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Portfolio Interview | 株式会社スペースエンジン

2020/07/13

株式会社スペースエンジン|D2C・オンラインブランドに特化した事業者向けの卸仕入プラットフォーム「orosy」を提供。2018 年 5 月の設立以降「すべてのひとに自由なリテールを」のミッションを軸に、自社でテナントを構え、ブランドは商品簡単に店舗で販売できるビジネスを展開。自社テナント以外へ販売店舗を拡大するためアプリ化「SpaceEngine」を提供、リリースから 8 ヶ月で 4000 ブランド 7 万商品が登録。より本格的な卸取引にも対応できる「orosy」へと 2020 年 6 月リニューアル。


Interviewee: 野口 寛士氏

株式会社スペースエンジン 代表取締役 

1991年生まれ、大学在学中米シリコンバレーを訪問。現地での一ヶ月間に及ぶテント生活の末、日米を含む投資家から 1.2億円の投資を受け学生起業。2018 年 3 月同社退任、5 月株式会社スペースエンジンを設立し、D2B ブランド専門の卸・仕入サービス「orosy」を運営。


Plug and Playとの出会いはシリコンバレー

ーー起業に至った背景を簡単に教えていただけますか?

野口:

学生時代に1社目の起業をしまして、SunBridgeというVCに投資して頂きました。1社目の会社では名刺管理、CRM系のサービスを提供していました。Plug and Playを知ったきっかけは、株主であるSunBridgeさんの拠点がシリコンバレーにあったこともあり、1年のうち、2、3ヶ月をシリコンバレーに滞在している中で、何度かPlug and Playに訪問したことがありました。2012年くらいでしょうか。
1社目を退任し、日本に戻って次何しようと考えてたときに、結婚した妻の実家がおもちゃ屋さんを経営しており、小売に興味を持ったんです。リテールのオフラインからオンラインでの売買の移行や様々な問題を見ている中で、この業界で私も何か役に立てないだろうかと思い、2018年5月に株式会社スペースエンジンの設立に至りました。Plug and Playが日本オフィスを開いたことは知っており、まず話を聞きに行ってみよう!となったのがきっかけです。

ーーPlug and Play Venturesはその時点ではまだ日本で投資を開始していなかったとのことですが、どのようにして関わりが始まったのでしょうか?

野口:

そうですね、最初にPlug and Playのアクセラレータープログラムの紹介を受けました。プログラムの選考期間中に福岡のBDash Campで再会し、ちょうど資金調達中だったこともあり、投資の検討をお願いしました。
私としても、1社目でシリコンバレーを訪問し、次も世界を目指せるサービスを作りたいと考えていたので、世界的なネットワークを誇るPlug and Playさんから出資を受けることは非常に魅力的で、投資の検討をお願いしました。

ーー投資に至った背景についても教えてください。

野口:

消費者の趣向の細分化が顕著になってきており、欧米でもD2Cブランドが成長するにつれてオフラインへ体験型店舗を展開する流れが構築されています。SpaceEngineは日本でもD2Cをはじめとする小規模ブランドにとって、擬似的に同じような場を提供できるサービスだと思い、非常に魅力を感じました。また、私自身がシリコンバレーでの起業経験を持ち、グローバルな視点でビジネスを展開していきたいという気持ちを持っている点も評価して頂けたと思います。

「全ての人に自由なリテールを」ミッションを軸にしたプロダクト作り

野口:

小 売 に興 味を持ったもう一 つ のきっか けは 、サンフランシスコ滞在中に、ShopifyなどのECサービス、kickstarterなどのクラウドファンディングで製品化、販売されているブランドが続々と店舗を出しているところを目の当たりにしたことです。様々な商品やガジェットが街に溢れ、街を歩くことが楽しかったと記憶しています。その背景にはb8taを始めとし、オフラインへの進出をサポートするサービスや環境があることに気が付きました。
それを日本に置き換えた、「銀座に自分のお店を構える、有名店舗に自分の商品を卸す」といったオフラインでの商売が自由にできる世界を想像し、魅了されました。ECサービスやクラウドファンディングが、ブランドの設立・販売を一般化したように、私もオフラインでの商売のハードルを何か少しでも下げることはできないかと考え、会社のミッションを「すべてのひとに自由なリテールを」と定め、いくつかの仮説検証のプロダクトをローンチしました。

ーーそのミッションを軸にして今まで数回ピボットしてきてるかと思いますが、どのような流れかお話いただけますか。

野口:

