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【前篇】オープンイノベーションを促進する2つの要素

2021/11/15

【前篇】オープンイノベーションを促進するうえで優先的に取り組むべき2つの要素とは

企業が持続的に成長し続け、新たな市場機会を創出するための取り組みとして、注目が集まったオープンイノベーション。各企業の特色を活かしたイノベーション活動ををしてきた中で、既存事業との戦略シナジーや、人的リソース不足、社内関係者との協力体制の構築など、さまざまな課題が見えてきた今、オープンイノベーションに取り組むうえで特に注力すべき領域や、活動をスムーズに進めるためのヒントについて、Plug and Play Japan COO 内木遼とPlug and Play Japan New Materials Director 新井成実にインタビューしました。


内木 遼(Ryo Naiki)

執行役員 COO

エネルギー会社での海外プロジェクト、総合商社での事業開発・事業投資を経験。コロンビア大学でMBAを取得。デロイトトーマツベンチャーサポートのシリコンバレー事務所の事業開発統括として、金融、製造業等における新規事業開発コンサルティングに従事。事業開発戦略策定、ビジネスモデル考案、ベンチャー評価・交渉・提携支援、複数の実証実験の設計・実行等に携わる。Plug and Playの日本オフィスの立ち上げに参画し、東京に次いで京都・大阪に拠点を開設するなど、イノベーションプラットフォームの拡大を牽引している。


新井成実(Narumi Arai)

Director, New Materials

エンジニアとしてSONYに新卒入社し、本社R&D部門でのリチウムイオン電池の研究開発に2年間、海外電力会社とのJV設立及び現地での蓄電システム開発に3年間従事。帰任後は中期計画策定PJのリーダーとして事業部の3ヵ年計画を作成、実行を推進。その後日系シンクタンクに移籍し、AI・モビリティ・ロボティクス等の先進テーマに関わる、新規事業 / オープンイノベーションの戦略策定・実行支援コンサルティングに3年間従事。2021年よりPlug and Play Japanに参画。


ーー大手企業の新規事業創出やオープンイノベーションを支援してきた中で、オープンイノベーションを取り巻く環境の変化や動向について教えてください。

内木:

3〜4年前は経営層や上司から指示を受けて、十分に目的が明確にならないままオープンイノベーションに取り組まなければならず、アクセラレータープログラムを活用しながら模索するフェーズにある企業担当者が多かったかと思います。活動を続ける中で、現在では限定的な活動でイノベーションを推進するには限界があることが見えてきて、全社的なオープンイノベーションへの理解促進や、有機的に他の事業部も巻き込む重要性を感じ始める企業が増えてきたように思います。
実際に、当社の企業パートナーからいただく社内研修の依頼数も増えており、国内におけるアクセラレータープログラム数も、4年前と比較すると約3倍に増えています。

新井:

ガートナーのハイプ・サイクルではないですが、オープンイノベーションに対する「過度な期待」のピーク期から、現在は実際に協業する難しさが見えてきて「幻滅期」に入り、浮かび上がってきた課題をどのように乗り越えていくかに論点が置かれるようになってきたかと思います。
米国企業と比較すると、スタートアップ協業において日本企業はファイナンシャルリターンよりも戦略シナジーを重視している大手企業が多い印象です。
そこが1つ、協業のハードルを引き上げている要因であるように思います。

特に国内産業の強みでもあるメーカー系企業の場合、シナジーを前提とすると協業の出口が狭まりやすいため、協業に発展しにくいもしくはスタートアップの価値を引き出しきれないケースが散見されます。

一方で通信系・ネット系企業などは他業界を横串で通しているために協業の出口が広く、スタートアップとの連携が比較的スムーズに進展しやすい傾向があると感じます。また、この領域ではスタートアップと関わる主目的としてファイナンシャルリターンを位置付けているCVCもいます。もちろん戦略シナジーは重要ですが、より広く長期的な視点でスタートアップとの協業目的を捉え、small winも含めて成果を可視化していくことが幻滅期を超えるためには必要だと考えています。

ーーオープンイノベーションを促進するうえで必要な要素はあるのでしょうか。

新井:

新規・既存事業問わず、大手企業がスタートアップとの共創を通じてイノベーションを起こすために具備すべき要件は複数あります。網羅的にあげるとすれば、ビジョン・戦略、組織、人材、制度、業務プロセス、外部ネットワーク、文化の7つの観点が考えられます。

もちろん全部の要素を兼ね揃えることが理想的ですが、現実的には優先順位を付けて戦略的に取り組むことが重要です。優先度として、まず「人材」は上位にあげられます。オープンイノベーションや新規事業のような不確実性の高い取り組みにおいて、「推進担当者のドライブ力」は精緻な戦略よりもよほど成果を左右する要素だと考えています。具体的には、社内外のキーマンを巻き込みながらルールに明記されていないグレーゾーンも含めて粘り強く歩を進めることのできる人材のイメージです。

