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アクセラレーターについて解説!種類や参加のメリット・デメリットとは?

2022/02/21

スタートアップに対する注目が高まるにつれ、さまざまなアクセラレータープログラムが創設され、近年では事業会社が主催するアクセラレータープログラムも多く見られるようになってきました。幅広い形態を見せているアクセラレーターのタイプやプログラム種類、利用するうえでのメリット・デメリットについて解説します


Megumi Shoei

Communications Manager

(2022/02/21 公開 2023/11/20 加筆修正: Chiyo Kamino)


1. アクセラレーターとは何か?

アクセラレーターとはスタートアップの事業成長を支援する企業や団体、またそれらの組織が提供する事業成長プログラムのこと指します。「アクセラレーター」の語源は英語の「Accelerateアクセラレート=加速する)」という言葉に由来します。自動車のアクセルを踏み込んでスピードを出すように、アクセラレーターはスタートアップが事業を早く拡大できるよう、さまざまなサービスを提供します。

一般的にシード期以降のスタートアップを対象としており、大手企業とのビジネスマッチング、メンターや投資家への紹介、マーケティング支援、投資など、スタートアップの事業成長に必要なプログラムを数週間〜数か月といった一定期間にわたり提供します。スタートアップ1社だけが単独で支援されるというケースは少なく、数社〜数十社を1グループとして同時期に支援する形式が多いです。「すでに設立されている企業をより大きくしていくための仕組み」ととらえられています。

アクセラレーターと似た機能を持つ団体として、「インキュベーター」があります。スタートアップを支援するという点においてアクセラレーターとインキュベーター混同されがちですが、インキュベーターは「Incubate(インキュベート=孵化)」という語源が示すように、主に創業前やプレシード期のスタートアップを対象としています。アイデア段階から、起業〜プロダクト開発、事業拡大にいたるまで長期にわたって支援する点でアクセラレーターとは異なります「アイデアや初期プロダクトを事業として形にする仕組み」と言えます。

2. アクセラレータープログラムとは?

アクセラレータープログラムの一般的な内容

アクセラレータープログラムは多くの場合、投資家や各業界の専門家によって運営されています。プログラムに採択されたスタートアップは、ビジネスマッチング、メンタリング、ネットワーキング、資金調達などの機会を得ることができます。

ビジネスマッチングでは、スタートアップとの連携を希望している事業会社や自治体との面談をおこない、スタートアップの持つソリューションをどう課題解決に活かせるかを話し合います。

メンタリングにおいてはビジネスアイデアのアドバイス、プロダクトのブラッシュアップ、マーケティング戦略、資金調達の方法など、さまざまな角度から専門家の指導を受けることができます。

ネットワーキングでは、同じ時期に採択されたスタートアップや、スタートアップへの投資を検討しているVCやCVCとのコネクションを構築できます。

アクセラレーターは、参加するスタートアップに対して一定の割合の株式(エクイティ)を取得するケースが多いです*。このような形態で資金を提供することで、アクセラレーターは参加するスタートアップの成功をサポートし、成功すれば投資元本を回収し、利益を上げることができます。

アクセラレーターを活用することで、スタートアップは短期間で競争力を高め、成長基盤を固めることができます。

(*Plug and Playのアクセラレータープログラムではエクイティを要求することはありません。)

2. アクセラレーターのプレイヤーとプログラムの種類

アクセラレータープログラムは、かつてはVCによって実施されるものが一般的でしたが、近年は事業会社や自治体によるアクセラレーターも増えてきました。2023年現在では業界や分野によりさまざまな種類が存在しており、期間や支援対象、テーマも多岐に渡ります。おもなアクセラレーターのタイプには以下のようなものがあります。

アクセラレーターのプレイヤー

・コーポレートアクセラレーター
事業会社が自社でプログラムを運営するタイプ。三菱UFJフィナンシャル・グループの「MUFG Digitalアクセラレータ」や東急グループによる「Tokyu Alliance Platform」、Googleの「Google for Startups Accelerators」など、近年では数々の大手企業によるアクセラレータープログラムが実施されています。主に大手企業が保有するアセットを活用した新規事業の創出や、関心領域の近い部署との共創によるコーポレートイノベーションを目的としています。

