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【注目のスタートアップイベント10選】リアルな出会いがイノベーションを生む

2024/02/22

短期間での成長をめざすスタートアップにとって、有益なパートナーとの出会いは必要不可欠です。一方、多種多様な課題に取り組まなければならない大手企業や行政機関なども、オープンイノベーション実現のために優秀なスタートアップとの出会いを必要としています。

インターネットが発達した今、マッチングの手段は世の中にあふれています。そんな現在でも効果を発揮するのは、やはり人と人が出会い、「知」の交流が生まれるオフラインイベント。最近ではスタートアップと投資家や事業会社、公的機関、アカデミアが出会い、学びと交流の機会を提供するカンファレンス系のイベントが国内外で数多く行われています。

そこで今回は、国内および海外の主なスタートアップイベントを紹介するとともに、参加するメリットや今後の潮流について解説します。

 

(*イベントの情報は、本記事執筆時点のものになります。詳しくは各イベントの公式サイトをご確認ください)


Hideaki Fukui

Writer


目次

1. スタートアップイベントの概要
2. スタートアップイベントに参加するメリット
3. 代表的なスタートアップイベント(国内編)
4. 代表的なスタートアップイベント(海外編)
5. 潮流を読み解くキーワード
6. イベントを事業拡大のツールに

1. スタートアップイベントの概要

小規模のものも含めると、今や数えきれないほどのスタートアップイベントが世界各地で行われています。コロナ禍で中止やオンライン化を余儀なくされたイベントもありますが、多くは2023年頃からオフライン(対面)開催を再開しています。その趣旨やスタイルは多岐にわたり、自社に合ったイベントを選ぶのは容易ではありませんが、主に「主催」「形態」「分野」で分類することができます。

主催
2024年現在、民間企業や政府機関、地方自治体など、さまざまなプレーヤーがスタートアップイベントを主催しています。民間企業の業種もVCやメディア、コンサルティング企業など幅広く、それぞれが特徴あるコンテンツを打ち出しています。複数の企業や自治体などがコンソーシアムを組む実行委員会形式で行われる大規模なものもあります。

形態
イベントの形態としては、セッションやピッチ、展示、ワークショップ、商談ブースの提供など、あらゆるコンテンツが一堂に会する「カンファレンス」と呼ばれるものが特に注目を集めます。その他、ビジネスアイデアを競うコンテスト形式のイベントや、アクセラレーションプログラムの成果を発表する「デモデイ」などがあります。いずれもスタートアップが自社のビジネスをアピールし、資金調達や協業につなげる貴重な場となっています。

分野
イベントの中には特定のビジネスジャンルに特化したものもあります。特に近年ではグローバルトレンドであるグリーンテックやヘルステック、AI、宇宙開発などをテーマとしたイベントが数多く行われ、各分野の成長と発展を促すとともにマーケットを広げる一翼を担っています。

このようにスタートアップイベントの種類も多様化しており、参加を検討する際には自社へのメリットやシナジー効果を見極めることが重要と言えるでしょう。

2. スタートアップイベントに参加するメリット

では、スタートアップイベントへの参加には、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。スタートアップ、大手企業それぞれについて見てみましょう。

スタートアップ側のメリット

資金調達のチャンス
多くの場合、スタートアップイベントにはVC・CVCの投資担当者など、金融機関のキーパーソンが投資先を探しに来ています。資金調達を検討しているスタートアップにとっては、投資家と出会うチャンスに恵まれた場となります。

イベントによってはVCとの壁打ち企画や、投資家に向けたピッチ大会、マッチングを目的としたアフターパーティーなどのコンテンツを設けており、スタートアップと投資家との出会いを促しています。これらの機会をうまく活用することで、資金調達のプロセスが一気に前進する可能性があります。

ネットワーキング
資金調達と並んで重要なのが、事業を加速させてくれるパートナーとの出会いです。多くの場合、イベントには大手企業や自治体、公的機関が参加しています。そこでの出会いがオープンイノベーションや実証実験につながるかもしれません。多くのスタートアップイベントには、ピッチや商談コーナー、名刺交換会など、ネットワーキングを促す場がありますので、うまく活用して自社の成長につなげましょう。

