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大阪府x東京都対談|スマートシティ戦略において、民間企業との連携で重要なこととは

2022/11/09

Plug and Play Japanでは202012月にスマートシティ領域のアクセラレータープログラムを創設後、大手企業とスタートアップとの共創支援を軸に活動してまいりました。第三期となるBatch 3プログラムからは​​活動拠点を拡大。これまで大阪を中心にプログラムを展開していましたが、東京拠点でも活動を開始しました。プログラムの成果発表会であるデモデイ「Smart Cities Batch 3 EXPO」では、キーノートセッションに都市型スマートシティの推進に取り組む大阪府スマートシティ戦略部戦略推進室地域戦略推進課長の山縣敦子氏、東京都デジタルサービス局サービス開発担当部長の荻原聡氏をお迎えし、スマートシティ実現のための取り組みや、課題、民間企業との連携について対談形式でお話を伺いました。

(本記事は202276日に実施された「Smart Cities Batch 3 EXPOKeynote Sessionの内容をもとに作成しています)


Writer: Yuki Nakatani

Junior Marketing Associate


Speaker: 山縣敦子氏

大阪府スマートシティ戦略部戦略推進室地域戦略推進課長

2025年万博に向けて、テクノロジーを活用して住民のQoLを向上させ、公民連携で持続可能な“大阪モデル”のスマートシティを実現すべく日々奮闘中。企業や団体のネットワークを活かした府域全体のスマートシティ化の推進に取り組む「大阪スマートシティパートナーズフォーラム」や、シニアの方々が住み慣れた地域で安心して過ごし続けられるようICTを活用し様々なサービスをタブレット等で提供する「大阪スマートシニアライフ事業」、行政の情報化に係る市町村の支援事業等を総括。


Speaker: 荻原聡氏

東京都デジタルサービス局サービス開発担当部長

シスコシステムズ合同会社を経て現職。デジタルテクノロジーで都民生活の質を高める「スマート東京」の実現に向けた取り組み、最先端技術を活用した新事業の創出などを戦略的かつ加速的に推進し、世界に誇れる都市東京の実現を目指す。 また、都庁各局や区市町村のデジタル行政を実現するため、デジタルトランスフォーメーション推進に向けた取り組みを技術面からサポートしている。


Moderator: 武方浩太朗

Plug and Play Japan Program Lead, Smart Cities

新卒で総合商社へ入社。情報・通信関連分野において新規事業開発やスタートアップ投資に従事。国内のパートナー企業とスタートアップとの新規事業の立ち上げに参画した後、衛星通信分野の関連会社へ出向。電力会社向けの衛星通信事業をプロジェクトリーダーとして牽引。2018年より、同社の米国シリコンバレー拠点へ赴任。現地の有力VC及びスタートアップへの投資を実行。また、ポートフォリオのスタートアップとの東南アジアにおける新規事業立ち上げを実施。2022年2月よりPlug and Play Japanへ入社。スマートシティ領域の東京拠点責任者としてアクセラレータープログラムを統括。


Keynote Sessionの様子)

東京都と大阪府におけるスマートシティの取り組みと成功のためのキーポイント

ーーまずは東京と大阪それぞれのスマートシティに対する取り組みについて教えていただけますか。

山縣氏:

大阪のスマートシティは、現知事の就任時から、デジタルの力を活用した住民の生活の質(QoL)の向上を目指して動き始めました。大阪府スマートシティ戦略部は20204月に設立し、現在約100人の体制です。部設立当初、Plug and Play Japanをはじめ複数の企業と大阪府が事業連携協定を締結し、連携した取組を進めていましたが、多数の企業の皆様とスピーディーに連携する取組を進めていくため、プラットフォームの必要性に気づいた私たちは、府内43市町村、企業、大学等とともに、大阪スマートシティパートナーズフォーラム(OSPFを立ち上げました。現在、このプラットフォームに430以上の企業や団体が参画しており、月に2回程度、セミナーやワーキンググループ、ピッチイベントなどのイベントを開催しています。このように私たち大阪府は、市町村が抱える地域·社会課題解決に向けたスマートシティの取組を進めるためのプラットフォームを運営する事務局を担っています。

Plug and Play Japan Smart Cities Batch3 EXPOで基調講演を行う山縣氏)

荻原氏:

私のミッションは東京都の各部門を繋ぎ、 東京都の他部門をデジタル化することです。 その中でのスマートシティの取り組みとして、5つの実験エリアで「スマート東京」の推進に取り組んでいます。まず西新宿、そして大学のある八王子、そして東京の湾岸エリアです。そしてスマートシティがとくに進んでいる地域である、丸の内、有楽町、豊洲エリアなどの都心部では、データ·サービス連携基盤を構築しています。

Plug and Play Japan Smart Cities Batch3 EXPOで基調講演を行う荻原氏)

ーー大阪府では自治体との連携に対してプラットフォームを活用されていますが、スマートシティ戦略における成功のためのキーポイントや難しさについて教えてください。

山縣氏:

最初にこの取り組みを始めた際、大阪府だけで何かをしようとするのではなく、市町村と連携を取ることが一番重要だと考えました。そのため、市町村とのコミュニケーションに注力しました。 人と人との繋がりを意識することは非常に重要だと考えており、プロジェクトをよりスムーズに進めるための第一歩だと感じています。これは大手企業やスタートアップにも通ずることだと考えています。

