アクセラレーターとは?プログラムやスタートアップが参加するメリットを解説
2025/04/25

「アクセラレーター」はスタートアップの成長を支える機関です。
アクセラレーターが運営するアクセラレータープログラムを上手に活用すれば、ビジネスの成長が加速する一方、その種類は多岐に渡る上、プログラム内容には大きな差があるのも事実。
本記事では、「アクセラレーターとは何か?」という基本的な疑問から、選び方・メリット・デメリットまでを網羅的に解説していきます。スタートアップを経営する方にとって、自社にとって適切なアクセラレータープログラムを見極め、事業成長のヒントとして活用いただければ幸いです。
また、新規事業担当者にとっても、どのようなアクセラレータープログラムがスタートアップとの共創を生みやすいかとう視点で見ていただくと、パートナー探しのヒントが見つかるはず。
アクセラレーターの定義を知りたい方は最初から、どのようにアクセラレーターを選ぶべきか知りたい方は、こちらからご覧いただければと思います。
Sohshi Yoshitaka
Marketing Manager
(2022/02/21 公開|2023/11/20, 2024/10/3 2025/04/25 加筆修正)
アクセラレーターとは?
アクセラレーターとは、成長意欲の高いスタートアップや新規事業を短期集中型のプログラムで支援する組織または仕組みのことを指します。ビジネスモデルのブラッシュアップやメンタリング、ネットワークへのアクセス、場合によっては資金調達の機会などを提供し、スタートアップがスピーディに市場検証や事業拡大を行う手助けを行います。
ア「アクセラレーター」の語源は英語の「Accelerate(アクセラレート=加速する)」という言葉に由来し、「急成長を促すための“加速装置”」としての役割を果たすことを目的としており、スタートアップの事業成長を後押しする存在と言えます。
インキュベーターやVCとの違い
アクセラレーターに関連する用語として、インキュベーターやVC(ベンチャーキャピタル)などがあります。いずれもスタートアップを支援する主要機関ですが、それぞれ目的や支援の仕組みの違いは何か、以下の表にまとめました。
アクセラレーターは、一定以上の事業アイデアやチームがすでに確立されているスタートアップを“加速”させるためにフォーカスしたプログラムを持つ点が特徴です。必ずしも投資を伴わない場合も存在し、資金提供にとどまらない総合的なサポートが強みとなります。また投資機能を併せ持つアクセラレーターも多く、アクセラレーターとVCを兼業して両事業のシナジーを武器にしているプレイヤーも珍しくありません。
インキュベーターについては、スタートアップの成長を支援するという点についてはアクセラレーターと類似していますが、支援先のスタートアップが入居できる支援施設を持つことが特徴です。傾向として大学や研究機関、政府・自治体、不動産業界に関係するプレイヤーが多いことも挙げられます。
また上述の通りアクセラレーターとインキュベーターを説明する一般的な表現は存在するものの、世界的に統一された定義があるわけではないため、両者の違いを明確に分けることが難しいのが実情であり、メディアや調査機関によってアクセラレーターと表記されていたり、インキュベーターと表記されていたり、または併記されている場合も存在します。
アクセラレーターの歴史と起源
アクセラレーターの原型が登場したのは、2000年代初頭のアメリカ・シリコンバレーが発祥とされており、特に有名な例として、「Y Combinator」が挙げられます。2005年に設立されたY Combinatorは、短期集中型でスタートアップを支援するモデルを確立したことで世界的に注目を集めました。
アクセラレーターの変化の流れは下記のように整理できます。
- 2000年代初頭: シリコンバレーを中心に、アクセラレーターの元になるような活動が盛んに
- 2005年: Y Combinator設立。DropboxやAirbnbなど後に大成功を収める企業を輩出
- 2010年代以降: Techstarsや500 Global(旧500 Startups)、Plug and Playなどが急速に拡大し、世界各地にアクセラレータープログラムが拡散
