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Startup x Partner Interview | SELF株式会社 x スズキ株式会社

2021/09/24

導入まで3ヶ月。徹底した顧客視点で実現したオンライン接客の世界

Plug and Play Japanが提供するアクセラレータープログラムの一貫として開催したCross Vertical Matching Event*で出会ったスズキ株式会社(以下、SUZUKI)とSELF株式会社(以下、SELF)。SUZUKIでは、コロナ禍でお客様が実店舗へ訪れる機会が減る中で、車選びが初めてのお客様にも分かりやすいご案内をSUZUKIの四輪車ウェブサイト上で提供したいという課題がありました。
この課題を解決すべく、2020年12月にSELFが提供するコミュニケーションAIツール「SELF TALK」を約3ヶ月というスピードでSUZUKIの四輪車ウェブサイトへ導入し、実装を開始。今回、スズキ株式会社 IT基盤部 DX推進グループ 長瀬謙悟氏とSELF株式会社 CFO 佐藤史章氏に協業にいたるまでの背景やプロジェクトを進めるうえで心がけていること、今後のビジョンについてお話を伺いました。


*Cross Vertical Matching Eventとは、業界テーマを超えて企業パートナーとスタートアップ、そして企業パートナー同士のコラボレーションを加速させることを目的としたプログラム参加者限定のイベント。


長瀬謙悟 氏

スズキ株式会社 IT基盤部 DX推進グループ

スズキ株式会社へ入社後、営業部門、補給部品、販売代理店出向で直販営業スタッフ、サービス、品質、ITなどの部署を経験。 現在はIT基盤部DX推進グループでデジタル化に向けた活動を行っており、お客様へ最高の体験を提供できるようデジタルマーケティング領域の案件を担当。Plug and Play Japanにおいてスタートアップと新たな価値を見つけ出すためにスズキChampion*の一人として活動を行っている。 *Championとは、企業パートナーの窓口として、Plug and Playとのコミュニケーションをリードする担当者。社内の課題やニーズなどを把握したうえで、スタートアップとの協業可能性の検討や関係構築、社内関係部署への繋ぎ込みを行うなど、企業のイノベーションをリードするうえで重要な役割を担う。


佐藤史章 氏

SELF株式会社 CFO

2007年立命館大学卒業後、公認会計士試験に合格し、有限責任監査法人トーマツへ入社。主にIPO準備会社の監査に従事。2012年1月よりトーマツベンチャーサポート株式会社にてベンチャー支援事業立ち上げ。主にベンチャー企業の資金調達、販路拡大、PR支援に従事。ベンチャー支援の政策立案などにも関与。2018年より、SELF株式会社へ参画。


--今回の協業にいたるきっかけは何だったのでしょうか。

長瀬氏:

当社は、これまでお客様が店舗に足を運んでくださり製品をご購入いただくスタイルでしたが、スマホの爆発的な普及に加え、コロナ禍で実際にお客様とコミュニケーションが取りづらい状況の中、いかにデジタル上でお客様との接客機会を作っていくのかが課題でした。
その課題を解決するために、SUZUKIの四輪車ウェブサイトでお客様の質問にお答えしたり、適切な情報を提供したりするなどの機能を実装することで接客品質を高められるのではないかと考えていました。この構想を実現できるサービスや機能を探していた時にSELFのピッチを見て、まさに求めていたサービスだと思いました。

佐藤氏:

当社はPlug and Play Japanの「Brand & Retail」プログラムで2019年に採択され、プログラム内で実施されたCross Vertical Matching Eventに登壇した際に、長瀬さんの方からお声がけいただきました。
その場でSUZUKIが抱えている課題を伺い、当社のサービスでどのように解決できるのか、1時間ほど議論したことを覚えています。

--一般的なチャットボットとSELFで提供しているコミュニケーションAIツールでは、どのような点が異なるのでしょうか。

佐藤氏:

チャットボットにはいくつか種類があるのですが、一般的に認知されているシステム構造としては、入力された文字列を分解してキーワードを抜き出し、そのキーワードを対象となるライブラリに検索をかけて回答を導き出すような作りになっています。ただこの仕組みですと、顧客それぞれのデーターを記憶するわけではないため、キーワードに対する返答が限界で、一問一答での問い合わせ対応の利用に留まってしまうのが従来のチャットボットです。

