をもち、2017年頃からPlug and Play本社に企業パートナーとして参画しました。

スタートアップの情報収集やソーシング活動を続けていく中で、シリコンバレーはソフトウェア系のビジネスモデルが強いスタートアップが多い傾向だということがわかってきました。私たちが重視するハードウェア系はドイツ シュトゥットガルトのMobilityプログラムがより適しているのではないのかとPlug and Playのメンバーにアドバイスを受け、2018年のSTARTUP AUTOBAHNにシリコンバレーオフィスのメンバーが参加しました。

その結果、AISINグループはハードウェアの強い自動車部品会社として、そちらの方をより重点的に調査を進め、日本が主体となって動くこととなりました。そこで、江原さん(江原 伸悟:Mobility Director)を紹介していただき、江原さんと共に2019年STARTUP AUTOBAHNを訪問しました。その間、2018年始ごろにAISINグループのグループファンドということでペガサステックベンチャーと契約し、AISINSEIKIとAISIN AWの共同出資で活動を始めていたこともあり、 Plug and Play Japanに参画するときは一緒に契約しましょうと、日本チームが主体となって契約に至りました。

勝田:

多くの高度な技術やそのシステム化が要求される時代で、従来通りに車作りを自前主義のまま、基礎の部分から全て自分たちだけでやるのは難しいのではないか、ということで全社レベルでオープンイノベーションへ舵を切ったというところです。

それに加えて、MaaSの時代ですので、今までのように自動車関連会社を相手にしていくことだけではなく、異業種分野の知識あるいは経験が必要となる、異業種のパートナーを取り入れる必要がある、という理由もあります。それ以前も、AISIN AWでもAISIN SEIKIでも単独で業務提携を結んだり、というのはいくつかあったのですが、大きく全社レベルでの取り組みとしては今回が初めてです。もちろん自前がベストですが、プラスアルファでオープンイノベーションに取り組みたいということが意図です。

ーー日本やドイツで主にハードウェア系スタートアップとのマッチングを希望されていますが、Plug and Playのプラットフォームをどのように活用いただいていますか?

勝田:

全社レベルでの取り組みは初めてですので、モビリティ関連、あるいは異業種を含むスタートアップと直接会える機会を作っていただける、会うべき有望なスタートアップを調べてくれる、この2点はとても役に立っています。オープンイノベーションを推進する立場の者だけではなく、事業部の技術スタッフ、エンジニアが会える機会を作っていただけることで非常にありがたく活用させていただいています。

鈴木:

その通りですね。自分たちだけでの活動だと気づかないこと、できないこと、を気づかされるような場所になっています。アクセラレータープログラムでは他の企業パートナーの動き方や、彼らの活動に気づかされたりということもあります。その辺はとても面白く、社内にそういった新しい感覚や、センスを社内に広げられたら良いなと思っています。

ーー弊社のプラットフォームを活用いただく中で、AISIN SEIKIさんとAISIN AWさんとの間など、グループ内のシナジーも出てきているのでしょうか。

鈴木:

技術的な部分では、AISIN SEIKI / AWの中で類似した開発もあります。スタートアップと面談していく中で、AISINグループの中での情報共有、開発を促進できるチャンスができつつあるのではないのかなと思います。

ハードウェアならではの難しさ

ーーシリコンバレーだとソフトウェア系が強いということでしたが、皆さんはハードウェア系の技術をご覧になることが多いと思います。製造業としてスタートアップとの連携において難しいところ、大変なところはどのような点でしょうか?

勝田:

私たちは自動車産業の中でもモノを扱う会社で、特にティア1ですし、製品計画があってOEMに納入するタイミングが非常に厳しく定められているというのが大きな特徴です。何年もかけて開発をしていく中で、会社自体もモノ自体も初めてのスタートアップの製品を採用する時は、非常に慎重になるというところです。

出来栄えという面では、「できていること」「できそうなこと」「やりたいこと」がきちんと整理できていないと、かなり先のこととして扱わざるを得なくなってしまいます。すでに出来上がっている技術やモノベースで考え、それに対して生産や安定供給を考えていく必要があるため、スタートアップから見たらかなり厳しい相手に感じることもあるだろうと思っています。

鈴木:

自動車業界では、品質や耐久性などが非常に重要なため、スタートアップの技術説明を受けた際、どうしても非現実的に聞こえてしまうことがあります。その辺りがハードウェアを扱う部分としての厳しい要求かなと思います。

ーー安全・安心に直接関係するものですので、難しいですよね。品質や耐久性に関する要求の厳しさは当然のものと思います。 スタートアップ単体では担保できない部分は、大手企業と一緒だからこそ実現できるコラボレーションの醍醐味だと感じます。

勝田:

Batch 4までの実績ですと、協業しているのは1社で、その他の企業さんで連絡や、関係性が続いている会社が4社ほどあります。協業している1社はAI技術を用いた会社で製品にするための開発を今ご一緒させていただいています。

他にも社内で好評だったスタートアップもありますが、すぐに協業出来るケースばかりではないため、中長期的なお付き合いを継続させていただいています。

鈴木:

我々は協業はまだたどり着けていない一方、複数の会社さんとPoCに向けた取り組みをしています。日本のスタートアップ、日本の大学発のスタートアップの方々だと親和性や親近感があって、技術をベースに事業化しようという点が良いと感じます。海外のスタートアップも、大学発で技術を基にして、スピンアウトしているような企業だと社内の人間が興味を持ちやすいです。

ーー昨今は大学研究室からのスピンアウトや、ディープテックなどが注目されていますよね。 日々さまざまな形でオープンイノベーションを促進していらっしゃると思いますが、スタートアップと接する中で特に気にかけていらっしゃることはありますか?

勝田:

特にハードウェアが絡めば絡むほど、難しくなります。より我々の現状のサービスに近づくほど先方の進捗やタイムラインと私たちの計画を照らし合わせて、将来を見極める。先方のアイディアもそうだし、彼らのプロダクトの進捗、今の出来栄えと弊社のタイムラインがマッチするかというのをしっかり見るようにしています。

社内の巻き込み方

ーーなるほど。同時に、社内や他の事業部といった、インターナルの皆さんをどうやって巻き込むかなど、工夫されていることはありますか?

勝田:

スタートアップは、今まで協業経験がある関係会社や協力会社とは違いますので、現状で全てがカバーできている訳ではないです、と社内に伝えています。有望なスタートアップと将来を見据えて一緒にやっていくというスタンスが必要で、将来性を見ていくべき、というマインドセットを持って接するように心がけています。

ーー既存の取引会社さんと比べてやり方を変えていくことが必要とのことですが、「変えていくこと」は実際大変だったのでしょうか?

勝田:

「このスタートアップはこういう会社です」と私から伝えるのではなく、事業部スタッフがスタートアップと直接話して理解することが最も大切だと思っています。その上で「魅力的だね!」と言ってもらえる場として、Plug and Playのプラットフォームを活用させていただいています。

鈴木:

ある程度、マイルストーンやロードマップを作ることで、長期的な目線で見たときに具体的に何が必要かを明確にする。社内の技術者に対してもスタートアップに対しても、そのような動き方を促すことでやりやすい環境を作ることですね。社内の技術者は、プランや具体案がないと興味を持ってくれませんし、進まないと思っています。

Plug and Play Japan の最新ニュースをNews Letter でお届けします!