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スタートアップがグローバルに挑戦するために考えておくべきこと

2022/11/01

グローバル化が加速し、業種、業界、規模に関わらず多種多様な企業が海外市場に精力的に展開している昨今、スタートアップ業界においても海外マーケットへの進出、それに伴うグローバルな視座が求められています。今回は日本からグローバル市場に挑戦するテイラー株式会社の柴田陽氏、コミューン株式会社の橋本翔太氏をお迎えして、スタートアップ企業がグローバルに挑戦していくべき理由、マインドセット、そしてチャレンジすべきポイントについてお話を伺いました。

(本記事は2022年9月12日に実施された「Japan Summit – Summer/Fall 2022 Batch」Keynote Sessionの内容をもとに作成しています)


Moderator: ヴィンセント フィリップ

マネージングパートナー・イーストアジア / 日本代表取締役社長

アメリカサンディエゴ州立大学卒。新卒で日本の大手商社KISCO株式会社の米国支社であるユニグローブ・キスコに入社し、日米間のビジネス開発を担当。2014年シリコンバレーのPlug and Play本社に入社し、IoT部門とMobility部門のプログラムディレクター、および日本企業のアカウントマネージャーを兼務。2017年にPlug and Play Japanを立ち上げ、現在はCEO & Managing Partner, Japanを務める。


Speaker: 柴田 陽氏

テイラー株式会社 代表取締役

東京大学経済学部卒業。マッキンゼー・アンド・カンパニー出身。来店ポイントアプリ「スマポ」、タクシー配車アプリ「日本交通タクシー配車」など、数々のヒットアプリを手掛ける。三つの会社創業・売却の経験を持つ連続起業家。2016年にファンズ株式会社共同創業。2021年テイラー株式会社を設立し、2022年に米国スタートアップアクセラレーター「Yコンビネーター」採択。


Speaker: 橋本 翔太氏

コミューン株式会社 共同創業者/取締役 Head of Japan

東京大学経済学部卒業後、Google Japanに入社。2017年にGoogle米国本社に転籍し、プロダクトマーケティングに従事した後、コミューン株式会社を共同創業。取締役CPOとしてプロダクト開発を管掌。2022年より取締役 Head of Japanとして commune 日本事業を統括。


Writer: Haruhito Suzuki

Marketing & Communications Intern


スタートアップとして海外進出を志した理由

ーー フィリップ:まず、なぜ海外での事業展開に挑戦したかについて教えてください。

柴田氏:

テイラー株式会社は日本に拠点を置く会社としては初めて、また私は日本人としてはおそらく4人目として、アメリカのアクセラレータープログラムであるY Combinatorの今夏のBatchに参加をしています。

自分としてはテイラーを起業家としての集大成と位置付け、今後の社会人人生を賭けたいと考えています。それにあたって日本国内での成功にとどまらず、グローバルに通用するサービスを作り上げたいという想いがありました。

スタートアップは、初期の段階で注目を集めることが重要です。スタートアップは初期段階で認知度を上げないと人もお金も集まってこないので「注目を集めるゲーム」を必ず最初にしなければなりません。その観点から、先ほど申し上げたY Combinatorというアクセラレータープログラムは日本のスタートアップがアーリーステージで世界的に注目着目されるための登竜門として非常にふさわしいと考え、今回参加しました。

橋本氏:

海外での事業展開にコミットをしている理由は大きく2つあります。まず1つ目は、B2Bのプロダクトを提供していくにあたり人口減少の一途を辿る日本市場の不確実な将来を無視できない点です。現在、国内市場は非常に規模が大きいですし、投資先としても有意義な国だと思います。しかし、実際にグローバル規模で見た場合、成長している市場にコミットしていくことが非常に重要だと感じ、「世界に挑戦しなければならない」というある種の焦燥感が湧きました。

2つ目は、我々の事業であるカスタマーサクセスとコミュニティのマーケットは、今まさにグローバルで注目されている市場であり、誰かが絶対的に勝っている市場ではなく、誰しもが挑戦権を得られるという点です。共同創業者と私を含め社員全員がグローバル市場に対して早い段階から強くコミットすべきだと強く感じ、海外での挑戦を決めました。

(Keynote Sessionの様子)

成長が全てのスタートアップだからこそ目指すべき早期海外展開

ーー フィリップ:今までは「日本のスタートアップはグローバルで展開できない、戦えない」という認識もあったと思います。今なぜ日本のスタートアップは海外に挑戦するべきなのでしょうか?

柴田氏:

ここ5年におけるスタートアップにとってのマクロな変化は、上場後、海外投資家、海外機関投資家を株主に迎え入れられるか否かという点です。よって、日本のスタートアップは現在では海外投資家からの投資を得られるか否かが上場後における成長の分岐点となっています。

すでに上場の一歩手前であるシリーズC、Dなどのレーターステージの段階には海外の投資機関、クロスオーバーのベンチャーキャピタル*などの若いプレイヤーが入ってきています。日本のスタートアップ・エコシステムの成熟に伴ってレイターステージから上場前、あるいは上場後にすでにグローバルキャピタルマーケットに繋がるという現象が起きています。それを踏まえ、日本のスタートアップは帰納法的に次の段階に向けてどのように準備をして海外投資家からの投資を得られるかを考え、海外での展開戦略を練らなければいけないのではないのかと思っています。

*注:「公開・未公開株の両方に投資するベンチャーキャピタル会社」 (出典:日経テレコン、「クロスオーバーファンド」)
橋本氏:

ミクロ視点で言うと、 その人材がグローバルマーケットで活躍してきたかがポイントだと思います。やはり、「グローバルな企業で活躍をしました。このサービスの成長を牽引しました。」等と自分の強みをアピールできれば、スタートアップにおいて挑戦できる幅がかなり広がるのではと感じます。 