当社のコミュニケーションAIツールにおいては、サービス側から能動的に顧客に働きかけます。提案するだけではなく、提案のために必要な質問をユーザーに投げかけ、そこで得た答えはユーザー毎に属性として記憶し、過去に取得した属性情報などさまざまな要素をかけ合わせ、次の会話の展開をリアルタイムで計算しています。それにより、個々のユーザーに即した提案や会話を行うことが可能になるため、接客や商品案内に最適なツールとなっています。



従来のチャットボットとSELFの「コミュニケーションAI」の違い(資料提供:SELF株式会社)

各部署が抱える課題やニーズの解像度を上げることがイノベーションへの近道

--100年以上の歴史を持つSUZUKIにおいて、新しいテクノロジーに対して社内理解を得ながらDXを進める難しさはあるのでしょうか。

長瀬氏:

私が所属しているDX推進グループでは、業務の効率化や顧客体験の向上を図るためDX全般を担当しています。その1つとして接客品質を高めるために営業のデジタル化を推進しています。先述のとおりオンライン接客で抱えていた課題に対して、SELFのサービス紹介を踏まえ社内関係者にソリューション提案をしてみたところ、実績がある企業のサービスを使った方が良いのではないかという意見や、スタートアップへの理解がそもそも追いついていないなどの状況もあり、背景情報から理解してもらうために、社内調整で時間を要する状況はありました。
そのため、実際にサービスを見てもらったり、DXにおける世の中の変化を説明していくことで、少しずつ理解してもらい、SELFの「コミュニケーションAI」の導入に向け徐々に機運を高めていくことができたように思います。



SUZUKIは2020年3月15日に創立100周年を迎え、ここからさらに進化の100年をたどるためにイノベーション推進にも力をいれている(画像をクリックすると100周年記念サイトへと推移します)。

--社内関係者の賛同を得ながらプロジェクトを進めていくうえで気をつけていることはありますか。

長瀬氏:

Plug and Play JapanのChampionとして活動するなかで、国内外のスタートアップが有するさまざまな先進技術やソリューションに出会うことになります。その度に情報を複数の部署に地道に紹介することも大事ですが、社内ヒアリングをしてニーズを把握することが何よりも重要だと思います。まさに足で稼ぎながらDXやイノベーションの種を探し「この話なら〇〇さんに合うかもしれない」「この話なら〇〇部署で使えるかもしれない」と考えながら、社内関係者と密にコミュニケーションを取るようにしています。

各部門の業務の内容を理解し、部署ごとに抱えている課題やニーズを具体的にイメージできるくらい解像度をあげずに、スタートアップの提案だけを聞いても、どこにどのように提案すべきかイメージがつかず、考えあぐねいているうちに各部署におけるニーズも変化し、現場の熱量も冷めてしまい、提案できるタイミングを逃してしまいます。

リアルな声を拾いあげるには、会社の中をとにかく歩き回り、いかに相手の時間を無駄にせずヒアリングできるかにかかっています。毎回相手に苦労をかけてしまえば、行くだけで嫌われます。なるべく短時間で実情を把握するために、キーパーソンに直接会い立ち話くらいでヒアリングするのがポイントです。

また自身が得た情報を社内関係者に展開する際にも、その情報を渡す相手にとってどのように活用できるかを自分の中で咀嚼したうえで、わかりやすい情報を提供すべきだと考えています。
それをせずに得た情報をそのまま渡すだけでは、相手は忙しい中で情報を読み解き、消化しなければならず、単純に情報の暴力になってしまいます。

--実際に導入を進めるなかで見えてきた課題はあるのでしょうか。

長瀬氏:

やはりスピード感においては、スタートアップと差はできてしまいます。
当社は長い歴史の中で培ってきた知見やネットワーク、豊富なアセットを保有している一方で、多くの社内関係者の共通理解を得ながら新しい取り組みを進めるには、多少時間はかかるのが現状です。とはいえ、なるべく早くお客様への接客品質をあげていきたいという思いがあったため、今回はPoC(Proof of Concept)を経ることなく最初から本格導入へといたりました。