日本でも2010年代半ば以降、官民連携の支援プログラムや大企業主導のプログラムが登場し、スタートアップエコシステムの拡大に貢献してきました。
ここまでは、アクセラレーターの概要から起源を見てきました。2000年代初頭にシリコンバレーで生まれたアクセラレーターは現在、世界各地でどれほどあり、どれくらい活発に活動しているのでしょうか。
世界と日本におけるアクセラレーターの動向
まずは、世界各地のアクセラレーターの数から見ていきましょう。下記は、世界各地および日本におけるアクセラレーター数を紹介している図です。
アクセラレーターの数ではアメリカのニューヨークとシリコンバレーが多く、イギリスのロンドンが3位。ボストンやシンガポールがその後を追う形になっており、東京は上位都市の4分の1程度なのが実情です。また、アクセラレーター数が多いエリアでどのようなアクセラレーターが活発かを投資件数ベースで見ていくと、各地域におけるTOP10は以下の通り。
特徴としては、上位のアクセラレーターはいずれの地域においても、トップ投資家としてスタートアップエコシステムを牽引していることがわかります(*1)。
一方日本に目を移すと、アクセラレーターの顔ぶれは変わるものの、どの地域においても特定のアクセラレーターの名前が出てくることが見て取れるでしょう。
日本国内では、2010年代半ば頃から政府や自治体のスタートアップ支援政策が強化されたこと、加えて大企業の新規事業開発やオープンイノベーションを推進する動きが盛んになったことを背景に、アクセラレーターの数が急激に増え始めました。また、アクセラレータープログラム数の推移を見てみると、2010年には1件だったものが、2019年時点で、38件以上あり、その急速な拡大が見られます(*2)。
このように、数年で日本のアクセラレーター市場は大きく拡張したものの、その拡大スピードに見合った中身を保てるかどうかが課題となりつつあります。数が増えるにつれ成功・失敗の事例も多様化しており、言葉を選ばすに言えば、アクセラレーターの玉石混合かが進んでいます。アクセラレーターそのものが次の進化を求められていると言われる時期に入っているのでは無いでしょうか。
また、ビジネス環境や商習慣が全く異なる日本においては、シリコンバレーで成功したモデルをそのまま輸入すれば成功するというわけでもなく、どのように日本に根差したローカルモデルを構築するのか、というのも大きなテーマの一つだと言えるでしょう。
アクセラレーターのビジネスモデル
スタートアップの成長を加速させるアクセラレーターですが、エコシステムの中で、各プレイヤーがどのように役割を担い、互いにどのような価値を提供し合っているのでしょうか。
アクセラレーターに関わる主要ステークホルダー
アクセラレーターのエコシステムにはスタートアップやアクセラレーターだけでなく、大企業(スポンサー)や投資家、自治体・大学など、さまざまな主体が相互に連携しながら、アクセラレーターのエコシステムを形成しています。
下記が主なステークホルダーです。
- スタートアップ
技術やビジネスアイデアをもとに急成長を目指す企業。短期集中型のプログラムを通じてメンタリングやネットワーク形成の支援を受ける。 - スポンサー/パートナー企業・投資家
アクセラレーターへ運営資金を提供し、自社へのイノベーション還元や将来的な投資リターンを狙う。 - メンター・専門家
経営者や投資家、業界エキスパートなど。プログラム参加企業に助言・ノウハウ提供を行い成長を支援する。
このように、様々なステークホルダーがいるのがアクセラレーターの特徴であり、どこから収益を得ているのかによって、ビジネスモデルが変わってきます。
- スタートアップ
アクセラレーターのキャッシュポイント
アクセラレーターのビジネスモデルは支援するスタートアップの株式取得を行うか否かによって大きく2つに別れます。
1. Non-Equity(株式を伴わない)プログラム
株式取得を伴わないモデルのアクセラレーターでは、主に大手企業や政府・自治体が運営資金を負担し、自社/地域のイノベーション創出を目的とした形でプログラムを企画・運営します。自治体や大学も地域活性化や大学発ベンチャー育成を目的に、助成金や補助金を出すことがあります。
