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世の中の声に、テクノロジーの力で応えたいーSMBCグループ シリコンバレー・デジタルイノベーションラボ×デジタル戦略部

2022/11/09

デジタライゼーションを事業戦略の柱と位置付け、先進テクノロジーの活用を積極的に推進する株式会社三井住友フィナンシャルグループ(以下、SMBCグループ)。

2015年にPlug and PlayのFintech領域における企業パートナーとして参画。その後、2017年には先端技術調査を目的としてアメリカ西海岸に「シリコンバレー・デジタルイノベーションラボ」を設立。複数のスタートアップとの協業・投資を実現しています。この一連の取り組みについて、シリコンバレー・デジタルイノベーションラボの2名、デジタル戦略部の2名に話を聞きました。


Writer: Yoshito Tanaka


Editor: Megumi Shoei

Plug and Play Japan, Communications Manager


Editor: Junko Hayashida

Plug and Play, Fintech Partner Success Manager


船山 明信 氏(写真左)
株式会社三井住友銀行 シリコンバレー・デジタルイノベーションラボ 所長
1998年に住友銀行入行。支店配属後、法人・個人取引に従事したのちオペレーション効率化企画や、コールセンター企画を経て、システム統括部で渉外用タブレット電子契約や邦銀初となるOffice365の導入プロジェクト、チャットボット等のAI先端技術活用プロジェクトを率いるなど実績多数。
2018年よりシリコンバレーに赴任し、2021年より現職に従事。シリコンバレーでのグローバルスタートアップ、ビジネスモデルの調査を通じて、デジタルトランスフォーメーション、新規事業開発をデジタル戦略部(東京)とともに推進。

岡 知博 氏 (写真左より2番目)
株式会社三井住友銀行 シリコンバレー・デジタルイノベーションラボ Executive Director
2004年外資系大手ITベンダー入社、2011年(株)三井住友銀行入行。2014年より新技術のR&Dおよび導入に従事、IBM Watsonの導入等を推進。2015年より米国シリコンバレーに赴任し、金融サービスの高度化に資する先端技術の調査および企画・開発に従事。予測分析自動化技術の導入推進(2016年)、ブロックチェーン技術を活用した貿易電子化プラットフォームの開発(2018年)、クリーンテックを活用した新規ビジネス開発など実績多数。米国カンファレンスへの登壇・事例発表も複数経験。

下入佐 広光 氏 (写真右より2番目)
株式会社三井住友銀行 デジタル戦略部 上席推進役
1998年にさくら銀行(現三井住友銀行)入行。金融市場営業部に配属後デリバティブ・信託商品の販売・開発に18年間従事。2013年に商品開発グループ長として法人向けヘッジ商品や信託を活用した運用商品を開発。2016年にO&D(オリジネーション&ディストリビューション)ビジネスを推進するために立ち上げられたディストリビューション営業部上席推進役として機関投資家向け運用商品を開発。
2021年からデジタル戦略部に配属、hoops link tokyoにてオープンイノベーション推進、デジタル通貨・セキュリティトークン・NFT・メタバースなど先端技術に関する調査・検討。

岡田 一輝 氏(写真右)
株式会社三井住友銀行 デジタル戦略部
2019年に三井住友銀行に入行。法人営業部にて不動産、ベンチャー企業・新規取引先向けの取引強化に2年間従事。2021年よりデジタル戦略部に配属、シリコンバレーとの連携やファンドからの情報収集を通じて、国内外のスタートアップとの事業提携と新規事業開発の推進、SMBCグループのDX情報発信を行う「DX-link」の運営、NFT、メタバースなどの先端技術に関する調査・検討。

SMBCグループがシリコンバレーに拠点を開設した理由

ーまず、現在の金融業界の動向や変化の捉え方について教えてください。

船山氏:
SMBCグループに限らず、銀行を取り巻く環境や規制は日々変化しています。SMBCグループとしても法人・個人問わず、お客さまの意識は大きく変わってきており、「利便かつ簡便なデジタルサービスを使いたい」という期待の高まりを感じています。

