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企業文化にイノベーションを起こすには

2021/12/20

ビジネス界隈における流行語の中でも、「イノベーション」は最もよく使われている言葉かもしれません。

しかし、ありふれているからといって、その重要度が下がっているわけではありません。イノベーションは企業が成功するための重要な要素であるというだけなく、企業文化の価値そのものでもあるのです。

イノベーションの定義と形態は長年にわたり進化してきました。研究開発の規模と範囲が急成長し、効率的な技術がより安価に入手しできるようになったことで、企業はイノベーションにより多くの時間や人材や資源を投入してきました。

この記事では、多くの企業が直面している重要な問題を取り上げます。既存の企業文化の中でイノベーションを推進するために、最も効率的な方法は何なのでしょうか?


イノベーションカルチャーとは?

まず、企業の持つ「イノベーションカルチャー」とは何かを定義する必要があります。

「イノベーション」といっても、その定義は実にさまざまです。実際、イノベーションを価値として掲げる企業は、一見するとそれぞれ独自の定義を持っているように見えます。しかし、どの定義にも共通しているのは、「イノベーションは人から始まる」ということです。

言い換えれば、イノベーションカルチャーとは「リーダーが型破りな考え方や行動様式を育み、奨励する職場環境」のことです。

世界有数の経営コンサルティングファームである McKinsey & Company は、イノベーションカルチャーを「良い子育て」に例えています。McKinseyによれば、イノベーションカルチャーの創造は、働く人々に「根」と「翼」を与えることのバランスをとることです。経営者(親)は、従業員(子)にリソースと制限とを適切な割合で与えなければなりません。

しかし、会社と家庭の環境には大きな違いがあります。現代社会のつながりの中では、社外に公表する前から社内でまずアイデアが共有され、さまざまな形に展開されていきます。こういったシームレスなコラボレーションは、企業のリーダーにとって社内のイノベーションを促進する重要な機会となりえます。企業のリーダーは、従業員に対して信頼と受容とを示すことで、創造性と実験性をサポートする雰囲気を醸成します。これらの要素は、イノベーションを文化として根付かせるための礎となるものです。

企業のイノベーションリーダーに必要なのは、「一見非合理な考え方を奨励する」ことです。この価値は、単なる信頼関係にとどまらない重要なものです。優れた企業のイノベーションリーダーは、非現実的なアイデアやアプローチを促進し、それらを評価する必要があります。この戦略は、既成概念にとらわれないアイデアを育てるために有効な方法なのです。

イノベーションカルチャーを促進するには

企業が「形だけのイノベーション活動」にとどまらず、「イノベーションカルチャー」を支えていくためには、ひとつひとつの活動をどのように評価あるいは是正していくか、日々意識していかなければなりません。

実現するためには、5つの方法があります。

1. リソースを投入する

企業は資本、人材、リソースをイノベーションに投入することで、社内外に強力なメッセージを発信することができます。明確に定義された目標、イニシアチブ、広範な戦略を設定することで、革新的な環境を作り、チームの創造性を高めます。企業がイノベーションへの投資を表明することは、強力なシグナルとなります。

2. イノベーション戦略

イノベーションカルチャーは何もないところから突然生まれるものではありません。また、一度存在したとしても、それを支えるしっかりとした仕組みがなければ機能しません。その仕組みづくりを「イノベーション戦略」と呼びます。イノベーション戦略の重要な要素のひとつに「イノベーション・テーゼ」があります。イノベーション・テーゼとは、イノベーション戦略を実行するための目標、戦略、課題などを網羅したミッションステートメントです。

変化は徐々に起こるものです。だからこそ企業は、どんな新しいアイデアがあるのか、毎日小さな提案をしていくことを社員に推奨する必要があります。上司は、提案が戦略的にイノベーションの目標に沿っているかを意識しなければなりません。

3. 人材を惹きつける

企業が「戦略的で先見性のあるチームメンバーを求めている」という意識を持って採用に臨むことは、イノベーションの推進に大きく貢献します。人材への投資は、財務的な投資と同様に重要です。

4. 既存の従業員に対するインセンティブと報酬

イノベーションのために資本を投入し、その目標を念頭に置いて採用活動を行うことと同様に、インセンティブや表彰制度を設定することも大きな効果があります。

企業は、利益、ボーナス、評価などから成り立っています。しかし、各企業内のイノベーションリーダーは、イノベーションカルチャーを醸成するうえで”ビッグ・ピクチャー(大局的な観点)”を意識してこれらの優先課題を整理して、課題の緩和あるいは見直しの必要性を考えることが重要です。

方法の一つとして、イノベーションのマイルストーンを従業員の目標に組み込むというやり方があります。これは、プロセスを明確にインセンティブ化し、モチベーションを維持しつつ持続的な変化を起こすために適切なマインドセットを促進します。

5. アクセラレーターとの提携

戦略的なパートナーシップは、既存のイノベーションへの取り組みを促進します。アクセラレータープログラムでは、関係者がそれぞれのスキルとリソースを活用してあらゆる面で結果を出すことを可能にします。

Plug and Play はそのような組織の一つです。アクセラレーターとのパートナーシップの効果を示す2つのケーススタディを以下にご紹介します。

イノベーションカルチャーの成功例

パナソニック

パナソニックの創業者である松下幸之助は、次のように述べています。
「ものをつくる前に、人をつくる」

この姿勢があったからこそ、パナソニックは家電製品を販売するという原点を超えて、常に革新的で顧客の生活を向上させることに注力できたのです。しかし、どうやってそこにたどり着いたのでしょうか?