大手企業がスポンサーをするメリットは以下の通りです。
- 新たな技術・事業モデルを発掘できる
- 自社の課題を解決するスタートアップを優先的に検討できる
- 自社ブランド・社会的貢献度の向上
プログラム自体を収益源(キャッシュポイント)として捉えるというより、大企業や自治体、大学などからの「スポンサー費用」「助成金」「補助金」等で運営資金を確保するビジネスモデルを取ります。あくまでスタートアップへの投資リターンではなく、「イノベーション促進」や「オープンイノベーションの推進」「地域活性化」といった社会的・事業的な目的のためにプログラムを実施する点が大きな特徴です。
2. Equityを伴うプログラム
株式の取得を伴うアクセラレーターは運営主体がスタートアップへ出資し、一定の株式を保有することで将来のIPOやM&Aでのキャピタルゲインを狙います。
株式の取得を伴うアクセラレーターの特徴は以下の通りです。
- スタートアップが大きく成長すれば、数倍~数十倍のリターンを得られる可能性がある
- 投資失敗も起こり得るため、分散投資や厳格な選抜が必須
エクイティ型アクセラレーターで、投資先が成功を収めた場合の収益を簡単に試算してみましょう。
- 前提: アクセラレーターが総額10億円相当の出資枠を確保し、複数のスタートアップに5~10%程度の株式を取得しながら投資。
- 複数スタートアップのExit: 数年後にIPOやM&Aが成功し、出資時の評価額が数倍~数十倍になるケースが出てきた場合、アクセラレーターはその株式売却益から大きなリターンを得る。
たとえば、投資先の1社が大化けして企業価値100億円でExitしたとすると、
- 保有株式: 10%の場合 → 売却額は約10億円
- 調達時点での出資額: 1億円 → キャピタルゲインは9億円
このように、リスクはあるものの、成功した際のリターンは非常に大きくなり得ます。ただし、実際には投資先すべてが同じように成長するわけではないので、選抜力や支援の質が大きく問われるのです。
この2つの他にも成果報酬やPoC実施支援、イベント運営やコンサルティングで収益を得ているケースもあり、アクセラレーターのビジネスモデルも多様化しています。
主要な支援内容(メンタリング・ネットワーク・資金調達支援など)
どのようなビジネスモデルのアクセラレーターでも、短期集中プログラムを通じて多面的なサポートを提供し、スタートアップの成長をブーストするという点においては共通しています。具体的な支援内容としては、以下が挙げられます。
- メンタリング・アドバイザリー
- 経営者や投資家、専門家をはじめとするメンター陣が、事業戦略や組織構築、技術開発など多岐にわたるアドバイスを実施
- スタートアップが持つ課題を可視化し、解決策を検討するプロセスを伴走型でサポート
- ネットワーク提供
- アクセラレーターが提携している企業や投資家、VC、業界専門家、他のスタートアップなどとの交流機会を創出
- 採択スタートアップはデモデイやピッチイベントに参加できるため、潜在的なパートナーや投資家との接点が増える
- 資金調達支援
- プログラム終了時に行われるデモデイ(Investor Day)で、投資家に向けて事業をアピールできる
- 大企業のコーポレートアクセラレーターの場合は、PoC(概念実証)や共同事業開発などへ発展する可能性もある
- オフィススペース・シェア設備の提供
- コミュニティスペースやコワーキングスペースを活用し、スタートアップ同士で情報交換や刺激を受ける機会を提供
- コスト削減にもつながるため、特に初期フェーズの企業には大きなメリット
- 専門リソースの共有
- 自社プロダクトの開発・マーケティングを支援するためのツールやノウハウ、法務・財務サポートなど
- 人事や採用に関するノウハウを提供するアクセラレーターも増えている
これらの支援を総合的に活用しながら、スタートアップは短期的な事業成長とともに長期的なネットワーク拡大を実現していきます。一方で、どんなに支援体制が整っていても、参加側のコミットメント(時間・人材・意思決定のスピード)が欠かせない点も留意しておく必要があります。