認知獲得
広告に予算をかけるのが難しいスタートアップにとって、ピッチへの登壇やブース展示などを通じて自社の露出を増やすことはとても有益です。大型のカンファレンスになれば数千人から1万人規模の来場者が見込める上、マスコミが取材に来ることも少なくありません。

イベントへの参加を認知獲得につなげるためにも、登壇や出展の予定がある場合は事前にプレスリリースなどで発信しておくと良いでしょう。

大手企業側のメリット

有益な協業パートナーとの出会い
イノベーションを通じた持続的な成長を模索する上で、革新的な技術やノウハウを持つスタートアップとの出会いは至上命題と言えます。このような出会いを期待する大手企業にとって、スタートアップイベントは絶好のチャンス。なぜなら来場するスタートアップ側も主にネットワーキングを目的としているため、初対面でも関係を深めやすく、具体的な商談に発展する可能性が高いためです。有益なパートナーとのマッチング確率を上げるためには、目的に合わせて参加するイベントの形態や分野を精査することが肝要です。

新たな知見やアイデアの獲得
スタートアップイベントには、他の大手企業や行政機関の上層部が来場することも珍しくありません。また、大規模なカンファレンスになると、経営者や大企業幹部だけが入れるVIPラウンジが設けられることもあります。このような場を活用することにより、業界のキーパーソンだけが知る有益な最新情報にアクセスすることができます。

プロモーション効果
カンファレンス系のイベントでは、セッションへの登壇を依頼されることもあります。また、スポンサーとなってブースを出展したり自社のプロダクトをイベントに組み込んだりすることもできます。いずれの場合も、自社の活動を広くアピールするチャンスで、大型のイベントになるほど高いプロモーション効果が期待できます。

目的を明確に

スタートアップ、大手企業ともに、イベントへの参加を検討する上で重要なのは、目的を明確にすることです。提携先を探したいのか。販路を開拓したいのか。出会いたいパートナーの業種は何か。これらの目的をしっかりと見定め、事前にイベントの趣旨や形態を精査しておくことが、イベント参加を成功させる鍵です。

サイドイベントにも注目

大型のカンファレンスにおいては「サイドイベント」も忘れてはなりません。これはイベント開催日の夜などに、主催者以外の企業や参加者コミュニティが自主的に企画・運営するものです。会場の近隣のイベントスペースや店舗を利用して、ハッカソンやワークショップ、ネットワーキングイベントなどが行われます。

海外のビジネスシーンでは以前からこのような文化がありましたが、近年は日本でも多く見られるようになってきました。国内最大級のカンファレンスとなった「IVS 2023 KYOTO」では、3日間の会期中に150ものサイドイベントが行われ、IVSで生まれた熱気をさらに増幅させる場となりました(*1)。このようなイベントに参加することもネットワークを広げる上で効果的です。

CES2023でPlug and Playが実施したネットワーキングイベントの様子

3. 代表的なスタートアップイベント(国内編)

ここからは、主なスタートアップイベントをピックアップ。毎年多くのイベントが全国各地で開催されますが、その中でも代表的なものを厳選してご紹介します。

 

City-Tech Tokyo

東京都を中心に主要な経済団体がコンソーシアムを組んで主催する国際スタートアップイベント。持続可能な都市づくりを目的に、インフラや環境、ヘルスケアなどのテーマにフォーカスしているのが特徴です。バラエティ豊かなセッションに加え、スタートアップや大手企業による展示、セミナーなどが行われ、「Tokyo」が主体となって世界のオープンイノベーションを牽引する場となります。

注目のイベントは、持続可能な都市の実現に挑むスタートアップが世界中から集まる「City-Tech Challenge」。2023年には優勝賞金1,000万円をめざして35の国・地域から300社以上のスタートアップが応募し、当日はセミファイナルに残った20社が熱いピッチを繰り広げました(*2)。