下入佐氏:
日本における銀行業法の緩和が進み、グループ会社だけではなく自社であっても非金融領域に進出できるようになってきました。SMBCグループでも、銀行業高度化等会社としてデジタル戦略部では10社ほどの子会社を設立してきています。

船山氏:
SMBCグループはデジタライゼーションの強化を目的に、2016年にはデジタル戦略部の前身となるITイノベーション推進室を設立しました。2017年シリコンバレーにデジタルイノベーションラボを設立し、以降、デジタライゼーションを事業戦略の柱と位置付けています。常々抱いていた「デジタルサービスを切り口に新たな価値を提供したい」という想いに、組織や体制が追いついてきているタイミングです。

ーデジタルイノベーションラボの役割について詳しく教えてください。

船山氏:
設立当初はFintechという言葉が流行り始めた時期で、金融機関も「テクノロジーを活用して新しいことにチャレンジしていこう」という想いで取り組んでいました。SMBCグループも、グループ内のサービスの効率化・高度化、先端技術やスタートアップの調査・検討を目的にデジタルイノベーションラボを設立しました。

最近はデジタル化の推進に伴い、シリコンバレーという世界の最新技術に触れられる環境に拠点を置いている地の利を活かし、東京(日本)側のデジタル戦略部と連携したビジネス創出にもコミットしています。もちろん勝手に技術を見つけてきて一方的に紹介するだけではありません。デジタル戦略部に寄せられるニーズやシーズに基づき、シリコンバレー発のテクノロジーやビジネスモデルを調査し、オープンイノベーションへつなげていくことがミッションです。

オープンイノベーションが生まれやすい社内カルチャーへ

ーPlug and Playのプログラムに参画したきっかけについて教えてください。

岡氏:
イノベーションのヒントとして、Plug and Playのネットワークやノウハウなどを活用していくためです。デジタライゼーションに向けた課題意識はあったものの、ゼロベースで全てを一から構築するのではなく、シリコンバレーでのネットワークや実績があるPlug and Playの力を借りるために2015年から参画しました。シリコンバレーにデジタルイノベーションラボを設立する2年前の話です。

ーPlug and Playのどのような点にご期待をいただいたのでしょうか?

船山氏:
大きく分けて2点あります。1つは類を見ないネットワーク網です。シリコンバレーに限らず世界中に拠点を有し、かつ業界特化型の投資担当もおり、さまざまな業界・スタートアップへの投資を手がけてきた実績には大きな期待を寄せています。

もう1つは世界中で535社の大手企業とパートナーシップを結んでおり(2021年時点)、業界ごとのトレンドを日々キャッチアップしている点です。つまり、Plug and Playのパートナーシップに参加すれば、スタートアップ側だけではなく各業界とも情報交換しながらイノベーションを推進していくことができる。シリコンバレーの最初の一歩を踏み出すうえで、これ以上心強いパートナーはいないと思っています。

ーありがとうございます。イノベーションラボ設立以降のオープンイノベーションの活動について教えてください。

船山氏:
正直、試行錯誤の連続でした。実績を求めるあまり、テクノロジードリブンで「こんなにすごいテクノロジーを見つけた」とお客さまのニーズやシーズが集まるユーザー部に提案していたのですが、ビジネスマッチングの確率はあまり高くなかったと感じています。もちろん「法人・個人に関わらずお客さまに新しい価値やサービス・商品を提供し、期待に応えていきたい」という想いで取り組んでいたものの、ユーザー部の課題を適切に把握できていなかったことが原因です。

岡氏:
そういった状況を改善していくために実施したのが、シリコンバレー長期出張プログラムです。デジタルイノベーションラボとデジタル戦略部が連携し、東京のメンバーから具体的なシーズやニーズを把握し、共同して調査・評価していくための取り組みです。

デジタル戦略部として認識している課題やユーザーのインサイト、さらに期待されているソリューションなどを英語で1枚のシートにまとめて、Plug and Playをはじめとする関係先のベンチャーキャピタルに熱意を持って伝えていくところからスタートしました。

