大学発技術シーズを社会実装し、成果を社会に還元したい - Photo Soni Life Technology
2022/07/19
Hardtech & HealthのBatch 1プログラムに参加した15社の中で、最もアーリーステージのスタートアップが株式会社Photo Soni Tech(以下、Photo Soni Tech(フォトソニテック))。京都大学の技術シーズをもとに、会社を創設しようとしているPre-Seedの段階です。アーリーの立場でアクセラレータープログラムを活用することのメリット、そして大学発スタートアップとしての同社のミッションについて代表取締役の若松知哉氏に話を聞きました。
(本記事は2020年5月にPlug and Play Japan公式noteで公開した記事です)
Chiyo Kamino
Communication Associate, Kyoto
ーーどういう経緯でPhoto Soni Techをやろうと思われたのでしょうか?
起業前は産学連携研究所という会社に勤めていました。その会社では、大学の産学連携部門に出向して運営したり、一部の調査業務を受託したりということをやっていたんですけど、大学の技術シーズを事業化するお手伝いみたいなことをしていたんです。その中の一つに、京都大学の椎名毅先生のプロジェクトがありまして。会社としてご支援させていただいていた中で、ベンチャーを作りましょうという話になって、そこに私が入っていったんです。
もともと椎名先生も自分の研究してきた技術シーズを社会実装していきたいという思いをお持ちでしたので、伴走者としてジョインしたという形ですね。
京都市のKYOTO発起業家プログラムというのがあるのですが、そこに採択されたのをきっかけに、いよいよベンチャーとして立ち上げることになったというのが今の段階です。京都大学の中にインキュベーションプログラムというグラントがあるんですけど、それには起業家候補と先生とがタッグを組んで応募する必要があるんです。そこで「若松さん、やりませんか?」とお声をかけて頂いたというのが細かな経緯となります。
ーー若松さん自身はどのようなバックグラウンドでいらっしゃるんですか?
もともと機械系のエンジニアをやってまして、ずっとハードウェアのメーカー勤務で設計業務などをしていました。その後、中小企業診断士というコンサルの資格を取り、しばらくして独立しました。診断士仲間として某 VC の方と知り合いになり、その人が産学連携研究所代表の隅田さんを紹介して下さったんです。そこで隅田さんから「光超音波のプロジェクトがあるんだが、やってみないか」と言ってもらって今に至ります。
ーーそのようなお話が舞い込んできて、どう思われたんですか?
実はベンチャー業界には元々興味があって、特にずっと理工学系でやってきたバックグラウンドがあったので、いわゆる先端技術なんかにはかなり興味がありました。また、中小企業診断士として、数名程度でやっているような零細のところから100名規模の会社さんまで支援させていただいていたのも繋がっています。いろんな会社を支援していている中で、業界は全然違いますけど、ベンチャーが成長していく過程、特にチームアップとか組織運営的な部分では力になれるんじゃないかという思いがありました。なので話をもちかけられてすぐ、「是非宜しくお願いします」と言いましたね(笑)。
ーーアクセラレータープログラムに参加される中で、「ここが課題だ」と思っていらっしゃることはありますか?
めちゃくちゃいっぱいありますよ(笑)。例えば、大学発ベンチャーとしてコア技術が強くても事業者としてはまだ未熟だということがありますね。これまでの流れとして椎名研は、キヤノンさんと京都大学のCKプロジェクト、そこから内閣府のImPACTプログラム、いわゆる国プロ(政府研究開発プロジェクトの略)に参画してきました。そこでの研究成果を応用して社会実装を目指す流れになってるんですけど、まだやっぱり基礎研究レベルに近いんですね。形にはなっていても実用的なものになっているとはまだ言い難い状態でして。どんな用途向けに展開していくのかという一点を取っても、アイデアはありますが「どの市場に一番刺さるのか」が明確には見えていないというのが実情ですね。
技術面においても、試作するのに何千万と掛かるというハード的なハードルもありますし、それに伴ってお金の面でのハードルもでてきます。その上にマーケティング的な課題もある訳なので、どこから手をつけようかなというのが正直なところです。並行してやっていくしかないんですけどね。
ーーアクセラレータープログラムに参加される中でどのようなヒントが得られるといいなと思われますか?
今回参加させていただいた大きな目的の一つは用途開発ですね。私たちが持っている技術をもとに、どこに向かって進んで行ったらいいのか。ヘルスケア以外の領域の方ともお話しすることで「こういう使い道もあるんじゃないの」といった知見をお借りできればと思っています。まだ具体的な方向性は見えていないものの、「何かには使えそうだ」というのが皆さんからいただいている手応えなので、根気よく続けていくことで何かに繋がるといいなと考えています。
応用の仕方はいくらでもあると思うんですよね。この領域ではトップクラスの研究結果が出ていると思いますし、他のビジネスや他の商流といかに組み合わせるかが私の仕事なので、全く違う分野との掛け合わせによって社会的に意味のあるものに変わっていくのではないかと感じています。
ーー若松さんが達成したいこと、ビジョンについて教えてください。どんな社会を作っていきたいですか?
技術的な面から言えば、今回の光超音波イメージングというのはライフサイエンスや医療分野への応用面では強いツールになり得るはずなんです。非侵襲で人体の影響が少ないにも関わらず生体内を高精度で観察できる特徴があるので、血圧や体温を日々測るくらいの感覚で、血管の構造や血中の成分といったさまざまなバイオマーカーのモニタリングを手軽に行えるデバイスなんですね。データから自分の健康状態について知るのは重要なことだと思いますし、そんな社会を実現するデバイスになっていけばいいなという想いがあります。
もう一つの想いとしては、大学発ベンチャーとしての意義ですかね。大学における基礎研究があって、その後の研究によって技術を高めていくことでイノベーションやパラダイムシフトを引き起こすことが出来ると思っています。国から資金を受けて研究した技術をライセンスされて事業展開していくという流れになっていますが、その成果をまた研究の世界に還元していく必要があると思います。大学の先生がやってきたことを社会実装して、その成果を還元していくというのは、大学発ベンチャーのミッションだと思っています。研究が発展することで良い事業がどんどん社会に出て行って、その結果お金が循環することで大学の基礎研究の幅がより広がる、そんなスパイラルにしていけると良いなと。
ーーなるほど、すばらしいですね!最後の質問になりますが、こんな方々と組みたいというのはありますか?
難しい質問ですね。基本的には当社に面白みを感じてもらえたり、共感していただける方々とは幅広く組んでいきたいです。将来的には、当社の技術で個々人のヘルスデータを日々モニタリングしていけるので、これを何かと組み合わせることで、人間としてのパフォーマンスを上げていけるような上手い仕組みを作れると面白いのかなと思っています。極端なアイデアとしては、社会インフラや個人IDと紐づけたり。そういった大きな可能性を追いかけていける方々と組めたら良いなと思っています。