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優れた商品を届けるため、アライアンスをハックするーパートナーサクセス

2025/04/07

パートナーサクセス株式会社は「アライアンスをハックする」をミッションとして掲げ、次世代型代理店連携クラウド「PartnerSuccess PRM」を通して多くの企業の代理店業務の効率化やパフォーマンスの最大化を実現しています。

Plug and Play Japanは、企業間の連携を促し、世の中に良いサービスやプロダクトが流通していく仕組みを構築する同社に共感し、2024年9月に出資いたしました。今回は、パートナーサクセス株式会社の代表取締役CEO永田氏に事業立ち上げの背景や展望、サービスの特徴などについてお話を伺いました。


1. プロフィール

Interviewee: 永田雅裕氏

パートナーサクセス株式会社 代表取締役CEO/創業者

NTT関連企業の営業コンサルや代理店営業を経験後、2014年LIFE STYLE株式会社を創業。Google社とパートナー契約を締結。「Googleストリートビュー(屋内版)」事業を展開。2015年Google Japan Business View Awardにて “Most Improved Agency Award(最高成長率賞)”を受賞。Google社のパートナー企業として世界30カ国3000社中TOP5の実績、グローバルサミット選出。リコー社など数々の企業のパートナープログラム構築を手掛ける。2019年9月パートナーサクセス株式会社を創業、代表取締役CEO。

Interviewer: Seki Zhou

Plug and Play Japan株式会社(Ventures Analyst, Fintech)

慶應義塾大学卒業後、DTFAに新卒入社。M&A戦略部門にて投資戦略・事業計画の策定、市場調査、ビジネスデューデリジェンス、海外進出撤退など、多様な業界・テーマにおけるプロジェクトに携わる。
2023年よりPlug and Play Venturesに参画。主にAI及びサステナビリティ分野でのベンチャー投資を中心に活動。また、Fintechチームにて変化し続ける金融機関のニーズに則したスタートアップソーシングを担当。

2. 400社の代理店の声を聞き、起業を決意

ーー起業の経緯について教えてください。

今回の起業は2回目になります。最初に会社を立ち上げたのは約11年前で、それ以前はNTT関連会社での代理店営業や、営業支援に携わっていました。メーカーの商品を仕入れて販売する仕事を通じて、代理店ビジネスの仕組みや課題を深く理解する機会を得ました。

最初に起業した会社では、Googleのストリートビューを広める代理店事業を展開し、2年で約400社の代理店を開拓し、グローバル市場でも30か国中トップ5に入る成果を上げることができました。その過程で、メーカーと代理店の連携がアナログな手法に依存しており、情報共有や管理の非効率性が大きな課題であることに気付きました。

そこで、アメリカではメーカーと代理店の関係構築や業務効率化を支援するソリューションが存在することを知り、PRM*の日本への導入を検討しました。しかし、問い合わせをしても反応が得られず、自分たちで作ろうと決意し、パートナーサクセス株式会社を立ち上げました。

*PRMとは:Partner Relationship Management(パートナーリレーションシップマネジメント)の略で、企業とビジネスパートナーとの関係を管理・最適化するための戦略や手法

3. テクノロジーでB2Bを劇的に変革し、優れた商品の流通を促す

ーーミッションである「アライアンスをハックする」について教えてください。

「アライアンスをハックする」というミッションには、日本のBtoBビジネスを根本から変革したいという強い想いが込められています。

日本のビジネス環境は、渋沢栄一が設立した第一国立銀行(現・みずほ銀行)を起点に約140年の歴史を持ちます。しかし、企業間の連携や契約の仕組みは、いまだにアナログな部分が多く、十分に進化しているとは言えません。

一方で、CtoCの分野では劇的な変化がありました。15年前にiPhoneが登場し、ZoomやSNSで世界中の人と瞬時にコミュニケーションができることが当たり前になりました。

このテクノロジーの進化が、人と人とのつながり方を大きく変え、ビジネスのあり方にも影響を与えています。私たちは、この変化をBtoBの世界にも取り入れ、業務の効率化や生産性を劇的な向上させたいと考えています。

日本では労働人口の減少が進み、従来の営業モデルでは今後、商品がユーザーに届かなくなる可能性があります。そのため、BtoBの流通を効率化し、優れた商品が確実に市場に届く仕組みを構築することが不可欠です。

「アライアンスをハックする」というミッションには、より多くの優れた商品が市場に流通し、必要とする人々に届く社会を実現したいという強い想いが込められています。

4. 日本におけるPRM導入の課題

ーーPRMがこれまで日本に浸透してこなかった理由は何でしょうか。

日本のBtoB流通の約7割は代理店販売によるものであり、その規模は約800兆円にも上ります。しかし、PRMが日本で広く普及してこなかった背景には、いくつかの要因があると考えています。

