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廃棄プラスチックをなくすアライアンス 「Alliance to End Plastic Waste」 Batch 1 EXPO開催レポート

2022/11/07

2022年9月21日に「Alliance to End Plastic Waste(以下、AEPW) | Batch 1 EXPO」をオンライン、オフラインのハイブリッド形式にて開催しました。関係者からのご挨拶、CLOMA澤田会長によるゲストスピーチに続き、スタートアップ、企業パートナーからのピッチセッションを実施し、約200名の企業やスタートアップの方々にご参加いただきました。ご参加、ご視聴いただきました皆様、ありがとうございました。本記事ではイベントの内容を以下にご紹介します。


AEPW : End Plastic Waste Innovation Platformプログラムについて

AEPWは廃棄プラスチック問題の解決と循環型経済の促進のために2019年に発足した国際的な非営利団体であり、世界約30か国で50以上のプロジェクトの支援活動を行っています。AEPWには、プラスチックの製造から加工、販売から回収・リサイクルにいたる全てのプラスチックバリューチェーンに携わる企業や政府機関、環境・経済開発NGOなど90以上の企業・団体が世界各国から参画しています。業種の垣根を越え「廃棄プラスチックをなくし、循環型経済を実現する」という国際的な目標を達成することを目的に、日本では2022年3月にPlug and Play JapanとAEPWにおいてプログラムを立ち上げました。


アジェンダ

開会のご挨拶
ゲストスピーチ
リバースピッチ
スタートアップピッチ
セレモニー
閉会のご挨拶

Opening Remarks | Phillip Vincent, Plug and Play Japan CEO / Managing Partner East Asia

オープニングに先駆け、Plug and Play Japan株式会社CEOであるPhillip Vincentより、日本でAEPW EXPOを開催できることに関して感謝の意を申し上げると共に、Plug and Playについて、またPlug and Play Japanの取り組みについてご紹介しました。

Greetings | Nicholas Kolesch, AEPW Vice President of Project

本社のあるシンガポールから来日されたAlliance to End Plastic Waste プロジェクト担当副社長であるNicholas Kolesch氏に、プログラムに対する想いについてお話しいただきました。

「日本にはプラスチックの循環型経済を推進するために必要な要素がすべて揃っています。例えば、利用可能な資源を尊重し、何度でも利用するという精神です。

廃棄物の流れの中でプラスチック廃棄物の価値を認識し、循環型経済へと移行させ、実現する機会が存在すると感じています。

シリコンバレーに始まり、パリ、シンガポール、上海、ヨハネスブルグ、サンパウロにも拡大し、今回7拠点目として東京で開催された本プログラムは、多くのイノベーターやソリューション・プロバイダーにアクセスすることができるという点でAEPWにとって非常に重要です。利用可能な資源を尊重し何度も利用するという精神が根付いている反面、機会がまだ十分に存在していない日本で、加盟企業とベンチャー企業の皆様と共に、プラスチック廃棄物循環型経済への移行を推進できればと考えています。」

Guest Speech | CLOMA(Japan Clean Ocean Material Alliance)澤田会長

Nicholas Kolesch氏からのご挨拶に続き、ゲストスピーチとして、CLOMA(Japan Clean Ocean Material Alliance)会長である澤田道隆氏からご講演いただきました。

「CLOMAは2019年1月に設立され、一般消費者向けのサプライチェーンを担う企業を中心に、機械メーカー、商社、シンクタンク、自治体などが参画しています。新たなプラスチックゴミの海洋流出防止をはじめ、海洋プラスチックゴミ問題への対応を行っており、ゆくゆくは、ジャパンモデルのソリューションを創出し、海外に展開していくことを目標に活動しています。

CLOMAでは、さまざまなアクションプランに取り組んでおり、2050年にはプラスチック製品の100パーセントリサイクルを目指しています。

具体的な取り組みとして、サプライチェーンの動脈と静脈の連携によってトレーサビリティの仕組みを構築するような開発や、サーキュラーエコノミーの実現に向けて自治体との連携を進めるなどしています。

