新規事業が思いつかない!3つの原因とアイデアを生み出す8つのフレームワーク
2024/02/29
「新規事業のアイデアがなかなか思いつかない。」新規事業開発に携わる方は、そんな壁に直面した経験があるのではないでしょうか。
既存事業の停滞や競争環境の変化を背景に、新規事業の必要性を検討する企業が増えていますが、良いアイデアが出ない原因を見極めずに始めてしまうと、経営資源の浪費や組織内の混乱を招きかねません。
この記事では、新規事業創出の支援を手がける当社が、アイデアが思いつかない原因を分析したうえで、アイデア創出を支援する際に活用できるフレームワークを8つご紹介します。
(Cover Photo by Steve Johnson from Pexels)
Chiyo Watanabe Kamino
Content Marketing Associate
1. 新規事業アイデアが思いつかない3つの原因
いざ新規事業のアイデアを出そうと思っても、チームメンバーだけの力で革新的なアイデアを創出するのには限界があります。ここでは、典型的な原因とその対処法を詳しく見ていきましょう。
①他社との対話などのインプットが不足している
新規事業のアイデアが思いつかない大きな原因には、質の良い情報・アイデアの不足が挙げられます。
インターネットで多くの情報が手に入る時代ですが、二次情報だけを基にアイデアを構築しようとすると、情報にバイアスがかかっていたり情報鮮度が古かったりして、実態と乖離したアイデアになりやすいです。
また、社内でアイデアを共有したり、ディスカッションする機会が不足していると、アイデアの広がりを欠く原因となります。また、他社や外部のステークホルダーとの会話は、視点の転換や新しい着想のきっかけになります。
メンバー間や他部門とのオープンな対話の場を積極的に設けるとともに、業界交流イベントや外部セミナーへの参加を促し、外部とのネットワークを活用することが重要です。
②固定概念にとらわれて無難なアイデアにまとめようとする
新規事業のアイデアが思いつかない要因の一つは、固定概念や先入観にとらわれることです。業界の常識や過去の成功体験に縛られると、新しい視点が見えにくくなります。
また、革新的なアイデアが「社内承認を得にくい」などの理由で排除され、結果として無難な案にまとめられてしまうことも課題です。
これらを打破するには、異業種の事例を学び、多角的な視点を取り入れる環境を整えるとともに、初期段階ではアイデアの可能性を広げることを重視する姿勢が重要です。
③ アイデアをアウトプットする機会が不足している
アイデアを出すには、日常的にアウトプットする習慣が大切です。
しかし、アウトプットの機会が少なかったり、メンバーが自身の考えを整理して表現する訓練が十分でない場合、アイデアが形になる前に止まってしまうことがあります。また、アウトプットすることで他者のフィードバックを得て新たな視点が生まれることも多く、日常的にメモや話し合いなどでアイデアを外に出す習慣が欠かせません。そのため、気軽にアイデアを共有できる機会を設けることが求められます。例えば、定期的なディスカッションやブレインストーミングの場を設けることで、フィードバックを通じて新たな視点を得られる機会を作り出すことが重要です。また、アイデアに限らず、日頃から組織として過去のデータや事例を組織全体で共有するなど、アイデア創出の基盤となる仕組み作りも必要だと言えるでしょう。
これらの原因を把握し改善することで、アイデア創出の壁を乗り越える第一歩が踏み出せます。次の章では、具体的なアプローチ方法について詳しく解説します。
2. 新規事業アイデアが思いつかない時の7つのアプローチ・解決方法
(Photo by Hugo Rocha on Unsplash)
それでは、新規事業のアイデア創出には、どのような視点から取り組むのが効果的なのでしょうか。新規事業のアイデア募集やアイデアソンなどをおこなうことも1つの手法ですが、その前段階として、新規事業のアイデア創出を支援する際に有効なアプローチをご紹介します。
①自社の強みと弱みを把握する
現状を正確に理解した上で発想を広げられるよう、定期的に自社の強みと弱みを見直すことを促す必要があります。
分析をおこなってから一定の時間が過ぎてしまっている場合は、外部要因や状況が変わっていることもあるため、あらためて新規事業開発の観点から再評価を行い、チーム全体で認識を合わせることが重要です。
アイディエーションの一部として、SWOT分析やPEST分析などを活用することで、メンバーがブレインストーミングを進めやすくすることができます。
②現場の声をヒアリングする
どのような規模の企業であっても、事業や社内環境の改善を目的としたヒアリングの仕組みが設けられていることが一般的です。
