新規事業が思いつかない時に試すべきアプローチとは
2024/02/29
新規事業を開発するために自身でブレインストーミングをしたり、社内やチームからアイデアを募ったりしても、なかなか良いアイデアが出てこない。そんな悩みを抱える担当者は少なくありません。この記事では、新規事業のアイデアが思いつかない場合にとりうるアプローチとともに、アイディエーションのプロセスで使えるフレームワークを紹介します。
(Cover Photo by Steve Johnson from Pexels)
Chiyo Watanabe Kamino
Content Marketing Associate
目次
1. 新規事業は必要なのか?
2. 新規事業アイデアが思いつかない原因
3. 新規事業アイデアへのアプローチ
4. アイディエーションに役立つフレームワーク・発想法
1. 新規事業は必要なのか?
そもそも、企業はなぜ新規事業を開発しなければならないのでしょうか。企業が成長する方法の一つに経営の多角化があり、新規事業はその一端を担っています。ビジネス環境の変化に対応していくために、次なる収益源となりうる新規事業を育てていくことが、企業の持続的な成長につながるからです。
しかし、「他社がやっているから自社でも取り組まなければならない」というだけの理由で闇雲に事業を立ち上げたとしても、形だけの事業に終始してしまったり、途中で方向性を見失ったりするリスクが伴います。アイデアを出すためにはまず前提条件や背景を理解する必要がありますが、そもそもの前提条件の理解が不足していた場合、誤った方向へ進んでしまいかねません。アイデア創出に臨む前に「自社にとって新規事業が必要な理由」を明確にしましょう。
2. 新規事業アイデアが思いつかない原因
いざ新規事業のアイデアを出そうと思っても、自分やチームメンバーだけの力で革新的なアイデアを創出するのには限界があります。特に、新しく新規事業開発担当になった人は、既存事業での思考法とは違ったやり方が求められて、苦労しているのではないでしょうか。新規事業アイデアが思いつかない主な理由としては、以下のようなものが挙げられます。
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インプットが不足している
アイデアが思いつかない大きな原因には、質の良い情報の不足が挙げられます。インターネットで多くの情報が手に入る時代ではありますが、二次情報だけを元にアイデアを構築しようとすると、バイアスがかかっていたり情報鮮度が古かったりして、実態と乖離したアイデアにしかならない場合があります。二次情報を活用しつつも、アイデアのコアとなる部分については、担当者が適切に一次情報を取得していくことも必要です。
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無難なアイデアにまとめようとする
アイデア出しの過程で、既存事業と競合してしまったり、自社ブランドにそぐわないと感じられたりするアイデアが出てくることもあります。実はそこから革新的な新規事業につながる可能性があるにもかかわらず、社内での承認が通りづらそうなどの理由で、見送られてしまうことはないでしょうか。結果、既存事業の延長線上にあるような、既視感のあるアイデアしか残らず、もっと良いアイデアを出そうとふりだしに戻ってしまいます。プロセスを進めていく上で良質なアイデアだけを残す必要性はありますが、環境やタイミングによって同じアイデアでも価値が変わる場合もあります。「新規事業は多産多死である」という認識を社内で共有するとともに、すべてのアイデアをいったん検討してみる、他者や部外者の視点を取り入れるという姿勢も必要です。
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奇抜なアイデアにしようとし過ぎる
上記とは逆に、「新規事業」というワードの固定観念に囚われ、ゼロからまったく新しい事業のアイデアを創出しなければならないと意気込みすぎてしまうために、アイデア出しがいつまでも終わらず、先のプロセスへなかなか進まないというパターンもあります。アイデアは最初から革新的なものを目指す必要はなく、まずは実施しやすいものから小さくスタートし、そこにチームや外部の力を借りて新奇性を付与していくというやり方の方が進めやすい場合が多いです。
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3. 新規事業アイデアへのアプローチ
それでは、新規事業のアイデア創出に対して、どのような角度から取り組むのが効果的なのでしょうか。新規事業のアイデア募集やアイデアソンなどをおこなう企業は多くありますが、その前段階として、新規事業担当者がまず検討したいアプローチがいくつか挙げられます。
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自社の強みと弱みを把握する
新規事業を計画する前に、このステップをすでに終えている企業は多いでしょう。ただし、分析をおこなってから一定の時間が過ぎてしまっている場合は、外部要因や状況が変わっていることもあるため、あらためて新規事業開発の観点から強みと弱みの把握をおこなうことも有効です。また、後述するアイディエーションの一部として、最初にSWOT分析やPEST分析などの内部・外部環境の分析作業を取り入れることも、ブレインストーミングをやりやすくするきっかけになります。
