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オープンイノベーションを実現するための上司の巻き込み方

2022/05/13

新規事業の仕事の大半は調整業務と言っても過言ではないかもしれません。調整業務には周りの理解を得て協力してもらうことが必要です。ゼロから企画を立ち上げ、新たな挑戦の道を開拓していくオープンイノベーションにおいて、他部署の巻き込みはさることながら直属の上司だけではなく他部署を含めた意志決定者層を巻き込むことは避けても通れない道です。
そこで今回の記事では、上長を巻き込むうえでの5つのポイントについて触れていきます。


Megumi Shoei

Communications Manager


直属の上司だけではなく、役員や経営陣の考えや求めていることを理解する

組織としてオープンイノベーションを動かしていくうえでは、上司の視点で物事を考えて動くことが抜け落ちてしまうと、なかなかプロジェクトが進まず立ち往生してしまう可能性もあります。
そのため、上司が何を考え、何を求めているのかを理解することは必須と言えるでしょう。
例えば、本部長から部長に5年以内に新規事業をつくるように言われたとしても、部長も日々の業務で多忙を極め、新規事業企画を考えられる余裕がない場合、統括している部門から提案があると助かるだけではなく、オープンイノベーションの規模を拡大できるきっかけにもなります。
直属の上司、もしくはその上の上司が置かれている状況や求めている情報は、コミュニケーションが取りやすい距離感にいる場合、日々のコミュニケーション量を増やすなどで知り得ることができるかと思います。それが難しい場合は、ある程度仮説思考を持ちつつ、社内で築いたネットワークを活かし、自身が所属する部署の上司だけではなく、他部署の上司に関する情報収集をすることが有効だと考えられます。

基盤作り

上長を巻き込むといっても一足飛びにはいきません。上層部の理解を得るためには、部署としての成果を積み上げていく必要があり、巻き込んでいくために基盤作りが必要です。そのために重要なポイントがあります。

1) 小さな成果を重ねること

オープンイノベーション活動に対する予算が潤沢にある場合を除き、多くの企業では予算が限られている中で新規事業プロジェクトを進めていかなければならない場合が多いのではないでしょうか。
そのような状況下で、いきなりCVCを設立することや外部業者を活用しながらアクセラレータープログラムを立ち上げること、大規模な新規事業プロジェクトをスタートさせることはハードルが高いかと思います。

以前当社ブログでも公開した「スタートアップとの共創によるオープンイノベーション初期に留意すべき6つのポイント」でも述べていますが、まずは小さな成果を重ねていくことが重要です。

例えば社内でスタートアップに登壇してもらうピッチイベントを開催し、先進テクノロジーやスタートアップへの理解を深めてもらう。もしくは有志で勉強会を定期的に開催したり、オープンイノベーションへの理解を促すための啓蒙イベントを開催するなど、小さな積み重ねがキーポイントになってきます。

急がば回れではないですが、このような小さな活動を繰り返すことで、以下のようなメリットを得ることができます。

①部署の成果としてアピールできる
オープンイノベーションの成果目標に新規市場開拓や新たな価値創出をスコープに入れている場合、長期的視野で見てほしいところですが、現実では短期的に活動結果を求められることが多々あるかと思います。そのため上述したような取り組みを行うことで部署の成果としてアピールできるうえに、徐々に上司の理解や協力体制を得やすくする環境を整えていくことも可能になります。

②声がかかりやすくなる
「オープンイノベーションといったら◯◯さん」「スタートアップに詳しそうな人」というようなイメージがつくため、社内でニーズが出た時に情報が集まりやすくなるだけでなく、他部署の上司の目にも留まりやすくなります。

2) 仲間作り

小さな取り組みを重ねていくことで、社内でもオープンイノベーションに対して興味を持つ社員が増えたり、共に取り組みを進めてくれるような社内コミュニティが広がっていきます。
そうすることで既存事業部門も含めた他部署のキーマンとも繋がりやすくなり、オープンイノベーションにおける情報収集がしやすくなる他、プロジェクトを動かしていくうえで適切なルートで適切な社員もしくは部長や本部長クラスにもアプローチできるきっかけを得られやすくなる可能性が高まります。

【事例】
某国内大手生命保険会社では新規事業推進部門の活動理解を目的に、日頃オープンイノベーションに触れる機会の少ない既存事業部署を対象に、社内オンラインイベントを実施。
イベントでは新規事業推進部門の部長に登壇してもらったほか、ワークショップも開催。
Zoomでブレイクアウトルームに分かれ、日々の業務で抱えている課題などのヒアリングを実施。
新規事業推進部門でも既存事業部が抱える課題を把握している部分もあったが、ワークショップを実施したことで事業部側で解決しようとしている課題と、実際に新規事業推進部門にテコ入れしてほしい課題が棲み分けられるなど、今後の活動に活かせるインサイトを得られる機会となった。

部長クラスを巻き込んでいくという点でも非常に効果的であった。

社外ネットワークを活用して自社の活動を促す

組織力学を理解し、社内コミュニティを構築しつつ上司との関係を築いた上でも、なかなか社内を動かせない状況もあります。その場合は他社とのイベント共催や、自社イベントで他社事例を話してもらうなど、他企業を巻き込んでいくことで他社に遅れを取るまいとの思いから自社の活動が一気に活発になることもあります。
また他社の方に登壇いただくだけではなく、社外イベントで自社の上司に登壇してもらうことで、上司のオープンイノベーション活動に対する理解や積極性を引き出すことも可能になります。
ここで重要なのは、最初からイベントなどで外部連携できずとも、社外イベントに出席したり積極的に情報交換するなど、小さなところからスタートすることが一歩を踏み出しやすくなります。

相互メリットと”温度感”を感じられる情報提供

上司や他部署を巻き込んでいくうえで、Win-Winになる情報提供が重要です。当たり前のように感じられますが、さまざまな障壁や否定的な意見に向き合うことが多いオープンイノベーションにおいて、フラットに物事を受け止め状況を整理することが難しい時もあります。とはいえ、他部署の上司や既存事業部に理解してもらい巻き込んでいくためには、相手にとってメリットだと感じられる情報を相手の視点で考え、情報提供をすることが大切です。
またスタートアップや他企業と協業する場合は、協業相手の思いやサービスにかける情熱、共創によって作り出される未来のワクワク感など、文字だけでは伝わりづらい”温度”を感じられる情報もセットで提供するのも効果的です。論理的な側面と感情に訴える2つの側面からのアプローチをすることで、少しでも巻き込みやすい状況を作り出せるでしょう。

外部支援機関を利用する

時には担当者自身が発する言葉よりも、第三者が話すことで客観性が担保され、直属の上司だけではなくその上の上層部にもオープンイノベーションの取り組み成果や、その活動の重要性が理解されやすくなるケースもあります。

【事例】
Plug and Play Japanの企業パートナーの1社では、イノベーション推進室が立ち上がって1年未満の段階で、事業報告としてオープンイノベーションにおける活動報告を実施。
通常の報告会とは異なりイベントのような形式で開催し、実際にスタートアップにも参加してもらい、同企業の役員と対話する機会を設けた。
結果的に新たなスタイルでの報告会が功を奏し、役員の参加率が非常に高く、次回報告会では会長の参加が確約されるなど今後のオープンイノベーション活動を進めていくうえでの基盤を作ることができた。
Plug and Play Japanが入ることで同社が置かれている業界内において、競争力を維持するために何故イノベーションが重要なのか、そしてイノベーション推進室の活動成果やその成果がどれだけインパクトのあるものなのかを役員向けに伝えたことで、役員層の理解を得られやすくなった。

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