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なぜ“スタートアップエコシステム” の形成・活性化が重要なのか

2022/06/03


Ayumi Fujimoto

Executive Officer, CMO


2022年3月に発足した日本スタートアップエコシステム協会(SEA-J)は、スタートアップエコシステムのキープレイヤーが中心となり、国内外に情報発信をする体制を整えるとともに支援者同士の連携を促進し、スタートアップが適切なタイミングで、適切な支援を受けられる環境を整えることをミッションに設立されました。

Plug and Play Japanはこの協会の理事として、スタートアップエコシステムの形成・活性化に取り組んでいます。

 

Plug and Playは、スタートアップ、大手企業、投資家、大学、行政機関をつなぎ、世界中のイノベーションを加速させることをミッションとして掲げ、2006年にシリコンバレーで創業しました。現在、世界40拠点以上に展開しており、ベンチャーキャピタルとしてPayPalやDropbox、Guardant Healthなど1,600社以上の投資実績を有し、多数のユニコーン企業を輩出してきました。またアクセラレーターとして、2021年は530社を超える企業パートナーに参画いただき、1,300以上のプログラムやイベントを実施しながら2,500社以上のスタートアップの事業成長を支援しました。

 

そしてVisionには『”イノベーションプラットフォーム”を構築し、イノベーションを誰でも、どこでもオープンなものにすること』と掲げています。そのために重要なのがスタートアップエコシステムの形成・活性化です。

そもそもスタートアップエコシステムとは何か?

岸田首相は年初の記者会見で、2022年を「スタートアップ創出元年」と位置づけ5カ年計画を策定すると発表しました。イノベーションの担い手であるスタートアップがさらに増えていくことでビジネスが創出され、雇用が生まれ、経済が活性化することが期待されています。そして今後さらにスタートアップが生まれる仕組みを形成するためにやらなければいけないことの一つが、スタートアップを生み出すシステムとしての”エコシステム”の形成です。

ところで”スタートアップエコシステム”とは一体どんなものなのでしょうか。

Startup CommonsのWhat Is Startup Ecosystem?によると、スタートアップエコシステムとは、「ある場所(物理的・仮想的)に集まる人々や、あらゆるステージのスタートアップ、さまざまな種類の組織が新しいスタートアップ企業を生み出すシステムとして相互作用することによって形成されるものである。」と記されています。

「エコシステム」とはもともと、多様な動植物が集まり、循環しながら生命を育んでいく生態系を表す言葉。スタートアップが生まれ、成長していくために必要な環境のことを指します。そこには少なくとも以下のような要素が必要になります。

  • イノベーションの種となる研究や発明、ビジネスアイデア
  • さまざまなステージのスタートアップ
  • 起業家や起業に興味のある人
  • スタートアップで働きたい人
  • 投資家や投資機関
  • 専門知識を教えてくれるメンター
  • 経験ゆたかなアドバイザー
  • 起業家をサポートするサービスを展開している企業

※一般社団法人スタートアップエコシステム協会提供

つまり、さまざまなプレイヤーが相互に作用することでスタートアップエコシステムは形成されるとのこと。どのくらい”さまざま”なのかと言うと、スタートアップエコシステムに関して世界中を調査し、ランキングを発表しているStartup GenomeやStartupBlinkが制定している評価項目を見ると、その項目が多岐にわたっていることがわかります。Plug and PlayのようなアクセラレーターやVC、メンターや投資家、大手企業のような企業や人だけでなく、イベントの実施回数などのネットワーキングができる環境など実に多様です。

※一般社団法人スタートアップエコシステム協会提供

※一般社団法人スタートアップエコシステム協会提供

2022年3月に開催したPlug and Play Japan Summit – Winter/Spring 2022 BatchのKeynote Sessionでも、世界銀行東京開発ラーニングセンター(TDLC)のリーダーを務めるビクター・ムラス氏が日本のスタートアップエコシステムの現状と課題について、日本におけるエコシステムを形成するプレイヤーは増えているものの、海外と比較するとまだ規模が小さかったりそれぞれが連携していなかったりと課題が多い点を述べられていました。一方で日本は、本来であればニューヨークと同じレベルのスタートアップエコシステムのポテンシャルがあるとのことで、課題は多いものの日本にはさまざまな可能性もあるという点も仰っているのが印象的でした。


世界銀行による東京のスタートアップエコシステムに関する分析サマリーレポートは以下よりご覧いただけます。
https://openknowledge.worldbank.org/bitstream/handle/10986/36462/Startup%20ecosystem%20ES_web_jp_vf.pdf?sequence=5&isAllowed=y

シリコンバレー型のスタートアップエコシステムの形成からの脱却

”スタートアップエコシステム”といえばシリコンバレーがお手本、と思われる方も多いと思いますが、実はここ数年間世界中のさまざまな都市でスタートアップエコシステムの形成・活性化が進んでいます。日本が目指すべきスタートアップエコシステムの形としては、シリコンバレー型を踏襲するだけでなく、パリやロンドン、シンガポールなどスタートアップエコシステムの形成が先行する都市の事例から学び、実践していくことが必要です。

※一般社団法人スタートアップエコシステム協会提供

Plug and Playは2021年新たに10都市に拠点を拡大しましたが、今年も様々な都市でのプログラム運営が進行しています。ちなみに最も新しい拠点はウズベキスタン!(https://www.plugandplaytechcenter.com/press/uzbekistan-welcomes-global-innovation-platform-plug-and-play/)

今年はオフラインでのスタートアップカンファレンスも世界中で開催されますので、また各国の取り組みの詳細についてもレポートできればと思います。

参考記事:【Event Report】日本のスタートアップエコシステムの課題と展望https://japan.plugandplaytechcenter.com/blog/20220415-enabler-panel-session/

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