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Portfolio Interview | 株式会社digzyme

2021/08/11

Portfolio Interview| 株式会社digzyme
酵素の持つ可能性を掘り起こす。

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紀元前から人類が利用してきた酵素。その反応を利用した環境負荷の少ない物質生産方法がバイオプロセスとして注目されています。目的に応じた酵素反応経路を見つけ出すテクノロジーを持つdigzyme。社会を変える触媒となれるか、東京工業大学発のバイオインフォマティクス・スタートアップにインタビューしました。


渡来 直生 氏

Co-founder, CEO

2019年、東京工業大学博士課程3年在学中にdigzymeを共同創業、代表取締役に就任。2020年博士号取得。東工大の学部時代は研究室所属前に国際合成生物大会iGEMにて金賞・Information Processing部門賞受賞。大学院では大規模メタゲノム・シングルゲノム解析、進化解析、シミュレーションなど複数テーマと、腸内細菌ベンチャーで創業期の開発を経験。


ーーまずは簡単に起業の経緯をお聞かせいただけますか?

2019年に会社を設立したんですが、起業自体を考え始めたのはその半年くらい前、博士課程2年の終わり頃でしたね。僕自身はもともと基礎研究がやりたくてアカデミアに進むつもりだったので、あまり就職ということは考えていなかったんです。
学部4年から博士2年にかけてメタジェンという大学発スタートアップで解析のアルバイトをしていました。その経験を通して、我々が持っている知識をいかに社会に対して還元していくか、社会に直接的に研究成果を活かせるような方法はないだろうかと考えていました。自分が社会の中で一番役に立てる役割を考えた時に、アカデミア一本でいくよりも産学連携をした方が良いんじゃないかと。

digzymeでやっている酵素探索というのは、技術的にも使いやすくて応用がきくにもかかわらずノウハウや知識が活かされていないものだったので、自分が手をつけてやるならばこの分野かなと思い起業しました。それまでの共同研究を通して、企業の方がどのようなポイントで困っているのかということを理解していたというのもあります。

ーー事業内容(酵素遺伝子の探索 「digzyme Moonlight」)について詳しく教えてください。

一言でいうと、「遺伝子を発掘する」ということです。『遺伝子資源』と呼ばれるくらい世の中には様々な遺伝子情報があるのですが、その遺伝子を解析して、利用されていない遺伝子の中から有用な遺伝子を探してくるという事業をやっています。なので、遺伝子資源が地下に埋まっているイメージがあるので、それを掘り起こしてくるという意味で「dig(掘る)」と「enzyme(酵素)」という言葉を掛け合わせてdigzymeという社名にしました。

Moonlightというサービス名に関しては、酵素遺伝子の働き方をイメージしたネーミングです。酵素というのは特定のモノを変換する役割を持つ分子なんですね。例えばAという物質からBという物質へと変換できる酵素があるとします。基本的に酵素は1つの物質に対して1つだけ、AからBに変換する機能だけしか持たないのですが、まれに似た物質、A’からB’へも変換できるという機能を副次的に持ち合わせている場合があるんですね。この現象をMoonlightingと呼んでいます。「月の光の下で夜働く=副業」という意味です。私たちの技術はこのMoonlightingしている遺伝子を探し出すものです。

(▼画像提供:digzyme)

モノを作る時には、それをどう作りどう廃棄するかというのを設計しなくてはいけないんですが、今世の中にある酵素だけで作りたいものを合成したり分解したりするのは難しい。例えばペットボトルなんかは人間が作り出した物質なので自然に分解することはできないと一般的には言われています。一方で、ペットボトルのリサイクル場から発見されたIdeonella sakaiensis(イデオネラ・サカイエンシス)という微生物に、PET(ポリエチレンテレフタラート)を分解する機能があることが2016年に発表されました。この細菌がなぜプラスチックを分解できるかというと、別の目的で使っていた、あるいは特定の機能を持たない酵素の遺伝子を持っていて、たまたまそれがPET分解にも使うことができたために、ペットボトルリサイクル場で生き残って進化したと考えられています。このようにMoonlightingというのは酵素の重要な機能の一つなんですね。

とはいえ、そのような発見にも10年くらいかかったので、我々の技術ではそういった酵素をより効率的に探索しようとしています。新しい物質を作った時に、それを分解できる酵素を見つけるために廃棄場を作って何十年も待つわけにはいかない。そのため、今ある遺伝子実験の中から、「この酵素だったら反応がありそうだ」という候補を見つけて絞り込むということをやっています。

