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ドイツと日本 - 水素を用いた事例とトレンド

2022/03/18

2022年2月18日に「ドイツと日本 | 水素を用いた事例とトレンド」をテーマに、基調講演およびスタートアップピッチセッションを実施し、約150名の企業やスタートアップの方々にご参加いただきました。ご視聴いただきました皆様、ありがとうございました。イベントの内容を以下にご紹介します。


アルダウシ コイルル リザル (Aldausi Khoirul Rizal)

Program Manager, Energy


1. イベント趣旨・登壇者のご紹介

今回のオンラインイベント(Plug and Play JapanとPlug and Play Hamburgの共同開催イベント)では、水素分野で最先端の技術を持つドイツの事例・動向をご紹介し、日本が目指す「水素社会」の“今”、そしてそれに向けての加速・実現となるヒントやインサイトをお届けするという目的で開催しました。

本イベントでは、Plug and Play HamburgのDirectorであるSallar Faridi、Renewable Energy HamburgのManaging DirectorであるJan Rispens氏、経済産業省(以下、METI) 環境政策課総括係長 太田優人氏、千代田化工建設株式会社 水素事業部池田部長代行 池田修氏にゲストスピーカーとしてご登壇いただきました。

また、Hy2genのCEO Cyril Dufau Sansot氏、FuelSaveのCo-Founder Marc Sima氏、Keyouの Fundraising担当 Robin Zalwert氏といった、ドイツスタートアップ3社によるピッチセッションも実施しました。

2. Plug and Play Hamburgの挨拶

Plug and Play Hamburg, Direcor Sollarのコメント

DirectorであるSallarからPlug and Play Hamburgの水素の取り組みについてご紹介しました。

「Plug and Play Hamburgは、ヨーロッパでサプライチェーン・ロジスティクス、海上輸送、そして最も新しいプロジェクトである「H2 Startup Accelerator」を通じて水素にフォーカスしています。Shell社、Fraunhofer社、EPRI社、そして近々発表される他のパートナーとともに、テクノロジーと産業、そしてスタートアップエコシステムの間のギャップを埋める道を歩むために、このプログラムを立ち上げることにしたのです。エコシステムには、ひとつの業界にこだわらず、さまざまな業界のパートナーを集めています。航空宇宙、トラック輸送、道路輸送、船舶、海運、そして住宅インフラプレーヤーも巻き込んでいます。様々なプレイヤーが集まり、それらの課題だけでなく、水素の経済に関する知識やノウハウも交換していきたいと思います。水素と気候変動、特にエネルギー転換は世界的なテーマであり、本プログラムはすでに、世界中のさまざまな企業から、水素に関するさまざまな話題や関心が寄せられています。弊社は、水素の分野でエコシステムを連携させ、さまざまな変化やオープンイノベーションを一緒に実現できると信じています。」

3. Renewable Energy Hamburgによる基調講演

Managing DirectorのJan氏からハンブルクやドイツでの水素の動きについてお話をいただきました。

ハンブルクにおける水素の動きについて

スライドの通り(画像1)、ドイツの地図に62のプロジェクトが表示されています。これはヨーロッパ共通利益に適合する重要プロジェクトを表しており、通称「IPCEI(Important Projects of Common European Interest)」と呼ばれています。 全体で330億ユーロ、民間投資家からは200億ユーロの投資を受け、国家規模で2ギガワットの電解槽、17kmの水素パイプライン、石油や化学、モビリティなどに焦点を当てたプロジェクトとなっています。ドイツ北部、特にハンブルクに特別な焦点が当てられていることがわかります。ハンブルク周辺では12のプロジェクトが並んでおり、そこでグリーン水素を製造するコンソーシアムとしてHamburg Green Hydrogen Hub が設立されました。全体で12社、投資額は16億ユーロ、公的資金は5億2,000万ユーロです。2030年までに年間100万トンのCO2排出量を削減することを目指しています。

ハンブルクにおける今後の水素戦略について

再生可能エネルギー、風力発電、太陽光発電の増強は必要であり、それが水素革命を可能にする核心だと考えています。我々が水素経済において重視しているのは、基本的に3つの異なる側面です。まず1つ目は、ドイツ国内でのグリーン水素の製造に焦点を当てます。再生可能エネルギー能力と既存インフラの改善にも力を入れる必要があります。2つ目は、海外からのグリーン水素の輸入です。ドイツ国内ですべての水素を製造できるとは考えておらず、輸入品が必要なのは明らかで、サプライチェーンの拡大が必要です。3つ目は、ハンブルクにおける水素の利用について、セクター別に焦点を当てて、その中でもハンブルクはエアバス社のある航空分野でも重要な街なので、水素の航空利用にも力を入れていきます。そして約20年後には、非常に流動的な市場で生産者と消費者をつなぐ、完全な国家的水素経済が実現すると考えています。

