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東京センチュリーの事例に学ぶ、スタートアップとの共創において大手企業が意識すべきこととは?

2022/07/26

Plug and Play Japanでは2022年5月23日にハイブリッド方式でのコーポレートキックオフデーを開催しました。コーポレートキックオフデーでは年に2度、企業パートナーを対象に、Plug and Play Japanからのアップデートおよび今後の開催予定イベントのご紹介、協業事例のパネルディスカッション、そして新規企業パートナーをご紹介しています。ハイブリッド方式での開催は2年ぶりでしたが、新たなVertical(業界テーマ)の立ち上げや新規企業パートナーのご参画の告知など、大盛況のイベントとなりました。

2021年7月にPlug and Play Japan Fintech Verticalに参画された東京センチュリー株式会社(以下、東京センチュリー)。それぞれのスタートアップに真摯に向き合い、そのコミットメント力の高さから、スタートアップ各社からも魅力的な協業パートナーとして高く評価されています。短期間で幅広い領域において数多くのスタートアップと共創に向けた取り組みを推進されている東京センチュリーをお迎えし、実際の協業事例も交えながら、大手企業がスタートアップと協業する際に留意すべき点など、オープンイノベーションを進めるうえでのコツについてお話いただきました。

(本内容はコーポレートキックオフデーでの協業事例Talkの内容をもとに作成しています)


Writer: Rino Nakaigawa

Plug and Play Japan, Program Manager, Fintech


Speaker: 森島隆弘氏

東京センチュリー株式会社 経営企画部門 DX戦略部 部長


Speaker: 下平涼子氏

東京センチュリー株式会社 経営企画部門 DX戦略部 担当課長


Moderator: Yoshihiko Arai

Plug and Play Japan, Program Lead, Fintech


Moderator: Chisa Taguchi

Plug and Play Japan, Partner Success Manager, Fintech


東京センチュリーの事業内容とPlug and Play Japan参画のきっかけ

ーーまずはじめに、森島様の自己紹介と会社概要の説明をお願いいたします。

森島氏:

東京センチュリーのDX戦略部部長の森島です。東京センチュリーは、元々の祖業はリースですが、現在は祖業である国内リース事業に加え、国内オート事業、スペシャティ事業、国際事業の4つの事業分野を展開している会社です。

図1(資料提供:東京センチュリー株式会社)

図2(資料提供:東京センチュリー株式会社)

当社の経営理念として「高い専門性と独自性を持つ金融・サービス企業として、事業の成長に挑戦するお客さまとともに、環境に配慮した循環型経済社会の実現に貢献する」を掲げています。また、『金融×サービス×事業』の新領域へということで、パートナー様との協働・創を実現していくというメッセージを掲げてます。

東京センチュリーの強みである金融機能を上手く活用しながら、イノベーティブな事業モデルを作り出すことをゴールに、Plug and Play Japanに参画しました。特にモビリティ・環境エネルギー・不動産といった領域について、Plug and Play Japanのプラットフォームを活用することで、さまざまな企業様との出会い、面白いサービスとの協業・創を実現しています。

図3(資料提供:東京センチュリー株式会社)

図4(資料提供:東京センチュリー株式会社)

最後にバリューアップに繋がるストーリーですが、図4左側にある通り、スタートアップ企業とはPoC/協業の延長線で業務提携などといった形の取り組みをしており、成長のご支援をしたいと思っています。そして同時に、当社のお客さまをパートナーと見据え、事業協業提案をしております。従来までは、当社の役割でもある金融機能を主にご提案していたのですが、昨今は新事業共創において欠かせないイノベーション要素を加えるという観点もあり、スタートアップ企業のさまざまな取り組みを掛け合わせ、3社以上での協業も視野に入れて取り組んでおります。

Plug and Play Japan コンソーシアム型アクセラレータの強み:
Plug and Playでは企業×スタートアップの連携の形は多種多様。企業xスタートアップに止まらず、スタートアップ×企業×企業のクライアントといった連携の可能性にも着目し、業界の垣根を超え、複数の大手企業とスタートアップとのマッチング支援を実施。ワークショップやメンタリングセッションなど、企業パートナーとスタートアップのニーズに合わせて幅広くプログラムを提供しています。

東京センチュリーとスタートアップ協業の取り組み

ーーイノベーティブな事業を作っていきたい、ということでPlug and Play Japanにご参画いただいてから、さまざまなスタートアップと協業を進められていますが、実際にどのようなスタートアップと連携してこられたのでしょうか?

森島氏:

当社は、Fintech Verticalに所属していますが、現在xR(AR/VR/MR)プラットフォームを活用したソリューションを提供するビーブリッジさん、スマート充電ソリューションの開発を手がけるYanekaraさんと取り組みを進めています。私たちの新事業で特に注力している領域であり、我々の金融機能を活用してイノベーティブな事業モデルを作り出すためPlug and Play Japanの皆さんには「クロスマッチングデー*」で色々な企業さんの紹介をお願いしています。

ビーブリッジさんはSmart Citiesプログラムの成果発表会であるEXPOで知り合い、YanekaraさんはSummer/Fall 2021のプログラム期間中に知り合いました。Yanekaraさんとは、2022年3月のEXPO でも一緒にパネルディスカッションに参加し、主にモビリティの領域で現在も一緒に色々なお話を進めています。

Plug and Play Japanの特徴的イベント: クロスマッチングデーについて

業界別テーマであるVerticalの垣根を超えてスタートアップと企業パートナーが協業提案をおこなうイベントです。プログラムの中間時期に実施しています。企業パートナー、採択スタートアップともに自分の所属していないバーティカルとお繋ぎできる機会を提供しています。

スタートアップの熱意を聞き出す

ーー特にどのような点に魅力を感じられて、この2社と面談をスタートされたのでしょうか?