- メンタリング・アドバイザリー
代表的なアクセラレーターの種類
上記では、アクセラレーターの仕組みを見てきましたが、その仕組みはどのような種類のアクセラレーターかで、大きく異なります。
1種類ずつ詳細に特徴を見ていきましょう。
1. 投資 & メンターシップ型
代表的なプレイヤー
- Y Combinator (YC)
- Techstars
- 500 Startups (現 500 Global)
- StartX(スタンフォード大学)
主な支援内容- 初期投資・出資(エクイティ取得)
- 一定額の資金を提供し、対価として株式の一部を取得するケースが一般的です。
- 例:Y Combinatorが数万ドル程度を出資してスタートアップを支援、Techstarsは一定の資金を投資するなど。
- 集中的なメンタリング・プログラム
- 3ヶ月~半年程度の“コホート”形式で、各社まとめてプログラムに採択されることが多いです。
- 経験豊富な起業家や専門家がメンターとして参加し、事業戦略・マーケティング・ピッチなど多角的に助言を行います。
- ネットワーク形成・コミュニティ
- 多くの場合、卒業(デモデイ後)も含め、アクセラレーターOB同士のコミュニティが強固です。
- VCやエンジェル投資家、大手企業とのつながりを加速させることで、次ラウンドの資金調達につなげやすい。
- デモデイなどのピッチ機会
- 投資家や大企業を招いた大規模なデモデイでの発表機会が用意され、注目度が高い。
- StartXの場合はスタンフォード大学および関係者ネットワークによる支援が特色(ノンエクイティのメンタープログラム+別途ファンドによる投資など)。
2. コンソーシアム型
代表的なプレイヤー
- Plug and Play Tech Center
- 政府・自治体
主な支援内容
- 多様なステークホルダーとの連携機会
- 大企業、VC、大学、地方自治体などが共同でプログラムを運営するため、多角的なネットワークを得やすい。
- Plug and Playは各産業領域(FinTech、InsurTech、Healthcareなど)のコーポレートパートナーを巻き込み、スタートアップを探し・支援するコンソーシアム形式が特徴。
- PoC(概念実証)や共同開発の機会
- 大企業や自治体と連携して新技術の検証・導入を行うことが多く、特にB2B領域で有効。
- 社会実装や公共事業の活用を狙う場合、自治体プログラムとの連携がカギとなる。
- 事業連携を軸に、大手企業からの資金調達機会も視野に
- 運営側から投資を行う場合もあるが、大手企業からは お必ずしも出資が前提ではなく、ビジネスマッチングや共同プロジェクトを促進する枠組みが中心。
- プロセスの中で大手企業などからの資金調達(CVC出資など)につながる可能性も十分に含まれている。
- 各種イベントでの露出機会
- デモデイやピッチイベント、ネットワーキングイベント等、様々な登壇機会を通じた露出が可能。
- 政府・自治体のプログラムでは、国内外のイベント出展支援、広報サポートなどがセットになっていることもある。
3. 大企業主導型
代表的なプレイヤー
- Google for Startups
- TRIBUS (リコーが主導)
(その他、国内外の大企業が運営するアクセラレータープログラム全般)
主な支援内容
- 大企業のリソースやノウハウの提供
- Google for Startupsの場合は、Googleが持つ技術リソース(クラウドプラットフォーム、AIツールなど)や専門家のメンタリングを提供。
- リコーのTRIBUSなどは自社の技術や営業ネットワーク、顧客基盤の活用が見込める。
- 自社との協業・事業シナジー創出
- コーポレートアクセラレーターは、将来的に自社の事業領域と掛け合わせることを目指すため、PoC(実証実験)や共同開発のサポートが手厚い。
- 必要に応じて社内技術者・ビジネス開発担当者が伴走支援するケースも多い。
- ブランド活用・広報支援
- 大企業の知名度を活かしたマーケティング・PRが期待できる。
- Google for Startupsの場合は、起業家向けにコワーキングスペースの提供や、Google Cloud クレジットなど特典を提供するプログラムも存在。
