カーボンニュートラルで未来を切り拓く世界のスタートアップ5社
2023/11/28
(本記事はPlug and Play Tech Centerの記事を翻訳し、加筆修正したものです)
気候変動がもたらす影響は年々深刻化しており、温室効果ガス(GHG)排出対策は喫緊の課題となっています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によれば、地球温暖化は産業革命前の水準より1.5度上昇する程度に抑えるべきであり、世界の温室効果ガス排出量は2050年までに正味ゼロにしなければならないと提言されています。本記事では、カーボンニュートラルの達成に取り組む革新的なスタートアップ5社を紹介します。
カーボンニュートラルとは?
「カーボンニュートラル(Carbon neutrality)」とは、環境省によると大気中へ人為的に放出される温室効果ガス排出量と、森林の保護や植林による吸収量を均衡させることを指します(*1)。温室効果ガスの排出を可能な限り削減しつつも、現実的に完全にゼロにするのは難しいため、排出量から吸収量を差し引くことで、合計を実質的にゼロにするという考え方です。
カーボンニュートラルに似た言葉として、「ネットゼロ(Net Zero Emission)」があります。ネットは「正味」という意味ですから、温室効果ガスの正味排出量がゼロの状態を目指すということになるため、両者はほぼ同じ意味の言葉と考えて良いでしょう。
なお、温室効果ガスにはCO2だけでなく、メタンや一酸化二窒素など、温室効果を持つすべての気体が含まれます。排出量を計算する際には、CO2を基準とした地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)等を用いるのが一般的です。
*1 環境省. 脱炭素ポータル. 「カーボンニュートラルとは」https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/about/
カーボンニュートラルへの移行が重要な理由
二酸化炭素排出量の削減は地球の気温上昇を食い止め、気候変動の影響を最小限に抑えるために不可欠です。またこれらの取り組みは、さまざまな産業におけるイノベーションを促進し、特にエネルギーやサステナビリティ領域における経済発展の機会を創出します。
ただし、移行には課題もあります。以下のビデオではPlug and Playの企業パートナーである、ドイツに本拠を置く大手のエネルギーおよびインフラストラクチャー企業であるEWEと東京ガスによるコーポレートベンチャーキャピタルAcario Innovationが、産業の脱炭素化の複雑さと、エネルギーとしてのグリーン水素の重要性について説明しています。
(日本語の字幕あり)
カーボンニュートラルに向けて世界をリードするスタートアップ5社
カーボンニュートラルを実現するためには、政府、企業、個人がこの問題と向き合い、地球規模で温暖化対策に取り組んでいくことが不可欠です。各国政府は厳格な規制を導入するとともに、持続可能な取り組みに対してインセンティブを付与する仕組みを検討していかなければなりません。また、企業は積極的に排出量削減に取り組み、再生可能エネルギーに投資し、環境に配慮した解決策を奨励していくことが求められています。さらに、個々人が、エネルギー消費を削減するだけでなく、再生可能エネルギーの利用を検討したり、持続可能なライフスタイルを受け入れていくことで、社会に大きなインパクトををもたらすことができます。ここからは、政府や企業に対してカーボンニュートラルのソリューションを提供する海外のスタートアップを紹介します。
Overstory(オランダ)は山火事や停電を防ぐために地球の植生に関するリアルタイムな情報を提供します。同社は、高解像度の衛星データと専門のAIアルゴリズムを活用し、公益事業のクライアントが詳細な情報と予測から利益を得ることを可能にします。ユーザーは、樹種、成長速度、天候、気候、生命力に基づいて、樹木や植生の成長と倒木リスクを予測し、情報に基づいた意思決定と対策をとることができます。
Constellation Navigator(旧Dynamhex:アメリカ)は、脱炭素化に向けたエンタープライズ向けソフトウェアを開発しています。同社の技術は、自治体や企業が、成果を追跡しつつ、目標とする気候変動対策を講じることを可能にしています。ディープラーニングによる最適化とリソースプランニングのプラットフォームとして、企業のサステナビリティ担当者、自治体、公益事業者は同社のAIによる分析を気候変動緩和や気候対策のために利用しています。
EnergyDome(イタリア)は、二酸化炭素を利用した長期エネルギー貯蔵を開発し、気候変動の解決を目指しています。同社の技術は、二酸化炭素を使用して電気を費用対効果の高い方法で貯蔵する熱力学的プロセスに基づいており、前例のない充放電効率を実現しています。
ElectroActive Technologies(アメリカ)は、廃棄物を再生可能な製品に変換することを専門としています。最先端の微生物と電気化学プロセスを活用し、有機廃棄物と電気を利用して再生可能な水素を製造しています。この革新的なアプローチは、よりクリーンで持続可能な未来への道を開くことに貢献しています。
Ecolectro(アメリカ)は、輸送、工業生産、エネルギー生産の脱炭素化に取り組む新進気鋭の化学メーカーです。同社は、独自のアルカリ交換材料プラットフォームを活用することで、脱炭素化を実現しています。この技術は、パーフルオロスルホン酸ポリマーに代わるもので、エネルギー、化学物質、燃料の生成、貯蔵、配給を行う、より費用対効果の高い電気化学システムを実現します。
カーボンニュートラルを達成するには、国際的な協力、効果的な政策、先進技術が必要です。継続的に取り組むことで、私たちは気候変動の影響を軽減し、地球を守り、次世代のために持続可能な社会を築くことができるのです。