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サーキュラー・エコノミー実現に向けて日本が抱える課題と可能性「第二回 Circular Construction Challenge 循環型建設事業への挑戦」

2022/11/09

サーキュラーエコノミー実現に向けた「建設」に関わる業界の在り方について議論する『Circular  Construction Challenge』プロジェクト。本取り組みは現状と社会のニーズを知り、各企業が取り組んでいる成果や課題を共有し、何ができるかについて議論することを通じて、業界を横断的に議論できるネットワークの形成を目的としています。前回は「マインドシフト」をテーマにリニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへのビジネスモデルの転換に取り組む企業事例をご紹介いただき、サーキュラーエコノミーの観点から建設業界が抱える課題について議論しました。第回目となる今回は「これからどのようにサーキュラーエコノミーに取り組めばいいのか」についてきっかけを掴んでいただければと思い、Circular Initiatives & Partners代表であり世界経済フォーラムGlobal Future Council on Japanメンバーでもあるサーキュラー・エコノミー研究家の安居昭博氏、世界の建築をリードするFoster + Partnersからトニー三木氏、エシカルデザインでサーキュラーなリノベーションサービスを展開する株式会社船場から神戸暁氏をお招きして、ヨーロッパの先進事例や先駆的に取り組まれている設計・建設の事例、建物の内部のサイクルの事例についてご紹介いただきました。本記事では第二回目として2022531日(火)に実施されたイベント内容を振り返りお届けします。


Writer: Ai Fujii

Plug and Play Japan Marketing Intern


Speaker: 安居 昭博氏

Circular Initiatives & Partners 代表


Speaker: トニー 三木氏 

Foster + Partners Partner


Speaker: 神戸 暁氏

株式会社船場  執行役員 エシカルデザイン本部長 兼 ゼロウェイスト推進室長 一級建築士


Speaker: 一居 康夫氏

株式会社大林組  設計ソリューション部 部長 


Speaker: 小宮 信彦氏

株式会社電通 ソリューション・デザイン局 事業共創グループ統括 チーフ・ビジネス共創ディレクター 兼 事業構想大学院大学 特任教授 


ヨーロッパの先進事例に見るサーキュラーエコノミー実現への可能性(Circular Initiatives & Partners 安居氏)

 サーキュラーエコノミーとは従来の一方通行型の大量生産・大量消費モデルと異なる、廃棄の出ないビジネスモデルを基にした新しい経済モデルを指します。その最も大きな特徴は、企業が新しいビジネスモデルを構築する際や国が政策を定めていく際、計画当初から廃棄の出ない仕組み作りがされている点にあります。

(資料提供:Circular Initiatives & Partners

 現在、国内海外でサーキュラーエコノミーへの関心が高まっている要因の一つに世界人口の増加があげられます。その他にも地下資源の枯渇や環境汚染といった環境問題の影響力が大きくなっていることや、大量生産・大量消費・買い替え需要に依存する短期的経済モデルへの懐疑から、サーキュラーエコノミーへの注目が集まっていると考えています。今後日本企業がサーキュラーエコノミーを取り入れていくにあたって、既存製品をサブスクリプション型販売にするだけでは十分とは言えません。修理や再活用を踏まえた抜本的な製品の設計・デザインを見直す「サーキュラーデザイン化」の重要性が高まっています。

 ヨーロッパでは消費者の「修理する権利」が強化されており、修理しやすい商品設計でなければビジネスを継続できなくなるという勧告がメーカー側に通達されています。この「修理する権利」は地域経済の活性化に繋がると考えており、この点において日本には大きな可能性があると思っています。現在サーキュラー エコノミーが進められるなか一部では「市場」と「製造・修理・再生産拠点」の近距離化がすでに見られています。これまでは生産機能を一度発展途上国に移し、再び日本に持ち込んだ製品を国内で廃棄していましたが、今後は製造・修理・再生産・再出荷拠点を同じ地域の中に構えることで、製品が再びそれぞれの拠点に戻ってくる循環型の地域経済モデルを作り出すことが期待されています。

