• Startup
  • Insurtech
  • Health

皆が運動を楽しめる、クラウドベースのパーソナライズドスポーツクラブを作りたい - ELXR

2022/03/01

フィットネスジムに行っても長続きしなかったり、張り切ってエクササイズをしたものの逆に疲れすぎてしまったりした経験はないだろうか。シンガポール発のELXR Pte Ltd(以下、ELXR(エリクシア))はDNAに基づいたフィットネスプログラムや、エクササイズ動画を展開することでパーソナライズされたフィットネスプログラムを提供している。元軍人という、起業家としては異色の経歴を持つ創業者のステファン・ファン氏は#Livebetterというハッシュタグが目指すゴールについて語ってくれた。


Chiyo Kamino

Communication Associate, Kyoto


軍の特殊部隊から起業家へ

ELXRを立ち上げたきっかけは何だったのですか?

私のいちばん最初のキャリアは軍人で、シンガポールの特殊部隊に16年間いました。その中でボランティア活動もしていて、地域の人たちにエクササイズを教えていました。そのあと軍隊を退役し第二のキャリアを模索しました。体力には自信があったのでそれを活かせるような仕事を考えたのですが、その頃はまだビジネスのマネジメントの知識はありませんでした。大規模なパーソナライズドフィットネストレーニングを提供する方法も、マーケティングのやり方もわかりません。まずは、フィットネスコーチが生徒となるクライアントを見つけ、そのクライアントをグループ化することでフィットネスコミュニティが成功できるようにこのビジネスを始めました。また現在は、COVID-19の影響で仕事ができないフィットネスコーチたちに、ELXRを使ってオンラインで活動できるプラットフォームを提供しています。

フィットネスコミュニティを構築するというアイデアはどのように思いついたのですか?

地域の人たちにトレーニングを教えていたときは、一度に50人、60人のような限られた人数しか指導できませんでした。そして出張などで私が不在のときには、リーダーがいないので人々はトレーニングができなくなってしまっていました。このことから、私以外にも多くのコミュニティリーダーが必要なのだと感じました。他のリーダーとつながることができればフィットネスコミュニティは成立します。そうすれば、私がいなくてもみんながうまくやっていけるのです。ただ中には個人のペースでエクササイズを望む人もおり、彼らはもっとカスタマイズされたプログラムを望んでいました。その多くは、よりパーソナライズされたトレーニングを必要とする人たちでした。彼らはフィットネスのためにより多くのプレミアムを支払ってでも、効果を得たいと考えていたのです。そこから、DNAテスト*を行うことにしたのです。

ELXRのサービスはACTN3遺伝子を判別するDNAテストを通して、自分の体に最適なトレーニング方法を提案するというものだ。ACTN3遺伝子は、瞬発力を生み出す筋肉の強さや耐久性に関わりがあることが知られている。ACTN3遺伝子のタイプを判別することで、自分が瞬発型なのか持久型なのかを知ることができ、より効果的なトレーニングが可能になる。

DNAのエキスパートを探すのは難しかったのでは?どのようにしてエンジニアを見つけたのですか?

ELXRがスタートしたとき、私はスパルタンレース(※国際的障害物レース)のレースディレクターも務めていました。アジアでレースを準備するために中国、香港、台湾に行き、日本も訪問しました。そのときに遺伝子検査サービスを持つジェネシスヘルスケアの社長に会い、DNAが一般向けのパーソナライズフィットネストレーニングに有用な方法であると説明したんです。そこから、ELXRは海外ヘルスケア企業で彼らとOEMスポーツキットに取り組んだ最初の企業となりました。これはELXRにとっても日本企業との初のコラボレーションでした。

数々のアクセラレーションプログラムに参加

事業を始めてから、苦労したことはありますか?

