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スタートアップがグローバル市場に挑戦するためのアクセラレータープログラム活用法とは?|JETRO Global Preparation Course

2022/11/09

グローバル化が急速に加速する昨今、日本のスタートアップ企業にもより大きな成長の機会が見込めるグローバル市場への進出が求められています。今回は独立行政法人日本貿易振興機構(以下「JETRO」)が推進し、Plug and Play Japanが運営をおこなっているアクセラレーションプログラムの「Global Preparationコース」を昨年度に参加したスタートアップ3社をお迎えして、本アクセラレーションプログラムの意義、そして海外市場に挑戦する上での意気込みについてお話を伺いました。


Moderator: Keita Ito

Plug and Play Japan 株式会社 Program Manager


Speraker: 増田 浩和氏

Rehabilitation3.0 株式会社 代表取締役


Speaker:寄玉 昌宏氏

株式会社Sydecas 代表取締役


Speaker: 青木 睦子氏

ハインツテック株式会社 代表取締役社長


Writer: Haruhito Suzuki

Marketing & Communications Intern


JETRO Global Preparationコースとは

Plug and Play Japanは咋年度よりJETROが推進する『内閣府スタートアップエコシステム拠点都市向け・アクセラレーションプログラム』の「Global Preparationコース」の運営をおこなっています。本プログラムではPlug and Play Japanをはじめとするアクセラレーターが連携して、国内スタートアップのグローバル展開を後押しするとともに、競争が激しい海外市場において事業を展開していく上でのノウハウを指導し、成長過程にある日本のスタートアップ・エコシステムをより一層活性化させていくことを目的としています。

2021年度の「Global Preparationコース」では25社のスタートアップが採択され、海外で効果的に展開していく上でのビジネスモデル構築のメンタリング、海外投資家・パートナー候補企業とのマッチング、有力講師陣による講義、そして本コースの成果発表会として投資家に向けて行われる「Demo Day」でのプレゼンテーションといった多種多様なプログラムを経験しました。

採択されたスタートアップに対しては、プログラムを通じて得られたグローバルな視座、戦略立案・コミュニケーションスキルやビジネスネットワークを基に海外での事業拡大と資金調達が期待されています。

(2021年度プログラムに採択されたスタートアップ一覧)

今回開催されたAlumni Talk Sessionにおいては、昨年の「Global Preparationコース」に参加され、プログラムの最終過程を修了された3名の起業家をお呼びして、本プログラムに参加した経緯、グローバルに挑戦する意気込み、そしてプログラムから得られた知見についてディスカッションしていただきました。

Alumniセッション ー JETRO Global Preparationコースを経験して

ーー登壇者のAlumniのお三方から自己紹介と事業紹介をお願いします。

増田氏:

Rehabilitation 3.0 株式会社の増田浩和と申します。私は作業療法士・リハビリテーションの専門職でして、リハビリテーションの臨床経験と、テクノロジーを掛け合わせるということを事業として実践中です。 具体的には睡眠情報からその人の運動能力と認知能力を推定するAIの開発をしておりまして、現在試作アプリを用いて医療機関で実証実験をしているという状況です。

寄玉氏:

株式会社Sydecas(シデカス)寄玉と申します。当社ではNinjaFoodsというフードテック事業を手がけています。 フードテック業界では、食とITの組み合わせが主流だと思うのですが、我が社では食のニューマテリアルを開発しています。 主にこんにゃくから作り出した「NinjaPaste」と呼ばれる独自素材を用いて、糖尿病、高血圧を患われている方でも楽しめる、ヘルシーかつ美味しい食の開発を軸に事業を進めています。

青木氏:

ハインツテック株式会社の青木と申します。 現在、早稲田大学の技術シーズをベースに事業化していて、Deeptech領域を主軸に事業を展開しております。主に、半導体の微細加工技術により作成した極小構造体を用いて細胞に物質導入し、細胞自体に新たな機能を持たせるという取り組みに着手しています。

ーー3社ともアーリーステージ段階での参加でしたが、なぜ本プログラムに参加され海外を志したのでしょうか?