単にヒアリングの場を設けるだけでなく、現場が提案しやすい仕組みや雰囲気を整えることが重要です。例えば、現場の声を収集する際には匿名性を確保したり、定期的にアイデアを発表できる場を設けたりすることで、社員が安心して意見を共有できる環境を作ることが効果的です。
また、直接ヒアリングするのではなく、信頼できる中間管理職を介して現場の課題を吸い上げたり、デジタルツールを活用して効率的にフィードバックを集める仕組みを整えることも、課題の発見やアイデア創出を促進する手段となります。
③社会課題から考える
自社内で新しいアイデアが生まれにくい場合、社会課題に目を向け、自社がその解決策をどのように提供できるかを考えることで、新規事業のアイデアが見つかることがあります。
日本は少子高齢化、自然災害の頻発、エネルギーや食料自給率の低さといった特有の社会課題を抱えています。これらの課題に対するソリューションは、国内だけでなく海外からも注目されており、企業にとって新規事業を生み出す契機となります。
そのため、社会課題に目を向けやすくするために、関連データや成功事例を共有することが重要です。また、現場の課題を抽出するだけでなく、外部のステークホルダーや地域の声を取り入れる場を設け、具体的なアイデアを掘り下げる機会を提供することで、メンバーが現実的な課題解決策を発想しやすい環境を作ることが求められます。
④海外で成功している事業モデルをヒントにする
海外ですでに成功している事業モデルを日本市場に取り入れることは、特に国内で大きなシェアを持つ企業にとって、有利に働きやすいアプローチです。
日本は海外企業にとって参入障壁が比較的高い市場であり、海外で成功している事業が日本市場に進出するまでには一定の時差が生じます。このタイミングを活かすことで、競争優位性を高めることが可能です。
さらに、日本特有の文化的・地理的な特徴を考慮し、海外モデルをローカライズすることで、新たな事業アイデアを生み出すきっかけになるケースも少なくありません。これにより、単なる模倣ではなく、日本市場に最適化された独自のサービスや製品を提供することができます。
そのため、ローカライズに必要な視点を持つために、多様なバックグラウンドを持つメンバーや外部の専門家をプロジェクトに巻き込むことも選択肢の1つでしょう。
⑤ライバル企業の強み・弱みを分析する
ライバル企業の強み・弱みを分析することで、自社との差別化や新たな付加価値を見出すヒントが得られます。
競合が強みを持つ分野では、自社ならではの独自性を打ち出す工夫が必要となります。一方で、競合の弱みとされる部分にはチャンスが隠れていることも少なくありません。
市場での競争優位を築くためには、競合の成功要因や抱える課題を正確に把握し、新規事業の方向性に反映させることが効果的です。
このアプローチにより、既存の枠組みに捉われない新しいアイデアの発想を促しやすくします。⑥既存の資源や製品に新たな付加価値を見出す
これまで価値がないと見なされていたものが、新たな用途や市場で高い評価を受け、ビジネスチャンスへと転じることがあります。
例えば、廃棄物として扱われていた材料が別分野では有用な素材として活用されたり、業務用の製品を一般消費者向けにも提供することで想定以上の需要を生み出したりするケースがあります。このように、既存の資源や製品に対する視点を変えることで、思いがけない付加価値を発見することができるのです。
他業界のトレンドを紹介する勉強会を開催したり、製品の用途拡大をテーマにしたアイデアソンを実施することで、発想の幅を広げるきっかけを提供するなど、自社の周囲に限らず、視野を少しずつ広げていくことで、これまで気づかなかった新たな価値の可能性を見出す機会を提供することが重要です。⑦社外の知見や対話を増やす
新規事業のアイデアが生まれにくい背景には、視野が狭くなっている可能性があります。
自社内だけで議論を続けていると、既存の枠組みや慣れた思考に捉われ、新しい発想が出にくくなりがちです。こうした状況を打開するために効果的なのが、他者や外部の専門家との対話を増やすことです。
異なる考え方を持つ人や、異業種の企業、スタートアップ、学術機関の研究者と意見交換を行うことで、自社の常識にとらわれない新しい視点を得られる可能性が広がります。
また、アイデア創出の一環として、スタートアップとの共創やオープンイノベーションを選択肢に入れることも有効です。自社のリソースだけでは限界がある場合でも、スタートアップとの協力を通じて革新的なアイデアや技術を取り入れることが可能になり、停滞していたアイデア出しが活性化する可能性があります。
