• Event Report

Next Level DeepTech: APACスタートアップピッチ

2022/12/22

2022年11月17日、「Next Level Deeptech: APAC Startup Pitch」をテーマに、アジア太平洋地域におけるDeeptechについての講演およびスタートアップピッチセッションを実施し、約170名の政府や企業の方々にご登録いただきました。ご視聴いただきました皆様、ありがとうございました。本記事では、イベントのサマリーをご紹介します。


Writer: Yin-Chi Wu

Operations Intern


イベント内容

・イベント趣旨
・Plug and Play Japanの挨拶
・SGInnovateの挨拶
・講演『DeepTechにおける国境を越えた協力の重要性』
・スタートアップピッチ

イベント趣旨

今回のイベントは、シンガポール政府が100%出資するベンチャーキャピタル、SGInnovateとの共同開催です。アジア太平洋地域において最先端の技術を持つDeepTechスタートアップを紹介し、さらなるスケールアップや社会・環境問題の解決に向けてグローバルなコラボレーションを促進するという目的で開催しました。

Keynote Speechでは、Enterprise Singapore(※シンガポール産業貿易省管轄下の国家機関)The Global Innovation Network部門副ディレクターであるKANG Aik Meng氏にゲストスピーカーとしてご登壇いただきました。

また、Aonbarr社CEO 櫻井重利氏(日本)、FiberCraze社CEO 長曽我竣也氏(日本)、HydroVenus社CEO 上田剛慈氏(日本)、Augmentus社CEO Yong Shin氏(シンガポール)、Krosslinker社CEO Gayathri Natarajan氏(シンガポール)、Xinterra社CEO Patrick Teyssonneyre氏(シンガポール)といった、日本とシンガポールのスタートアップ6社によるピッチセッションも実施しました。

Plug and Play Japanの挨拶

オープニングに先駆け、Plug and Play Japan株式会社 New Materials Program ManagerであるHayata Okuboより、イベントの開催目的やPlug and Play Japanの取り組みについてご紹介しました。また、日本経済におけるDeeptech産業の重要性についても言及しました。

SGInnovateの挨拶

SGInnovateのAssistant Director-PartnershipsであるDasreena Kaur氏より、投資やDeepTechエコシステム構築等のSGInnovateの取り組みについてご紹介いただきました。

詳細はSGInnovateのホームページをご覧ください。また、「研究と技術を通じてグローバル規模の社会問題を解決する」というビジョンについては、ショートムービーからご覧いただけます。 movie link

講演セッション (KANG Aik Meng, Enterprise Singapore)

Enterprise SingaporeのKANG氏よりDeepTech分野における国境を越えた協力の重要性と、Enterprise Singaporeの推進するInternational Co-Innovation Programmes(CIPs)の概要についてお話しいただきました。

「この度、Next Level Deeptech seriesの第一回目に、Deeptechスタートアップによるグローバルなコラボレーションの重要性についてお話ができることを嬉しく思っています。

Deeptech産業の世界的な市場需要は年率21%程度で成長すると予想され、高いポテンシャルのある分野となってきています。また、今後10年間の市場全体の収益は、2021年の4億3100万ドルから2023年には37億ドルに成長すると予想され、今年末の市場評価額が約5億8000万円に達しました (参考Future Market Insights:Deep Tech Industry Insights、2022)。Deeptechのスタートアップ企業やスケールアップ企業への投資も、2016年は150億円でありましたが、2022年には600億円以上へと驚異的な成長を遂げています (参考Boston Consulting Group & Hello Tomorrow:Deep Tech – The Great Wave of Innovation、2021)。

これらの投資の約3分の2は、ライフサイエンスとAIの分野に対するものです。アジア太平洋地域に目を向けると、南アジアと太平洋地域は、Deeptech市場の需要が最も強く成長すると予想されており、2022年から2032年までの予測年平均成長率(CAGR)は24.3%と、世界全体のCAGR21.8%を上回ると予想されています。また、東アジアも同予測期間において、最も魅力的な市場の1つであるとされています。アジア太平洋地域のDeeptechスタートアップも、特に半導体、量子コンピューティング、AI、サイバーセキュリティなど幅広い分野で発展しています。