 

GROWTH INDUSTRY CONFERENCE

スタートアップ支援を手がけるフォースタートアップスが主催するカンファレンス。「日本のスタートアップエコシステムをグローバル基準へ」をテーマに、成長産業に特化したコンテンツを幅広く提供しています。リアルとオンラインのハイブリッド形式で行われ、セッションの一部は無料でオンライン視聴することも可能です。

目玉イベントのひとつがピッチコンテストの「GRIC PITCH」。総勢100名以上の審査員によるハイレベルなジャッジに加え、英語に同時翻訳されて全世界へ配信されるというスケールの大きさで起業家たちの闘争心をかきたてます。また、国内外から数十社の投資家や事業会社が集まり、高速の壁打ちで事業をブラッシュアップする「SPEED DATING」も注目コンテンツのひとつです。

 

イノベーションリーダーズサミット(ILS)

起業家の支援を行う経営者組織であるSEOU会、および起業支援プラットフォームを運営するプロジェクトニッポンが主催する、大手企業とスタートアップのマッチングイベント。2014年にスタートしたILSは、経済産業省後援のもとアジア最大級のオープンイノベーションイベントに成長。250社以上ものスタートアップピッチや、100社以上の大企業のブース展示など、大規模な企業間交流によってイノベーションが生まれる場となっています。

このILSを象徴するコンテンツが、国内外のVCなどが推薦する有望スタートアップと大手企業がイノベーション創出を目的に商談を行う「パワーマッチング」。600社以上のスタートアップと100社以上の大手企業が参加し、会期中に約3,000件の商談が行われます。商談の約4割が協業に発展するという成功率の高さも注目の的です(*3)。

 

IVS

2007年から行われている国内最大級のスタートアップカンファレンス。グローバルVCの日本拠点であるHeadline Japanが主催しています。かつては起業家や経営幹部などの限られた人だけが参加できる招待制でしたが、2023年からチケット制に変更。国内外から10,000人を超える来場者を集め、スタートアップエコシステムの活性化に大きく貢献しました。

250を超えるセッションをはじめ、多数のコンテンツが繰り広げられるIVSの中でも目玉企画なのが「スタートアップの登竜門」とも言われる「LAUNCHPAD」。厳しい予選を勝ち抜いた精鋭たちによるピッチコンテストで、過去の大会からは上場やM&Aで注目を集めた企業も生まれています。

また、最先端のWeb3ビジネスに特化した「IVS Crypto」も注目コンテンツのひとつで、日本最大級のクリプトカンファレンスとして海外からも多くの参加者を引き付けています。

 

Summit

Plug and Playでは、国内外のスタートアップを大手企業とのマッチングを通して成長させる3か月間のアクセラレータープログラムを実施しています。その集大成となるイベントがSummitで、プログラム関係者が一堂に会し、多くの交流が生まれます。

Summitでは、プログラムに採択されたスタートアップによる成果発表に加え、各業界の有識者を交えたトークセッション、企業パートナーの最新事例の発表などを実施。会場投票によるスタートアップの表彰や、プログラムに貢献した企業パートナーへのアワード贈呈などが行われます。

4. 代表的なスタートアップイベント(海外編)

次に海外のイベントをご紹介します。現在、日本でも多くのビジネスカンファレンスが開催されていますが、もとは海外で行われていたイベントを日本で展開したものも多くあります。最先端のトレンドを知る上で、海外のイベントに目を向けておくことも重要です。

CES(アメリカ)

ラスベガスで開催される最先端テクノロジーの見本市。毎年ニュースで報道されることもあり、日本でもよく知られたイベントです。注目は、先進的な技術を持つスタートアップが集まる「Eureka Park」と呼ばれるエリアで、過去には日本からもJETROが合同ブースを出展しています。Eureka Parkには次なるユニコーン企業を求めて投資家が集まり、総額100億ドルを超える調達が行われます(*4)。

 

SLUSH(フィンランド)