少しずつですが変化も出始めています。Plug and Playと長期出張プログラムに取り組むようになって、スタートアップとのコミュニケーションがスムーズになり、要望や課題を的確に伝えられるようになりました。結果として、効率的に適切なソリューション発掘できるようになり、PoCや本番導入に進む確率は上がってきています。

岡田氏:
変化という点では、私たちデジタル戦略部もPlug and Playと連携してさまざまな活動を進めています。特に注力しているのが、マインドセットの醸成です。社員からアイデアが生まれたときに主体的に事業化していけるよう、仕組みを整備しています。

仕組みづくりの一環として、社内起業を推進し若手社員をデジタル系グループ会社の社長に抜擢しました。弁護士ドットコムと共同で、電子契約サービスを提供する「SMBCクラウドサイン」の三嶋英城、中堅・中小企業向けDX支援プラットフォームを展開する「プラリタウン」の並木亮らが社長のポストに就いています。

他にも社内SNSを開設し、各部門のコミュニケーションが活発化しました。SNS発で新たに走り出そうとしている案件もあります。少しずつですが、オープンイノベーションが生まれやすいカルチャーへと進化しているのではないでしょうか。

(画像:SMBCグループ提供)

SMBCグループ発のイノベーションとは

ーデジタルイノベーションラボ発の実績は出ているのでしょうか。

船山氏:
最近ですと、日本総合研究所、JSOL、そしてAllganize Japan(以下 Allganize)と共同開発した先端自然言語処理を用いたAIシステムです。

これまでも私たちはさまざまなAIを使って自然言語処理技術を活用してきました。より精度を高めていくために大量のデータセットと繰り返しのトレーニングを実施してくことが大きな課題でした。

その頃出会ったのが、Plug and Playのイベントに参加していたAllganizeという自然言語処理の会社です。汎用的な言語モデルであるBERTと、その派生モデルに当たるALBERTにAllganize独自の技術を組み合わせることで、データセットやトレーニングにかかる負荷を大幅に削減した最適なAIモデルをつくれることがわかりました。

SMBCグループでは、SMBC日興証券と三井住友カードのコールセンター業務やグループ内の照会応答システムとして導入し、すでに運用がなされています。

ー今後の展開についても教えてください。

船山氏:
Allganizeについてはさらなる展開が考えられます。たとえば各社が多く保管している文書、つまり文字データなど、これまでもOCR(Optical Character Recognition/Reader)のようにさまざまな形でデータを取り出してきましたが、基本的には構造化しないと扱うことはできませんでした。

しかし、Allganizeの高度な自然言語処理を活用すれば、構造化されていない文書の分析も可能となり、文書の中の氏名や住所などの管理したい項目ごとに質問を決めておけば、AIが読み取って該当するデータを抽出することも可能です。コールセンターや応答照会以外にもできることはたくさん考えられるのではないでしょうか。

ー他の実績も出ているのでしょうか。

岡田氏:
企業の温室効果ガス排出量(GHG)の可視化クラウドサービス「Sustana(サスタナ)」です。冒頭でお伝えしたように銀行業法の緩和が進んだことで、銀行がシステムを販売できるようになったため、株式会社東光高岳さま、アズビル株式会社さまの2社と協働し、自社で開発したシステムを販売することになりました。

Sustanaの特徴は、企業の温室効果ガス排出量を算定できる点です。温室効果ガス排出量削減にあたって必要な現状把握を支援するサービスです。いずれは排出量を減らしていくためのサービスも順次ローンチしていくロードマップを描いており、お客さまのSDGsを包括的に支援できる体制を整えているところです。

(画像:SMBCグループ提供)

ー銀行とSDGsは一見関連性が薄い印象を受けます。

岡田氏:
金融領域にこだわるつもりはありません。Sustanaもお客さまの「脱炭素経営が求められているけど、何から始めればいいのわからない」という声がきっかけで生まれたサービスです。今後も「法人・個人に関わらずお客さまに新しい価値やサービス・商品を提供し、期待に応えていきたい」という想いで取り組んでいきます。

地道にコツコツと

ーオープンイノベーションを進めていくうえで、大切にしている考え方はありますか?

