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Startup School #3 | 投資家の選び方(シード〜シリーズA以降)

2021/05/10


Zak Murase

Executive Advisor, Plug and Play Japan


シード〜シリーズA以降の資金調達

前回の記事では創業からプレシード期までの投資家選びについて書きました。
今回はアーリーステージ(シード〜シリーズA)以降の投資家の選び方について解説します。

シード、あるいはシリーズAのエクイティによる資金調達では、リード投資家を選ぶことになります。このステージでのリード投資家は、場合によってはあなたの会社の10-20%程度を持つことにもなり、会社の重要な決定に際して大きな影響力を及ぼす議決権を持って取締役にも名を連ねることとなります。前回の記事で、「リード投資家との関係は時に結婚に例えられる」と書きました。会社を成長させていくにあたっての伴侶として、長い期間お互いにコミットする関係になります。ただし、結婚と違ってリード投資家とは簡単に離婚することができません。間違った相手を選んでしまうと、取り返しのつかないことにもなりかねないのです。

一方で資金だけでなく、それ以外の面でも大きくあなたのビジネスの成長に貢献してくれる可能性があるのがアーリーステージ以降の投資家でもあります。以下ステージごとに、考えるべきポイントを挙げます。

シード:

多くのスタートアップはシードラウンドの調達でPMF(Product Market Fit)を目指すことになります。逆に言えばシード調達時はまだPMFが見えていない状態。そんな時に頼れるのは何よりも、豊富な経験を持つ投資家です。最近は日本にもシードを専門、あるいはメインのターゲットとするVCが数多く出てきました。こうしたシードVCは、CEOとして自分の会社のビジネスのことだけを考えているあなたに対して、客観的な視点からあなたのビジネスがPMFを達成するために必要なことをアドバイスしてくれます。特に経験豊富なシードVCは色々なスタートアップの成功例のみならず、それよりもはるかに多くの失敗例を見てきているので、あなたが間違った方向に行きそうな時にその兆候をいち早く指摘してくれるかもしれません。

経験豊富なシード投資家を選ぶべきもう一つの理由は、適正な企業価値と投資条件で調達ラウンドをまとめてくれることです。最近は少なくなってはきたものの、まだ未熟なシード投資家の中には、極端に投資家に有利な投資条件を提示してくるところもあります。エクイティによる調達の時は起業家側も弁護士を立てて相談することは必須ですが、経験豊富な投資家とのやりとりは圧倒的にスムーズに進めることができます。

シード期を専門としているVCにアプローチするのは比較的簡単です。多くのVCがホームページから連絡を受け付けていますし、個々のキャピタリストもほとんどの人をツイッターで見つけることができます。中には事業内容の壁打ちを募集しているキャピタリストもいますので、まだ調達の準備ができていない段階であっても相談にのってくれます。カジュアルにあなたのビジネスについてフィードバックをもらうというのはそのVC、キャピタリストをカジュアルに知ることができるという意味でも大変おすすめです。

シードVCのもう一つの重要な提供価値は、シリーズAの投資家へのコネクションです。

シリーズA:シード投資家からの紹介

スタートアップにとって最も重要な投資家になるのがシリーズAのリード投資家と言っても過言ではありません。PMFを達成し、これからビジネスをスケールさせる重要な局面でシリーズAの投資家が果たす役割は非常に大きなものになります。

シードでリードを取った投資家が続けてシリーズAをリードすることはあまりないので、経験と実績のあるシード投資家であれば、そのスタートアップの価値を最大限に高めてくれると考えるシリーズA投資家を紹介してくれます。これはシード投資家がリターンを最大化するためにもやることですが、そのスタートアップのシードステージの歩みを近くで見てきた投資家だからこそ推薦してもらえるシリーズA投資家は、自分で探す投資家よりも信頼できる確率が格段に高まります。こうした紹介をする投資家、そして紹介される投資家はお互いの評判に関わってくるので、その評判を下げるような行動ができないからです。

もちろん紹介してもらったからといってそのVCが投資を決めるかどうかは先方次第ですし、本当にあなたと合っているのかどうかもあなた自身が話をした上で判断しなければなりませんが、自分で投資家を探す労力と節約できる時間を考えると、シード投資家からの紹介は非常に価値があるものと言っていいでしょう。

シリーズA:シード投資家からの紹介がない場合

ではシード投資家からの紹介がない時には、どのようにシリーズAの投資家を選ぶのが良いのか?いくつかポイントを挙げてみます。

まず重要なのが話をするタイミング
シードラウンドでは大体1年から1年半分くらいの運転資金を確保しますが、遅くとも資金が枯渇する半年前から投資家候補と話をし始めるべきです。シードラウンドが終わって、しばらくはプロダクトに集中したい気持ちも分かりますが、資金調達はCEOの最も重要な仕事の一つ。一定の時間は資金調達に割かれる前提でチームをマネージしなければなりません。おすすめしたいのは、シードを調達した後なるべく早いタイミングでシリーズA投資家の候補をリストアップし、アプローチをかけることです。もちろんこのタイミングではまだ投資検討してもらえる段階ではありませんが、シリーズAに向けてのマイルストーンやスケジュール感を投資家と共有することができれば、投資家側もゆっくり進捗を見ることができるので、資金調達のタイミングになった時に動きやすくなります。

一度投資家と繋がったら、定期的に事業の進捗をメールでアップデートしましょう。頻度は少なくとも月に一回。このメールでの継続的なコミュニケーションは、投資家が投資判断するにあたって、初めて聞くピッチよりもはるかに有効です。
このコミュニケーションは起業家にとっても投資家を知る良い方法です。いい投資家であれば、あなたの事業に筋があると見れば積極的に返事をくれるはずです。

もう一つこのステージで考えるべきは、事業会社の投資家をリードとして受け入れるかどうかです。事業会社、あるいはCVCファンドの場合リードは取らず、フォローで入ることが多いのですが、たまにリードを取るところもあります。シリーズAで特定の事業会社をリード投資家として受け入れてしまうと、その会社の競合となるところを顧客として取りにくくなってしまうことがあったり、シリーズB以降のラウンドに影響を与えてしまいかねない投資条件を提示されたりすることもあり得るので、注意が必要です。

*こちら Startup School #1「事業会社との付き合い方」も参考にしてください。

シリーズB以降:

シリーズB以降になると自ずとどんな投資家から投資を受ければいいのかは見えてくるので、特に気をつけるポイントというのはありませんが、どのステージにおいても必ずリファレンスは取るようにしましょう。VCは大抵ポートフォリオを公開しているので、うまくいったところ、うまくいかなかったところも含めていくつかリファレンスが取れるといいと思います。

最後に

最後に、エンジェル投資家と違ってVCや事業会社は組織として投資活動を行なっているとはいえ、最終的にあなたと合った投資家かどうかを左右するのは、キャピタリスト個人であり、担当となったその人です。どんなにそのVCの評判が良くても、担当になったキャピタリストがあなたとウマの合わない人であったら慎重に考えるべきです。投資家に選んでもらえることはもちろん喜ぶべきことですが、あなたも選ぶ立場にあることを忘れずに。

Plug and Play Venturesではいつでも資金調達の相談を受け付けていますので、こちらから気軽に連絡してください。

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