ーーマテリアルズインフォマティクスやゲノム解析は非常に注目が集まっている領域ですが、特に目標としているスタートアップや企業はありますか。

我々の技術はプラットフォーム型のビジネスなので、似たようなところでいうと、ペプチドリーム社は目標としている一つではありますね。自分たちのプラットフォームを成熟させていきながら、それを使ったプロダクトの共同研究も進めていくというビジネスのスキームはかなり参考になりますし、あれくらいの規模になれたら良いなと思っています。

バイオ業界でいうと、プラットフォーム型のビジネスでZymergen社などはベンチマークとして取り上げることが多いです。日本で同じレベルのことをやろうとすると、市場がそこまで大きくないので頭が高いと思われそうですけど、ビジネスモデル的には彼らのような形を目指しています。うちが戦っていくためには、資金面などの問題ももちろんあるんですけど、一つの領域に特化して進めていけば技術には自信があるので、そこでは絶対に勝てると思っています。

ーー海外展開も視野にいれておられるということですが、進出先としてどの地域をイメージされていますか。

市場としてはやはりアメリカが一番大きいです。ただ我々がやっているバイオという事業自体が環境価値を高めるものであり、その点で言うと環境意識がより高いのはヨーロッパなので、ヨーロッパも可能性としては考えていますね。

日本では「環境負荷を低減する」ということに対してのバリューがまだ認識されていないと感じています。我々の事業が大きくなるのはまだ数年後ですけれども、その頃には環境に対する意識も追いついてくるのかなと思っています。

ーー貴社の技術は様々な分野へ応用が可能かと思いますが、特にどのような業界/用途を目的とした問合せが多いですか? 

現状の問合せでいうと、すでにバイオ系の事業を経験している、プロダクトを持っている化学メーカーが多いです。あとはたまに食品メーカーですね。

何を作るかという課題に関しては、石油化学製品に関する問合せがいちばん多いですね。バイオプラスチックというと、「バイオプロセスで作ったプラスチック」と「バイオで分解できるプラスチック」と2つありますが、両方とも問合せは多いです。

(▼画像提供:digzyme)

ーーパートナーとして、今後どのような企業と取り組んでいきたいですか?

天然物も作れるし、今まで作り方がわからなかったものも作れるというのが酵素探索の一番の強みです。医薬品メーカーや医薬品原料メーカーもパートナーとしては考えているのですが、問合せはまだないですね。対面でお話しすると「すごく面白いですね」と関心を持っていただけるのですが、そこから先になかなか進まなくて、そこは課題でもありますね。
医薬品自体を製造している製薬企業だと、「有機合成で作れるなら作った方が良いけれど、必須ではないよね」という温度感なので難しいです。一方で、医薬品原料として天然物由来の原料を使っているメーカーだと、供給に関して絶対に需要があると思うので、そこに入っていきたいというのはありますね。

ーーPlug and Playからの出資を受けると決めた理由は何ですか?

決め手は投資担当の大岩さんです…というと変ですかね(笑)。もちろんそれだけではなく、海外進出を最初から考えてはいたのですが、日本法人がいきなり海外展開するのは難しいと思うんですよ。うちはまだ技術的には構築途中で、「これが世界一です」と証明できるだけの数値をまだ出せていないので。まずはPlug and Playのグローバル・ネットワークを活かして、PoCレベルの共同研究などから海外企業とつながっていければ良いかなと思っています。

ーー今後のビジョンをお聞かせください。

もう少し、バイオ生産を一般的なものにしたいなと思っています。日本でバイオ生産品が明示的に使われている製品は少なくて、たとえばPHAというバイオプラスチックがあるんですが、コンビニのレジ袋に数%使われているくらいのレベルなんですよね。価格が高いのであまり使われていないというのが現状なんです。経済的にもペイするような物質生産の方法をつくりあげていきたいというビジョンがありますし、それによってより多くの業界の方からバイオ生産をしたいと思っていただけるようにしていきたいです。そのためのプラットフォームを今作っているという状況ですね。

今後10〜20年くらいで、我々が日常で使っているものの何割かはバイオ製品になっていくだろうと思っています。そこの先駆けとしてリーダーシップを発揮して、海外でも我々の技術が一番だと頼られるような存在になれたらいいなと思っています。

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