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大手企業とスタートアップに起きがちなミスコミュニケーション

2023/11/30

スタートアップと大手企業のオープンイノベーションを成功させることは、企業文化の違いを乗り越えることでもあります。スピードを重視するスタートアップと確実性を重視する大手企業が、お互いの利益を追求する中で一方的な関係になってしまうことも珍しくありません。今回は「スタートアップとのコミュニケーション」で起こりがちな問題について詳しく解説するとともに、どうすれば両者にとって有意義な連携を実現できるか、スタートアップからいただいた生の声をご紹介します。

(Photo by Miguel Á. Padriñán from Pexels)


Chiyo W. Kamino

Content Marketing Associate


スタートアップと協業するまでの主な流れ

スタートアップと大手企業が連携するにはさまざまな形態が考えられますが、以下は最も多いアーリーステージのスタートアップとの連携の流れです。大きく分けて3つの段階があります。

 

1. 探索フェーズ

新規事業部門やR&D部門が中心となり、自社の求める技術を持つスタートアップを、さまざまなチャネルを通してピックアップし、面談やラボ訪問、サンプル請求などを行います。

 

2. 開発・PoCフェーズ

面談を経て、自社とのシナジーが見込まれるスタートアップとのPoC(実証実験)や新規事業開発をスタートさせる段階です。連携を担当する事業部やKPIを確定させます。

 

3. 事業化推進フェーズ

PoCを経て、実際にサービスやプロダクトの実装に進みます。この段階では、プレスリリースを打ったり、専門の部署を立ち上げたりするなど、専任担当者が付くようになる段階です。

スタートアップとの協業を進めるうえでは、1の「探索フェーズ」における信頼関係の構築が非常に重要となります。この段階でのミスコミュニケーションにより、有望なスタートアップとの連携機会を逃してしまっているケースも少なくありません。この記事では、1の「探索フェーズ」におけるコミュニケーションについて詳しく説明します。

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面談前の準備: 仮説を持って臨むかどうかでその後の展開が決まる

探索フェーズでよくあるケースが「とりあえず話を聞く」というパターンです。これはスタートアップ側だけでなく大手企業側にとっても無駄足になりかねません。スタートアップとの面談を設定した段階で、ある程度の仮説(連携の方向性)と連携可否の判断基準、連携にあたって割くことのできる時間・予算・人員のリソースを把握しておくことが重要です。仮説を立てた上で適切な担当者がいるのであれば、その人に同席してもらうことも必要でしょう。

 

一般的に大手企業は事業が細分化されているため、スタートアップ側からはどういったニーズがあるのか見えづらくなっています。そのためスタートアップ側も適切なソリューションを提案できず、貴重な面談の機会が一般的な事業紹介に終始してしまうことになりがちです。このようなミスコミュニケーションを防ぐためにも、大手企業側からスタートアップへ探索している技術や期待するパートナーシップの在り方などを紹介するリバースピッチをおこなうことも、有効な手段と言えるでしょう。

 

面談後のフォローアップ:率直な回答を迅速に伝える

スタートアップにとって時間は非常に重要な資源です。資金が尽きるまでに成果の出る連携を進め、実績にしなければなりません。大手企業とスタートアップでは時間感覚が異なることを念頭におき、面談中もしくは面談後数日以内に次のアクションを提示することが求められます。

 

相手からの提案に対してはっきりとNOを言うことは難しいですが、スタートアップにとっては早めに回答をもらえることが最も重要です。「YES/NO」をはっきりさせることが、相手を尊重したビジネスマナーであると言えるでしょう。

YESの場合

連携に向けて引き続き協議したい場合、次回面談の日程を早めに調整すべきです。大手企業であれば社内調整に数週間、時には1ヶ月ほどかかることも珍しくありません。技術内容を精査したい場合は、NDA締結に向けて必要なステップをスタートアップと社内の双方に確認しましょう。

NOの場合

面談を経てスタートアップとの間に連携のポテンシャルが見いだせなかった場合には、いたずらに回答を先延ばしにせず、いったん断る勇気を持つことが必要です。その場合、「連携できないと判断した理由」を添えることで、スタートアップにとっても成長に必要な要素を知ることができたというポジティブな経験になります。

 

スタートアップは変化の激しい企業体です。数年後ピボットした状態で新たに連携の検討に上ってくることもありえます。フィードバックを与えることはスタートアップのためになるだけでなく、自社にフィットするスタートアップの解像度を上げるという意味で、大手企業側にもプラスになります。

「検討します」という回答で濁さない

有望な技術を持つスタートアップには、全世界から協業や投資のアプローチがあります。スタートアップにとっても、限られたリソースをどの協業相手に費やすかは死活問題です。スタートアップが可能とする範囲を超えてサンプルやリソースを無料で要求する、協業に関する意思決定に時間がかかりすぎるなどのネガティブ要素のある企業は、スタートアップから連携の対象外にされてしまいます。

ゴールと撤退基準を明確化し、次のステップへ

面談を経て、PoCや共同研究などの次のフェーズへ進む際には、最終的にどのような形でスタートアップとの連携を発展させるかという戦略を持ったうえで臨むとともに、計画通りにプロジェクトが進まなかった場合、継続か打ち切りかを判断する基準をあらかじめ決めておくことが必要です。自社の立ち位置を明確化し、相手の置かれている状況も考慮した上で双方が納得できるゴールを見つけることが、成功する協業への第一歩と言えるでしょう。

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Plug and Playでは、550社以上の世界中の大手企業へ、年間約2500社のスタートアップを紹介しています。大手企業とスタートアップにヒアリングをおこなったうえで、双方にとって有益な協業につながるよう、両者の間に入り調整をおこなう役目を果たしています。

また、両者のスムーズな連携を促進するため、大手企業向けにスタートアップに対する理解を深めるセミナーやイベントを開催しています。ご興味のある方は、ぜひ弊社のイノベーションプラットフォームへご参加ください。

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