・ベンチャーキャピタルアクセラレーター
VCが運営するプログラム。Beyond Next Venturesが提供するディープテック特化型アクセラレーションプログラム「BRAVE」や、500 Startupsが実施する「500 Global」などがあげられます。採択したスタートアップへの出資やエクイティ取得といった投資の側面も持ち合わせているのが特徴です。Plug and Playのアクセラレータープログラムもその一つです。

・行政・自治体系アクセラレーター
行政機関が行っているアクセラレータープログラムで、JETROによる「スタートアップシティ・アクセラレーションプログラム」や経済産業省が推進する「J-Startup」などがあげられます。地方自治体や企業と連携し、行政機関のアセットを活用したスタートアップの海外展開支援や、住民参加型の実証実験、社会課題解決や地域貢献、産業振興を主目的とします。

・大学発アクセラレーター
大学主体のアクセラレータープログラムとして、東京大学の「FOUNDX」やスタンフォード大学の「StartX」などがあります。大学発アクセラレータープログラムでは、主に在学生や卒業生、研究者向けに無償でリソースを提供するプログラム内容を提供している大学が多い傾向があります。その性質上、インキュベーションから一環しておこなっているパターンも見られます。

運営の種類

・自社運営型
自社でスタートアップ公募から選定、プログラム実装にいたるまで一気通貫して行うスタイルです。自社内で実施するため独自フローを築くことで意思決定スピードが早まるとともに、自社のニーズにマッチした組み手企業との出会いも期待できます。一方で運営企業の規模やノウハウによってアクセラレーターの成果が左右される側面もあります。

・共創型
事業会社とアクセラレーターが協業し、プログラムを運営するスタイルです。アクセラレーターの運営における専門知識や独自のスタートアップネットワークを取り入れることができ、効率的に自社に必要なネットワークを構築することができます。

・ N対N型
アクセラレータープログラム運営を専門とする企業が主体となって運営するプログラムで、大手企業×スタートアップだけではなく、大手企業×大手企業、スタートアップ×スタートアップなど、複数社と業界を越えた出会いが可能になります。

アクセラレータープログラムの種類

「スタートアップを支援する」という目的は共通しているものの、アクセラレータープログラムの種類はさまざまです。主に以下のようなタイプに分けることができます。

・業界特化型プログラム
特定の産業や業界のイノベーションを目的としたアクセラレーター。医療、農業、エネルギーなどの分野に特化したプログラムを運営しています。

・地域課題解決型プログラム
特定の地域や都市に焦点を当てたアクセラレーター。地域経済を促進し、地域内のスタートアップコミュニティを拡大することを目的としています。その地域に事業所を置いているスタートアップや、その地域特有の課題を解決するスタートアップを対象としていることが多いです。

・テーマ募集型プログラム
業界を問わず、特定のテーマや社会課題の解決に焦点を当てたアクセラレーター。脱炭素、少子高齢化、海洋プラスチック問題などのテーマに特化したプログラムがあります。

スタートアップは、自社の規模や目標に合ったアクセラレータープログラムを選ぶことが肝要です。たとえば、知名度が高いプログラムに参加することによってブランド力が向上する一方、多大なコミットメントが発生し他のプロジェクトが何も進行できなくなってしまうということもありえます。また自社の方向性と必ずしも合致しないプログラムに応募したために数か月間を無駄にしてしまうことにもなりかねません。プログラムを通して何が得られるのか、そのプログラムにコミットできるだけのリソースがあるのかをよく考えた上で応募することが重要でしょう。

3. アクセラレーターを活用するメリット

アクセラレーターを活用する利点はさまざまなものがありますが、ここではアクセラレータープログラムに参加するスタートアップと、アクセラレータープログラムを利用する大手企業双方の立場から、どのようなメリットが得られるかを解説します。