- 投資を行うケースもあれば、非投資型もあり
- 大企業自身がCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)として出資する場合と、あくまで事業連携・技術協力を目的に出資なしで支援する場合がある。
- プログラムごとに出資形態や支援条件は様々。
4. 個別支援型
代表的なプレイヤー
- JETRO(例:J-starX)など
主な支援内容
- 1社ごとにカスタマイズした支援プログラム
- 大規模なコホート方式ではなく、個社のニーズに合わせてメンターや支援メニューを調整する。
- 決まった日程やカリキュラムに縛られず、必要なリソースを柔軟に提供することが多い。
- 継続的なハンズオン支援
- 投資型アクセラレーターに比べ、より長期的・継続的な伴走を行う場合も多い。
- 大手VCや事業会社と連携しながら、事業戦略や資金調達のサポートを個別に設計。
- ネットワーク・パートナー紹介
- ピッチイベントやコホート式デモデイよりも、1対1での投資家紹介、企業マッチングに力を入れる。
- あまり大々的に募集しない“招待制”や“紹介制”の形を取ることもある。
- 投資の有無や条件はプログラムごとに異なる
- 「個別支援=投資無し」というわけではなく、エクイティ取得を伴うこともあれば、純粋なコンサル・メンタリング形式の場合もある。
- J-starXの例では、支援の目的や資金調達計画に応じて投資を行うケースもあるため、プログラムの詳細を確認する必要がある。
スタートアップがアクセラレーターを選ぶ上で考えたいポイント
アクセラレーターの種類を見てきましたが、スタートアップがアクセラレーターを選ぶ際には、限られた時間とリソースを最大限に活かせるプログラムかどうかを見極めることが肝要です。
特にステージ、業種特化か汎用か、提供主体、プログラム形態、ロケーション、プログラム期間、参加条件などを総合的に評価し、自社のビジネスや成長戦略に合った選択をする必要があります。
アクセラレータープログラムを選ぶ上で考慮したい5つのポイント
スタートアップがアクセラレータープログラムを選ぶ上で着目したい5つのポイントは以下の通り。
- 自社の事業ステージ(アイデア段階なのか、売上がある程度あるのか、海外展開狙いなのか)
- 業種や技術領域(専門的な支援・パートナーが欲しいか)
- 出資を受けたいか(どの程度の調達が必要か)
- 支援を受ける目的(例:大企業との協業、資金調達、海外展開、事業開発)
- アクセラレーターのブランド(支援者の評判や卒業後の泊付け)
上記項目を考慮すると、自然と参加候補となるアクセラレーターが絞りこめるはずです。こうした整理に基づいて、それぞれのプログラムの実績や卒業生、投資実績、大企業との連携事例なども踏まえて最終的な意思決定をする流れが一般的です。
パターン別スタートアップにおすすめのアクセラレーターの選び方
例えば、シード~アーリー段階で将来的な資金調達(シリーズA以降)を見据えている場合、投資&メンターシップ型のアクセラレータープログラムがおすすめです。
Y Combinatorのようなアクセラレーターの場合、強力なコミュニティとブランド力が大きな強みとなり、プログラム卒業後も「YC出身」というブランドやその協力コミュニティから、出資など支援が得られる可能性が高まるからです。
一方、専門の領域に特化しており、投資よりも大手企業との協業やPoCを考えている場合はコンソーシアム型やコーポレート主導型のアクセラレータープログラムが良いでしょう。大手企業との事業提携や共同開発をサポートしたり、その後の資金調達、グローバル展開の可能性まで見据えることができるためです。
重要なのは、アクセラレーターの知名度だけで選ぶのではなく、自社の戦略に沿って、事業を加速してくれるアクセラレータープログラムを選ぶことです。
世界の代表的なアクセラレーターを一覧で紹介
スタートアップのフェーズごとに最適なアクセラレーターは違うという話をしてきました。では、実際にどのようなアクセラレーターが存在するのでしょうか。本章では、アクセラレーターを語る上で、知っておくべき代表的なアクセラレーターを紹介します。