シンガポールでビジネスを始めたときは、コミュニティの形成に苦労しました。シンガポールの市場規模はとても小さく、人口はたったの500万人しかいないんです。そこで、神戸で行われていた500Startupのアクセラレーションプログラムに申し込んでみました。
500のプログラムに採択され、ブランドが少しずつでき始めると、Plug and PlayのInsuretechにも採択されました。そして、EXPOではInsuretechのベストインターナショナルスタートアップ賞も得ることができました。その後、シリコンバレーでの500スタートアップのプログラムに応募しているほか、今回こうしてPlug and Play Kyotoでのヘルステックプログラムにも採択してもらっています。
また神戸市からもたくさんの支援をいただいています。当社も日本で株式会社として法人化し、スタートアップ補助制度にも認定していただきました。そして味の素もパートナーになっていただきシンガポールで彼らと緊密に協力しています。さらに、シンガポール最大のスタジアムであるSingapore Sports Hubとも連携しています。

アクセラレータを使用する利点をどのように考えますか?

Plug and Playのアクセラレーションプログラムは、企業の担当者と直接つながり、3 – 5分のピッチをする機会を与えてもらい、その後各企業が私たちについてもっと知りたいと思ったときにより深く突っ込んだディスカッションができるので、とても便利だと感じています。これは特に、すでに実績や製品がある私たちのような企業が新規市場計画を行うときに非常に役立つと思います。

2月までは日本にほぼ毎月来ていたのですが、日本に来るたびに、1〜2週間過ごしていました。私たちは本格的に日本市場に参入したいと真剣に考えています。単にプログラムに参加して終わったら国に帰るようなものではありません。日本語のウェブサイトも作りました。EXPOまでには、日本語のモバイルアプリケーションも準備できている予定です。

神戸での滞在はいかがでしたか?

神戸には2ヶ月滞在しました。宿泊費を節約するために、ずっとゲストハウスに泊まって、松屋でご飯を食べていました(笑)。大変ではありましたが良い経験であり、日本のパートナーと一緒に働く良い機会でMBSにも取材されましたよ。その2ヶ月間のおかげでここ東京と神戸でとても良い友達ができました。大企業の方や日本のスタートアップと仲良くなったので、日本に来るたびに会って、VCや大企業についての情報を交換しています。ビジネス上のつながりに加えて友情は非常に重要だと思います。日本のビジネス文化や日本の消費者についてたくさんのことを学ばせてもらっています。

日本で100%子会社を設立。それだけ本気なのだとわかってほしい

日本での会社設立で特に苦労したことはありますか?

間違いなく資金調達で、日本で資金を調達するのは難しいです。まず、私たちは外国人です。第二に、私たちの実績のほとんどはシンガポールのものなので、同じビジネスモデルをローカライゼーションすることで日本に適用できるとはいえ、多くの投資家はまだあまり投資に前向きではないと思います。ですから、ELXRに目を向ける投資家が私たちを違った視点で見てくれることを願っています。一つめのポイントは、エンジェル投資家の島田享さんが既に投資してくれている点です。彼は日本で非常に有名な投資家です。第二に、ジェネシスヘルスケアや味の素のような日本企業とすでに提携関係がある点です。単なる外資系企業ではなく、日本企業との協業実績がある企業という点で安心感を与えられるのではと思います。しかし、私が一番にしたいのは、スポーツテクノロジー企業として、オリンピックのある時期に日本でサービスを開始することです。

ELXRのビジョンは何ですか?

日本の健康保険システムは非常に充実しているので、それに沿って事業を展開して行きたいです。日本のみなさんがよりアクティブで健康的な生活を送ることができ、ひいてはよりメンタルヘルスにも良い生活が送れる手助けができるようにしたいと考えています。引退したスポーツ選手がセカンドキャリアを見つける手助けにもなります。そして最終的には、東京でIPOを考えるかもしれません。それが私たちの究極の目標です。

ELXR Pte Ltdについてもっと知りたいという方は、ぜひWEBサイトをご確認ください。

https://the-elxr.com/

Plug and Play Japan の最新ニュースをNews Letter でお届けします!