台頭するテクノロジー産業の活用方法を模索する中で、イノベーション・エコシステムの関係者は、戦略の1つとしてグローバルなコラボレーションに注目しています。各国政府は、イノベーションに関するより多くの国際協力への道を開くべく動き出しています。例えば、2021年に締結されたオーストラリアとイギリスのFTAでは、両国の貿易と経済成長を支援する手段として、イノベーションに関する二国間協力を締結しています。同様に、シンガポールは2021年10月、米国と「成長・イノベーションパートナーシップ(PGI)」を締結しました。これは、デジタル経済やスマートシティ、先進的な製造業やサプライチェーン、クリーンエネルギーや環境技術、ヘルスケアなど、今後重要となる分野において米国とシンガポールの企業間の貿易・投資協力を強化することを目的としています。また、シンガポールは今年5月、日本と「協力覚書(Memorandum of Cooperation, MOC)」を締結しました。これは、両国間のアントレプレナーや企業の流れを促進・強化し、両国のスタートアップやイノベーションのエコシステムへのアクセスを向上させるためのものです。

企業レベルにおいては、企業の成長を支援する政府機関であるEnterprise Singaporeも、新興の中小企業やシンガポール国内外の企業の間でイノベーションのためのコラボレーションを促進する方法を熱心に研究しています。

そのための重要な取り組みのひとつが、Co-Innovation Programmes (CIPs)と呼ばれるものです。こちらは、シンガポール国内・国外の企業の二国間、あるいは多国間におけるイノベーションのためのコラボレーションを促進、支援することを目的としています。この取り組みでは、外国の政府機関と提携し、その国の資金提供機関から承認された共同研究開発プロジェクトを持つ企業に対して共同で資金援助を行うものです。CIPsを通じて、国内企業が外国企業の専門知識や強みを補完的に活用し、自社のイノベーション能力を強化するとともに、新しい革新的な製品を生み出し、ひいては自社の製品やサービス提供の拡大に貢献することを期待しています。

CIPsがシンガポール企業の国境を越えたコラボレーションを支援した例として、シンガポールのAkribis Systems社(以下、Akribis社)が挙げられます。、同社は、新しいロボット制御システムを開発するためにイスラエルのAgito Motion Systems社(以下、Agito社)とCIPsプログラムの下で共同プロジェクトの推進を発表しました。両社はその後さらに開発を進め、後にAkribis社はAgito社に出資もしています。両社のパートナーシップにより、Agito社は新市場への進出と、モートステージシステムの世界的な販売数増加を実現することができました。これは、CIPsが支援した数多くのプロジェクトのうちのひとつに過ぎません。今後、CIPsのネットワークをより多くの国に広げ、シンガポール企業がより多くのグローバル・イノベーターにアクセスできるようにすることも視野に入れています。

最後に、Deeptech産業をさらに盛り上げていくため、企業規模や国籍に関係なく、他のプレーヤーとイノベーションのためのコラボレーションに乗り出すことも、ひとつのアプローチとして考えられるでしょう。このピッチイベントでのプレゼンテーションが、皆さんにとって新しいコラボレーションのアイデアやパートナーシップの機会を生み出すことになることを願っています。」

スタートアップのピッチセッション

今回のイベントでは、日本およびシンガポールから6社のDeeptechスタートアップにピッチしていただきました。

・アンヴァール株式会社

海水からのマグネシウム採取、CO2固定化や水素生成する技術の開発に取り組むスタートアップ。「テクノロジーの力で日本を資源大国にする」というミッションを掲げ、創業よりバイオ分野の製品開発・製造からLEDを含む電子部品などの異分野に渡る幅広いコーディネイトしてきた経験を基に、現在では海水からのマグネシウムの採取をはじめ、CO₂固定化や水素生成など新エネルギー分野のイノベーションを起こす研究・開発メーカーとして躍進しています。

所在地:静岡県浜松市

URL:https://www.aonbarr.co.jp/

 


(画像提供:アンヴァール)