日本でビジネス活動をしていないアクセラレーターもありますが、世界基準を知っておくことで、最適なアクセラレーター選びの基準になることは間違いないでしょう。それでは、早速代表的なアクセラレーターを見ていきましょう。
1. Y Combinator
Y Combinatorは2005年に創設され、DropboxやAirbnbなど数多くの成功企業を輩出してきた世界的アクセラレーターです。3カ月の短期集中プログラムを通じ、著名メンターや投資家とのネットワークを形成しやすい点が魅力です。採択率は1~3%と非常に低いものの、合格後は資金提供だけでなく多面的な事業支援が受けられ、グローバル展開や急成長に直結する大きなチャンスが広がります。何よりもYC出身ということがブランド形成に大きく寄与し、その後の資金調達に繋がったり、ビジネスが加速しやすくなります。
プログラム修了時のデモデイでは世界中の投資家と直接つながれるため、認知度や調達力を一気に高めたいスタートアップに最適です。
概要と実績
- 本拠地: アメリカ・シリコンバレー(マウンテンビュー)
- 創設: 2005年
- 著名卒業企業: Airbnb、Dropbox、Stripe、Coinbase など
特徴
- 超選抜制
応募総数に対する採択率は非常に低く、基本的に技術力・市場ポテンシャル・チーム力の高さが求められる - グローバルネットワーク
参加した卒業生同士でコミュニティを形成し、YCのブランドを通じて資金調達や事業提携がしやすくなる - 幅広い業種対応
SaaSやフィンテック、ヘルスケアからハードウェア領域まで多様なプロジェクトが支援対象
2. 500 Global(旧 500 Startups)
500 Global(旧500 Startups)は、2010年に創設され世界各地に拠点を持つ投資型アクセラレーターです。UdemyやTalkDeskをはじめ、多様な分野のスタートアップを支援し、大量の投資実績を積み上げてきました。日本を含めた地域特化プログラムも多数用意されており、参加スタートアップはローカル市場に精通したメンターと交流しつつ、グローバル視点も磨くことができます。出資のほかに事業戦略やピッチスキルの強化など実践的なサポートを提供し、卒業後も継続的に追加投資やビジネスマッチングの機会を得られる点が大きな魅力です。
概要と実績
- 本拠地: アメリカ・サンフランシスコ
- 創設: 2010年
- 著名卒業企業: Udemy、TalkDesk、Intercom、Eaze など
特徴
- 投資実績の多さ
「500」を超えるスタートアップへの投資実績を持ち、多様な業種・地域のノウハウを蓄積 - 地域特化プログラム
各国・各都市ごとにプログラムが用意されており、ローカル市場への理解を深めながらグローバルな視点も得られる - 強力な投資家ネットワーク
次ラウンドの資金調達を見据えたコミュニティ形成やマッチングが期待できる
3. Techstars
Techstarsは2006年にアメリカ・コロラド州で誕生し、世界中でテーマ別や地域別のアクセラレータープログラムを展開するグローバルブランドです。SendGridやClassPassなどの成功事例を持ち、実践的なメンタリングと密度の高いコミュニティづくりが特徴。特にスポーツテックやAI、IoTなどに特化したプログラムでは、大手企業や専門家との密接な連携によって、参加企業の技術・事業モデルを短期間でブラッシュアップ可能です。
概要と実績
- 本拠地: アメリカ・コロラド州ボルダー
- 創設: 2006年
- 著名卒業企業: SendGrid、ClassPass、PillPack など
特徴
- テーマ別・都市別のプログラム
スポーツテック、IoT、AIなど、業界や技術領域に特化したプログラムを世界各地で開催 - デモデイとメンターネットワーク
起業家や投資家、大企業の担当者が多数集まるデモデイを通じて知名度アップや資金調達に直結 - コミュニティ構築支援
Slackなどのオンラインプラットフォームやイベントで卒業生やメンターをつなぎ、長期的な支援を継続
4. Alchemist(アルケミスト)
