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セレンディピティを生みだす場所であり続けるために。Plug and Play Shibuya powered by 東急不動産インタビュー

2020/07/13

“Plug and Play”の名を持つコワーキングスペース Plug and Play Shibuya powered by東急不動産 が東京・渋谷に誕生したのは2017年秋のこと。 Plug and Playの日本最初の拠点としてPlug and Play Japanの開業期から成長を見守ってきた場所です。Plug and Play JapanのCorporate Partnerでもある東急不動産株式会社の伊藤秀俊さん、Plug and Play Shibuyaの運営をされているライフ&ワークデザイン株式会社の鈴木綾さんにお話を伺いました。


伊藤 秀俊氏

東急不動産株式会社 都市事業ユニット 事業戦略部 まちづくり共創グループ 

1998 年東急不動産株式会社に入社、2017 年 4 月より渋谷のスタートアップ共創事業開始。2017 年 9 月 Plug and Play Japan とパートナーシップ契約を締結、日本へ誘致。同 11 月に Plug and PlaySHIBUYA を企画・開業し、オープンイノベーションによる PoC 実践の場として積極活用。2018年4月東京開業ワンストップセンターを開業、同6月に増床し、現在も高稼働率を維持している。そのほかエコシステムビルダーと関係スタートアップが同居する施設「GUILD」シリーズをチームで展開、為末氏の「Deportare」含む計7施設を次々開業、現在も複数案件の企画にチームリーダーとして携わる。(写真右)


鈴木 綾氏

ライフ&ワークデザイン株式会社 Plug and Play Shibuya powered by 東急不動産 

2017 年、会員制シェアオフィス「ビジネスエアポート」を運営するライフ&ワークデザイン株式会社に入社。複数店の店舗運営や営業、新店開業などに携わり、新サービスの企画・導入などに取り組む。現在は「Plug and Play Shibuya powered by 東急不動産」の店舗責 任者として Plug and Play Japan や東急不動産不動のまちづくり共創グループのメンバーと共に、施設の魅力や渋谷の価値づくりに尽力。趣味はヨガと断捨離。(写真左)


飾らない自分で勝負する街、渋谷

ーーPlug and Playとの出会いと、3年前に東急不動産がPlug and Play Shibuyaという場所を作るにいたった経緯について聞かせてください。

伊藤:

Plug and Playとの出会いは、最初にPlug and Playが日本に来るっていうことを聞きつけて、そのときにオフィスを探しているっていう話をもらったとき。物件を一緒に探すことになったんです。
いまでも昨日のことにように思い出されるんですが、3年前にPhillip(CEO & Managing Partner, Japan)とKoji(シリコンバレー本社に勤務するDirector of Japanese Partnerships)と一緒に初めてここ(Plug and Play Shibuya)にきたときに、「もうここしかないよね」って。その後Saeed(CEO) も来てくれて、「ここは、白だね。(=白を基調にしよう)」という彼の一言で、ここのデザインコンセプトがあらかた決まりました(笑)。

もともとは金融機関の店舗が入っていた場所で、3年前、本当にたまたま空いていたんですよね。僕らも1階にスペースを持てるとは思っていなかったし、いまだにこんなスペース、探してもなかなか出てこない。
そのときからPlug and Playをとりまくセレンディピティ(偶然性)って始まっていたと思います。

日本最初の拠点選びの決め手は渋谷の「多様性」だったと思います。以前渋谷のローカルラジオに出演したときに「Tシャツってなんなの」っていう話題に触れたときに「飾らない自分をさらけ出せる、自分のありのままの姿で戦うことができる服装だよね」っていう結論にたどり着いて。渋谷はそんな人が集まっているし、そういう雰囲気がスタートアップに合ってるなって思います。

ーーPlug and Playはシェアオフィスやコワーキングスペースの運営を生業にしている会社ではないですし、東急不動産さんも事業としてこのようなスペースをメインで手掛けているわけではないですよね。この2者がタッグを組むことになって、どんな場所を目指したのでしょう。

伊藤:

そのビジョンは、ここを運営するうちに見いだせたところがあります。
最初は、Plug and Playのアクセラレータープログラムのイベントで使ってもらったり、プログラムに参加するパートナー企業や、プログラムに採択されたスタートアップにプログラム後も残ってここに入居し続けてもらうことをメインに想定していたんです。ただオープン当初は本当がらがらで、初期の入居者さんに「ここは静かだからいいね」って言われちゃったりしてショックを受けたこともありました(笑)。でも地道にイベントを打っていって、自分たちもこのスペースのデスクで働くようにしたり、内見対応を丁寧に重ねたりしていくうちに少しずつ潮目が変わって、入居者数が増えていくようになりました。思えば、3年前はコワーキングスペースってまだ珍しかったですよね。

不思議なことにここって、多様ではありながら同じような価値観の人が集まってくる磁力みたいなものがあるんですよ。みてのとおり、他の人に聞こえるような声で熱く議論しているグループもいれば、一人黙々と集中してる人もいる。自分のビジョンを叶えることに集中してる人ばかりだから、多少騒がしい環境でも気にならない。毎日のようにいろんなイベントが開催されたりするし、常にいろんなことが起こっている場所なんだけど、お互いが自分の事業に打ち込んでる、同じような境遇の者同士だからこそ、そういうのは許しあえるし、自然と会話が生まれてコミュニティができていたりして・・・志が高い人同士がうまく共存している空間。
そうするように仕向けたわけでもないんだけど、そういう人たちが集まってるのは面白いですよね。それはPlug and Playが大事にしているオープンなイノベーション・プラットフォームに通ずるところもあるし、僕らもそういう場所であり続けたいなって思います。