まず、日本ではアメリカに比べてCRM(顧客管理ツール)のクラウド化が遅れている点が挙げられます。企業にとって、顧客管理とパートナー管理を比較すると、まずは直接的な接点のある顧客管理のシステム化が優先されます。そのため、CRMは過去10〜15年の間に浸透し、多くの企業が顧客データをしっかり管理するようになりました。

しかし、その導入率をアメリカと比較すると、従業員10名以上の企業においてアメリカでは90%がCRMを導入しているのに対し、日本では30%程度にとどまっています。アメリカではすでに顧客管理の基盤が整備されているため、その次のステップとしてパートナーチャネルの管理へと進んでいます。一方で、日本ではまだ直接販売に必要なツールの導入が進んでいないため、PRMの普及にも遅れが生じているのです。

もう一つの要因として、日本におけるパートナーセールスの立ち位置がアメリカとは異なることが挙げられます。アメリカでは、パートナーセールスはマーケティング部門の傘下にあり、チャネルパートナーのデータを含めた管理が一元化されています。そのため、マーケティング戦略の一環として、データを活用しながらパートナーネットワークを強化することが一般的です。

しかし、日本ではパートナーセールスは営業部門の下に位置し、代理店営業部門が下請けのような形で組織に紐づいていることが多く見られます。結果として、営業部門はマーケティング部門と比較するとデータ活用への関心が低く、PRMの導入が進みにくいという現状があります。こうした背景から、日本ではPRMの普及が遅れていますが、BtoBビジネスの効率化が求められる今、その重要性はますます高まっていくと考えています。

ーーユーザーの方からはどのような反響がありますか?

現在、当社のサービスはさまざまな業界の販売店や代理店、約6,000社の企業にご利用いただいています。

パートナービジネスやパートナーセールスに従事されている担当者の方々は、社内では少数派であることが多く、その声が大きく届きにくいという現状があります。そうした環境の中で、パートナーセールスの現場の課題を深く理解したメンバーが担当者にしっかりと向き合い、システムの導入や運用を支援しながら、彼らの課題に寄り添い、共に解決策を模索していく。この姿勢に共感していただくことが多いと感じています。

パートナーサクセス代表取締役CEO永田氏(写真右)、Plug and Play Japan Ventures Analyst周晰(写真左)

ーーPlug and Play Japanからの投資を受け入れる決め手は何でしたか。

Plug and Playさんは、グローバルに拠点をお持ちなので 、 日本に閉じた視点ではなく、 グローバルな視点で判断していただけるところが一つの決め手となりました。 PRM(Partner Relationship Management)の市場はアメリカが先行しており、当社としてはまずその水準に追いつき、さらにその先を模索する必要があります。そのため、グローバルな市場動向や戦略に関する知見を持つPlug and Playとの連携は、当社にとって非常に価値があると考えました。

また、当社のサービスのスケール感と、Plug and Playの持つネットワークの規模が合致していたことも大きな決め手でした。当社のサービスはネットワーク外部性が高く、すでに6000社以上の企業様に利用いただいています。メーカーが当社のシステムを導入すると、そのパートナー企業にも自動的にIDが付与される仕組みになっており、この特性が市場拡大の大きな推進力となっています。

特に、日系メーカーは日本に本社を持ちながらも海外に販売会社を展開しているケースが多く、国内市場の成長とともに、自然とグローバル展開のニーズが生まれます。こうした環境に適応し、創業当初からグローバル展開を意識していた当社にとって、Plug and Playの国際的なネットワークは最適なパートナーであると感じました。

5. オールインワン型で挑むPRM市場

ーー今後のマイルストーンについて教えてください。

PRM市場で戦うための戦略には、大きく2つの選択肢があると考えています。ひとつは、パートナーとの連携に関するあらゆる機能を網羅する「オールインワン型」、もうひとつは特定の業界に特化し、特定の機能で圧倒的な強みを持つ「一点突破型」です。その中で、当社は前者のオールインワン型のアプローチを選択し、包括的な機能提供を目指しています。

現在は、ビジネスパートナーとの関係構築・情報連携に特化した機能から順次アップデートを進め、その後イネーブルメント(営業・売上促進)を活性化するための機能を追加していきます。特にインセンティブに関する機能は今後さらに強化を図る予定です。

例えば、報酬の支払いを自動計算化する仕組みや、代理店ごとに異なる支払いフローや料金回収方法の多様化に対応できるプロダクトへの進化を目指しています。また、AIの活用についても現在開発を進めており、既存機能のアシストや、蓄積されたデータの分析・解析の強化に取り組んでいく予定です。メルカリが掲げているような、数千万人規模のトラフィックやデータ基盤を活用したテックカンパニーの確立を目指したいと考えています。

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