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大手企業がスタートアップと連携する目的とは?連携方法を解説!

2023/11/30

スタートアップと連携したオープンイノベーションには、どのようなやり方があるのでしょうか。出資、共同研究、事業提携など多くの選択肢がありますが、自社の方針とスタートアップの成長段階に合った連携のやり方を見極めることが重要です。この記事ではスタートアップのステージごとでの連携方法と、Plug and Playのプラットフォームを通じたオープンイノベーションの成功例をご紹介します。
(Photo by Mikael Blomkvist)


Chiyo W. Kamino

Content Marketing Associate


目次
  • なぜスタートアップと連携すべきなのか?
  • 事業ステージごとの連携方法を理解する
  • 大手企業が取りうるスタートアップとの協業オプション
  • 事例から学ぶ大手企業とスタートアップの連携の変遷

1. なぜスタートアップと連携すべきなのか?

そもそも、オープンイノベーションにおいてなぜ大手企業はスタートアップと組む必要があるのでしょうか。過去20年間ほどの間、大手企業は自社の研究開発部もしくは大学の研究室との連携を通じて新製品を開発してきました。しかし近年デジタル技術が進化し、過去とは比べものにならないスピードで各産業でイノベーションが起こっている中、スタートアップの力を使って環境の変化に適応していこうという動きが見られます。

 

イノベーションの創出において、スタートアップは開発スピードや独自性の高いシーズの実用化という、大手企業が苦手とする部分を補う存在です。他方、スタートアップは大手企業が持つチャネルやブランド力、資金力といったリソースを得てスケールすることが可能になります。

大手企業・スタートアップ両者とも、連携目的を1つに絞り切っているケースはあまりなく、多くは以下のような複数の角度から連携を検討しているケースが多いです。

 

2. 事業ステージごとの連携方法を理解する

「スタートアップ」と一口に言っても、その実態はさまざまです。B2B向けのDXサービスを展開している企業もあれば、研究開発型の企業も存在します。共通点としては、短期間で爆発的な成長を遂げることを目指した企業体である点です。つまり「短期間で飛躍的な成長を目指すこと」が前提となっている企業体であり、成長の各ステージによって大手企業との最適な連携方法は異なります。

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  • シードステージ

この時期のスタートアップは、まだ企業体として立ち上がったばかり、あるいは立ち上がる前段階であることが多いです。フルタイムの社員がおらず、経営層全員がスタートアップ経営以外に主な収入源となる仕事を二足のわらじを履いていることも珍しくありません。プロダクトもベータ版であることが多く、PMF(Product-Market Fit)の達成を目指している段階と言えるでしょう。この時期のスタートアップとの組み方としては、事業アイデアや技術精度を検証するためのPoCをおこなったり、共同研究開発をスタートさせるなど「一緒に商品を作る」形態が考えられます。

 

  • アーリーステージ

プロダクトが正式リリースされ、企業としても継続的な事業成長を目指していくフェーズです。ここでトラクションを稼ぎ、次のシリーズへの資金調達を視野に入れた活動をしていきます。この時期では将来的な事業展開を見越したPoCや購買契約など「一緒に商品を育てていく」アプローチが主な連携方法として考えられます。

 

  • ミドルステージ

自社製品やソリューションサービスが整い、ある程度の安定的な成長が見込めるようになった段階になります。このステージまでくるとすでに他社との連携や一定量の受注、業界における自社の認知なども達成しています。主力製品に磨きをかけながら新しいサービスを検討している場合でもあるでしょう。自社が組む大手企業の選定に対してシビアになってくる時期とも言えます。この時期は業務提携や資本業務提携が選択肢に入ってくるでしょう。

 

  • レイターステージ

このステージのスタートアップは、上場を視野に入れ事業を拡大していることが多いです。大手企業との事業連携を引き続きおこなうスタートアップがある一方で、M&Aや上場等によるEXITを目指しているスタートアップも存在します。この時期のスタートアップとは、自社利益への大きな貢献を期待するうえでの合弁会社の設立や、新技術の導入、新たな市場の獲得を見込む買収など、自社事業の拡大を意識した連携が見られます。

 

3. 大手企業が取りうるスタートアップとの協業オプション

スタートアップとのオープンイノベーションを目指す場合、自社がどのような立ち位置にいるのかをまず把握することが重要です。大きく分けて2つのパターンが存在します。

 

  • 自社事業の発展に必要なミッシングピースを探す場合

大手企業側で自社が必要としている技術を具体的かつ明確に把握しており、その特定ニーズに合致するスタートアップだけを狭く深く探索しているケースです。求める技術要素あるいは解決すべき課題が詳細に明示されており、その条件に当てはまるソリューションを持つスタートアップを絞り込んで探索する形になるため、数ヶ月〜1年という比較的早いスピードでPoCや導入へとつながることが多いです。

 

  • 全く新しい事業アイデアを創出する場合

会社として目指すビジョンや事業のおおまかな方向性は決まってはいるものの、具体的な新規事業内容については各部署に委ねられているケースです。新規事業をコンセプト段階から構築していくため、課題発見力やアイデアの発想力が求められます。この場合は広く多様なスタートアップと面談し、どのような形で協業すべきかを協議しながら進めていくことになります。初回面談から実際の協業に至るまで数年かかる場合もあり、自社の描いているタイムラインをスタートアップへあらかじめ伝えることが必要です。

 

スタートアップとの連携を検討するにあたっては、どのような協業オプションが最適なのか、事前に仮説を持ったうえでアプローチすることが効果的です。スタートアップにとっても、大手企業側の明確なニーズを把握することで、協業が自社にとって有益か否かを判断しやすくなります。お互いの時間を無駄にしないためにも、大手企業側でも自社でどういったニーズがあり、スタートアップにとってどのような協業メリットがあるのかを説明する、リバースピッチができるようになっておくことが肝要でしょう。ここでは、メーカー系系企業と研究開発型スタートアップの協業オプションを例として上げています。

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4. 事例から学ぶ大手企業とスタートアップの連携の変遷

これまで、スタートアップと大手企業の連携においてどのようなオプションが考えられるのかを見てきました。では具体的にどのような事例があるのでしょうか。Plug and Playのイノベーションプラットフォームを介して行われた新商品の共同研究から、出資に結びついたケースをご紹介します。

Plug and Playシリコンバレー本社の企業パートナーである株式会社小糸製作所。同社はPlug and Playのイベントを通じて3Dセンシング技術を持つCepton, Inc.と出会い、共同研究を経て出資、戦略的技術パートナーシップを結びました。2022年には1億ドルの追加出資をおこない、CeptonはNasdaqに上場しました。技術シーズと探索ニーズのフィット、トップのコミットメント、スピード感のある展開などさまざまな成功要因が挙げられますが、成長するスタートアップのステージに合わせた連携を実現したひとつの成功例と言えるでしょう。

 

Plug and Playでは、各産業分野に特化したイベントや、企業パートナーに向けた最新テクノロジーのセミナーなどを通して、スタートアップと大手企業の相互理解を促進しています。また、大手企業を対象とした新規事業テーマ創出支援・アイデアワークショップなども提供しています。ご興味のある方は、ぜひ弊社のイノベーションプラットフォームへご参加ください。

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