場が生む不思議な出会いに遭遇して

ーーPlug and Play Shibuyaはコワーキングスペースのパイオニアですよね。今はテレワークなどの働き方も浸透してきていますが、このような場所に求められる価値ってなんでしょうか。

伊藤:

一つの場所に「集まる」ことによって得られる「信頼」を作ることですね。対面で話すことで得られる情報ってすごくあるんです。その人が信頼できるか、とか。それをすごく感じたのはBatch1で採択されたGINKAN*1の神谷さんと会った時。彼とはその後すごくいい関係を続けていくことになるんですが、偶然ネットワーキングで話したときに意気投合したのが、協業することになる一番のきっかけでした。彼の人間味がすごく感じられた瞬間だったし、今考えたら、オンラインじゃ難しかったのではないかなと。あれはオフラインの魔力だし、「やりましょう」って対面で言ったら、もうやらなきゃなって思っちゃう。そこで築いた信頼ってものすごいですよ。
いまはオンラインでネットワーキングできるサービスもあって、それが補完できることもあるかもしれないんですが、お互いに相当能動的にコミュニケーションとらないとオフラインのような効果は難しいんじゃないですかね。一つの場所にお互いが偶然に居合わせることによる価値って、特に興味がなかった話が急に耳に入ってきたりとか、たまたま目があって挨拶したとかによる不思議な出会いを生むことにあると思っていて。

鈴木:

まさにセレンディピティですよね。オンラインってとても効率的で、自分が必要な情報にピンポイントでアクセスできる特性はあっても、自分の興味の外にあるものや、周辺で起こっていることに偶然出会うことは難しい。

伊藤:

さっきTシャツの話をしましたが、オフラインだと服装がラフだとその人の属性って名刺をもらうまでわからないですよね。ここにスーツで来る人がそもそも少ないんですが、たまたま話しかけたのが大企業の人だった、スタートアップの代表だった、っていうのはここでのネットワーキングの場ではよくあるんですよね。そういうときは誰しも対等な関係であるし、お互いが構えずに話しかけられる環境ってすごく大事。服装、大事(笑)。

鈴木:

スタートアップ=若者みたいなイメージも最初あったんですけど、ここで働き始めて、スタートアップもいろんな年齢層の方がいるってことに気づいて。本当に多様な人が自然と行き交う場なので、オンラインでは出会えない人にも出会えるような環境もこの場所の価値だなと感じます。あとやっぱりイベントをやっていると、イベントに参加していなくても会場から聞こえる話や賑わいを感じて刺激を受ける、と話してくれるご利用者が多くて、そういう環境はこれからも大事にしていきたいですね。

チャンスはここにある、と伝えたい

ーーPlug and Play Shibuyaの魅力は十分にあると思うのですが、もっとこれをやりたいということがあったら教えて下さい。

伊藤:

実績を可視化していくことですね。これまでは、この場が不思議と生み出してくれたいろんなストーリーがたくさんあったけど、それがいつまでも自然と続いていくのには限界があると思っていて。これまで積み上げてきたことを発信していかなきゃと思っています。Ayumiさん(藤本あゆみ,CMO)も発信していくことが大事ってよく言ってますよね。イベントをやったらちゃんとその実績を発信する、それを積み重ねて、ちゃんとチャンスがある場所だっていう裏付けのある施設にしていきたいですね。

今後もPlug and Play Japanのプログラムの中にしっかりPlug and Play Shibuyaの場所は根ざして、一体になってやっていけたらと思ってます。実はPlug and Play Shibuyaに来る人で、「Plug and Play Japanについて知りたい」とか「アクセラレータープログラムってどうすれば参加できるんだろう」っていう人が結構いて。この場所がPlug and Play Japanの魅力を伝えたり、プログラムに採択される一歩前のスタートアップに使ってもらう待合室みたいな役割を果たせたらいいなと。

ーPlug and Play Shibuyaに来たことをきっかけに弊社を知ってくださった方は本当に多いんです。

伊藤:

いまはオンラインでイベントをやることが多いから、オンラインでこの場所やPlug and Playを知ってもらった人が、実際にここに来て、特別な体験ができる仕組みをつくるとか、新しいアプローチも必要かもしれないですね。ここに来る理由っていうのを作り続けないといけないなと思います。

鈴木:

例えば、ここには一般のご利用者のコミュニティと、アクセラレータープログラムの中のコミュニティがありますが、その2つのコミュニティが一緒になってできることもたくさんあると思いますし、イベントや視察が目的でいらっしゃる方にPlug and Playを紹介する取り組みももっとできる。せっかく同じ場所にいるのにお互いが繋がるきっかけがなかったなんてことがあったら、もったいないですよね。

伊藤:

ここにくるだけで 「Plug and Playってこういう会社なんだ、こんなことしてるんだ」っていうのがちゃんとわかる場所にしておくことも大事ですよね。シリコンバレーのPlug and Playの本社にいったとき、まさにそれでした。そのへんでスタッフが仕事をしていて、オープンイベントがその場で見れて、プロモーションの映像が常に流れている。
Plug and Play Shibuyaでも、特別なことをする必要はなくて、プログラムに応募したい人と、今まさにプログラムで頑張ってる人が同じ場に居合わせる、スタッフもすぐ声がかけられるような距離にいる、それだけでいい。ここはそれができる場所だと思っていますから。

鈴木:

そのためには、もっと情報を発信していかなきゃいけないですね。これまでは場所を運営することにフォーカスしてきたけど、この場所でしか得られないバリューや体験を伝える役割を、もっと担っていかなければならないなと思います。

伊藤:

鈴木さんどんどんやっていいよ、一緒に発信していきましょう!

鈴木:

(笑)やりましょう!

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