2050年の目標達成には、設計段階からサーキュラーエコノミーを念頭に置くことが重要であると考えました。例えばCLOMAの中に、若手中心の未来デザインチームを設置し、どのようなデザインを、どのような人々と連携する必要があるのかについて考え、サーキュラーエコノミーが実現した未来の姿からバックキャスティングしながら、現在必要なことを検討しています。

また、もちろん現状からの改善、積上も重要であり、バックキャスティングでの考え方と現状の改善がきちんとはまるのは2030年頃であろうと考えています。

そのため、2030年に向けてはきちんと現状の改善を進めていき、バックキャスティングでの対応を立ち上げることを実現していきます。

先ほど申し上げた2050年の目標に向けては、2030年を目処に約8割を実現していきたいと考えています。社会課題の解決は少しずつ行うより、一気に解決していくような動きを作ることがとても大事だと認識しています。そのためには、CLOMAだけでは困難であり、国際的な団体や、既に取り組みを進めている団体と連携を進めていきたいと考えています。

2021年3月にはAEPWとのパートナーシップを締結することができました。今後も大きな志、サーキュラーエコノミーを一緒に実現していきたいと思います。

この後には、今回のプログラムで採択されたスタートアップ各社からの発表があるかと思います。

まだ小さいかもしれませんが、各社の取り組みは大変素晴らしいものかと思います。そのような各社の取り組みを今後、私たちも含めて更に大きな取り組みにし、将来的には世界に広げていくことを望んでおります。」

Alliance to End Plastic Waste Programについて

各ゲストからのスピーチの後、AEPW Initiative Leadである長谷川泰斗より、本プログラムに関してご紹介しました。

「AEPWとPlug and Playは2019年の10月に、Plug and Play本社のあるシリコンバレーにてパートナーシップを締結いたしました。

先ほどNicholasさんのお話にもございましたが、私たちはこの3年の間に、日本を含め、世界で7都市でプログラムを実施してまいりました。パートナーシップ締結後の2020年には、シリコンバレー、パリ、シンガポール、翌年にはサンパウロ、ヨハネスブルク、上海。そして、2022年にはここ東京でのプログラムを初めて開催するに至りました。

AEPW Programでは、他のグローバル拠点とも共通して、廃棄プラスチック撲滅に向けた8つの大きなトピックを設定しています。これらのトピックスをベースに、スタートアップをソーシング、スカウティングし、AEPWおよびAEPWのメンバー企業との連携を推進していきます。

AEPWにはグローバルで多くの企業が参画しています。そして7つの拠点での取り組みを通じて、今日までに大変多くの数字が積み上がってきています。

全体として3,000社以上をソーシングし、レビューを行い、少なくとも103社以上がプログラムに採択されています。また、現在も採択企業は増え続けています。メンバー企業との取り組みは大小合わせて160以上となり、120M USDもの資金が供給されています。

本プログラムは、他拠点と同様に準備期間を含めて6ヶ月、3ヶ月間のアクセラレーションプログラムとなります。先ほどの8つのトピックをベースに、各拠点で注力すべき課題やロケーションごとのメンバー企業の特性に応じてスタートアップを採択していきます。

ここ、日本でもおよそ150社からスタートし、各プロセスを経て11社が採択されました。3ヶ月のプログラムでは、AEPW 参画企業15社の皆様とさまざまな議論や検討を行い、未来に向けた取り組みがまさに始まったところです。日本のプログラムでご活動されたのは、15社のAEPW 参画企業の皆様、そして韓国から1社、日本から10社で構成された採択企業11社となります。

通常、オープンイノベーションというと、多くの皆様は大手企業とスタートアップ企業のマッチングを想像されることと思います。個社のニーズに即したソリューションを持つ相手との出会いがこれに当てはまるかと思います。

しかしながら、今回はこれに加え、大手企業同士の連携やスタートアップ同士の連携が生まれるという状況を目の当たりにすることができました。これは、大手企業も採択スタートアップも全てがプラスチックバリューチェーン上のプレーヤーを構成し、全ての参加者が廃棄プラスチック撲滅という大きな目標を共有しているからだと感じています。」