AlchemistはB2B向けスタートアップを中心に支援するアクセラレーターで、2012年にサンフランシスコで創設されました。Rigetti Quantum ComputingやMighty Networksなど、企業向け製品・サービスで大きく成長した事例を多数輩出しています。エンタープライズ領域の豊富なノウハウを持つメンター陣が強みで、実践的なセールス戦略や顧客獲得手法を短期間で学べるのが特徴です。B2C領域とは異なる購買プロセスや契約構造に精通した専門家によるサポートは貴重で、特に大企業への導入や海外拠点との連携をスムーズに進めたいスタートアップに適しています。2024年より日本でも活動を開始しています。
概要と実績
- 本拠地: アメリカ・サンフランシスコ
- 創設: 2012年
- 著名卒業企業: LaunchDarkly、Mighty Networks、Rigetti Quantum Computing など
特徴
- B2B特化
大企業や業界専門家とのマッチングに力を入れ、技術導入や共同開発の機会を創出 - 実務的なメンタリング
プロダクト開発やセールス戦略、顧客獲得の実務に特化した知見が得られるため、エンタープライズ領域での成長を目指す企業に最適 - グローバル標準のビジネス観点
シリコンバレーを拠点に、国際マーケットを念頭に置いたビジネスモデルの検証が可能
5. Plug and Play Tech Center
Plug and Playは、シリコンバレー発のVC/アクセラレーターで、モビリティ、保険、ヘルスケアなど多岐にわたる業界特化プログラムを展開しています。PayPalやDropboxなど世界的企業を輩出してきた投資家としての目利き力と、国内外の大手企業や自治体とのネットワークを活かしたPoCや共同開発をサポートしています。2017年より日本市場においても、アクセラレータープログラムの運営やスタートアップ投資、エコシステムの醸成を牽引しています。
概要と実績
- 本拠地: アメリカ・シリコンバレー(サニーベール)
- 創設: 2006年
- 著名卒業企業:Paypal、Dropbox、Rappi
特徴
- グローバルネットワーク
世界60拠点以上あるネットワークを活かして、海外拠点への展開もサポート - 25テーマ以上のプログラム
自動車、保険、ヘルスケアなど、プログラムごとに特定業界に特化したメンター陣やイベントを用意 - コーポレートネットワークの強さ
様々な国・業界から500社以上の大手企業がパートナーとして参画し、PoCや事業提携の機会が豊富
6. Google for Startups
Google が世界各国で展開するスタートアップ支援プログラムで、かつて “Google Launchpad” と呼ばれていた時期もあります。クラウド・AIといった Google のテクノロジー基盤や広範なリソースを活用しながら、グローバル展開や事業成長を後押ししている点が特徴です。
概要と実績
- 本拠地: アメリカ・カリフォルニア州マウンテンビュー(Google本社)を中心に、ロンドンやサンパウロ、ソウル、東京など世界各地で “Google for Startups Campus” を展開
- 創設: 2011年。2018年に “Google for Startups” にブランド変更
- 支援実績: HacWare、ラトナ株式会社、TradFit株式会社
特徴
- Googleの技術力をフル活用
Google Cloud プラットフォームや機械学習(TensorFlow など)の利用クレジットを提供し、エンジニアリング面でのサポートが手厚いです。 - グローバル展開を意識したネットワーク形成
海外各地の “Google for Startups Campus” での交流機会があり、国外市場への展開を目指す企業には非常に有利。 - 大企業ブランド&広報支援
Google の支援を受けていることで、メディア露出や採用活動においてもプラスになる場合が多い。また、社内外の専門家とのコネクションを得やすい。 - 非投資型のプログラムが中心
いわゆるエクイティ投資を必須とするアクセラレーターとは異なり、基本的には投資なしでのメンタリング・サポートがメイン。ただし必要に応じて Google が出資するケースもある。