(資料提供:Circular Initiatives & Partners

設計過程がサーキュラー建築に与える影響(Foster + Partners トニー氏)

 日本は2050年までにネットゼロ、2030年までに46%までCO2排出量を削減する目標を掲げていますが、他国と比べるとまだ不十分です。今後時間の猶予がない中で取り組まなければならない課題は、エネルギー関連をはじめとして多く残されていますが、日本でもサーキュラーエコノミーの勢いが増していることは確かです。すでに一部の自治体はパリ協定に沿ってゼロエミッションを掲げたり、14項目のカーボンニュートラルの優先分野を表明したりしています。

 建築業界として排出炭素の総量を削減するためには、設計過程において運用炭素だけでなく、内包炭素を想定した計算を行うことが重要だと考えています。運用炭素とは竣工後の建物を運用する上で発生する炭素を指し、内包炭素は建設段階で発生する炭素のことを指します。排出炭素量を60年の建物ライフサイクルの概念に基づいて検討したところ、運用炭素はライフサイクルの4割、内包炭素は6割を占めることが分かっており、建築業界には大きな責任があるといえます。

 Foster + Partnersでは、「持続可能な設計」という概念を50年以上企業活動の根底に置いており、2019年にはサステナビリティマニフェストを策定し、パリ協定に基づく設計をすることを表明しました。強みである自社開発のデータベースなどを武器に首尾一貫したプロジェクトを実行し、パッシブデザインや低炭素の設計も取り入れながらサーキュラーエコノミーに取り組んでいます。

 今後も、設計やその過程で行う選択がさらに大きなインパクトを持ち続ける可能性があるため、初期設計段階から竣工後の運用段階までを総合的に考慮することが不可欠になると考えています。また、当社の責任として適応性・柔軟性が高く、かつ分解しやすい建物を設計していく必要があると考えています。

(資料提供:Foster + Partners

エシカルデザイン思考から共創によるリノベーションのプラットフォームを創る(株式会社船場 神戸氏)

 株式会社船場の業界は、都市開発における建設業の中でも総合内装業にあたります。この業界をマクロで捉えると、既存の建築ストックのリノベーション、再生・利活用の側面から社会の循環に貢献できていると感じています。一方、ミクロで捉えると迅速なスクラップ&ビルドを繰り返す業界でもあり、できあがったばかりの空間を経済的な理由から撤去するなど、膨大な廃棄物に向き合い続けてきました。株式会社船場ではこのような課題を新たな価値創造の大きなチャンスだと捉え、廃棄計画の改善、エシカルデザイン戦略の導入、新事業領域拡大に取り組んでいます。

 建設現場でおこなった廃棄量の調査結果から、分別されていない廃棄物が4分の1を占めることが判明し、これを削減することから建設系産業廃棄物のマネジメント向上に向けたチャレンジが始まりました。廃棄物を資源として取り扱い、新たな価値を持って使用するというアイデアのもとCircular Renovation®の取り組みを進めています。

(資料提供:株式会社船場

 また素材の循環を研究するエシカルマテリアルの活動では、建設廃棄物のリサイクルで得た知見から、メーカーの環境配慮型の素材を分析し、そこで得た「きづき」を業界を超えて共有するプロジェクトや、産業領域を超えた共創プロジェクトなど業界を超えてつながるプラットフォームの構築にも取り組んでいます。

 このような物理的・社会システム的・マーケティング的アプローチを掛け合わせたモデルを採用し、循環型サプライチェーンからソーシャルビジネスを創る取り組みを進めていきます。主事業である空間創造事業をソーシャルビジネスとして昇華させることを目標に、サーキュラーエコノミーを加速させるためのチャレンジを今後も続けていきたいと考えています。

(資料提供:株式会社船場

パネルディスカッション(一部要約/抜粋)

(パネルディスカッションの様子|写真左より:小宮氏、一居氏、安居氏、神戸氏、トニー氏(オンライン参加))

ーーどのようにしてサーキュラーエコノミーに”付加価値”と”経済性”を見出すべきか?

