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Startup School #4 | 投資家との付き合い方

2021/06/15


Zak Murase

Executive Advisor, Plug and Play Japan


前回までは投資家の選び方について書きましたが、今回は無事に投資家から資金調達をした後、どうやって投資家と付き合っていくのがいいのかについてです。

外部から資金を受け入れたスタートアップは、もはや100%創業者のあなたのものではありません。外部の投資家も多かれ少なかれあなたと運命を共にする共同体、パートナーになるのです。パートナーとしてうまく付き合っていけるかどうかはあなた次第。最低限の説明責任を果たすだけでなく、お金だけではない投資家の付加価値を最大限に活用するためには、CFOや財務担当者にコミュニケーションを任せきりにせず、CEO自ら積極的にコミュニケーションを取ることが重要です。

投資家とのコミュニケーションで一番重要な機会となるのが取締役会(取締役会を設置しない場合は株主総会)です。取締役会には通常リード投資家、それに場合によっては他のメジャー投資家、オブザーバーが参加することもあります。取締役会では重要事項の決議だけでなく、ビジネスのアップデートから将来の戦略の議論まで、投資家と対話する上での重要なイベントになります。

取締役会の頻度は最低でも月に一回、できれば取締役会に入っていない他の投資家向けにも定期的に事業の進捗を説明する機会を作ることをお勧めします。取締役会以外の投資家にはメールで済ませるという手もありますが、やはり直接フィードバックをもらったり議論したりという機会を持つことで、他の投資家からも当事者意識を持ってもらいながらサポートを得ることができます。
ここで重要なのは、いかに投資家に対して効果的なコミュニケーションが取れるかという点です。もしあなたが大企業で働いたことがあって、その社内の報告会議のようなものを想像しているのであれば、それはまず忘れてください。時間をかけて綺麗に作られたスライドを使い、根回し済の要件を淡々と報告して大した質疑応答もなく終わるというようなものではありません。

「効果的」というのは、スタートアップ、投資家それぞれが最小の時間で最大の効果を上げるということです。これはなかなか簡単なことではないのですが、何を考えるべきなのか、いくつか解説します。

ビジネスを客観的に見つめる

ビジネスを客観的に見つめる

CEOにとってやらなければいけないことが無限にある中で、あえて投資家とのコミュニケーションのために時間をかけて準備するということは、一見ビジネスにとって必ずしも効果的な時間の使い方ではないと思われるかもしれませんが、実は全くその逆です。

プロダクトの開発、人材の採用、顧客の獲得などに没頭していると、木ばかりが見えて森が見えなくなってきがちです。

投資家向けのコミュニケーションの準備をするというのは、投資家視点に立って今何が重要なのか、何をしなければならないのかということを、実務視点ではないところから冷静に考えることができるいい機会なのです。そこで客観的に自らのビジネスを見つめた上で、投資家にそれを伝えるということを定期的にやることで、CEOとして常に事業を大局的な観点から捉える癖がつくことになります。

また次の資金調達のラウンドを達成するためのマイルストーンについても、先のこととして後回しにするのではなく、予定通り達成できる見込みがどの程度あるのか、それに向けて今から打っておくべき対策を考え、投資家と議論することも重要です。

事前の準備資料は必要なものをカバーしつつも簡潔に

事前の準備資料は必要なものをカバーしつつも簡潔に

既にプロダクトをリリースしているのであれば、追いかけるべきKPIの推移は毎回同じフォーマットでわかりやすく見せるようにしましょう。社内のツールでビジュアルに見せられるものが既にあればそれを使ってもいいでしょう。ここで重要なのはそのKPIの数字の背後にある因果関係を深く分析して説明できるようにしておくことです。

KPI以外にも投資家との対話において重要なのが基本的な財務状況。現金残高とバーンレート、大きな出費が伴うイベントや、人材の採用計画などです。どのタイミングでどこにどのようにお金をかけて最大限のリターンを出すのか、この辺りは投資家が他のスタートアップの例などからも知見を持っている領域ですので、議論の準備をしておきましょう。

そしてこの過程において、ものすごく見栄えのする綺麗なスライドや資料を作ることに時間をかける必要はありません。ポイントをおさえた数字と議題のサマリーを簡潔にまとめたものがあれば十分です。

投資家との時間を最大限活用する

投資家との時間を最大限活用する

CEOのあなたにとっては自分のビジネスが100%ですが、投資家にとって大抵の場合あなたの会社はポートフォリオの一つに過ぎません。投資家によっては10社や20社を超えるような数のアクティブなポートフォリオを自らの担当として持っていることもあるので、その人があなたのスタートアップに割いてくれている時間は最大限活用しましょう。

事業の進捗の報告では、なるべく事前に必要な情報を共有するようにし、ミーティングの間は重要な経営課題の議論に集中しましょう。特に投資家にフィードバックを貰いたいところ、相談したいところも事前に質問として投げておき、当日より深い議論ができるのがベストです。いい投資家であれば、事前の情報を元にリソースを当たったり、必要な情報を集めてきたりしてくれます。もちろん投資家側も忙しいので、そこまでの準備ができない可能性もありますが、起業家として、取締役会に参加する投資家の時間を最大限に活用するために事前にできることはやっておくべきです。

フォローアップはしっかりと

フォローアップはしっかりと

取締役会では議決事項など議事録を取る必要がありますが、議決事項以外にも議論になったこと、重要なフィードバック、宿題となったことなど必ずメモに残すようにし、それぞれ確実にフォローアップできるようにしておきましょう。

取締役会の場ではCEOは説明と議論に集中できた方がいいので、できればCFO、COOなどを同席させて詳細のメモを取れるようにするのがいいと思います。

特に宿題になった点などは確実に次回の取締役会で報告、または場合によってはそれを待たずに投資家に報告する方がいいかもしれません。

最後に

取締役会以外でも投資家とのコミュニケーションが重要になる局面は多々あります。

大きな顧客を獲得したり、大きなマイルストーンを達成したりした時、大抵のスタートアップはそれをすぐに投資家に共有してくれます。

もちろん投資家としてもそうした良いニュースを聞くのはとても嬉しいですし、喜びは共有したいものです。
でも投資家が本当にすぐに知りたいのは悪いニュースです。悪いニュースは時間が経てば経つほどダメージが大きくなりがちです。特にその悪いニュースがパブリックに漏れる可能性があるような場合には、一度炎上してしまってからでは取り返しがつかなくなることもあります。

経験豊富な投資家であればあるほど、スタートアップの様々な失敗や対処を誤ったケースを多く見てきています。自分で対処できると抱え込まずに、悪いニュースはすぐに投資家に相談しましょう。もっと早く相談してくれれば何とかできたかもしれないのに、というのは投資家の間でよく聞く話です。

悪い話はなかなかしづらいという気持ちもわかりますが、オープンなコミュニケーションは投資家との対話において最も重要なことです。

基本的に投資家はスタートアップの役に立ちたいと思っています。これは投資家がリターンを求める上で当たり前のことではありますが、それ以上に投資家が気にしているのが彼ら自身のスタートアップコミュニティ内での評判です。

今はどのVCもお金以上の付加価値を標榜していますが、実際に助けてもらったスタートアップの口コミの評判以上に強力なものはありません。もし投資家に助けてもらったらぜひソーシャルメディアやブログなどでそのことを発信してあげましょう。投資家もきっと喜んでもっと助けてあげようって思うに違いありません。

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