「トップのコミットメント(ビジョン・戦略)」も同じく上位にくる要素です。
オープンイノベーションは長期にわたり、かつ必ずしも成果が見えやすいわけではないので、経営層のお墨付きを与えて推進担当者が活動しやすい雰囲気を醸成することが肝要です。また、明確なビジョンなしには効果的な戦略は組めません。具体的な戦略仮説については取り組みの中で柔軟に更新していくべきですが、少なくとも「中長期的視点でイノベーションに注力する」という大枠の方針はトップに明言いただきたいポイントです。

内木:

ビジョンや目的を明確にすることが大事な一方で、難しいのはバランスです。「知の深化」と「知の探索」という2つの異なるモードを両立させる「両利きの経営」の観点で考えると、目的を明確にしすぎると探索が限定的になってしまい、あまり広がりをもたせられなくなることもあります。
そのため企業によっては、オープンイノベーションの取り組みを進めていくうえであえてKPIを設定せず、探索にふりきっているところもあります。
また人材面においては、大手企業はジョブローテーションで主担当者が変わることも多々あるため、継続的にドライブ力のある人を置き続ける難しさはあります。そのため、人事異動がなされてもブレないビジョン設定とドライブ力のある人材の配属・育成という点で、経営レベルでの強いコミットは非常に重要だと感じています。

ーー制度や文化醸成においては、どのタイミングで取り組むべきでしょうか。

内木:

社内文化の醸成という点では、全社に広く浸透させていくには時間がかかります。だからこそ、小さくスタートして成功事例を重ね、それを徐々に周りに伝えてイノベーション活動に対する理解を促すことで、最終的に文化として行き渡っていくようになると思います。

新井:

同感です。全社的な文化や公式な制度への梃入れについてはイノベーション活動の後半に位置づけられると思います。大手企業の文化や制度は、これまでの競争力の源泉であった既存事業に適するように形成されていることが多い一方で、イノベーションに適した文化や制度はほとんど真逆です。まだ売上と実績に乏しい新規事業に合わせた文化・制度を全社的に適用することは非現実的と言えるでしょう。内木さんの言葉を借りると「小さくスタート」するのが定石です。

ーー小さくスタートするにしても、担当者が情熱を持って取り組めるような領域を見つけられずにいる場合、どうすれば良いのでしょうか。

内木:

いかに自分が熱量を持って取り組めるプロジェクトにできるかが重要です。「Will(やりたいこと)・Can(やれること)・Must(会社から求められていること)」の3つの円が重なった部分を見つけ、テーマを設定することが一番かと思います。
やりたいことがあって入社したわけですから、その情熱を起点に深堀りしていき、コミットできる分野を見つけたら、その分野にいるスタートアップと話してみたり、他企業と意見交換をしたりする中で、だんだんアイデアが研ぎ澄まされていくはずです。

新井:

それが難しい場合は、「走りながら考える」というアプローチも有効です。まずは重く考え過ぎずに仮方針を設定し、スタートアップとの協業検討や他大手企業との情報交換を経る中でアジャイル的にアップデートしていくという考え方です。そのサイクルを行うに際してスタートアップ・エコシステムにおけるネットワークが乏しい場合は、ベンチャーキャピタルやアクセラレーター等の業界スペシャリストに相談することも有効な手段として挙げられます。

<前編まとめ>

・4年前と比較し、国内におけるアクセラレータープログラム数は約3倍に増加。
・目的が明確でなかった課題模索フェーズから、実際に協業することで顕在化した課題をどのように乗り越えていくかという課題解決フェーズにシフト。
・オープンイノベーションを促進する7要素は「ビジョン・戦略」「組織」「人材」「制度」「業務プロセス」「外部ネットワーク」「文化」。
・「人材」と「トップのコミットメント(ビジョン・戦略)」は優先的に注力すべき領域。
・全社的な「制度」や「文化醸成」は、イノベーション活動の後半に取り組むべき。
・より広く長期的な視点でスタートアップとの協業目的を捉え、小さくスタートし、成果を可視化していくことが重要。
・熱を注げる領域を見つけるためには、「Will(やりたいこと)・Can(やれること)・Must(会社から求められていること)」の3つの円が重なった部分を見つけ、テーマを設定することが重要。
・重く考え過ぎずに仮方針を設定し、スタートアップとの協業検討や他大手企業との情報交換を経る中でアジャイル的にアップデートしていく方法も有効。

後編は「オープンイノベーションを進めるうえでのボトルネックと解決法」について触れていきます。

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