気候変動と闘うクライメートテックスタートアップ10社
2023/12/08
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2023年3月第6次評価報告書(AR6)を公表しました。この報告書は気候変動に関する包括的な要約として広く認められていますが、今回の報告書の調査結果は世界に対する非常に厳しい警告となるものでした。
世界が気候変動と闘う中、次世代により良い未来を残すため、Plug and Playはイノベーションを推進するベンチャーキャピタルとして、数々のクライメートスタートアップとともに気候変動に対し、革新的なテクノロジーを活用して多様な側面からアプローチしてきました。
本記事では、IPCC第6次評価報告書の中から。「ネットゼロの達成」、「食品産業の変革」、「そして製造プロセスの再編」を取り上げ、本課題に取り組むPlug and Playのポートフォリオを紹介します。
(本記事はPlug and Play Tech Centerの記事を翻訳し、加筆修正したものです)
課題#1:ネットゼロの達成:炭素排出量削減とカーボンオフセット
IPCC報告書は、これまで大気中のCO2蓄積を遅らせてきた、陸地と海洋に存在する天然の二酸化炭素吸収源の力が徐々に弱まっており、将来のCO2排出レベルに深刻な影響を与える可能性が高いと主張しています。アメリカにおける年間の炭素排出量が510億トンに達し、工業化率が急速に高まっている状況を鑑みると、カーボンニュートラルへの迅速な対応を進めることは極めて重要です。
Plug and PlayのポートフォリオスタートアップであるCircularとHeirloomは、炭素排出量削減とカーボンオフセットを加速させる新たな方法を提案しています。
Circulor
Circulorは2007年に設立されたクライメートテックスタートアップで、ブロックチェーン、IoT、AIを活用して材料のサプライチェーンに透明性をもたらすことを目指しています。彼らは独自のSaaSデジタルプラットフォームを使って、原材料の組成変化を追跡し、炭素排出量を監視して循環経済を支えています。
この革新的なプラットフォームは、従来把握できなかったデータを可視化した管理を実現し、製造およびサプライチェーンの持続可能性と透明性を高めます。
Heirloom
Heirloomは、地球上で最も効果的な天然の炭素吸収源として機能する天然鉱物を活用することで、炭素吸収効率を向上させる「炭素鉱物化」を通じて、CO2の排出削減に貢献しています。
Heirloomの技術は、鉱物が大気中の二酸化炭素を吸収する炭素鉱物化のスピードを向上させることで、通常数年間かかるこのプロセスを数日に短縮しています。エンジニアリングと自然の力を組み合わせることで、Heirloomは世界で最も費用効果が高く拡張可能なな直接空気回収技術(DAC)を提供しています。
Sylvera
Sylveraは、SaaSデジタルプラットフォームとAPIを組み合わせることで、産業およびサプライチェーンにおける炭素削減を実現しています。このテクノロジーはカーボンオフセット市場の拡大を支援するデータ検証ツールとして機能しています。
具体的には、カーボンオフセットプロジェクトと協力し、地理空間データ、機械学習、気候データをアルゴリズムを通して計算することで、特定のカーボンオフセットプロジェクトに対する標準化された評価を作成し、プロジェクトの妥当性を高めます。
課題#2:食品産業の変革
IPCC報告書の調査結果によれば、大気中のメタン濃度は過去80万年間で最も高い水準に達しています。農業は、メタン排出源の最も主要な要因とされており、気候変動を抑制するためには、食品産業に対する急速かつ持続的な変化が不可欠です。
Plug and Playは、サプライチェーンの効率化と食品ロスを無くすことで、農業のメタン排出を抑制する2社のスタートアップに投資しています。
Nilus
Nilusは2018年に創立されたアルゼンチンを拠点とするスタートアップで、食品ロス問題に取り組むと同時に、低所得者を支援することを目指しています。このスタートアップは、世界で生産される食品の約3分の1が廃棄されているという事実をきっかけとして、自社の製品を開発しました。