4. METIによる基調講演

環境政策課総括係長 太田氏から日本の水素に関する取組状況や政府の成長戦略についてお話を頂きました。

グリーン成長戦略について

日本では、2年前の10月にカーボンニュートラルを2050年までに実現すると言う宣言をしましたが、これまで地球温暖化に関する対応策というのは、必ずしも経済成長・成長戦略と密接に連携する位置づけではありませんでした。しかし、スライドの通り (画像2)昨年度から方針転換をし、グリーン関係の対応をまず成長戦略として取り組んでいく必要があると判断しました。

その中で、水素はもちろん重視しているテーマの一つで、水素自動車の普及などのように、カーボンニュートラルを実現すると同時に、ビジネスの推進もやって行きます。こういった経済的な波及効果、経済的なインパクトの目標として2050年までに290兆円の経済効果をもたらすと同時に1800万人の雇用を新しく生み出して行くことを目標にしております。

水素の取り組みについて

日本はドイツと同様に水素の輸入が重要になっています。海外から輸入するにあたって輸送・貯蔵の技術というコスト低減、商用化を進めていく必要があります。日本は島国のため、海上輸送がメインになります。すでにサプライチェーン構築が進んでいますが、さらにコストを下げていくための研究開発が必要です。そのための国の予算額としては3000億円を上限として開発を進めております。

当然、輸入だけではなく国内生産も重要です。すでに日本は福島で最大級の水素生産プラント、水電解装置がありますが、これをさらにほかの場所でも広げていく必要があります。2030年までに国内導入量最大300万トン、2050年までには2000万トン程度を目標としています。日本国内での水素生産を拡大するには水電解装置のコスト低減が必要になっており、そのために国の予算として700億円を上限として開発を進めています。直近は山梨県で日本企業を中心に8社ほどとドイツのシーメンス社も参画し、水電解による水素製造研究開発を進めています。このように日本とドイツの技術の力をうまく連携しながら、水素製造及び技術開発コスト削減に勤めていき、国際的な水素の導入の促進を進めていきたいと思っています。
そして今年の4月から、34億円の国の予算をグリーン関係スタートアップのためだけに用意しており、スタートアップの研究開発の支援を進めています (NEDOスタートアップ支援)。

5. 千代田化工建設株式会社による基調講演

水素事業部池田部長代行 池田氏から千代田化工建設の水素取り組みについてお話をいただきました。

水素輸送技術の注力技術について

日本はなかなか国産の水素だけでは、これから伸びていく水素の需要を賄い切れないということで、水素を輸入してくる必要があります。当社の経営理念として「エネルギーと環境の調和」があり、まさに今1つの重要なビジネスとして水素に取り組んでいます。いかに大量に、長距離の水素輸送・貯蔵を安全かつ効率的にやっていくかが1つの大きなポイントになってくると認識しています。当社はエンジニアリング会社として、さまざまな技術をサポートしており、特にアンモニアの直接利用と水素キャリアとしてのMCH (メチルシクロヘキサン)、この2つに特に注力して進めています。

6. スタートアップ紹介

Hy2gen

Hy2genの技術は、100%再生可能エネルギーで水から水素を電気分解で取り出し、グリーン水素のみを生産しています。ユースケースとして、当社はアンモニアやジェット燃料、バイオメタノールなど、あらゆる場所に簡単に運ぶことのできる商品を生産することができます。約15カ国でグローバルのプロジェクトを行っており、日本やドイツなどの国々に輸出できるように、海運業にグリーンアンモニアを提供しています。

・FuelSave

FuelSaveは、持続可能で実行可能なクリーン燃料をモビリティおよび定置電力用途に活用させ、お客様を支援しています。例えば、メタノールやバイオガスなどのH2キャリアを改質することに注力しています。また、普通車両や農業用車両等のレトロフィット(改造)を行う実績もあり、環境的なメリットと経済的なメリットを提供しています。

・Keyou

Keyouは、大型エンジンの改造に力を注いでいます。水素燃焼プロセスやエンジンの運転制御をし、ソフトウェアとハードウェアのコンポーネントを提供しています。これにより、ディーゼルや化石燃料ベースのあらゆる内燃機関を水素で作動させることができます。Keyou社の強みはコスト面で完全に格差のあるゼロエミッション車を提供することができます。

7. 最後に

いかがでしたでしょうか?ドイツ・日本での水素の取り組みや最先端技術、そして今後の動向についてご紹介しました。グローバルでの水素社会の実現に向けて、水素製造技術、輸送技術、コスト削減などの研究が今後も重要になってきます。日本とドイツだけではなく、様々な国での促進も必要であり、Plug and Play Japanでは引き続き、「海外と日本」の連携を推し進め、皆様と共にエコシステムの活性化に力を尽くしていきたいと考えています。
今後もエネルギー業界を盛り上げるためにこのようなテーマ別のイベントを開催していく予定ですので、ぜひお楽しみに!

Special thanks to:
・ご登壇いただいた皆様
・イベントの準備・運営にご尽力いただいた方々
・イベントご参加いただいた皆様

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