AEPW参画パートナー企業からのリバースピッチ

AEPW Japan Programにご参加いただいたAEPW会員企業を代表して5社の企業から、各社の目指す姿、またプログラムにおける進捗、成果について発表いただきました。

発表いただいた企業は以下の通りです。

 

・BASFジャパン株式会社 入江剛氏

・ダウ・ケミカル日本株式会社 柴田博和氏

・稲畑産業株式会社 吉田紳氏

・キリンホールディングス株式会社 別所孝彦氏

・三菱ケミカル株式会社 石居太郎氏

スタートアップピッチ

今回のプログラムでは、日本および韓国から11社の企業が採択され、3ヶ月のプログラムに参加しました。パートナー企業からのリバースピッチに加え、採択企業からも自社サービスやプロダクト、そして本プログラムでの進捗、成果について発表いただきました。

また、各社からのピッチの後には住友化学株式会社から星野正大氏、Plug and Play Japanからは松井陽菜が代表して採択企業Q&Aセッションを行いました

・AC Biode株式会社

プラスチックの中でも最も解重合*が難しいものの1つであるポリエチレンを対象に、従来より低温低圧で解重合する触媒の開発を大阪大学と進めています。その他にも、世界初の独立型交流電池の開発、各種灰を吸着剤・抗菌剤にアップサイクルする技術を開発・展開しています。

* 物質が熱あるいは紫外線・放射線などの作用によって分解し、単量体になること。

所在地:ルクセンブルク大公国エスペレンジ地区

URL:https://www.acbiode.com/

・會澤高圧コンクリート株式会社

MIT(米国・マサチューセッツ工科大学)のスタートアップであるMiConテクノロジー社と連携し、細骨材の代替として廃棄プラスチックをコンクリート材料に使用できるようにする技術を開発しています。同時に、廃プラを改質しコンクリートの材料として大量に使えるよう、セメントなどとプレミックスした混和剤*としての商品開発にも取り組んでいます。

*コンクリートを作る際に使用する材料

所在地:北海道苫小牧市

URL:https://www.aizawa-group.co.jp/

・株式会社digzyme

生命科学研究のビッグデータから、バイオインフォマティクス手法*1を用いて化合物のバイオ生産のための酵素反応を創出し、遺伝子探索する技術を開発しています。プラスチック問題に対しては酵素反応を用いた新規のケミカルプロセス*2を開発するポテンシャルが有り、これまでにバイオ化は難しいと思われていたターゲットに対しても有効なケミカルプロセスを提供します。

*1 DNAやRNA、タンパク質等、生命が持つ様々な「情報」を対象に、

情報科学や統計学などのアルゴリズムを用いた方法論やソフトウェアを開発し、

それらを用いた分析から生命現象を解き明かすこと

*2 1つまたは複数の化学物質または化合物を何らかの形で変更するプロセス

所在地:東京都港区

URL:https://www.digzyme.com/home

・株式会社イーアイアイ

最先端のAI / IoT技術を用い、廃棄物処理施設の手選別作業を軽減する廃棄物AI自動選別ロボットを開発しています。さらに、AI火災防止監視システム、AI自動配車システムの構築や、AGV、スマートごみ箱によるシステム構築など、現場ニーズを踏まえたユニークな製品開発を進めています。

所在地:東京都千代田区

URL:https://eii-net.co.jp/

・環境エネルギー株式会社

廃プラスチックの油化装置(HiCOP方式)やバイオジェット、バイオディーゼル、バイオナフサなどのバイオ燃料製造装置(HiBD/HiJET方式)を開発しています。油化による廃プラスチックのケミカルリサイクルループ構築とバイオ燃料製造の事業化により、途上国の廃棄物問題や第一次産業が直面する所得・教育格差を是正する新しいビジネスモデルを創造し、様々な社会課題を解決したいと考えています。

所在地:広島県福山市

URL:https://www.kankyo-energy.jp/

・株式会社カマン

食品のテイクアウト時の使い捨て容器を削減するため、リユース容器シェアリングサービスを展開しています。リユース容器はスマホで簡単に借りることができ、対応店舗であればどこでも返却できます。また、シェアリングに最適な容器と、それらの容器をトラッキングできるシステムを開発中です。

