大手企業がスタートアップと協業する際のメリットやシナジーの見極め方とは?
2022/06/24
予測不能なVUCAの時代において、オープンイノベーションは外部の知見や技術を取り入れることで、素早く社会の変化に適合でき、最短で自社独自の正解に辿りつくことができるため、非常に有効な手段の1つであるということは周知の事実かと思います。
オープンイノベーションにも多種多様なアプローチがありますが、今回はスタートアップとの協業にフォーカスし、大手企業にとって協業メリットや自社事業とのシナジーの探索・見極め方について紐解いていきたいと思います。
Megumi Shoei
Communications Manager
スタートアップをなぜ選ぶべきなのか?
「なぜスタートアップを選ぶのか」という本題に入る前に、そもそもスタートアップとはどういう企業を指しているのでしょうか。
Y Combinatorの共同創業者であるPaul Grahamによると、スタートアップは「急成長するものとして設計されている会社」と定義しています。
つまりスタートアップとは、革新的なアイデアでこれまでの世の中にない新たな価値を提供し、短期間のうちに急成長する企業と言えるでしょう。
これは既存のビジネスモデルを安定的に成長させていくことを目的としているベンチャー企業や中小企業と異なります。
(参照:Plug and Play Japan作成:「スタートアップとは何か?」)世界に目を向ければ、今では著名企業となったUberやAirbnb、Google、Amazon、Facebookなども、もとは既存の概念をディスラプトし革新的なサービスを生み出すスタートアップです。
VUCAの時代では、スピード感を持って複雑化する顧客のニーズに適応し、非連続な成長を目指すことが企業にとって不可欠だと考えられます。そこで、スピード感、革新的なアイデア、そして先進テクノロジーをもって新たな価値を提供しているスタートアップは非連続した成長を実現し、破壊的なイノベーションを起こすうえで最適なパートナーだと言えるでしょう。
スタートアップとの協業メリットとは?
では、実際にスタートアップと協業するうえで大手企業にとってのメリットについて考えていきたいと思います。
新たな技術・知識の獲得/開発期間の短縮
自社で課題発見から仮説検証、顧客シーズの探索、技術・研究開発などをゼロから行えば膨大な時間と費用もかかります。また、自社内仮に全て内製化できたとしても、開発検証した結果、失敗となればダメージも大きくなります。
スタートアップと組むことで、効率的に自社では持ち合わせいない知識や技術を取り入れることができる他、すでにスタートアップが有している技術やノウハウを活用し、大手企業とスタートアップの強みを掛け合わせ、弱みを補完しあうことで新規事業や新たな製品・サービスローンチに向けたPDCAを素早く回すことができ、開発期間を短縮することができます。さらにローリスクかつローコストで検証・開発することも可能です。潜在的な顧客ニーズへのアプローチ
スタートアップでは前述したAirbnbやUberのように世の中のニーズが顕在化されていない中で、革新的なサービスを生み出し急成長している企業が多数存在します。
新規事業・サービス創出や新たな市場開拓において、このようなスタートアップと協業することで、既存の延長線では考えられなかった革新的なアイデアが生まれ、潜在的な顧客ニーズへアプローチすることで、まさにイノベーションへと繋げることが可能となります。出資による収益化
中・長期的な視点でスタートアップ投資による収益メリットを狙いながら、将来有望なスタートアップとの事業連携による自社の技術強化や新規事業への育成、自社の事業領域の拡大など、スタートアップへの支援を通して自社事業の成長戦略にも寄与できるメリットは大きいと考えられます。対外発信力の強化
オープンイノベーションの活動としてスタートアップとの社会実装や協業の成功実績は、自社の先進的な取り組みとして社外へアピールでき、将来的な新規顧客獲得や社会的信頼性の獲得などにも繋がりやすいと考えられます。
自社とのシナジーの探索・見極め方
協業シナジーの探索
スタートアップ協業における自社とのシナジーを探索するうえで、協業の方向性には大きく2つのアプローチがあります。
まず1つは「出資などによるファイナンシャルメリット」を求めるか、もしくは「事業メリット」を求めるかです。
本トピックでは、事業メリットを求める場合について深堀りしていきたいと思います。短期・中長期視点で取り組むべき方向性と領域を定める