フィンランド、アールト大学の学生組織によって2008年に生まれたイベント。今や北欧最大級のカンファレンスに成長し、世界各地からスタートアップ創業者が集まります。また、世界中の投資家が注目するイベントとしても知られ、2023年には3,300もの投資家・機関が参加。多くの資金調達ディールが繰り広げられました。

 

TechCrunch Disrupt(アメリカ)

主にテクノロジー系のスタートアップ情報を扱うニュースサイト、TechCrunchが2010年より主催するカンファレンス。ピッチコンテストの「STARTUP BATTLEFIELD」が有名で、過去にはDropboxなどの世界的なスタートアップを輩出しました。

 

VIVA TECHNOLOGY(フランス)

パリで毎年開催される、ヨーロッパ最大級のカンファレンス。170以上もの国と地域から約15万人を呼び寄せ、関わるスタートアップは1万社を超えます。2023年にはイーロン・マスク氏が登壇したことでも注目され、パリが世界最先端のイノベーション創出拠点へと姿を変えます。

 

Web Summit(ポルトガル)

リスボンで開催されるITテクノロジーにフォーカスしたカンファレンス。2023年には150以上の国と地域から7万人超が参加。最先端のITソリューションを提供するスタートアップと投資家、大手企業、政府関係者などが集結し、グローバルな交流が生まれました。近年はリオデジャネイロなど、他の都市でも姉妹イベントが開催されています。

5. 潮流を読み解くキーワード

ここまで、国内外の代表的なスタートアップイベントを紹介してきましたが、これらのイベントも時代に合わせてコンテンツや開催形式をアップデートしています。現在、そして今後のスタートアップイベントの潮流を、3つのキーワードで読み解いてみましょう。

 

ハイブリッド

コロナ禍によってリアルイベントが制限される中、セッションをオンライン配信するイベントが増加しました。そして、コロナの制限が解除された今、リアルとオンラインを組み合わせたハイブリッド形式のイベントが主流になっています。会場が遠かったり、海外のイベントだったりして参加しづらい場合でも、オンライン配信がないかどうか、ぜひチェックしてみてください。

 

リアルタイム翻訳

今や日本でも国際的なスタートアップイベントが数多く行われ、海外のゲストが英語で行うセッションも増えています。そんな中、最近の傾向として増えているのがAIによる同時翻訳。英語のセッションを音声認識し、会場のスクリーンにリアルタイムで字幕を表示します。言語の壁を越えて、誰もが世界中のイベントを楽しめる時代が目前に迫っています。

 

コミュニティ形成

ITを活用したイベントツールが数多く登場したことで、参加者どうしのコミュニティ形成が活発になっているのも近年の傾向です。会期中のリアルなネットワーキングだけでなく、開催前からDiscordやSlackコミュニティで交流を深めたり、興味のあるテーマに応じて参加者どうしをマッチングするアプリを取り入れたり、さまざまな出会いの形が生まれています。

6. イベントを事業拡大のツールに

国内外で数多くのスタートアップイベントが開催される現在。スタートアップにとっても、大手企業にとっても、事業成長の重要な足がかりになることは先に述べた通りです。自社のスタイルに合ったイベントを普段からチェックし、ぜひ成長につなげてください。

Plug and Playでは、優秀なスタートアップとの出会いにつながるイベントの開催や、そこでのマッチングをサポートしています。またグローバルネットワークを活用し、海外のイベント参加の同行や現地ミーティングのアレンジも可能です。ご興味のある方は、こちらよりお気軽にご相談ください。


*1) 「国内最大のスタートアップカンファレンス『IVS2023 KYOTO / IVS Crypto 2023 KYOTO』が終幕」PR TIMES 2023年7月20日


*2)  「大企業とスタートアップのマッチングイベント『ILS2023』大手企業参加【先行申込】期限まであと4日!」PR TIMES 2023年8月22日


*3) 「[City-Tech.Tokyo] 実績報告」 2023年3月29日


*4)「MORE ABOUT EUREKA PARK」CES – STARTUPS

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