パナソニックは、グローバル戦略に多大な資金を投入してきました。日本、北米、欧州、アジアの各地域で、研究開発に対して重要な投資を行ってきました。そしてこれらの国の拠点を利用して、現地の人材やスキルを最大限に活用してきました。

また、パナソニックは、IoT、AI、エネルギーなど、現代の関連分野に焦点を当ててイノベーションカルチャーを展開しています。パナソニックは、企業のイノベーション戦略として「パートナーシップ」の典型例を示しています。

Plug and Playシリコンバレー本社のTravel & Hospitalityプログラムを通じて、パナソニックはエネルギーマネジメントのIoT技術を持つLocbit社と提携し、ダブルツリー バイ ヒルトン サンディエゴ ホテルのエネルギーコストを劇的に削減しました。Plug and Play は、スタートアップ・アクセラレーターとして深い人脈と幅広い知識を活用し、有意義で生産性の高いパートナーシップを促進しています。今回の取り組みも同様で、パナソニックとLocbitのコラボレーションにより、同ホテルのエネルギー使用量を15%削減するという目標をはるかに上回り、エネルギー使用量を半分にするという成果を得ることができました。

これは、アクセラレーターが、旅行のあり方にプラスの影響を与えるイノベーティブな技術を特定し、支援し、規模を拡大できることを示す典型的な例です。アクセラレーターが主導するパートナーシップによって促進されるコーポレート・イノベーションは、ほぼすべての業界で起こっています。

PanasonicとLocbitの協業事例について詳しくはこちら
▶︎ Video: Locbit Helped Panasonic Reduce Energy Use By 50%

STARTUP AUTOBAHN(スタートアップオートバーン)

別の例としては、現代の交通輸送の課題に対するクリエイティブなソリューション探索を目的として始められたプロジェクトがあります。「STARTUP AUTOBAHN」として知られるこの共同プロジェクトには、Plug and Play、ダイムラー社、シュトゥットガルト大学、ARENA2036が参画しており、「世界の新興ハイテク企業を、シリコンバレーの技術的専門知識と、ドイツの最高級エンジニアリングと結びつける」といった他にない架け橋の役割を果たしています。

なぜ、この3者が協創を始めたのでしょうか?シュトゥットガルトは自動車産業の中心地であり、シリコンバレーはハイテク産業の中心地でもあります。リソースを共有し、アイデアを出し合い、挑発的な質問をぶつけ合うことで、関係者全員が革新的なプロセスを見出すことができると考え、まさに 「衆力功をなす」を体現しているのです。

現時点で、STARTUP AUTOBAHNは4回のプログラムを通して共同プロジェクトを100以上立ち上げています。Plug and Playはモデレーターとして、参加するスタートアップ企業の選定や審査を行うとともに、企業パートナーとスタートアップ企業との何百ものミーティングをコーディネートしています。アクセラレーターを通じて生まれたパートナーシップは、「e-モビリティ」「ヒューマン・マシン・インターフェース」「サプライチェーン・ロジスティクス」というイノベーションカテゴリーに加え、「ビークルテック(CASE)」「ビークルサービス(フィンテック/インシュアテック)」「エンタープライズプロセス(HR/リテール)」「エネルギー」「生産の未来」「インダストリー4.0」などの関連テーマに焦点を当てています。

Plug and Playのようなアクセラレーターは、大手企業とスタートアップとを結びつけることによって、一見すると異質な2つの企業が補完的な戦略や新たな収益源を探ることができる貴重な接点となります。また、一見異なる企業同士が知識やリソースを共有することで、有意義なイノベーションを促進することができるのです。

コーポレート・イノベーションの未来

テクノロジーが進化し、コネクティビティー(インターネットへの接続性)が飛躍的に向上するにつれ、企業のイノベーションの必要性はますます高まっています。企業の持つ影響力が強まり他社との関連性が深くなるにつれ、団結力や持続可能性といった価値が絶対に必要になります。

変化は漸進的なものです。企業のイノベーションは無数の選択の上に成り立っており、その過程の各段階でサポートや励ましが必要です。だからこそ、企業は早い段階でイノベーションの基盤を築くことが重要なのです。
そのために、明確なビジョンと部門間の合意に加えて、アクセラレーターのような第三者の支援やパートナーシップを活用していくことが、企業にとって大きなメリットをもたらします。

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Plug and Play Japanでは大手企業と有望なスタートアップをマッチングすることで、企業のイノベーション活動を促進します。業務効率の向上、コストの削減、新規事業の策定など、幅広い分野にけるオープンイノベーションを実現します。

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