スタートアップ側

1.社会的信用度の向上
実績のあるアクセラレータープログラムに参加することで会社として一定の評価を得られ、ブランドへの社会的信用度やプロダクト・サービスへの安心感を得やすくなります。

2.主催者の提供するアセットへのアクセス
大手企業や自治体などとマッチングすることで、大規模な組織が有する豊富なアセット(事業化やマーケティングのノウハウ、ネットワークなど)にアクセスできます。

3.専門家のフィードバックによるプロダクト・ビジネスプランの改善
専門家からプロダクトやサービスへのフィードバックを得られ、製品や事業計画の改善に繋げられます。

4.協業や実証実験によるマーケットフィットの確認
大手企業や自治体との協業や実証実験などを通して、事業アイデアや技術のマーケットフィットを確かめることができます。

大手企業側

1.多様なスタートアップとの出会い
多数のスタートアップとのコネクションをすでに確立しているアクセラレーターを利用することで、自社では繋がりのなかったスタートアップとの連携を模索することができます。

2.新事業の種となりうるアイデア探索
最先端の技術を持つスタートアップとの出会いから社内では気づかなかった新たな事業の種となりうるアイデア探索ができ、既存事業のアップデートや新規ビジネスを創出する機会が得られます。

3.最新のトレンドや先進テクノロジーの情報取得
最新の市場トレンド情報や社会のニーズに触れられるとともに、幅広い分野での先進テクノロジーの情報に触れることができます。

4.社内協力体制の構築
オープンイノベーションのノウハウを熟知しているアクセラレーターを通して、社内における協力体制の強化や関係者の巻き込みをはかることができます。また、業界特有のインサイトを得られたり、他社のオープンイノベーション担当者とのコネクションも構築できます。

4. アクセラレーターを使うデメリット

スタートアップ側

1.リソース不足
時間・人・資金が潤沢でないスタートアップにとって、アクセラレータープログラムに参加することはさまざまなリソースを取られるだけではなく、期待した成果が得られない場合、機会損失ともなりえます。せっかく採択されたとしても、多忙すぎてプログラム中に途中で脱落せざるを得なくなるリスクもあります。参加する前にタイムラインや確実にコミットできる業務量を明確にしておくことが成功への鍵となります。

2.アイデアの盗用
アクセラレータープログラム参加中には、多くの人や企業に自社プロダクトやサービスのアイデアを説明してまわることになります。製品や知財を守るためにも、アクセラレーターに参加する際にはどのような目的で開催されているプログラムなのか、規約や契約内容に留意すべきでしょう。

大手企業側

1.短期での成果を得づらい
アクセラレータープログラムの特性上、最長でも数ヶ月のプログラムとなるため、プログラム期間内で目に見える成果を得づらい側面があります。しかし逆を返せば、期間が決まっているので時間的な強制力をもたせることができ、目標までのマイルストーンを引きやすくなります。オープンイノベーションという文脈の中で、長期的な目的を持ったうえでの継続的な取り組みが重要になります。

2.一定のコミットメントが求められる
プログラム期間中は多くのスタートアップとの出会いや、彼らが有する先進テクノロジーについて理解を進めることに加え、社内事業部への課題ヒアリングなど取り組む領域は多岐にわたります。他のプロジェクトと並行してアクセラレーターを活用する場合、時間的コスト、人的コストについて考慮する必要があります。

5. Plug and Play Japanのアクセラレータープログラムについて

Plug and Playでは約3ヶ月間のアクセラレータープログラムを8つの業界テーマ*で展開しています。国内40社以上の企業パートナーと国内外のスタートアップを結び、新たなイノベーションを創出することを目的としています。本プログラムを通し、企業パートナーは自社のイノベーションを加速させるような国内外スタートアップとのマッチングが可能になり、スタートアップは幅広く大手企業との連携機会を得られます。アクセラレータープログラムについてご相談やご質問がありましたら、お気軽にご相談ください。

*8つの業界テーマ:Fintech、Insurtech、Mobility、Food & Beverage、Health、Smart Cities、New Materials、Energy

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