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現場の声をヒアリングする
どのような規模の企業であっても、事業や社内環境の改善についてヒアリングの制度は設置されていることでしょう。しかし、大半の社員は日常の業務の中で何かしらの改善策や新規事業のアイデアを持っていたとしても、自発的にアイデアを具体的に提案するには至らないのが実情です。大きな組織になればなるほど、課題を認識してはいても、日々の業務に忙殺されて改善アクションを起こせずにいる場合がほとんどではないでしょうか。実際に担当事業部に出向いたり、地道にヒアリングをおこなったりすることで、それまで気づかなかった課題を抽出することができます。
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社会課題から考える
自社の中から新しいアイデアが生まれてこない場合、社会課題に対して自社がどう解決策を提案できるかを考えることから新規事業のアイデアが見つかることもあります。多くの企業にとって喫緊の課題となっているSDGsはその良い例でしょう。また、日本は少子高齢化・自然災害の頻発・エネルギーや食料自給率の低さなど特有の社会課題を抱えており、それらの課題に対するソリューションは世界からも注目されています。
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海外で成功している事業モデルをヒントにする
海外ですでに成功例がある事業モデルを日本市場に輸入することは、国内シェアが大きい企業にとっては有利に働きやすいアプローチです。日本は海外企業にとって参入障壁が比較的高い市場であり、成功している海外企業が日本市場に進出するまでには時差が生じます。また、文化的・地理的な特徴の差異を考慮することが、新たな事業アイデアにつながるケースも少なくありません。
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4. アイディエーションに役立つフレームワーク・発想法
アイデアを可視化し、整理するためのやり方として代表的なものには以下のようなフレームワークがあります。一人でできるものもありますが、グループで行うことでより効果を発揮します。
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SCAMPER
SCAMPER法とは、アイデアを発想する際に活用される創造性の手法の1つです。SCAMPERは、以下の7つの行動を表す単語の頭文字からこう呼ばれています。既存のアイデアに対して7つの動詞をあてはめて考えることで、新たな角度からの発想をうながすフレームワークです。
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5W2H
5W2Hとは、情報を収集し問題解決や意思決定を行う際に役立つフレームワークです。ブレインストーミングで出たアイデアに対して5W2Hの質問をぶつけることで、より具体的で実行可能な行動計画に落とし込むことができます。
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マンダラート
マンダラートは、仏教の「曼荼羅」に由来しており、「マンダラチャート」とも呼ばれています。この手法は、9×9個のマス目の中心に課題やテーマを書き込み、隣接するマス目にそれに対する解決策やアイデアを書き込んでいくことで思考を発展させ、目標達成や課題解決へのアイデアを具体化します。
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マインドマッピング
マインドマッピングとは、中心となるテーマやアイデアを中心に、関連するサブアイデアやトピックを連想し、追加していく方法です。通常、マインドマップは、円形または中心的なテーマを示す中心のノードから始まり、それに枝をつけて関連するトピックやアイデアを示します。連想を促すことで1つのトピックから新たなアイデアへと展開していきます。
(Photo by Diva Plavalaguna from Pexels)
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ロジックツリー
ロジックツリーは、問題の解決方法や意思決定のプロセスを階層的な構造で表現する方法です。主題や目標がトップレベルにあり、その下に関連するサブトピックや選択肢が分岐していきます。マインドマッピングがトピックに対する自由な連想をうながすのに対して、ロジックツリーは論理的な思考と分析を促進します。問題や選択肢を階層的に整理することで、問題の本質や解決策の優先順位を明確にすることができます。
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KJ法
KJ法(ケージェイほう)は、グループでのアイデアの収集と整理を目的とした手法です。カードや付箋にアイデアを書き込み、それを集めて整理し、関連するものをグループ化します。複数のメンバーからのアイデアを集約し、整理することで、グループの知恵を最大限に活用するやり方です。
(Photo by Ketut Subiyanto from Pexels)
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