すべての買い物体験に「延長保証」という安心を提供したい - 株式会社Kiva
2023/02/09
Eコマース企業向けの最短即日で導入可能な延長保証サービス「proteger」を提供するKiva。Plug and Play Japanは「全ての買い物体験に安心を提供する」という同社のビジョンに共感し、本年12月に出資をいたしました。
20代前半ながらKivaを起業した共同創業者の野尻氏に、事業立ち上げの背景、Plug and Play Japanの出資を受けた理由、経営において重視する点などについて伺いました。
Writer: Midori Abe 阿部翠
Communications associate, Plug and Play Japan
プロフィール
Interviewee: 野尻 航太氏
株式会社Kiva 共同創業者・CEO大学在学中に合同会社Puenteeを創業。千葉鍛治刃物の代理店事業を展開し、数多くの鍛治職人と飲食業界を繋ぐ。2019年よりベンチャー企業で新規事業開発室長としてコンテンツマーケティング、ECサイトを立ち上げ、事業売却までを経験。世界で使われるサービスを作りたいとの思いから、2020年株式会社Kivaを設立しECのための延長保証「proteger」を提供。
Interviewer: 馬 静前(Jingqian Ma)
Plug and Play Japan Ventures Principal大学卒業後、EYにて移転価格、海外進出実務及びM&Aに係るコンサルティング業務に従事。その後モルガン・スタンレーMUFG証券を経て、2019年にSBIインベストメントに入社し、フィンテック、AI、SaaS等の国内及び海外のベンチャー企業への投資業務に従事。リード投資家として複数の投資先の取締役を務めた。また、投資先に対するハンズオン支援を実施し、イグジットまで導く。なお、複数のCVCファンドの運用にも関与。2021年にPlug and Play Venturesに参画、Ventures Principalを務め、日本におけるベンチャー投資業務全般を統括する。
EC、店頭問わず多くの分野に延長保証を提供していきたい
--事業概要を教えてください。
安心して買える保証サービス「proteger」を提供しております。
主にEコマース企業向けに提供しており、最短即日で延長保証サービスが導入できるようになっております。エンドユーザーへは、追加保証料を払うことで商品が故障した際に無償で交換・修理してくれるサービスを提供しています。
--海外、特にアメリカでは成功した類似企業が複数あります。国内には競合がまだあまり存在していない現状についてどうお考えですか?
延長保証というビジネスモデル自体は20年以上前から存在していました。ECがクラウド化し、外部のサービスとAPI接続できるようになり、簡単にECサイトを立ち上げられるように市場環境が変化したことによって、我々の提供するようなソリューションが成功しやすくなりました。従って、今後は日本でもこのようなサービスを提供する企業が増えていくことが考えられます。
--家電量販店などのECも延長保証サービスの提供を開始しています。電化製品の延長保証サービスに関して、他の電機メーカーとの関係はどうなっているのでしょうか?
我々のサービスは、大前提として延長保証が提供されていない分野に提供するという点があり、利用してくださる企業は家電のD2C企業様が多いです。
他方、既に延長保証サービスが普及している分野の小売企業には、保証サービスのみを提供する会社と提携されているので、それらの企業様がprotegerを使うことにより作業効率が上がる点をアピールしていきたいです。
--今後、類似するサービスが登場した場合、Kivaはどのように優位性を出していきますか?
創業当初から、他企業様とのパートナーシップを重視しています。例えばECカートと密にパートナーシップセールスを結んでいます。
また、当社には創業から2年というアドバンテージがあります。すなわち、Kivaはスタートアップであるものの、類似の新興スタートアップ企業にはまだ無いであろう経験を積んでいます。
また日本の保険市場は閉鎖的で、保険業法などもあり現地パートナー企業を見つけることに苦労すると思いますので、海外の競合他社の進出は限定的かと思います。
国内外を見据えた成長戦略
--延長保証というマーケットをどう認識されていますか?
