Meet the Startups: 食品・飲料領域で注目のスタートアップ9社
2023/08/31
Plug and Play Japanでは、2023年6月〜2023年9月期のアクセラレータープログラムSummer/Fall 2023 Batchが進行中です。今回は、Food&Beverage分野*1で採択された国内外のスタートアップ9社を紹介します。使用済みの食品廃棄物を新しい形にアップサイクルする2社に加え、パーソナライズされたサプリやダイエット・健康状態のアドバイスを提供する3社、独自の技術を用いて水や代替乳製品・タンパク質・砂糖などを生産する4社となっています。
*1 Plug and Play Japanのアクセラレータープログラムでは、企業パートナーの注力分野や技術ニーズに基づいて、「バーティカル」と呼ばれる業界テーマごとにスタートアップを採択している。2023年7月現在ではFintech(金融サービス), Insurtech(保険), Mobility(自動車・運輸・物流), Health(医療・製薬), Smart Cities(建設・不動産), New Materials(素材・化学), Energy(エネルギー), Food & Beverage(食品・飲料)の8バーティカルを運営。
Writer: Seoyeong Lee
Marketing & Communications Intern
Food & Beverageとは?
Plug and Play JapanのFood&Beverageプログラムは、食に関するさまざまな社会課題を解決するために、バリューチェーン全体に渡ったオープンイノベーションを推進し、よりおいしく、健康的で、環境に優しい食料・飲料を創り出すことを目指しています。
認知機能など、各種身体機能の改善に寄与する原料を活用し健康的な生活を実現する機能性食品、個々に最適な食事/栄養素の実現によるウェルネスの向上、代替食品による環境負荷の低減、生産過程で生じる廃棄物に付加価値をつけて生まれ変わらせるアップサイクル、フードロスを抑制するサプライチェーン管理などのテクノロジーに注力しています。
採択スタートアップ紹介
1. Alterpacks:ビールなどの食品製造の副産物である使用済み穀物を活用した食品容器の開発・販売
会社概要
企業名:Alterpacks Pte. Ltd.
所在地:シンガポール
代表者名:Karen Cheah氏
Website:https://alterpacks.com/
Keyword:#麦芽残渣 #アップサイクル #代替容器
Alterpacksは、食品製造の副産物を原材料に、独自の技術を用いて食品容器を開発・販売するスタートアップです。
海洋プラスチック問題や食品廃棄物問題は、環境を保護し、持続可能な社会を実現するための喫緊の課題です。世界の海洋プラスチックゴミの大半はアジア諸国から発生していると言われており、多くのプラスチック製品を生産、消費している日本も国際的な責任を持たなければならない立場にあります。
Alterpacksは、食品製造の副産物や農業廃棄物を食品容器にアップサイクルすることで、環境汚染と廃棄物問題の解決に貢献し、新しい価値を生み出しています。同社は独自のパイプモード製法を用いて、冷蔵庫・電子レンジ・オーブンはもちろん、油分の多い物や最大260°Cまでの高温にも対応できる、環境にも優しくて実用性も高い食品容器を開発しました。
シンガポールやベトナムでは、スーパーの野菜保存容器などで同社の製品が導入されています。また、日本でも食品製造会社と副産物の再利用に関する連携の議論が進められており、注目を浴びているスタートアップです。
2. Ani Biome:健康、免疫、長寿の観点で、各個人の腸にパーソナライズしたサプリ及び健康状態をトラッキングできるアプリを提供
会社概要
企業名:Ani Biome
所在地:スロベニア リュブリャナ
代表者名:Nika Pintar氏
Website:https://anibiome.ai/
Keyword:#ドリンク #腸内環境 #オーダーメイドサプリ
Ani Biomeは、アプリで個人の健康状態をトラッキングし、パーソナライズ化されたサプリをドリンクの形で提供するスタートアップです。
腸内環境を整えることは健康な毎日を送るために欠かせない重要な要素です。しかし、腸内環境は人により異なるため、自分に合うサプリを見つけるには時間もコストもかかります。Ani Biomeはアプリによる簡単な問診を提供し、最先端のAI技術でユーザーの健康データを把握します。その結果を基に、パーソナライズされたドリンク状態の発酵サプリを提供しています。同社のサプリは液体を水で溶かして飲むタイプであり、飲みやすく、体内にも吸収しやすいなどのメリットがあります。また、アプリで顔をスキャンしたり、肌の状態を記録したりするなど、体に刺激を与えない方法を通じて持続的に健康状態をトラッキングし、健康状態に応じて提供する必要な栄養素を変えていく点も大きな強みです。
Ani Biomeは腸の健康を改善して免疫力を向上させ、人々の健康をサポートします。
3. アクアム:空気中の水分を吸着して濾過させることで、空気から水を製造
会社概要
企業名:株式会社アクアム
所在地:東京都港区
代表者名:河﨑 悠有氏
Website:http://ecoloblue.co.jp/
Keyword:#プロセスイノベーション #水 #空気から水を作る
アクアムは空気から水を作る「空気製水機」を開発し、提供しているスタートアップです。
2023年現在、世界では約22億人(4人に1人)が家庭で安全に管理された飲み水を手に入れることができず、水と衛生が不十分なために毎年140万人の命が失われています。また、今後爆発的に人口が増加することにより深刻な水不足に陥ることも懸念されており、安全で十分な水の確保は地球規模の課題となっています。
アクアムの空気製水機はエアフィルターで空気中の汚れを取り除き、コンデンサーで空気を冷やすことで、空気中の水分を効率よく回収することができます。また、活性炭フィルターやミネラルフィルターを通過させることで、安全で質の良い水を製造します。1日平均10~15Lの飲料水を作ることができるほか、バイオミネラルフィルターを通じてミネラル水素水も製造できるなど、美容効果も期待できます。既に複数の市役所やコーヒーショップに導入されており、更なる普及を目指し現在小型の製水機を開発しています。
安全で綺麗な水を世界中の人に届けるため、アクアムの挑戦をぜひ応援してください!