増田氏:

現在、Rehabilitation 3.0はシードステージではあるのですが、3年後に見据えている海外での事業展開を事前準備するにあたって、前回のプログラムに参加しました。

寄玉氏:

当社は2年半前からこんにゃくを素材ベースとした食品を作っていますが、事業開始以来国内のさまざまな方から「こんにゃくを使った食品はよくある物ではないか」と言われてきました。 こんにゃく消費率が高い国内においてはイメージが湧きにくいと思うのですが、海外ではこんにゃくの市場流通と実際にそれを食べる習慣がほとんどない状態です。従って、こんにゃくを「新素材」としてアピール・ブランディングができる海外での事業展開を早期の段階で想定し、本プログラムに参加しました。

Alumni Talk Sessionに登壇する寄玉昌宏氏)

青木氏:

私は以前から、Deeptech領域で使用される研究開発者向けツールを開発していたので、同領域の技術・ノウハウを用いたハインツテックの製品が、国、地域、人種を問わずに通用する物であると確信していました。従って、設立以前からグローバルマーケットでの展開を目指していました。会社を設立した直後に運良く本プログラムの存在を知り、会社としてのベースを作るという過程でこのプログラムを活用できたらと思い参加しました。

ーープログラムに参加された前後でどのような変化があったのか教えていただけますか?

増田氏:

まず第一に、マインドセットの変化が得られたことが大きいです。プログラム参加以前は、漠然と「海外を目指せたらいいな」と思っていたのですが、参加後は「絶対海外に行く」という確固たる想いに切り替えることができました。 

また、「世界に挑もう」という気概を持つと、優秀な人材が自然と集まるというメリットもあります。 現在、弊社にもアメリカ人のメンバーを迎え入れることができ、すでにそのメンバーを市場調査のため渡米させています。

さらに、Plug and Playと共同で活動していく中で、優秀なスタッフの方々と繋がることができました。その中でもVCを紹介していただいたり、そのVCがリードになるよう交渉を進めてくれたり、ネットワークを通じて堅実な資本戦略を展開することができ、一気に成長をするきっかけを得ることができました。

Alumni Talk Sessionに登壇する増田浩和氏

寄玉氏:

このプログラムを通して「グローバルな視座」を確実に得ることができます。特に、「海外に行くことは特別な挑戦ではない」ということを本プログラムを通して実感しました。例えば、海外での展示会やアクセラレータープログラムに参加する際に提出するエントリーフォームの記入のポイントを押さえたり、Final Demo Dayで撮影していただいたピッチの映像をアピール動画として使えるようになったことは、グローバルに挑戦していく上で強みとなっています。やはり、海外を意識したマインドセットを醸成できたことは大きな収穫だと感じます。

青木氏:

私は、設立初期の右も左も分からない状態でプログラムに参加したので、多面的な意味で良い勉強をさせていただきました。応募時からグローバルで活動することを意識していたのですが、実際にグローバルマーケット進出へのプロセスを学ぶ中で、さまざまなハードルが存在することを把握できたのは大きな気づきの一つです。プログラムを経験した現在では、海外で展開する上で具体的にどのようなファクターを意識して事業展開を進めていくかをよりリアルに想定することができるようになりました。

また、個人的にはプロダクトマーケティングのセッションが一番学びが多かったと感じました。講師の方がプロダクトマネージャーからの視点を通して、自分たちが手がけている事業の改善・工夫に活かせるアイデアを教えてくれるので、本当にためになるセッションでした。

そして、何より一番の収穫は参加企業同士の横の繋がりや、Plug and Playさんとの繋がりのように多種多様な方々とネットワークを築けたことです。横の繋がりを通して互いに励まし合う、 共同で活動をする、自分と違う視点からのアドバイスをもらうなど、いろいろなメリットが生じることはこのプログラムの大きな醍醐味ではないでしょうか。

Alumni Talk Sessionに登壇する青木睦子

寄玉氏:

自分としてもこのプログラムを通して、多種多様なバックグラウンドを持つ方々と関係を築けたことは非常に良かったと思います。その中でも、Plug and Playが弊社の事業と協業が見込める方々とのマッチングをアレンジしてくれたことは非常にありがたく感じました。

我々フード素材を手がけている者からすると、頻繫にセッションが開かれるIT関連のナレッジを蓄積しても基本的には役に立ちません。本プログラムでは我々の事業と深くリンクしている製造業界など、多くの業界からセッションに来られる方を招いているので、自分の業界とフィットするセッションが必ずあると思います。

増田氏:

僕は毎週金曜、土曜日の朝のセッションでシリコンバレーの経営者の方からお話を聞けたことが非常に役に立ちました。毎週「ちょっとじゃあシリコンバレー行ってくる!」みたいな感覚でオンラインで参加するのですが、あたかもシリコンバレーに行っている感じがしたので、それが楽しかったですね(笑)。実際、他の登壇イベントと何が違うのかと思われるのですが、メンターと講師の方々が実際に成功している経営者なので、本質を捉えた講義をしてくれます。従って話されている内容がすごく響きますし、これによって自分達の考え方も海外志向に段々とシフトされていきました。

その他、ピッチトレーニングのセッションも非常に有意義でした。今までもさまざまな方からピッチの練習を受けてきましたが、 Kei Shimadaさんのレッスンは本当にためになりました。英語での本格的なピッチのトレーニングはもちろんのこと、「ピッチとは何か」という基礎のところから詳細に説明頂けたので、 僕も必死にくらいつきました。

ーー最後に、皆さんが五年後、どのようなビジョンを見据えているのかについてお聞きしてもよろしいですか?

寄玉氏:

弊社では、NinjaPasteという素材を他の食材に足すことで、新しいヘルシーな食材を生み出しています。逆に言うと、 弊社のこんにゃく素材だけでは役に立たないので、パートナーを見つけることが重要になります。 ありがたいことに、アクセラレータープログラムを受けた後から、大手国内流通業者との協力、さらにはUAEなど海外での商品展開などのお話が増えてきているので、より一層商品開発に力を入れていきたいです。

また、この分野では商品化に至るまでのタイムスパンが非常に長いです。特に、大手企業との商品開発となりますと5年はかかるのではないかと言われています。従いまして、我々としても、商品化にたどりつく5年後までは必ず生き残りたいです。

増田氏:

弊社の目標としては個々人それぞれにベストフィットなリハビリテーションを広めていくことです。人生100年時代、皆さんが健康な老人になることは非常に大切である反面、リハビリテーションプログラムのようなツールを用いても長く健康でい続けることは容易ではありません。理由としては、 セラピストが提供するプログラムは120万通り以上も存在しているので、それら膨大な数のプログラムを全て見極めて個別に対応していくことは困難の極みであることが挙げられます。 その中で我々が作るアプリには、個々人の運動能力と認知能力を簡単に推定していくという技術を用いられています。なので5年後にはFitBit、Apple Watchなどに弊社が開発した製品の機能が実装されていているのではないかと思います。最終的には、世界中の人々が使い続けることができるウェルネスシステムの根幹となる製品を世に出す、というイメージを掲げて今後もサービス開発を進めていきます。

青木氏:

ハインツテックでは、従来とは異なる新しい手法を用いた研究開発者向けのツールを開発しています。従って、まずは弊社のサービスをさまざまなユーザーに使っていただき、それが世の中のスタンダードとなるようにしたいという大きなビジョンがあります。 

5年後のビジョンという意味合いにおいては、ハインツテックが開発したツールを使用していただける事業会社さんとパートナーを組むことです。すでに、事業会社との共同研究も始まっていますが、研究成果を実際に製品化するにはかなりの時間がかかります。特に、弊社がフォーカスしている再生医療、細胞治療、製薬などの医療系分野では臨床試験の実施、製品の認証をもらうまで、通常10年以上のタイムスパンが必要です。従って、創薬系の短期製品化は難しいとしても、その手前である化学品、エネルギー関連製品などの分野などで5年後を目処に最終製品を出すことを目標として動いています。

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