所在地:神奈川県鎌倉市

URL:https://megloo.jp/#home

・マイクロ波化学株式会社

直接・選択加熱や急速昇温が可能で、分解プロセスの飛躍的な効率化・CO2排出量の削減を可能とするポテンシャルを有する、マイクロ波を使った熱分解や解重合技術を開発しています。マイクロ波によるプラスチック分解の技術プラットフォーム「PlaWave」を構築することにより、あらゆる廃プラを最適に分解処理・再資源化することを目指しています。

所在地:大阪府吹田市

URL:https://mwcc.jp/

・株式会社ワンワールド

プラスチック、石、金属等が混在しているゴミでも、対象物の加熱に最大700℃程度の過熱水蒸気を用いることにより、そのまま過熱分解処理できる独自の油化炭化装置「アーバンリグ」を開発しています。リサイクル困難とされる海ごみを、二酸化炭素を排出することなく、燃料として利用可能な再生資源として回収することが可能です。

所在地:大阪府大阪市

URL:https://www.1-world.asia/

・株式会社レコナイ

日本では自治体ごとにゴミの分別・処理方法が異なることに着目し、ゴミの写真を撮るだけで種類や分別・処理方法がわかるAIを活用したモバイルアプリを開発中です。2022年中にプロトタイプを完成させ、2023年には廃棄物処理場や東京都23区内で実証実験を行っていく予定です。

所在地:東京都江東区

URL:http://www.reconnai.com

・レコテック株式会社

企業が安心して一定品質の再生材を活用できるよう、サプライチェーン全体をデジタル管理し、品質・コスト・調達量・CO2の排出量に関する情報を提供する都市資源調達プラットフォーム「POOL」を開発しました。2021年から実証事業を重ねており、各プロセスの現場オペレーションに実際に関わりながら、既に17t以上のプラスチックを回収・管理した実績を持っています。

所在地:東京都千代田区

URL:https://recotech.co.jp/

・Repla Inc.

今回唯一の韓国企業で、混合プラスチックを分解し、単一素材のみを残して簡単にリサイクルできる微生物バイオリアクター*を開発しています。PET・PVC・PS・PP・PEに対応できることに加え、残すべきプラスチック材料の純度は99.65%とほぼ100%に近い状態で排出させることが可能です。

*生体触媒を用いて生化学反応を行う装置の総称

所在地:韓国慶尚北道

URL:https://www.repla.co.kr/

セレモニー

EXPOの最後には、AEPWの日本での活動を統括されている穴田武秀氏より、本プログラムで活動された全ての採択企業、そしてAEPWのメンバー企業に対し、感謝と労いのスピーチがありました。

「今後に向け、今回の採択企業のみならず広く様々な企業や団体の皆さんとの協業を通じて、廃棄プラスチックに向けた取り組みができることを願っております。また、『世の中を変えるワクワクするようなスタートアップ企業と出会いたい』という思いで始めたこのプログラムで、実際にその可能性がある多くの企業と3ヶ月間を過ごすことができました。」

本プログラムでは、この3ヶ月を共にした関係者の皆様でお揃いの記念ベストを制作しました。

セレモニーでは、穴田氏より、採択企業を代表してRecotechの坂内知恵氏に記念ベストを授与いただきました。

終わりに

今回は、日本で初めての実施となったAEPW EXPOについて、当日の様子をご紹介させていただきました。

AEPWが目指す廃棄プラスチックの撲滅、そしてその目標に挑むAEPWメンバー企業や目標に賛同した採択企業各社の取り組みについてご理解いただけましたでしょうか。

今後とも、関係各社の取り組みに是非ご注目いただければと思います。

Plug and Play Japanでは、AEPWの取り組みを引き続き支援していきたいと考えています。

また、廃棄プラスチック撲滅をはじめ、サステナビリティの実現、社会課題解決に向け、大企業やスタートアップ企業の連携を推進し、皆様と共にエコシステムの活性化に尽力していきたいと考えています。

今後の展開にもご注目ください。お楽しみに!

 

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