オープンイノベーションを推進する社内の巻き込み方
2021/11/04
大手企業がイノベーションを進めていくうえで、5年ほど前は有望なスタートアップの発掘自体に苦戦を強いられていた企業が多い傾向がありましたが、近年では社内の巻き込みという内的課題が顕在化してきているように思います。
オープンイノベーション活動の継続と拡大には、活動に対する社内の理解や事業部を中心とした関係各所との協力体制を構築することは必須です。しかしながら現在の状況として、自社と親和性が高いサービスや製品を有するスタートアップに出会い、社内の関係部署に繋げようとしたとしても、その受け手が不在であることがボトルネックとなっているケースが散見されます。この課題に対して特に鍵となる要素が「トップのコミットメント」、「推進担当者のドライブ力」、「社内ネットワークの構築」です。
本記事ではこの3つのポイントについて詳しく触れていきます。
トップのコミットメント
オープンイノベーションは長期にわたり、かつ必ずしも成果が見えやすいわけではありません。そのうえでイノベーションをする意味や目的を明確にすることは効果的な戦略を組み立てるうえで不可欠です。
具体的な戦略仮説については取り組みの中で柔軟に更新していくべきですが、経営トップが「中長期的視点でイノベーションに注力する」という大枠の方針を明確にし、コミットメントを社内外に発信することは、オープンイノベーションに対する社内理解の促進やマインドセットの醸成に効果的であり、かつ推進担当者が社内の協力者を得られるなど、活動しやすい雰囲気を醸成することにも有効です。
イノベーション推進担当者のドライブ力
オープンイノベーションや新規事業創出のような不確実性の高い取り組みにおいて、「推進担当者のドライブ力」はオープンイノベーションの成果を左右する要因の1つです。ゼロから1を生み出す過程で、推進担当者は社内外のキーマンを巻き込みながらネットワークを広げ、ルールに明記されていないグレーゾーンも含めて粘り強く歩を進めていく必要があります。
そのため起業家マインドを持った有望な人材をアサインすることも重要ですが、そのような人材を育成していくことがより大切です。
人材を育成するうえで、新規事業の成果が出た際には賞与などのインセンティブを得られるような体制を作ることも効果的です。また、結果がでるまでに時間を要するイノベーション活動では、外部の専門家に入ってもらいメンターとして伴走する体制を整えることで知見の習得はもちろん、現実的なマイルストーンの設定や、それに対する現状と成果の把握がしやすくなります。これは本人のモチベーション維持や社内説明においても効果的な手法の1つです。
社内ネットワークの構築
大手企業の制度や業務プロセスは、競争力の源泉である既存事業に適するように形成されていることが多く、オープンイノベーション活動において社内制度や業務プロセスの確立には時間を要します。そのような状況下では、キーマンとなる社内の協力者コミュニティを広げていくことがポイントです。その際には研究所や事業部のような直接的な連携先部署はもとより、知財部や法務部のようなサポート部署など、社内各所のキーマンと繋がることが理想です。例えばスタートアップピッチなどの社内イベントを開催し、回収したアンケート結果からイノベーションに前向きな協力者を発掘するなど、まずは局所的に協力者ネットワークを築くことでリソースの乏しい中でも推進力を担保することが可能になります。
また社内関係者の理解を得るためには、まずは各事業のニーズや課題の洗い出しを行い、必要としている情報をピンポイントで提供することも重要です。
情報を提供するうえで留意すべき点として、自身が得た資料や情報をそのまま渡すだけでは、相手は多忙な中で情報を咀嚼しなければならないだけではなく、その情報の有用性に気付かない可能性もあります。
そのためヒアリングした事業部の課題やニーズと取得した情報を照らし合わせ、自分の中で咀嚼したうえで、相手に伝わる形で情報を提供することが大切です。
可能であれば試作品など実際のプロダクトに触れてもらいサービスを体感してもらうことで、共感が生まれ理解も深まりやすくなります。
(オープイノベーションの促進に必要な3つの要素に対し、Plug and Play Japanが提供する支援オプションの一部ご紹介)
【まとめ】
- ・社内を巻き込んでいくうえで、「トップのコミットメント」「推進担当者のドライブ力」、そして地道な「社内ネットワークの構築」が鍵となる。
- 「トップのコミットメント」
- ・経営トップのコミットメントは、オープンイノベーションに対する社内理解の促進やマインドセットの醸成、推進担当者の活動を円滑にするために重要。
- 「推進担当者のドライブ力」
- ・担当者育成には、賞与などのインセンティブを得られるような体制構築が必要。
- ・外部の専門家が入ることで、知見の習得や現実的なマイルストーンの設定、成果の把握がしやすくなる。
- 「社内ネットワークの構築」
- ・社内イベントを介したアンケート結果からイノベーションに前向きな協力者を発掘することが可能。
- ・各事業部の課題やニーズをヒアリングし、得た情報と照らし合わせ情報を咀嚼したうえで、関係者に伝わる形で情報を提供することが大切。
- ・実際のプロダクトに触れてもらいサービスを体感してもらうことで、共感が生まれ理解も深まりやすくなる。
オープンイノベーションを進めるうえでのTipsや、大手企業が抱えがちな課題に対する解決法など、より詳しい情報は以下インタビュー記事をご覧ください。
【前篇】オープンイノベーションを促進する2つの要素
【後編】オープンイノベーションを進めるうえでのボトルネックと解決法また大手企業とスタートアップの具体的な取り組み事例は以下よりご覧いただけます。
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