遠隔医療が全てではない 〜開業医のデジタルトランスフォーメーション〜
2021/05/26
近年、特にコロナ禍において「遠隔医療」が国内外で注目されています。どんな場所からでも質の高い治療を受けられる遠隔医療というシステムは、今後確実に私たちの生活に深く関わってくるでしょう。
しかし、医師と患者が直接会って言葉を交わすことは、医療行為の重要な要素であると私は思います。対面でのコミュニケーションによって患者と信頼関係を築いてきた地域密着型の診療所が、遠隔医療に翻弄されることなく競争力を維持するために取り組むべきデジタルトランスフォーメーションとは何なのか。こちらの記事ではその課題について紹介していきます。
(本記事は、Plug and Play HQのウェブサイトにBeam Health CEO Sas Ponnapalli氏が寄稿した記事を翻訳したものです。)
パンデミックが始まって以来、地域の診療所は生き延びるべく戦ってきました。近所の親しみやすいクリニックであればいいという時代は終わり、垂直統合型の遠隔医療企業やベンチャーキャピタルが支援する病院システムとの競争が強いられる時代となったのです。
遠隔医療は効果的なツールですが、この技術は万能ではなく、開業医は他の課題へのソリューションも必要としています。
患者の流出
患者の流出は、ヘルスケア分野において深刻な問題となっています。アメリカの医療機関で報告されている収入減の10〜20%は患者の流出によるものとされており、そのうち23%は損益の正確な度合いを把握していません。69%の医療機関で、患者の満足度を確認する担当者が1人しかおらず、流出した患者数を追跡するための指標もないとされています。
また、多くの診療所で患者がフィードバックを残せるシステムがなく、YelpやGoogleで口コミを投稿するしかない状況にあります。
時代遅れの請求書システム
請求書作成も医療機関の悩みの種です。アメリカでは77%の診療所が未だに紙の請求書を使用しており、自己負担額の60%強しか回収できていません。
診療所の収入の多くは診療報酬ではなく自己負担金であるため、この問題はさらに深刻です。このような診療所では、診療後に料金を回収する自動化されたシステムに移行する必要があります。Beam Health(医療機関向けのデジタルオペレーションプラットフォームを提供)のシステムを導入している医療機関は、98%の自己負担金を回収しています。
アップデートされたデジタルシステム
自己負担金の回収という問題の裏には、診療所が自分たちのシステムを最新のデジタルオペレーションプラットフォームに統合する必要があるという、より大きな問題が存在します。診療所のスタッフは患者の対応に追われ、カレンダーの統合や患者満足度の測定、ウェブサイトの更新といった、さまざまな先進技術を導入するために費やせる時間は限られています。
貴重な時間の中で、アップグレードが必要なデジタルシステムの導入・更新に対する優先順位は低くなり、治療を求める患者は、親密なコミュニケーションを取れ、親しみがある地域に根ざした診療所よりも、最先端の医療を受けられる病院へと移ってしまうのです。
診療所のマーケティング
仮に診療所がこれら全てを改善したとして、改善したことを患者が知らないという問題もあります。自分たちの価値を適切に発信するためのマーケティングが出来ている開業医は非常に少なく、新しい患者を呼び込めないことに加え、既存の患者は新しいサービスを知ることができません。
そのため診療所は、ブログやSNSを活用して自分たちの専門性をアピールし、地域との結びつきを強めていくことが必要です。こうした診療所はサポートを必要としています。患者を助けたいという意欲を持った素晴らしい開業医がいても、ビジネスの専門知識がないのです。2020年、COVID-19のパンデミックを通して遠隔医療の価値が世界中で認められ、これまでは診療できなかった時間帯にも医療サービスを提供することができるようになりました。その一方で、開業医にとっては遠隔医療だけでは十分でないことも証明されました。中小規模の診療所が垂直統合型の遠隔医療企業やベンチャーキャピタルが支援する病院システムに対抗するには、サポートが必要なのです。
最後に
開業医は社会に不可欠な存在であり、人々はかかりつけ医とのつながりを大切にしています。このままでは開業医は過去のものとなり、世界の状態は悪化してしまうでしょう。
診療所が競争力を維持し、繁栄していくためには、開業医としてカスタマーサービス、分析、マーケティングにも力を入れ、患者体験の向上やオペレーションの改善をしていかなければなりません。
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