Nilusのデジタルプラットフォームを使うと、余剰食品を生産者や小売業者から仕入れ、市場価値の30〜50%安い価格で低所得地域に供給することができます。Nilusは設立以来、アルゼンチン、メキシコ、プエルトリコ全域で食糧問題を抱えている90,000人以上の人々に食品を提供してきました。
Journey Foods
Journey Foodsのソフトウェアは、加工食品市場において、企業がより良い戦略的な意思決定をおこない、モニタリング効率を向上させることに貢献します。
Journey Foodsのデータベースでは、Nilusのアルゴリズムによって価格、サプライチェーン、栄養パラメータが動的解析され、最適化されたポートフォリオの提案が行われます。これまで同社のデータベースは20億以上の原料に関するインサイトを収集してきました。
課題#3:製造プロセスの再編
製造プロセスにおける課題解決は、非効率的な現代の製造プロセスからの転換とも言えます。サプライチェーン全体において、講じられている対策としては、以下のようなものが挙げられます。最終製品の追跡性と信頼性の向上、バージンマテリアル(未使用・未加工原料)の使用削減、消費済み廃棄物の製品への組み込み、カーボンフットプリントの少ない材料への置換などです。
Plug and Playのサステナビリティ領域のポートフォリオは、この取り組みをリードする5つのスタートアップを擁しています。
Checkerspot
Checkerspotはテクノロジーを生物学と化学と結びつけ、分子レベルで高性能で持続可能な材料を設計します。同社は商業規模で微生物プロセスを活用しており、そのアプローチは、石油化学材料への依存よりも持続可能的です。
Greyparrot
Greyparrotは、AIベースのコンピュータビジョンを活用し、廃棄物識別ソフトウェアを介して、廃棄物を大規模で監視、監査、分別します。Greyparrotのシステムを使用することで、廃棄物管理者はリサイクル率を向上させ、製品価値を高めることができます。
また、Greyparrotは廃棄物の経済的価値と可能性を広げることにも取り組んでおり、循環経済への転換と次世代のための環境保全にも貢献しています
Oceanworks
Oceanworksは2018年に設立された、再生海洋プラスチック材料と製品を供給するグローバルマーケットプレイスです。同社は、広範で信頼できるサプライヤーのネットワークを保有しており、プラットフォームを通じて、利用者が効率的かつ柔軟に再生海洋プラスチックの樹脂、糸、材料、製品を調達できる環境を実現しています。
さらに、Oceanworksの保証マークは、すべての製品がサプライチェーンの透明性、原産地の真正性、そして環境・社会・法的規格に適合していることを保証します。
ByFusion
Byfusionは、環境に優しい圧縮方法を通じて建設業界のイノベーションを促進するスタートアップです。同社はプラスチック廃棄物を費用対効果の高い建築用ブロックに変換します。ByfusionのByBlockは、現代のコンクリート建築ブロックと比べて、温室効果ガスの排出量を41%削減できます。
rePurpose Global
rePurpose Globalは、誰もがどこでも環境へのポジティブな行動を実現できるようプラスチック・アクションプラットフォームを通じて世界を牽引してきました。本ソリューションは、世界初のプラスチック・クレジットプラットフォームとして、人々と企業がプラスチックニュートラルになれるように促します。
実際に、rePurposeは設立以来、26の国々と中小企業からフォーチュン500企業に至るまで、100社以上の様々な規模の企業を実践に導いてきました。
次なるステップ
IPCC第6次評価報告書(AR6)は、深刻な気候変動は人類への警鐘であると強調し、地球の危機を食い止めるべく、世界各国が重要課題として重く受け止め、対策を講じていかねばならないと主張しています。Plug and Playでは、クライメートテックスタートアップと関連産業を支援することによる革新的な変化を実現に、これまで以上の強いモチベーションを抱いて取り組んでいます。
Plug and Playは、世界各国のビジネスがより持続的に発展していくため、スタートアップとパートナーシップを築くことをサポートしています。