4. eatas株式会社:データを活用し栄養とコミュニケーションを通じて、行動変容を促すアプリを提供
会社概要
企業名:eatas株式会社
所在地:福岡県福岡市
代表者名:手嶋英津子氏
Website:https://eatas-service.com/
Keyword:#アプリ #行動変容 #ヘルスケア #BtoBtoC #管理栄養士
eatasは健康な体を作るため、個々の状況に合わせて栄養士が食事やフィットネス、ダイエットにおけるアドバイスを行うコミュニケーションツールを提供しているスタートアップです。
ダイエットをする際に大きな課題となるのが、日々の生活習慣を変えて行動変容を起こすことです。効果的に行動変容を起こすためには、継続的なサポートを受けながら、食事やフィットネスの改善を図っていくことが重要です。
eatasは独自に開発した栄養管理メソッドに基づき、専門性の高い栄養士が個々のデータをユーザーと共有しながら、オンラインで効果的な指導をおこなっています。また、独自の食事指導メソッドと蓄積されたデータを基にユーザーのタイプを分析し、個別最適化された食事指導を提供し、ユーザーの行動変容を効果的に促しています。
現在は、ジムやエステなどを対象にシステム導入を行い、BtoBtoCのビジネスを展開しています。ユーザーの健康を増進するのみならず、導入した企業が顧客との接点を増やすことができ、退会率を減少させることにもつながっています。
世界中で肥満率が高まる中、栄養とテクノロジーを掛け合わせ、ウェルビーイングな社会に貢献します!
5. hDrop Technologies:ウェアラブルデバイスにより、汗から体内の水分・電解質データをリアルタイムで収集、補給すべき水分のリコメンドサービスを提供
会社概要
企業名:hDrop Technologies Inc.
所在地:アメリカ アーカンソー
代表者名:Adria Abella氏
Website:http://hdroptech.com/
Keyword:#汗 #ヘルスケア #検査キット #ウェアラブルデバイス
hDropはウェアラブルデバイスを用いて汗から体内データを収集・分析し、リアルタイムでアドバイスを提供するスタートアップです。
アメリカでは成人の18~27%が脱水症状を経験することがあると言われています。高齢者や運動量の多いスポーツ選手は特に危険性が高く、十分な注意が必要です。
hDropの最先端のセンサーが搭載されたウェアラブルデバイスは、ユーザーの汗から水分や電解質濃度などを検知します。そのデータを基に特殊なアルゴリズムによって発汗量、発汗速度を計算し、ナトリウムとカリウムの濃度を測定することで、必要な水分と電解質補給のアドバイスをスマホのアプリでリアルタイムで提供します。つまり、自分の健康データと共に、必要な水分補給の量とタイミングをユーザーが把握できるサービスです。hDropの強みはリアルタイムかつスピーディな体内データの検知と分析、分析できるデータ種類の幅広さ、そして再利用が可能でワークアウト毎の交換が不要なセンサーです。
汗を分析して人々の健康管理と予防医療を促進するhDropの今後が楽しみです!