・FiberCraze株式会社

フィルムや繊維にナノサイズの穴を空け、成分を閉じ込める技術を開発するスタートアップ。岐阜大学の基礎研究から生まれた「繊維やフィルム素材の多孔化技術」をコアとした高機能性素材を開発しています。素材にナノスケールの孔(あな)を空けることで、防虫や保湿の成分を閉じ込めた機能性繊維や、液体の分離膜など様々な機能素材を扱っています。

所在地:岐阜県岐阜市

URL:https://www.fibercraze.com/

 

(画像提供:FiberCraze)

・株式会社ハイドロヴィーナス

プロペラの代わりに振り子を使用した振り子式潮流発電機の開発に取り組むスタートアップ。

岡山大学の研究から生まれた振り子式水流発電を実用化するために設立されました。身の回りの河川や水路,海を流れる潮流や海流などの水の流れで振り子を振動させ、発電する世界初の方式です。円柱などのシンプルな形状の振り子を用いるため、耐久性が高く、低コストで、振り子がゆっくり振動するため、魚を傷つける心配もありません。本技術は私たちの洪水予測に関する新しい取り組みにおいても、自己発電する計測器によるビッグデータ取得に活用されています。

所在地:岡山県岡山市

URL:https://hydrovenus.com/index.html

 

 

(画像提供:Hydro-Venus)

・Augmentus Pte. Ltd.

Augmentusは、世界の大手製造業で採用されているロボットシミュレーションソリューションです。ロボットやコーディングの経験がない人でも、誰でも数分で産業用ロボットのプログラミングができるノーコード・ロボットプログラミングソリューションを提供しています。Augmentusの独自技術にはインテリジェントなAIが組み込まれており、複雑な形状でのロボット経路の自動生成を可能にし、生産のダウンタイムを最小限に抑え、ROIを向上させることができます。

所在地:シンガポール

URL:https://www.augmentus.tech/

 

(画像提供:Augmentus)

・KrossLinker Pte. Ltd.

材料化学を応用した断熱のためのエアロゲル素材の開発に取り組むスタートアップ。数年にわたる研究から、エアロゲルをより速く、より安く、同時にエネルギー効率よく、拡張可能で、持続可能なものにできる、破壊的なエアロゲル製造プロセスを開発しました。KrossLinker社の製品は、多様な形状で提供することができ、電気自動車バッテリー、塗料、コーティング、冬物衣料産業、建築用途、医薬品、食料品、コールドチェーンなどさまざまなアプリケーションをでの活用が期待されています。Krosslinker社の初期エアロゲル製品であるCryar shipperは、温度に敏感なバイオ医薬品(医薬品、ワクチン、臨床試験サンプル)の安全かつ持続可能な(再利用可能な)輸送に使用されています。

所在地:シンガポール

URL:https://krosslinker.com/

 

(画像提供:KrossLinker)

・Xinterra

AI/MLとハイスループット実験(HTE)を活用した新規先端材料の探索・イノベーションプラットフォームを提供するスタートアップ。あらゆる段階のスタートアップ企業や、既存の中小企業、大企業に対して、加速的かつ効率的な材料開発をサービスとして提供しています。常に迅速なイノベーションが求められている今でも、確立されたプロトコルやプロセスレシピを革新するには、通常数十年の実験が必要です。Xinterra社はこの現状を変える為に、企業が新しい材料の世界を実現し、商品化に向けてより良い材料を開発することを支援します。

所在地:シンガポール

URL:https://xinterra.tech/

 

(画像提供:Xinterra)

今後の取り組み / Future Initiatives

Plug and Play Japanでは、Deeptechのグローバルなコラボレーションを促進すべく、新たな取り組みとして、『Next Level Deeptech』と題したピッチイベントを定期的に開催する予定です。これからは台湾、香港などの国々へもイベントを展開していきます。イベント情報やスタートアップのニュースをフォローされたい方は、ぜひ弊社のニューズレターへにご登録ください!

Special thanks to

・ご登壇いただいた皆様

・イベントの準備・運営にご尽力いただいた皆様

・イベントにご参加いただいた皆様

 



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