佐藤氏:

正直、特に課題と感じた点はありませんでした。一般的には大手企業とスタートアップの取り組みの多くがPoCで終わってしまう中で、今回の取り組みにおいては、契約から約3ヶ月というスピードで本導入までいたっています。
長瀬さんからお話をいただいた時点で、本格的な導入を前提にご検討いただいていたため、SUZUKIから熱量を感じられましたし、スピード感のズレもあまり感じませんでした。

SUZUKIの社是の1つに「消費者の立場になって価値ある製品を作ろう」というメッセージがあります。こちらは、当社が最も重要としているキーワードである「ユーザー目線」と共通しております。だからこそ、SELFではユーザーのリテラシーや労力に左右される「検索」をして自分が欲しいものや情報へたどり着くのではなく、ユーザーは楽に自身にパーソナライズされた情報を受け取れるよう、ユーザーとユーザーが必要としている最適な情報へとマッチングすることができるコミュニケーションを創り、改善や拡張を続けています。
そのため、SUZUKIが掲げる社是に非常に共鳴し、お互いに大切にしている価値観がマッチしたことにより、一緒に作り上げていく熱量がより一層高まったように思います。

一方でSELFの「コミュニケーションAI」は一般的なチャットボットとは異なるため、実際に導入した際の具体的なイメージを掴んでいただくことが非常に重要だと感じていました。そのため導入したことによる顧客メリットや実際の挙動イメージなどを企画書に丁寧に入れ込むようにしました。導入過程においては、SUZUKIの営業担当の方々と膝を突き合わせながら、実体験から得たお客様のリアルな声をプロダクトに反映させ、一緒に企画を煮詰めていきました。

--今後の展望について教えてください。

長瀬氏:

現在自動車業界は、激変の時代を迎えています。この予測不可能な時代をどのように生き抜いていくのかをSUZUKI社員全員で考えていかなければならない状況になっていると思っています。

歴史が長い分、これまでの成功事例から必勝法のようなものが分かっているからこそ新しいチャレンジをしにくい側面もあるように思います。ただそれでは、新しい変化に追随することができなくなってしまいます。だからこそ先進テクノロジーや最新動向に触れ、スタートアップの既成概念に囚われずに世界を変えていこうとするエネルギーに触れて刺激を受けることで、その熱量を社内に還元していくことが重要だと捉えています。

そのためPlug and Play Japanを介して、DXにつながる情報を集めつつ、さまざまなスタートアップと協力し、みんなで考え次の新しいものを生み出していくことが重要です。そして、そこで得た知見や情報を社内に展開し、スタートアップへの理解や新しいテクノロジーが持つ可能性や多様なソリューションがあることに気づいてもらうことで、新しいものを作っていこうとする熱意が伝搬して、みんなで挑戦していこうという空気感を作っていくことが、私が担う役割だと考えています。

佐藤氏:

スタートアップである我々にとって、これまでの実績以上に、これから何を作っていくのかが重要だと思っています。特に我々スタートアップが注視していかなければいけないのは世の中の流れです。SUZUKIの社是にもある通り、社会の流れを見つつ、お客様が本当に求めていることをどれだけ捉えられるかで、この先の未来が決まってくるように思います。

世界中に情報が溢れている中で、ユーザー自身が検索して得られる情報は限られています。今後訪れる情報の流れは、どれだけ提供者側がユーザーにとって最も適した情報やレコメンドが出せるかどうかという起点に変わってくると考えています。
我々は汎用型のコミュニケーションAIツール「SELF TALK」や、EC特化型のレコメンドAIツール「SELF LINK」というプロダクトを通して、導入企業様を介し、その先にいらっしゃるユーザーの方々にどれだけ利便性を感じてもらえるのかを常に考え、チャレンジしています。

今後はSUZUKIの四輪車ウェブサイトだけではなく、二輪車サイトなどさまざまなサービスへと展開していくことができれば、さらに可能性は広がりますし、今回のSUZUKIとの取り組みを機に、より一層多くの企業と連携・導入を進めたく思っております。
コミュニケーションAIで、個々のユーザーへの情報の最適化を進め、多くの方々がより良い機会にめぐり合うきっかけを作れればと考えています。

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