Partner Story | 株式会社三菱UFJ銀行

株式会社三菱UFJ銀行 榊原 知良 氏
2012年 三菱東京UFJ銀行(現:三菱UFJ銀行)入行。刈谷支店にて自動車部品製造業を中心 とした中堅中小企業向け営業を経験した後、国内営業本部にて公共セクター及び小売流通セクター大企業の営業を担当。2018年から法人·リテール企画部にてスタートアップ企業のお客さまに 対するMUFGの支援策·戦略の企画·立案に従事。企画の一環でMUFGにおけるスタートアップ支援専門部署の創設検討に携わり、2019年5月の成長産業支援室の立ち上げに合わせ当室に着任、現在に至る。
株式会社三菱UFJ銀行 永井 健太郎 氏
2008年 株式会社三菱東京UFJ銀行(現:株式会社三菱UFJ銀行)入行。梅田支店にて、中堅·中小企業向け営業に従事した後、大阪営業本部にて電機メーカーを中心とした在関西大企業向け営業を経験。その後、2014年に三菱UFJモルガン·スタンレー証券株式会社 経営企画部へ出向、企画関連業務に従事し、2017年からは同社におけるデジタル活用に関する戦略·施策の企画立案を担当。2019年に銀行に帰任し、現在、成長産業支援室においてMUFGのスタートアップ支援に関する施策立案·推進を担当。
株式会社三菱UFJ銀行 桂 寧志 氏
2009年東大阪中央支社にて4年間(半年のOJTを含む)中堅·中小企業の法人取引を経験。リーマンショック後の町工場を中心とするマーケットで新規開拓から既存取引まで幅広く経験。その後コーポレートファイナンス、ストラクチャードファイナンスなどを活用したファイナンススキームを提案·組成するコーポレート情報営業部にて、契約書作成業務から営業業務までフロント·バック業務共に経験。その後社内公募制度を活用してデジタル企画部に異動。オープンイノベーションの推進を担当。MUFG Digital Acceleratorでは運営責任者としてプログラムを指揮する。
Plug and Play Japan 貴志 優紀
Director, Fintech
Plug and Play Japan Reza Ari Wibowo
Partner Success Manager, Fintech
オープンイノベーションの始まりとPlug and Playとの出会い
- 貴志
貴社のオープンイノベーションのイニシアチブについてお伺いしたいです。いつ頃、どのような形で始められ たのでしょうか。
- 桂
歴史でいくと2015年頃から立ち上げていて、今のデジ タル企画部の前身となるデジタルイノベーション推進室で オープンイノベーションの推進をしていました。 世の中の潮流をみてオープンイノベーションの大切さを 学んで、当時は属人的に立ち上げをしました。そこから今 でも続いているアクセラレータープログラム*1やFintech Challenge*2に繋がっています。ハッカソンや、アイディアソ ンなど小粒で動き出した時期になりますね。
問 題 意 識 と し て は 、銀 行 や 金 融 機 関 は ど う し て も 新 し い こ とを始めるときに開発に2、3年かかってしまい、更に、莫大 な資金がかかってしまう。できた頃には、世の中のニーズと の差が出てきてしまうということがありました。なんとかで きないかということで、その手法の一つにオープンイノベ ーションがあるのではないかということで始まったのが経 緯です。
- Reza
Plug and Play Japanをどう活用されているんでしょうか。
- 永井
MUFGのオープンイノベーションの観点と、成長産 業支援のミッションであるスタートアップを支援するという観点の二つがあります。
- 桂
まず、オープンイノベーション、コラボレーションの観点から行きますと、Plug and Playはシリコンバレーでもとも とおつきあいをさせていただいていて、当時そこのMUFG シリコンバレー駐在メンバーを通して西海岸で情報収集・ ソ ー シ ン グ を し て も ら う と い う こ と を し て い ま し た 。そ の後、Plug and Playが日本にくるということで日本でも同じ 活動を始めて、活用させていただくという形になりました。 アクセラレーションを通して、スタートアップさんと会ってネ ットワーキングさせていただいたり、直接MUFG各社、各部 のところに繋いだりしながら活用させていただいています。
実際にPlug and Play Japanで採択されたスタートアップ のみなさんが、弊社のアクセラレータープログラムで採択 さ れ た り 、逆 に 弊 社 の プ ロ グ ラ ム を 卒 業 し た ス タ ー ト ア ッ プがPlug and Playのプログラムに入ったりしてますし、そ ういった相互の関係ができているんですね。