船山氏:
イノベーションとはいえ、何もないゼロからイチをつくり出すのは非常に難しいことです。ですから、私たちができることは社会やお客さまの変化を常に把握し続けること。そして、把握した変化に対して向き合っているお客さまやスタートアップの動きに目を向けることです。

今の時代、自分たちだけで動いたところで大きな変化が生まれることはほとんどない。たくさんの方たちと手を取り合いながら、リソースを提供しあって課題と向き合っていくことで初めて解決の糸口がつかめます。そのためにも社会に目線を向けて、正しい情報や示唆をインプットし続けていくことが大切なのではないでしょうか。

下入佐氏:
同時に考えなければいけないのが、きちんと将来に目を向けることです。足元に目を向けることはもちろん大事なのですが、時代の潮流を読んで、将来を見据えた行動も大切です。

先ほどのSustanaもいきなり思いついたわけではなく、2000年代の半ばから環境ビジネスについて考えてきた歴史があったからこそ、世の中の環境意識が高まったタイミングで迅速に提供できたと考えています。忙しいとつい目先の結果にとらわれがちですが、未来に向けるまなざしも忘れてはいけないと思います。

ースタートアップや各事業部との協働において意識している点は何でしょうか?

船山氏:
かなりフラットにお付き合いさせていただいている意識はあります。ビジネスパートナーの関係ですから私たちだけではなく、スタートアップ側にメリットがある形で協働できるよう、コミュニケーションの部分から徹底しています。

岡氏:
各事業部、特にユーザー部との連携についても工夫しています。
信頼関係のない状態でいきなりユーザー部へ足を運び、いきなり「課題何ですか?」と聞いても受け入れてもらえません。そうではなく、デジタル戦略部やデジタルイノベーションラボである程度仮説を立ててディスカッションを始めることで、適切なフィードバックがもらえ、真の課題やニーズを確認できるようになります。この動きを繰り返すことで、ユーザー部との信頼関係が構築されて、徐々に連携が取れるようになってきました。

ーものすごく地道に取り組んでいる印象を受けました。

岡氏:
まさにトライ&エラーの連続です。ユーザー部のニーズ・シーズを理解しきれておらず、私たちの調査が空振りしたこともありました。
スタートアップとコミュニケーションを重ねていく中でも、最初にユーザー部が抱える課題の本気度をきちんと伝えられなかったがゆえに頓挫したこともありました。そういう意味では、確りと失敗を繰り返しながら活動をしてきました

船山氏:
非常に泥臭いチームだと思います。スマートに戦える世界ではないと思っています。

ー最後に、今後の取り組みについて教えてください。

船山氏:
デジタルイノベーションラボとしては、デジタル戦略部を中心に各社・各部と二人三脚で、お客さまが必要とされているサービスをいち早く届けていこうと考えています。ミッションの遂行に向けて、私たちと想いを共有してくれるようなスタートアップとは
まで以上にコラボレーションを強化していきたいと思います。

先ほど失敗体験の話が出ましたが、「この前うまくいかなかったから」と萎縮するのではなく、いい意味で失敗にとらわれずにお客さまファーストでサービスを生み出していきたい。Plug and Playには引き続き価値あるサポートをお願いしたいと思っています。

岡氏:
同意見です。この1〜2年は特にデジタルイノベーションラボ発でPOCや本番導入、新規事業の立ち上げまで進んだ案件が多く、非常に好調です。その過程で、Plug and Playには多くのスタートアップをご紹介いただいており、今後はより一層この動きを加速させていきたいと思っています。

岡田氏:
Plug and Playからは、これまでもアクセラレータープログラムやオープンイノベーションを実現するためのイベント開催などで継続的なサポートを受けてきました。今後、グループ内でのマインドも醸成されフェーズが変わっていくと、新たな課題と直面することもあると思います。私たちも部門を超えて連携を深めていきますので、ぜひパートナーとして共にオープンイノベーションを進めていけると幸いです。

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