今までのピボットとして、1つ目は、弊社が店舗を構え、サプライヤーの商品を委託販売するモデル、b8taに似たモデルです。2つ目は、それをアプリ化し、私達のお店以外でも商品を販売してもらえるようにするモデル。そして3つ目がそれを大幅アップデートした「orosy」というサービです。
1つ目のサービスは、「そもそもオンラインブランドの方々はオフラインで商品を販売するニーズがあるのだろうか」とアメリカで目にした光景を日本でも再現できるか確認する必要がありました。そこで、阪急阪神不動産様にご協力頂き、「僕らが商業施設に店舗を構え、あなたの商品を委託販売します」とLPを作成したところ、2週間で400社以上の応募を頂き、そのニーズ・課題の大きさを改めて実感しました。
その後、いくつかポップアップショップや店舗の形式で僕たちが店舗を運営し、ノウハウが溜まったため、より広い範囲でサービスを提供するために、他の店舗でも同様に販売して頂けるように、その仕組みををアプリ化したサービスが2つ目「SpaceEngine」です。アプリ化するために開発は7ヶ月程度かかってしまいましたが、2018年5月にアプリをリリースしました。
airbnbのようなアプリで、委託販売を受け入れて下さる店舗が掲載されているので、どのような商品を委託販売して欲しいか入力し、店舗に販売を依頼する仕組みになっていました。リリースから大変多くの方にご利用頂き、8ヶ月で4,000サプライヤー、7万商品、全国800店舗のご登録を頂きました。

ーー短期間で勢いのある成長率ですね。その上で今回の事業ピボットにはどう繋がってくるんでしょうか。

野口:

「すべてのひとに自由なリテールを」やその課題に共感頂き、多くの方に期待してご利用頂きましたが、新たな課題も多く発生し、このまま運営し続けてはユーザー増加に対して提供価値が合っていないと感じ、サービスを停止し今回のリニューアルに至りました。ビジネスモデルに固執するよりも、課題解決に集中しました。

スペースエンジンから、「orosy」へ名前も変えることにした背景は何でしょう?

野口:

もともとは、委託販売を通じた「リアルな場所の体験」からスタートしましたが、委託販売は卸の一つの形態であり、委託取引に限らず本格的な卸取引にご利用頂けるように思い切って名前も変更しました。SpaceEngineだと空間やスペースをイメージされてしまうので。また、ピボットをした結果私達がたどり着いた先は、店頭の「体験・ストーリー」にコミットしているのではなく、あくまで店頭の品揃えを、仕入サービスと言う形で、消費者のニーズや生活シーンに合うよう刷新することでした。その意味でも今は「orosy」がとても気に入っています。

ーーミッションを軸にしているのがよくわかります。今回のリニューアルについてもう少し詳しく教えてください。

野口:

はい、先程お伝えしたSpaceEngineの課題は大きく2つあり、それを解決し、より本格的な卸取引にもご利用頂けるようになったサービスが今回の「orosy」です。課題の1つは、販売の申込み形式がサプライヤーから店舗への一方通行であったことです。多くのサプライヤー、店舗様にご利用いただければ、サービス内で様々なマッチングが発生する想定でした。確かに英会話教室と食品、アパレルと雑貨など数多くマッチングは発生しましたが、販売依頼の大半が有名店舗や、首都圏などの店舗に集中してしまいました。仕入を期待してご登録頂いた店舗様に十分に商品を供給することができていませんでした。そこで「orosy」では店舗からも商品・ブランドを検索できるようにし、双方向でアクションがとれるマーケットプレイスへと変更しています。
2つ目の課題は、販売形式を委託販売に限定していたことです。マッチングまでのハードルを超え、店舗で商品が販売されても、店舗のセールに合わせて自由に商品価格を変更できない問題、委託期間内に全ての在庫を販売する難しさなどもあり、両ユーザーが期待する売上があがらないケースもありました。
そこで「orosy」では、委託販売・卸価格での買取販売に対応し、より、両ユーザーに合った販売方法の提供を開始しています。「orosy」は、サプライヤー向けに卸売サービスという形、実店舗向けには仕入サービスという形で、委託取引に限らず本格的な卸取引にも対応可能な双方向のサービスへとリニューアルしました。

これからのビジョン

ーー店舗側に対しどのような商材を仕入れるべきかサポートするレコメンド機能などは実装はしていく予定でしょうか?

野口:

はい、店舗の販売状況に応じてご提案できるのは良い機能だと思います。SpaceEngineでは、委託販売形式だったこともあり、物販を初めてされる美容室やネイルサロンなどのサービス店舗様にも多くご利用頂いていました。そのようなケースでは店舗情報や周辺環境からどのような商品を販売するべきかご提案することもありました。また、どの小売店にも専属のバイヤーさんがいるわけではないので、「orosy」で蓄積したデータを基に、仕入をサポートできるサービスを提供することもおこなっていきたいと考えています。

ーー海外でも類似のビジネスモデルが注目されていますが、これからの意気込みはありますか?

野口:

海外で流行ったサービスの類似サービスが各地でも立ち上がることはよくあると思いますが、今回の僕らのサービスは、アメリカを始め、海外の類似のサービスもまさに今、同時期に立ち上がりました。スタートラインが同じであるのならば、彼らに勝てるようにサービスを展開したいと思っています。

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