- 榊原
成長産業支援の場合は、MUFGの本業として融資 や様々なサービスを通じた成長支援、主幹事証券としての 上場支援を行います。この観点でのPlug and Playの活用 方 法 は 、ま さ に 有 望 な ス タ ー ト ア ッ プ を ご 紹 介 頂 く と い う ところです。最近ではSIX*3の件もご相談させて頂きました が、今後は我々のお取引先をPlug and Playにご紹介する、 という相互の取組も出来ればと思っています。
MUFGでは過去よりスタートアップ 支援はやっていました が 、2 0 1 5 年 か ら 特 に 力 を 入 れ る よ う に な り ま し た 。そ の 中 で、大企業やアカデミアなどが絡んだエコシステムが日 本に必要なのではないかという問題意識を持っていた時 にPlug and Playの存在を知り、且つ日本に進出するということで、日本進出をお手伝いさせて頂いたのがPlug and Playと接点を持たせて頂いた経緯です。今では国内の全6 Verticalでパートナーとして活動させていただいています。協業ですとやはりFintechの側面が強いのですが、成長産 業支援の観点ではご支援する先にカテゴリーの壁はない ので、MUFGの本業と少し距離のある例えばHealthtech や Insurtechで も ご 紹 介 頂 くス タ ー ト ア ッ プ に は 常 に アプローチをしています。実際にセレクション*4から短い期間で 融 資 を 実 行 さ せ て 頂 い た り 、三菱UFJキャピタル が 投 資 を 決めたりといったご支援の実績も出ています。
- Reza
Plug and Play Japanをどう活用されているんでし ょうか。
- 桂
いくつかありまして、Plug and Playのプログラムと僕 らのプログラムでの共通でいうと、Moxtra,Inc*4さんと株 式会社GINKAN*5さん、RESTAR株式会社*6さん、株式会社 no new folk studio*7さん、ノバルス株式会社*8さんが採択 されています。我々のネットワークで関係性があるVCさん からもスタートアップの情報はもらっているんですが、Plug and Playの特徴的なところはVCが入ってないような、例え ばMoxtra, Incさんなどと出会えることですね。VCさんだと 接 点 持 っ て い な い と こ ろ だ と 思 う ん で す が 、そういうスタートアップさんともPlug and Playを通して我々も接点を持て ていると思うんですね。これはPlug and Playのグローバル なネットワークの中でこそできている強みなのではないか と思います。
- Reza
ありがとうございます。色々スタートアップとか関わ っていただいて、何かしら気にかけていること、意識してい ることはありますか?
- 桂
僕らはオープンイノベーションをメインに考えている ので、僕らの課題が何なのかをちゃんと認識した上で、ス タ ー ト ア ッ プ に 対 して 何 が で き る か を 考 え る 必 要 が あ り ま す。そういう意味では立場の上下がなくお互いの求めるも の が 合 致 す れ ば 、協 業 が 可 能 に な り ま す し 、だ か ら こ そ ア クセラレーターも回ってきていると思っています。頼り頼ら れの関係をうまく作ることが大切だと思っています。
- 永井
スタートアップの方々も感じていらっしゃることかも しれませんが、例えば、大企業はスタートアップと比べると 慎重なことも多く、どうしても時間が掛かってしまうことが あ り ま す 。そ の 為 自 社 の ス タ ン ス や 物 事 の 進 め 方 、時 間 軸 などの実状をしっかりとスタートアップにも伝えるよう気に 意識しています。また、同時に、我々が社内やお客さまにス タ ー ト ア ッ プ を 紹 介 す る 時 に 、ス タ ー ト ア ッ プ の 事 業 に 対する考え方や、どのような技術を持っているのか、などをし っかり説明できるように、きちんと理解することを意識して います。それらを事前にうまく双方にコミュニケートするこ とで、極力早く次に繋がるような工夫をしており、うまく繋ぐ ことが大切だと思っています。
- 榊原
金融支援をする立場としては、金融機関の実態を良 い意味でも悪い意味でもしっかりとお伝えをすることが最 初の入り方として大事かなと思っています。金融は意外と 幅広いサービスを提供することが可能です。グループで従 業員が何万人もいて様々なセクター毎にスペシャリストが いるので、海外の税制や金融規制に詳しいとか、また株式 の話やオーナーの資本構成の話がしたいというご要望が あっても、ライトパーソンはいます。でもそうした側面は、金 融機関と深く付き合っていかないと分からないことでもあ るんですね。そういった、金融機関が出来ることをお伝えす ることは大事だと思っています。