Plug and Playのアクセラレータープログラムについて
Plug and Playはシリコンバレー発のグローバルアクセラレーターで、2024年には2200を超えるのスタートアップを採択・支援してきました。最大の特徴は、単にスタートアップ同士や投資家を結びつけるだけでなく、複数の大手企業が参加する「コンソーシアム型」のプログラムを提供していることです。
最後の章では、Plug and Playのアクセラレータープログラムを大手企業とスタートアップの両方の目線でご紹介します。
大手企業:グローバルネットワークを活かしたハンズオンのイノベーション支援
大手企業側の視点から見ると、Plug and Playのアクセラレータープログラムは自社だけではリーチできない世界中の先進的なスタートアップと効率的につながる仕組みを提供しています。Plug and Playでは業界ごとのプログラム(Mobility、Deeptech、Health、Energy、Food & Beverage、Fintech、Insurtech等)が運営されており、参画企業は自社の関心領域に応じた新規事業創出やオープンイノベーションを加速することが可能です。単なるネットワーク提供にとどまらず、参画企業の内部まで入り込んだ戦略的支援も提供しています。これにより例えば、
- 関心領域のトレンドに基づいた新規事業の創出や既存事業の革新やDXができる
- 自社の課題やテーマにフィットしたソリューションをもつスタートアップと出会える
- ハンズオンの伴走支援や社内の文化醸成を通じて、進むべきイノベーション戦略がみえる
といった成果が期待できます。また、Plug and Playはシリコンバレーをはじめ、世界中のイノベーション拠点と連携しているため、日本にいながらも世界中のスタートアップとのネットワークを拡張できることも大きな魅力のひとつです。
スタートアップ:事業連携やグローバル展開の足がかりに
一方、スタートアップにとっては、大企業との事業連携や顧客開拓の足がかりとなる“事業加速のハブ”という位置づけになります。
また、Plug and Playのプログラムを通じてスタートアップは、
- 国内外の大企業とピッチ・マッチングできる機会を得られる
- デモデイやメンタリングを通じてプロダクトの改善や顧客理解を深められる
- 採択実績そのものが「信用力」となり、他の事業会社やVCとの対話にも有利になる
というベネフィットを得ることができるでしょう。さらに、Plug and Play自身が出資を行うケースもあり、必要に応じて資金調達支援も期待できます。特に、将来的に海外展開を見据えているスタートアップにとっては、グローバル拠点でのネットワーキングやローカル企業とのマッチング支援を通じて、初期段階から世界市場への布石を打てる点も特徴です。
まとめ:アクセラレーターを活用して成長を加速する
アクセラレーターは、さまざまなプログラムを通じてスタートアップの成長を短期間で“加速”させることを目的とした支援機関です。近年は投資&メンターシップ型、コンソーシアム型、大企業主導型など多彩なアクセラレーターが登場し、日本でもエコシステムの拡大・高度化が進んでいます。
一方で、プログラムの増加に伴い、その質や成果のバラツキ、スタートアップと大企業のコミュニケーションギャップといった課題も指摘されています。
Plug and Playでは、「プロダクトをより早く市場に浸透させたい」「大企業と協業しながら事業開発を進めたい」「海外展開や資金調達に関するネットワークを拡充したい」とお考えのスタートアップに最適なアクセラレータープログラムを用意しています。
以下より詳細情報をご覧いただき、応募に必要な要件やスケジュールを今すぐチェックしましょう。
また、「スタートアップとの共創をもっと進めたい」「新規事業開発のために外部リソースを活かしたい」とお考えの大手企業様には、オープンイノベーションの最新事例をまとめたeBookを発行しています。社内の課題抽出やアライアンス構築のヒントとして、ぜひお役立てください。
〈参照〉
(*1)グローバル・スタートアップ・キャンパス構想関連調査成果報告書
(*2)アクセラレーターによる スタートアップの育成