プラットフォームという体制を取ることで 「なぜ大阪がこのようなことに取り組んでいるのか」というメッセージを打ち出しやすくなるとともに、事務局として市町村や企業と一緒に取り組む形を取りやすくなります。

ーー東京都ではスマートシティ推進のためのいくつかの先行エリアがあると思うのですが、なぜ今のようなプロジェクトの進め方をしているのでしょうか。

荻原氏:

東京都では少数の先行実施エリアがありますが、都心部では特に民間企業が主体的に推進するプロジェクトを我々が後押しして進めています。我々としてはそのような先行エリアにおける成功体験を他のエリアにも横展開していくことが今後の鍵になると考え、スマートシティ化の波を拡大する点にフォーカスし、区市町村へのファシリテートを行っています。

地域間や民間企業との連携の重要性

ーー東京都の先行エリアにおける取り組みや企業との協業に関して、どのような苦労がありましたか。

荻原氏:

東京都の先行エリアでの取り組みについて、良かった点はすでにスマートシティに取り組んでいる企業群があったことです。また、各エリアに特化したエリアマネジメント団体などの組織もあるため、彼らも交えて対象エリアをどのように活性化し、より良い街づくりをしていくかということについて話し合いました。

今後の課題としてはデータ連携が挙げられます。たとえば地域ごとにデータや情報を持っており、それらを蓄積するだけではなく他の地域とも共有していく必要があるのですが、データのフォーマットなどが異なり連携の妨げになっているといった課題があります。また先進地域とは言っても、そこだけで物事が完結している訳ではなく、たとえば丸の内であれば豊洲や竹芝にも繋がっていきます。人々はそういった境界を気にせず動いているので、私たちはデータを繋げてエリア間での動向を捉える必要があります。

ーー大阪府ではプラットフォームが企業と市町村のハブになっていますが、どのようにコミュニケーションのレベルを合わせていますか。また、官民で連携する際に苦労することはありますか?

山縣氏:

私たちは事務局として、課題を持った市町村にアプローチしたい企業があれば、ミーティングをセッティングし、その後も伴走して進めていきます。企業がすでに市町村にアプローチしてうまく進んでいる場合は、お任せしています。

企業と連携する際のコミュニケーションに関しては、同じ社会課題に共感しているかが鍵になっていると思います。ただ単にサービスをご説明くださるだけではなく、社会課題を解決するための手段だと伝えられると、一度試してみようという気持ちになります。 だからそういった熱意が感じられたら、協業が実現するように努力します。

ーー東京都ではいかがでしょうか?都市と企業の連携に難しさを感じることはありますか。

荻原氏:

山縣氏がおっしゃっていたように、 企業のソリューションを見て、社会課題を解決しようとしているかどうかを確認します。課題解決への熱意が感じられる場合、私たちもその情熱に動かされることはあります。ただ単に「私たちのソリューションは素晴らしい」と言うだけでは、一緒に仕事をするのは難しいですね。

スタートアップや大手企業に期待することとは

ーー社会的な問題を解決することと、売上を上げることのバランスを取るのは本当に難しいことですが、大手企業とスタートアップとの交流はどうでしょうか?スタートアップの取り組みを加速させたいとおっしゃっていましたが、スタートアップと大手企業をつなぐことは難しいのでしょうか?

(パネルディスカッションの様子)

荻原氏:

そうですね。スタートアップの皆さんにお願いしたいこととしては、どのようなソリューションがあるのかを積極的に教えていただきたいです。「この問題を解決することができますよ」というような提案でも良いかもしれません。それから大手企業にお願いしたいのは、スタートアップの支援です。スタートアップが持っているソリューションの改善点を大手企業が支援できるのであれば、本当に素晴らしいことだと思います。 もちろん大手企業のシステムも先進的で素晴らしいものですが、スタートアップには瞬発力とスピードがあります。大手企業の持続力とスタートアップの先進技術によって、区市町村が抱える問題を解決するために継続的に支援していきたいと考えています。

ーースタートアップや大手企業と一緒に仕事をすることの長所と短所、期待することがあれば教えてください。

山縣氏:


大手企業の長所は体力がある点です。人材も資金もあります。 しかし、スタートアップ企業の場合、素晴らしいアイデアと熱心なチームが長所である一方で、体力面が短所になります。そのため、私たちは大手企業とのコネクションを構築して財務的に安定させるなど経営資源を確保することで、大阪府から「このようにスタートアップ企業を支援し、適切な企業パートナーにつなげることができますよ」というメリットをお伝えしています。

ーーもうひとつお聞きしたいのは、どのように企業との交流を図っているのかということです。大阪にはプラットフォームがあり、東京では公募を中心にさまざまな企業のアイデアを受け入れていますね。それぞれのアプローチの長所と短所を教えてください。

荻原氏:

公募の良い点は非常に幅広いアイデアが得られることです。私たちはスタートアップが持っているソリューションをすべて知っているわけではないので、門戸を広げることによってさまざまな情報を得ることができると考えています。

山縣氏:

大阪府の場合、企業ではなく市町村に助成金を出す形が多く、企業には市町村とパートナーになってもらいたいと考えています。プラットフォームでは公募の代わりとして、企業に対して直接補助金を提供する形をとっています。

武方:

ありがとうございました。Plug and Playもイノベーション·プラットフォームとして、企業同士の連携支援に留まらず官民をつなぐ役割も担っていきたいと思います。

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