一方で新規のお客様から「じゃあお金貸してください、すぐ 回答ください」というのは難しいんですね。銀行って預金と し て 預 か っ た 大 切 な お 金 を お 貸 し す る の で 、し っ か り と 財 務状況を我々としてリサーチしなくてはいけないし、どれだ け 頑 張 っ て も や は り 時 間 は 頂 い て し ま い ま す 。ま た 様 々 な 資料のご提出をお願いしたりとご依頼も多かったりするん ですが、そこにはちゃんとした背景とステップがあるという ことです。ネガティブなイメージもあるかと思うんですが、き ち ん と 説 明 す れ ば 理 解 し て も ら え る の で 、ま ず は 最 初 に 金 融機関のことをきちんとご説明することが大事かなと思っ ています。
- Reza
そういった工夫をされているんですね。事業部にど う繋げるか、難しさを感じられることもあるんでしょうか。
- 桂
デジタル企画部と成長産業支援室が全ての窓口にな っているわけではなく、各部各組織がそれぞれリサーチ活 動はしています。その中で企画を検討して「ここでやろう」と 着手していることもあるので、紹介するタイミングが悪けれ ばもう別のところでやっている場合だったり、すでに違うこ とをやっていることもあります。 タイミングと時期の折り合いが悪ければうまく行かないこ とが多いので、その点を見極めキャッチするためには課題 がどういうことかを理解して、今何をしているのか、今どこ に何が必要なのかをマクロで見る必要があるのかなと思 います。でも組織も大きいので、マクロで見ることがなかな か難しいですよね。
- 永井
こういうことに困っているだろうな、こういうものが 欲しいだろうなと思いつつも、紹介するタイミングがズレる と難しいですね。一方、紹介し続けるしかないということも 事 実 で す ね 。そ の 為 、関 係 部 が 取 り 組 ん で い る こ と を し っ か り 理 解 し つ つ 、紹 介 し 続 け る と い う 両 輪 で 対 応 し な く て はいけないと思っています。
- Reza
成長産業支援室でもMUFGの事業部にスタートア ップのソリューションを紹介したりしてますか?
- 榊原
はい、ケースバイケースで紹介しています。
- 桂
銀行の機能の一環としてビジネスマッチングがあるの で全社的にやっています。対お客さんなのか、対銀行の部 署なのか、というのが違いですね。
スタートアップとの連携 ー 共に成長
- 貴志
み な さ ん 今 こ う や っ て 色 々 な オ ー プ ン イノ ベ ー シ ョ ンの活動をたくさんされてますけど、スタートアップと働く 部署に入る前、入ったあと、どんな違いがありますか? なぜ、どうやってみなさんがイノベーションに関わることに なったのでしょうか?
- 榊原
直前は営業で一部上場の大企業を担当していまし た 。そ の 後 、異 動 し て 企 画 に 来 て 、ス タ ー ト ア ッ プ 支 援 を 考 えるミッションを与えられました。前任から引き継ぐ際には 知らない単語ばかりで、「VCって何?」という状態でのスタ ートでした。そこからとにかく知識を集めた感じです。
- 永井
今の部署の前の部署の時に少しFintech関連の業 務に関わっていました。元々はスタートアップのことは何も 知らなかったですが、業務の中で、実際にスタートアップと 面 談 し て 、ど の よ う な 技 術 が あ る の か と 、ス タ ー ト ア ッ プ の 考え方やスピード感を学んでいった感じですね。
- Reza
大企業とスタートアップってやっぱり違うと思うん で す よ 。進 め 方 や 文 化 が だ い ぶ 違 い ま す よ ね 。そ こ で 何 か 彼らにもらった影響などはありますか。
- 永井
自分が働いている会社の文化やルールが当たり前 のように感じてしまいかねないですが、それらをこれから 作っていくスタートアップの方々と関わることで、様々な考 え、文化などを知る良い機会になっていると思います。
- 榊原
スタートアップ の 方って凄く良 い 情 熱を持っている んですね。こうやりたい!こうした未来を創りたい!と、未来 についてワクワクして語って頂いて熱量も凄いから、お話ししていて単純に楽しいというのがまずあります。というの も、そういう方ってあまり大企業にはいなくて、大企業だと 縦割り横割りで細分化されたミッションだけを追っている ので「何をしたいですか?」という質問に答えられる人は多 く な い と 思 い ま す 。そ う い う 意 味 で 、ス タ ー ト ア ッ プ の 方 と 接する中でモチベートされる部分は非常にあります。