6. Miruku:分子農業の技術を活用してアニマルフリーな乳製品を開発
会社概要
企業名:Miruku Ltd
所在地:ニュージランド パーマストンノース
代表者名:Amos Palfreyman氏
Website:https://miruku.com/
Keyword:#代替乳製品 #分子農業 #アニマルフリー
Mirukuは独自に開発した分子農業の技術を用いて、植物から乳製品のタンパク質や脂肪、糖類などを生産するスタートアップです。
同社は、植物に適化した乳製品のタンパク質を設計し、そのタンパク質を持つ種を育て、種からできた植物でタンパク質になる原料を取ることで、乳製品原料を生成します。このプロセスを通じて、これまでは動物からしか得られなかった乳製品のタンパク質や脂肪、糖類を植物から生産できるようになります。同社は既にニュージーランド、ヨーロッパ、シンガポールの大企業とMOUを結んでおり、6つの特許を申請中であるなど、イノベーティブな技術を用いて積極的にアニマルフリーの乳製品を開発しています。
Mirukuの植物由来の乳製品は、二酸化炭素排出量を削減でき、人々の健康改善にも貢献できる環境と人々の生活に優しい技術です。
7. Revive Eco:コーヒーグラウンズをアップサイクルし、パーム油の代替品を開発
会社概要
企業名:Revive Eco Ltd
所在地:スコットランド グラスゴー
代表者名:Fergus Moore氏 , Scott Kennedy氏
Website:https://revive-eco.com/
Keyword:#コーヒーグラウンズ #アップサイクル #パーム油
Reviveは使用済みのコーヒー豆を活用して、パーム油の代替品やバイオガス、土壌改良剤などにアップサイクルするスコットランド発のスタートアップです。
世界のコーヒー市場は年間5.5%伸びていますが、日本だけでも約86万トンのコーヒーかすが廃棄されており、コーヒーグラウンズの処理は深刻な問題となっています。
Reviveはコーヒーグラウンズの成分にパーム油を構成する栄養素がたくさん含まれている点に着目し、使用済みのコーヒー豆からパーム油の代替品となるコーヒーオイルを生産する技術を開発しました。このオイル製品は食品や化粧品、ファッションなどの幅広い分野に活用することができます。
同社の技術は、環境に優しいだけでなく、バーム油に代わる新たな製品を生み出し、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
8. Solar Foods:大気中の二酸化炭素と水、それに電気、バクテリアを加え、バイオマス発酵させることで単細胞タンパク質を生成
会社概要
企業名:Solar Foods Oy
所在地:フィンランド ヘルシンキ
代表者名:Pasi Vainikka氏
Website:https://solarfoods.com/
Keyword:#代替タンパク質 #エアプロテイン
Solar Foodsは独自の技術を用いて空気からタンパク質を生成し、食品などの原料として使える形に処理して提供するスタートアップです。
同社は空気中の水を電気分解して得た水素と二酸化炭素を微生物(バクテリア)に供給して成長させ、成長した微生物から生成されたタンパク質を抽出した「ソレイン(Solein)」を生産することで、空気を原料にタンパク質を作ることを実現しました。
ソレインはパウダーやフレーク状になっているため、様々な飲み物や食品の原料として加えやすく、広く活用することができます。また、非アレルギー性で栄養価が高い完全なタンパク質であるため、人々の健康改善にも効果的です。何よりも土地や水資源が不要なため、タンパク質生産における環境への負担と地理的制約を大幅に削減できる革新的な技術です。
地球にとって最も持続可能なタンパク質のソレインを開発・生産するSolar Foodsの今後が楽しみです!
9. Sweet Balance:味への影響を最大限に減らし、食品や飲料の糖分を大幅に削減することができる天然の砂糖代替品を開発
会社概要
企業名:Sweet Balance Ltd.
所在地:イスラエル キリヤット・シュモナ
代表者名:Yoav Dagan氏
Website:https://www.sweet-balance.com/
Keyword:#代替砂糖 #カスタムメイド
Sweet Balanceは美味しく、健康的な砂糖の代替材料を提供するスタートアップです。世の中にはさまざまな砂糖代替材料がありますが、後味の悪さ、限られた機能性と用途、人工性から生じる健康問題などの課題が残っています。
Sweet Balanceはこのような課題を解決するために、製造プロセスや素材、機能性などにこだわった砂糖代替品を生産しています。まず、製品ごとにカスタマイズ生産ができるようにすることで、後味の悪さを改善し、砂糖と同等の味を実現しました。また、自然由来の原料にこだわることで、砂糖と同じ機能を保ちながら、より健康的で低GI、低カロリーの代替材料を実現しています。そして、高低温度や液体・個体・油性などの幅広い用途と形態に対応できるとの特徴があります。味、機能性、機能性にこだわった同社の砂糖代替品は飲料、シリアル、ベーカリーなどの分野で導入されています。
Sweet Balanceが開発する砂糖代替品は砂糖の使用量を80%削減することが期待されています!
Summitのご案内
Summer/Fall 2023 Batchの採択スタートアップを含む、業界のイノベーターが多数参加する「Japan Summit Summer/Fall 2023」は、2023年9月14日〜15日にかけて虎ノ門ヒルズにて開催予定です。どなたでもご参加いただけるイベントとなっておりますので、ぜひご来場ください。
Summer/Fall 2023 Batchに採択された他のスタートアップ詳細については、こちらのブログで随時掲載していきます。お楽しみに!