事業リターンを求める場合の協業シナジーの探索入口として、以下の3軸が考えられます。・既存事業の売上向上
・既存事業のコストを下げる
・新規事業を生み出す3軸の中でも、さらに自社のやるべきこと(コア領域として絶対自社でやるべき領域)とノンコア領域としてやらないこと(他社の力を借りるべき領域)を明確にしておくことで、探索領域がクリアになり協業を進めるスピードも早くなります。
攻めていくべき領域を見出した次段階として、どのシナジーシナリオでいくのか(事業提携、資本提携、買収、サービス導入など)、さらには協業から得られる事業インパクトや費用対効果、タイムスパンについても考えていく必要があり、多角的な視点で協業シナジーを探索することが重要です。
例えばシード期のスタートアップに比重を置いてシナジー探索をしたとしても、当該フェーズにおけるスタートアップの事業やサービスが成熟するまでには時間が必要であり、長期的視点で取り組む案件となる可能性が大きくあります。
基本的にオープンイノベーションは長期視点で取り組むべきものではあるものの、組織として短期的に結果を見せていける協業シナジーも見つけていくことも重要です。
とはいえ、足元の取り組みばかりに注力しても将来的な新規事業・サービスの種が作り出せないリスクも出てくるため、短期・長期の両視点でシナジーを見つけ出す必要があります。協業シナジーの見極め方
協業シナジーの方向性や短・中長期での協業の探索戦略が見えてきたら、次は実際にシナジーを見極めるうえで気をつけるべきポイントについて考えていきたいと思います。自社課題(ミッシングピース)にマッチするテクノロジー・サービスを見つける
自社とシナジーを生み出せるのかどうかを見極めるうえで、まずは自社の抱えている課題を定義することが大切です。自社課題を明確化することで、それを解決できるテクノロジーやサービスを有するスタートアップを選び抜くことができ、かつ協業を進めていく過程においても、自社の要望や目的が明確なためスタートアップとスムーズなコミュニケーションにも繋がります。将来の方向性が合っているか
大手企業、スタートアップにおける両社のマネタイズ戦略や事業展開の方向性など、お互いの目線が合っているのか、また将来的に合致できる可能性があるのか確認する必要があります。
例えば介護製品を提供しているスタートアップは将来的なターゲットとして、在宅看護をしている層を中心に製品を展開したいと考えている一方で、大手企業は介護施設をターゲットとして戦略を練りたいと考えていた場合、両社の見ている方向性が異なるため協業シナジーは生まれにくいでしょう。
結果的にシナジーが生まれないこと自体は問題ではありませんが、ある程度両社での話が進んでしまった際に、このような目線の不一致が顕在化することはタイムロスにもなり両社にとって不幸な結果をもたらしかねません。
そのため、両社が話を始める初期段階からオープンかつ率直に意見交換をし、目線をすり合わせることが望ましいでしょう。スタートアップ側の経営陣との相性
協業先を選択するうえで信憑性のある事業展開なのか、大手企業の顧客もしくは事業部で展開できるほど耐えうるリソース・体制があるのか、規制・基準を満たしている製品なのかなど、企業規模で確認すべきことは多々あります。とはいえ、協業も人対人のつながりです。スタートアップの経営者の人間性や信頼性、レスポンスの速さや人としての相性など、今後ビジネスを行っていくうえで対等なパートナーとして信頼をおける相手かどうか見定めることも重要です。
これまで協業シナジーの探索・見極めについて触れてきましたが、自社とのシナジーを見定めながら協業先を探索・決定することは非常に難しく、最初から順調に進むことはありません。
また自社とのシナジーを見つけようとするあまり、探索フェーズに留まってしまい、次の具体的な行動に移れなくない状況も多々あります。
そこでイノベーション活動の第一歩をなるべく早く踏み出し、初速をあげるためにも、初めは個人の興味や熱量を持てる分野にいるスタートアップと話を進めていくことも一つの手法であり、会社の中期経営計画やR&D戦略などに合わせて試行錯誤しながら協業シナジーを見つけていくことも有効です。
”成功”を狙いすぎず、走りながら考え、結果協業シナジーが生まれなかったとしてもピボットしながら方向修正をして行動を積み重ね続けることが何よりも重要です。
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