もちろん、日本の中でも様々なチャレンジはあるとは思うのですが、1億人のマーケットと70億人のマーケットを考えると、やはり規模の大きい市場でのほうがより多様な形での挑戦ができるのではないでしょうか。

例えば、エンジニア、プロダクトマネージャー、デザイナーの話に絞って言うと、日本でも豊富な技術やスキルを持った素晴らしい人材が数多くいらっしゃいます。しかしグローバルマーケットに挑戦しているか、英語が使えるか等のポイントにおいては、グローバルで活躍している人材と比べてかなりの差があるのも事実です。従って、賃金やポジション面での優位性、そしてキャリアを俯瞰すると、早い段階からグローバルな目線でさまざまな障壁にチャレンジし、自分の道を切り開くことが重要になります。その土台としてスタートアップが世界に挑戦することは、グローバルに活躍する日本の人材が乗る船を作り出すことにつながるので、大きな意義があると思います。

(Keynote Sessionに登壇中の橋本翔太氏)

ーー フィリップ:「じゃあ海外挑戦しよう」という確固たる気持ちは、どのような経験から生まれたのですか?

橋本氏:

共同創業者の高田と私が元々、西海岸のグローバル企業に勤めていたという背景があります。 そこでSlack、Zoom、Googleといったプロダクトを皆が使っている中「日本発のサービスが存在していない」という問題意識を抱いたところが起点です。

ただ、「日本初のもの」を世界中に広げたいというこだわりよりも、「グローバルマーケットで皆が使える」、「みんなに意義がある」サービス・プロダクトをどれだけ生み出せるかを念頭に考えていました。世界規模で使われるプロダクトを生み出したいという願望が根底にあるのではないかと思っています。

柴田氏:

橋本さんと同様に、僕もプロダクトを作るからには日本だけではなく世界中の人に、そしてできるだけ多くの人に使ってもらいたいという気持ちはあります。もちろん、海外展開に活路が見出せる商材とそうではない商材は存在します。しかし、グローバルマーケットにチャレンジできる商材があれば、起業家としてより大きな舞台で挑戦したい、我々のプロダクトが世界で通用するようにしたいという気持ちは常に抱いています。

スタートアップが海外に進出時に直面するハードル

ーー フィリップ:グローバルに挑戦していく中で、お二人が感じたチャレンジングな部分について教えてください。

柴田氏:

ライバルの数が多いという点です。純粋に1つの領域で国内マーケットの10倍ぐらい競合がいるイメージなので、スタートアップが直面する競争の厳しさが日本国内とは大きく違うととても感じます。

海外は投資家の数も競合の数も多いので、よほどのことをしないとスタンドアウト(目立つこと)はできません。従って、アメリカで通用するプロダクトのクオリティーは日本よりも格段と高いので、スタートアップに求められるプロダクトクオリティーも相当なレベルのものになります。例えるなら、「ニューヨークで日本食のレストラン出すのと、都内で和食のレストランを出すのどっちの方が高いクオリティを求められますか?」というお話と同じで、プレイヤーの強度が高い点、競合の数が多い点で海外展開する難易度は高いです。その点を踏まえると、グローバルに挑戦していく上で自分の課題、求められるレベルは日本マーケットの比ではないという感覚が1番強いです。

(Keynote Sessionに登壇中の柴田陽氏)

橋本氏:

SaaSに絞って言うと、日本では平均で1社が8個程度、アメリカだと80個程度を使っているというような状況です。その中で自分の提供するサービスに重要な(付加)価値があり、そのクオリティーを提供し続けられなればあっという間にライバルプロダクトに代替されてしまいます。たくさんの競合がひしめきあい、サービスが横に重なる部分は誰かが横から取りにいくという状態なので、代替手段が本当にたくさんあります。なので、日本でやっていくよりもピュアに深く狭く掘り下げて 「我々のサービスの価値はこれです」と語れないと、見向きもされないというところがすごく厳しい点だと感じます。

終わりに ~ 起業時から意識すべし海外展開のための組織体制

ーー フィリップ:最後に、これから海外に挑戦したいスタートアップの方々に、「何にフォーカスすべきで、何を重要視した方がいいのか」という視点から、お2人の経験を基にアドバイスいただけますでしょうか?

(パネルディスカッションの様子)

柴田氏:

創業のDay1から海外を視野に入れた活動をすることをお勧めします。例えば、Y Combinatorに応募する、Plug and Playのようなプラットフォームを使う、できるだけバイリンガルなチームを作るなどの取り組みをしていくことがポイントではないでしょうか。

最近では英語が堪能、海外で教育を受ける若い人材が増えているので、インターナショナルなバックグラウンドを持つ人材を集めていけば、早い段階でグローバルに情報収集ができるチームを作ることができます。起業の初期段階からグローバルに展開する上で必要なファクターを意識するとやがてそれがうまくリアリティに変わっていくと思います。なので 是非Plug and Playや、Y Combinatorなどに応募をしてグローバルマーケットについて情報収集してみてください。

橋本氏:

組織、プロダクト、共通言語を途中から変えるということ自体がかなり大変だと思います。従って、最初から「グローバルを目指すために逆算していく」というマインドセットを持ち、その目標を達成するための体制を立ち上げることが理想です。

もちろん、まず最初は身近な日本市場の中で力を試したいという葛藤もあると思います。しかし、グローバルマーケットの方が国内市場に比べて格段と大きいですし、優秀なグローバル人材や、一緒にプロダクト・サービスを作っていける人も国外には多くいると思うので、やはり最初からグローバルに挑戦することを念頭に成長していくのがベストだと思います。 

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