次の3年をみる
- Reza
ありがとうございます。これから3年を見たときに、 何をしていきたいか。どんな希望を見出すか。どんなことを してみたいでしょうか。
- 桂
間違いなく、コロナの状況下でデジタル化が必須だと 思っています。オープンイノベーションを加速していく必要 性は高まっていくと思います。ただ金融機関はセキュリティ が重要です。お客さまの大切な資産を預かっているので、 強固なシステムを作るのは求めざるをえないところだと思 っています。 一方、シード期のスタートアップの方とも新しいことを一緒 に見つけていきたいです。Fintechだけではなく色々なバ ー テ ィ カ ル の 中 で 色 々 な 人 と 会 っ て 、「 新 し い 金 融 機 関 の ありかた」みたいなものをいろんな角度から一緒に作って いくということが、これからやっていきたいことです。
- 永井
良くも悪くも、コロナの影響で転換期を迎えている と思います。金融機関だけではなく、大企業、スタートアッ プ に 関 わ ら ず あ ら ゆ る 会 社 、こ の コ ロ ナ を き っ か け に 社 会 全体が変わらざるを得ない状況になっていると思います。 その中で、オープンイノベーションはますます加速していく と 思 い ま す し 、ス タ ー ト ア ッ プ の 重 要 性 も 更 に 高 ま る の では、と思っています。成長産業支援室には、スタートアップ のビジネス面、ファイナンス面のご支援をするというミッシ ョンがあり、Plug and Playのプログラムを通じてこれまで 様々なスタートアップとの接点を持つことが出来ています が、今後もPlug and Playを通じてより多くのスタートアッ プと接点を持つことが出来たらと思っています。また、スタ ートアップのご支援だけでなく、スタートアップに関する様 々 な 潮 流 を 掴 み な が ら 、お 客 さ ま に 貢 献 し て い き た い と 思 っています。
- 榊原
このコロナ禍で一つ出てきたキーワードは、サステ イナブルな環境を作ることだと思います。ESG/SDGs含め 様々な場面・企業において「サステイナブル」にフォーカス が当たって来ていると感じています。また過去の景気後退 局面でも様々な有望スタートアップが出てきた事実を鑑み れば、足許コロナが招いているこの景気変動局面でも何 も新しいものが出てこないことは無いと思っています。そう
したことを考えた時に、サステイナブルな社会を作れるス タートアップに対して僕らが如何にリスクテイクして支援を していけるかが鍵だと思っています。
またサステイナブルと言っても分野は多岐に渡ると思って いて、非接触型社会やECの購買体験向上だったりと、コロ ナ禍で経験したニューノーマルの維持、またその利便性や UXの向上が重要になると思います。更にその中でも優劣 がついて徐々に頭角を現す先が出てくると思いますが、そ う し た 先 が 資 金 調 達 や サ ポ ー ト を 求 め て い る と き に 、ス ム ーズに僕らが手を差し伸べられる存在になっていきたいと 思います。
Index
*1 https://innovation.mufg.jp/accelerator/
*2 Fintech Challenge: MUFG 主催デジタル通貨ハッカソン
*3 SIX: SIX powered by Plug and Play Plug and Play Japan 主催のマンスリーピッチイベント
*4 Moxtra,Inc: Fintech Batch2 スタートアップ | 1 つの流体エンゲージメントプラットフォームでビジネスを行うために必要なすべてのツールを提供
*5 株式会社 GINKAN: Fintech Batch 1 スタートアップ | トークンエコノミーによって世界中で良質なレストランを発見できる SNS プラットフォームを構築
*6 RESTAR 株式会社 : Fintech Batch 2 スタートアップ | 不動産 · 地理分析を行う不動産事業者及び金融機関向けの、オンラインプラットフォームサービスであ る「REMETIS」を開発
*7 株式会社 no new folk studio :IoT Batch 2 スタートアップ | センサやコンピュータを内蔵した靴「スマートフットウェア」の開発
*8 ノバルス株式会社 : IoT Batch 1 スタートアップ | コネクティッド · バッテリーでメーカーからサービス事業者まで、あらゆる業種業態でのデジタルトランス フォーメーションを実現