国内には約1兆5000億円の延長保証市場があり、今後も伸び続けると思います。延長保証は無理がないビジネスです。エンドユーザーからは保証料をいただき安心を買ってもらい、事業者にも保証料を分配し、当社にも利益が入るという三方良しのビジネスです。
また、お客様が大切にしているものを長く使えることも良い点です。同じ製品を長期的に使用できるようになるため環境面での持続可能性的にも優れています。
当社は既に全国に修理パートナー400拠点を作りました。家具・ジュエリー・鞄などありとあらゆるものが修理できるようになっています。ちなみに海外では、指輪のサイズ直しなどジュエリーの延長保証はごくふつうに行われています。
--成長戦略として海外マーケットへの展開の予定はありますか?
東南アジアは人口も多いですし競合も少ないので進出する可能性があると思います。ECマーケットの成長率は、日本では年8%程度ですがインドネシアでは年50%以上成長しているため、ぜひ進出したいです。
--昨年損保ジャパンと提携されましたが、今後も大手保険会社と提携する前提で事業を展開する予定でしょうか?
提携は、ブランドを作ることだと思っています。ブランド作りは数年ではできませんので、自社のみで辛抱強くブランドを醸成するか、他社にあるものをお借りするかのどちらかとなってきます。ここはビジネスでレバレッジがかかる部分ですので、既存の大手企業様と組む方が信頼性も高まり、ビジネスが円滑に進むと思っています。
--3〜5年スパンではどのような事業成長を考えていますか?
ECは大きく「公式オンラインストア市場」と「大手ショッピングモール市場」に二分されますが、公式のオンラインストアから進出し実績を作り、大手モールに導入してもらうことが目標です。
ECも一種の手段です。パンデミックの影響が落ち着けば実店舗の需要も戻ってくると思いますので、ECと実店舗両方においてサービスを提供していきたいです。D2Cはあくまで手段だと思っているので、物が流通する場所を全て押さえていくことは必須です。
--日本でのEC市場の成長率は年8%とおっしゃっていました。海外に比べ日本の店舗は店員の対応も交通アクセスも良いため、実店舗で買い物する習慣が根強く、今後もあまり変わらないと思います。従って、日本では店頭の延長保証も重要性が高いと思いますが、実店舗にサービスを提供するにあたって技術障壁はありますか。
そこまで大きな障壁はありません。またECにはただでさえ延長保証サービスがある商品が少なく、店頭だとAppleや大手家電量販店にしか延長保証サービスがありません。延長保証サービスがある商品がほとんどない状態ですので、我々がそこに進出できる可能性は大いにあると思っています。
会社経営も資金調達も、最重要視するのは「人」
--当社がKivaへ出資した際のプレスリリースへの反響も大きかったです。競合他社と比べた時の御社の強みを教えてください。
テクノロジー企業と言われますが、泥臭いこともやる、綺麗にやろうとしすぎない、能動的な人材を探しています。偶然や奇跡を起こすためには色々なことにトライしていくことが大切で、そのために人材にはこだわっています。数百人人と面接をして全員落としたこともあります。『Aクラスの人材はAクラスの人材しか採らない、Aクラスの人材はAクラスの人材しか連れてこない』と読んだことがあり、その通りだと思っているため厳しい採用をしています。
Kivaでは、最近「後世に語り継がれるコングロマリット企業にする」ビジョンを設定しました。まだ一事業しかやっていませんが、上場やM&Aも手段だと思いますし、第3者から評価されるためにはprotegerを皮切りに大きいことがしたいと思っています。企業の成功を左右する一番重要な要素は能動的な人材だと思っています。
--野尻さんは20代前半にもかかわらず、そのような考え方をなさっているのはすごいと思います。いつから起業について考えるようになったのでしょうか。
家族全員が公務員なので、18歳までは公務員になると思っていました。
起業家は一人も周りにいなかったものの、たまたまある本を読んで後世に残る何かを成し遂げたいと思うようになり、起業家という選択肢を真剣に考えるようになりました。
B2Bで起業すると、お客様、取引先様、投資家様が手を差し伸べてくれる時は嬉しく感じます。
--最後に、Plug and Play Japanからの投資を受け入れる決め手を教えてください。
人ですね。馬さんからは常に多くの連絡をいただき気にかけていただけたこと、とても話しかけやすかったことが決め手です。Kivaでコーポレートアクションがあった際など、細やかに連絡をいただけたことで、馬さんの本気度が伝わってきました。自分も期待に応えられるよう努力していきたいです。