さらに、アクセラレータープログラムやアイデアハブに参加することで、革新的な技術やビジネスモデルを持つスタートアップと直接交流する機会が得られます。これにより、自社の強みを再発見し、新たな事業アイデアを生み出すきっかけが得られるでしょう。
3. ビジネスアイデアを出す時に役立つ8つのフレームワーク・発想法
アイデアを可視化し、整理するためのやり方として代表的なものには以下のようなフレームワークがあります。一人でできるものもありますが、グループで行うことでより効果を発揮します。
①SCAMPER法で新たな角度から見てみる
SCAMPER法とは、アイデアを発想する際に活用される創造性の手法の1つです。SCAMPERは、以下の7つの行動を表す単語の頭文字からこう呼ばれています。既存のアイデアに対して7つの動詞をあてはめて考えることで、新たな角度からの発想をうながすフレームワークです。
② 5W2Hで解像度を上げる
5W2Hとは、情報を収集し問題解決や意思決定を行う際に役立つフレームワークです。ブレインストーミングで出たアイデアに対して5W2Hの質問をぶつけることで、解像度が上がり、より具体的で実行可能な行動計画に落とし込むことができます。
③マンダラートで具体的な解決策やアイデアを具体化する
マンダラートは、仏教の「曼荼羅」に由来しており、「マンダラチャート」とも呼ばれています。この手法は、9×9個のマス目の中心に課題やテーマを書き込み、隣接するマス目にそれに対する解決策やアイデアを書き込んでいくことで思考を発展させ、目標達成や課題解決へのアイデアを具体化します。
④マインドマッピングで連想を促す
マインドマッピングとは、中心となるテーマやアイデアを中心に、関連するサブアイデアやトピックを連想し、追加していく方法です。
通常、マインドマップは、円形または中心的なテーマを示す中心のノードから始まり、それに枝をつけて関連するトピックやアイデアを示します。連想を促すことで1つのトピックから新たなアイデアへと展開していきます。
(Photo by Diva Plavalaguna from Pexels)
⑤ロジックツリーで課題の構造を明確化する
ロジックツリーは、問題の解決方法や意思決定のプロセスを階層的な構造で表現する方法です。
主題や目標がトップレベルにあり、その下に関連するサブトピックや選択肢が分岐していきます。マインドマッピングがトピックに対する自由な連想をうながすのに対して、ロジックツリーは論理的な思考と分析を促進します。
問題や選択肢を階層的に整理することで、問題の本質や解決策の優先順位を明確にすることができます。
⑥KJ法でアイディアを集約し整理する
KJ法(ケージェイほう)は、グループでのアイデアの収集と整理を目的とした手法です。
カードや付箋にアイデアを書き込み、それを集めて整理し、関連するものをグループ化します。複数のメンバーからのアイデアを集約し、整理することで、グループの知恵を最大限に活用するやり方です。
(Photo by Ketut Subiyanto from Pexels)
⑦リーンキャンパスで仮説検証できる形に落とし込む
リーンキャンパスは、新規事業やスタートアップのアイデアを効率的に具体化するためのツールです。
リーンキャンバスは9つの項目から構成され、特に「課題」「解決策」「ユニークバリュープロポジション」など、顧客ニーズとその解決策に焦点を当てています。このツールを活用することで、アイデアの核心部分を短時間で整理し、仮説として検証可能な形に落とし込むことが可能です。
⑧ バリュープロポジションキャンパスで顧客のニーズに合致してるか確認する
バリュープロポジションキャンパスは、顧客が抱える課題を深掘りし、それに対して提供する価値を明確にするためのツールです。
このキャンバスは、「顧客セグメント」と「価値提案」の2つの要素で構成され、それぞれをさらに具体的な項目に分けて考えます。
顧客の「仕事(ジョブ)」や「痛み(ペイン)」、「得たい成果(ゲイン)」を洗い出し、それに対応する解決策や提供価値を設計するプロセスを通じて、顧客に本当に求められるサービスや商品を見つけ出すことができます。
4. まとめ:素早く失敗するのも1つの手
(Plug and Play Open Innovation Day in Amsterdamでの様子)
当記事では、新規事業が思いつかない時の原因とアプローチ方法を解説した上で、新規事業の参考になる事例を紹介してきました。
新規事業は、必ずしも成功が約束されていない挑戦です。そんな新規事業の成功確率を高めるには、失敗を恐れずに迅速に挑戦する姿勢が重要です。
小規模で実験的な試みを行い、失敗から得た教訓を素早く反映するサイクルを回すことで、より実用的で市場に適したアイデアを磨けるのです。
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