トニー氏:設計をする上で将来的に「建設サーキュラー」を必要なくする観点が重要だと思います。設計段階から壊す必要のないフレキシブルかつ将来的に他機能に活用できる建物を創ること、またそれに応じて、マテリアルの選択や廃材の利活用を通して建物をモジュール化して設計していくことが必要だと思います。今後は新しい建物を創るよりも、今ある建物をどのように活かしてCO2排出量を下げるかに着目することで、「建設サーキュラー」が活発化していくでしょう。

安居氏:社会全体がサーキュラーだった江戸時代の生活のように、古き良きコンセプトと最新のデジタルテクノロジーを掛け合わせていくことも重要な考え方だと捉えています。また、これまで途切れていた業界の上流過程から下流過程を全体で捉えて連携をしていくことの先にサーキュラーエコノミーの未来や発展が見えてくると考えています。

一居氏:サーキュラーエコノミーの経済合理性を証明していくことには難しさが残る反面、価値観の転換への兆しが見られています。例えば新築のビルを供給する際に全て新品の製品を使用していたのを、同じ性能の中古品を利活用する発想に転換し共通認識を形成できれば、コストを上げずに同様の価値を提供し、更にモノの転用にも繋げられる可能性があると思います。

神戸氏:テクノロジーの発達と共にものづくりの分野における新しい可能性を日々感じています。廃棄物処理に関しては、一次産業で出たものを二次や三次に循環させることで新たに価値化できる可能性が大いにあると思います。

小宮氏:サプライチェーン全体でモノや情報を共有することの重要性を感じています。違う目線を持つ人からアドバイスが得たり、新しい価値が生まれたりすることから価値の作り方が変わり、経済性も変化していくのではないでしょうか。

ーー”建設サーキュラー”の実現に向けて、誰がどのようにリーダーシップを取るべきか?

神戸氏:業界を超えた取り組みを推進していくことが必要だと思います。弊社では、解体したものを再構築する循環の起点になるという意味でリサイクル工場を重要視していますが、再生資源を使う人がいないと工場は回らないので、サプライチェーン自体を共創していくことが不可欠だと考えています。

安居氏:私たち一人ひとりがポジションやスキルを活かしてリーダーシップをとること、そして周囲と連携することが重要だと思います。日本は、ものづくりで発展してきた背景から、発想やアプローチがものづくり型になることが多いですが、一度この発想を解体して、上流と下流の連携やモノ以外のサービスの提供、技術のみに頼り切らないアプローチといった観点を新たに汲み上げることも必要だと考えています。

一居氏:従来の業界の定義としての発注者と受注者の関係性は崩れてきています。今後は、昔の茅葺家屋の吹き替えを集落みんなで実施したような、ある意味祝祭的な側面を持つ関係性、言い換えればリーダーシップという形ではなく全員が利害関係者であるという進み方も生まれてくるのではないでしょうか。

トニー氏:企業や行政、デベロッパー、設計者を含めた全ての人が サーキュラーエコノミーに取り組めば、それが生活基準や設計基準の当たり前になっていくと思います。日本にはエコシステムが既にあるので、今後は何をするかに注目していくことで、各ステークホルダーが連携してサーキュラーエコノミーを推進するムーブメントを創り出すことができると考えています。

小宮氏:業界を超えて情報を共有し多様なインサイトを得て、価値の作り方を変えることが必要だと思います。その中でも、各々の立場で何ができるのかについて同じ思想の元で取り組み、イノベーションを起こしていくことが サーキュラーエコノミーの出発点になっていくのではないでしょうか。

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