下平氏:

当社は2021年7月からPlug and Play Japanに参画したのですが、プログラム期間途中からのスタートということもあり、色々なスタートアップ企業をご紹介いただく中でどうしたらいいかわからない状態でした。そのような状況の中でビーブリッジさんとは、正直なところ自分の興味本意でお話をしてみたいと思ったのがスタートでした。Yanekaraさんの方は当社が持っているオートの事業と親和性が高いのではないかということでお話を伺いました。

図5(資料提供:東京センチュリー株式会社)

ーー初回面談後、どのように協業まで繋がっていったのでしょうか?

図6(参照:Plug and Play HP、各社HP)

下平氏:

まずビーブリッジさんに関しては、当社のお客さまとデバイス分野でなにか協業ができないかという思いもありお話を始めました。しかしながら、実際にお話を進めていく中で当初考えていたデバイス分野ではあまりニーズがマッチせず、ビーブリッジさんの持っている色々な技術や事業への思いはしばらくの間、私たちの胸に留めていました。ところがある時、他のお客さまとDXをキーワードに会話をしていく中でビーブリッジさんとマッチしそうな予感がありました。そこで、「実はビーブリッジというスタートアップがこんな面白いことをやっているのですが、お話聞いてみますか」と両社をお引き合わせし、新たな繋がりが芽生えたという経緯です。その後面談を重ね、今は当社のお客さまの所有施設内における集客コンテンツ目的での利用を検討しているところです。

ーー面談時には協業の絵が描けずとも、将来的な協業可能性を考え幅広くスタートアップとの接点をもっておくことは大切かと思いますが、スタートアップとの面談の際に大切にしている点などありますでしょうか?

下平氏:

最初の面談から先方の話をきちんと聞いて、このスタートアップの強みは何なのか、そして先方が何を求めているのかを把握することを常に意識しています。そういったものをきちんとキャッチをして次に繋げることで長期的な関係構築ができたかなと。そういった気持ちを持って進めていったからこそビーブリッジさんをはじめとしたスタートアップの方々も当社にある程度思いを残してくれた部分があるのではと思っております。

森島氏:

最初の面談では連携イメージが湧かない先も少なくありません。しかしながら、色々なスタートアップの皆さんと面談をする中で熱意を感じます。我々自身も熱意をもって働いているのですが、やはりスタートアップの皆さんの熱意は半端ないので、我々側にもメッセージが記憶として頭に残ります。

その結果、お客さまとさまざまな話をさせていただく中でその熱意が思い出されるというのがあります。これが結果的にうまく協業に繋がる場合もあるので、やはり一番重要なのは興味からスタートして、しっかりミーティングを重ねる、その中で先方の熱意を引き出す、そういう活動をしっかり続けていくことなのかなと思います。

スピーディな連携を可能にする仕組み

ーー東京センチュリーさんは直近のプログラムでもプロフィナンスさん、TOKIUMさんなど数多くのスタートアップと連携されていますが、スピーディな連携の要因はなんでしょうか?

森島氏:

当社ではDX活動が2年目位で形になってきており、ある程度社内でも浸透が進んできていることに加えて、スタートアップを紹介いただいた前後の社内コミュニケーションを工夫している部分が大きいかなと思います。我々が所属しているDX戦略部は、他事業部との兼務者が多いのですが、事業分野ごとにそれぞれ当部との兼務者を置き各兼務先部署に持ち帰って検討を進めてもらっています。

コミュニケーションは基本的に社内チャットで行いますが、毎回スタートアップとのミーティング中や終了後、「こういった気づきがあったよね」といったことも含め、ミーティング出席者や兼務者にチャットで共有しています。それに対して回答をどんどんもらっていくことで、常に自分の中での気づきを周りにしっかり共有する、そういう活動を通じて結果的に色々なスタートアップとの協業もスピーディに行えるようになったと感じています。

図7(参照:Plug and Play HP、各社HP)

ーーPlug and Play Japanを通じた他の大手企業との連携にもご関心があると理解しておりますが、その点について今後の展望を伺えますか。

森島氏:

今まではどちらかというとスタートアップの面白いアイデアや新しい技術を当社のお客さまに届ける形で社内のお客さま対応の営業マンとも連携しながら動くという一本足だった部分は正直あるのですが、企業パートナーの皆さまとも一緒にビジネスを作っていくという観点も重視しています。

今後はより一層その点も積極的に取り組んでまいりたいと思っておりますし、挑戦する企業との協業に対してスタートアップの方とも技術、サービス、新しいアイデアを連携していきたいと考えています。スタートアップ・大手企業に関わらず挑戦する企業が一堂に会するのはこのPlug and Play Japanだと思っていますので、このプラットフォームを最大限活用し企業パートナーの皆様にも当社の役割と存在価値というものをうまく届けていきたいと思っています。

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