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次世代の暮らしを考える 「モビリティ・まちづくりの観点から見たサステナブルな未来」開催レポート

2024/05/27

Plug and Play Japanは2024年3月、次世代のサステナブルなまちづくりをテーマに、次世代の暮らしを支える「ウェルビーイング」「環境」「防災」「交通」の4つの要素に関して新たなルールづくりに取り組むスタートアップ・大企業・行政機関をお招きして先進的な取り組みをご紹介し、参加者のネットワーキングを実施しました。


「他業界との連携によるまちづくりを」岡本 大志, Plug and Play Japan Director, Mobility

Plug and Play Japan株式会社 Director, Mobilityの岡本 大志の冒頭挨拶では、EVの普及、タクシーの自動運転誕生、コネクティビティ等、モビリティ業界におけるテクノロジーと情報社会の繋がりが益々強固になっていることに触れ、本イベントを通して、モビリティが今後さまざま様々な業界と繋がり、まちづくりにおいて新しいサービスやルール創出に貢献するきっかけとなることを願っている、と述べました。

「熱中症対策で教育現場のNew Standardを考える」 | 三鷹市教育委員会教育部, シャープ株式会社, Biodata Bank株式会社

年々酷暑化が進む中で、次世代のまちづくりにおいて喫緊の課題である熱中症対策において、教育現場でのルール作りの先進事例として、三鷹市教育委員会教育部 齋藤様、シャープ株式会社 三村様、Biodata Bank株式会社 佐藤様にご登壇いただき、東京都三鷹市立中学校にて実施された部活動中の暑熱対策の実証実験についてご紹介するパネルディスカッションを実施しました。

(写真左から:ニコル、齋藤氏、三村氏、佐藤氏)

Panelists

  • 齋藤 将之氏:三鷹市教育委員会教育部 指導課教育施策担当課長・統括指導主事
  • 三村 晋也氏:シャープ株式会社 Digital Healthcare事業推進部 部長
  • 佐藤 光一郎氏:Biodata Bank株式会社  経営企画, Co-Founder

Moderator

  • ニコル 沙織: Plug and Play Japan株式会社 Program Management Lead

出典:Biodata Bank

ディスカッションでは、三鷹市立中学校で部活動をする生徒に対してシャープ株式会社の適温蓄冷材とBiodata Bank株式会社のウェアラブルデバイス「熱中症対策ウォッチ カナリア」を提供し、事前に深部体温を下げる「プレクーリング」により、その後の体温上昇を抑制することや、深部体温の上昇を早期に検知することでリスクが軽減されることを検証した事例を紹介*1。実証を行った上で見えてきた課題や、複数社で連携したことによる利点についてお話しいただきました。

登壇者からは、実証により自覚症状のないリスクを可視化できたことで、症状が出る手前に対策を取るよう現場の意識が変わったこと、感覚値ではなくエビデンスに基づいて教育現場の指導改善を行う重要性について気づきがあったことが語られました。

また、複数のステークホルダーが連携するにあたり共通の明確なゴールを見据えて協力する重要性について触れ、今後教育現場のルール作りを推し進めることは3社だけで成し得ない大きな社会課題であることを強調し、同じ思いを持つ事業者を巻き込んで引き続き尽力していきたい、との想いをお話しいただきました。

「ベネチアの地域特性からデザインされた茶室『ベネチ庵』から考える、サーキュラーエコノミーと建築の可能性」 | 株式会社三菱地所設計, fabula株式会社

次に、イタリア ヴェネチアヴィエンナーレ国際建築展2023で展示された建築物「茶室:ベネチ庵」の取組をご紹介するパネルディスカッションを実施しました。本取り組みの背景にあるサーキュラー・エコノミーへの想いや展示に際してのメッセージについて、株式会社三菱地所設計 藤様、fabula株式会社 町田様にお話しいただきました。

(写真左から:野口、藤氏、町田氏)

Panelists

  • 藤 貴彰氏:株式会社三菱地所設計 チーフアーキテクト / tyfa 代表
  • 町田 紘太氏:fabula株式会社 CEO

Moderator

  • 野口 雄大: Plug and Play Japan株式会社 Senior Partner Success Associate, Mobility

出典:株式会社三菱地所設計

「ベネチ庵」はサーキュラー・エコノミーの建築の試みとしてイタリアの食品廃棄物(パスタ、コーヒーかす、ワインのコルク栓)と循環性ある資源(再生紙)を建築材料として利用した茶室*2で、食品廃棄物を加熱・圧縮して加工する新素材を提供するfabula社の素材を活用した事例です。ディスカッションでは、地域に根ざした資源循環に対する想い、食品廃棄物を建築資材として転用することの強度や耐久性、コストの課題をどう乗り越えたかについてお話しいただきました。

特にビジネス課題として、安定的な量産基盤の整備や、食品残渣の運送費の削減のためにも、地域の廃棄物を地域で循環する重要性が語られました。今後は、建築以外の分野でもサーキュラー・エコノミーに向けた取り組みを進めたいとの想いをお話しいただきました。

「データ利活用及び自治体/産学連携を通じた防災事業の展開について 」 | RainTech株式会社, LocationMind株式会社

次に、位置情報ビジネスのAI分析 / 宇宙事業を展開するLocationMind株式会社と、防災テックの事業を展開するRaintech株式会社にご登壇いただき、防災事業における行政との活動や今後の展望についてお話しいただきました。

(写真左から:野口、斉藤氏、藤井氏)

Panelists

  • 斉藤 りか氏:LocationMind株式会社 GNSSアプリケーションストラジスト / マーケティングマネジャ
  • 藤井 聡史氏:RainTech株式会社 代表取締役

Moderator

  • 野口 直人: Plug and Play Japan株式会社 Partner Success Associate, Mobility

LocationMind株式会社は、空(衛星)からのアプローチで防災DXに取り組むスタートアップ。リアルタイムでハザードと被害・社会影響を予測する「津波災害デジタルツイン」プロジェクトに参画し、災害時における人流(避難行動)把握と可視化、予測を通じて、帰宅困難者に安全な避難を支援でき、日本における津波災害に対するレジリエンス向上を目指しています。

RainTech株式会社は、地上からのアプローチで防災DXに取り組むスタートアップ。独自のリスク検知IoT機器を用いて、気象レーダーでは捉え切れない高精度の雨量観測を実現し、気候変動により増加する異常降雨のリスクを可視化・通知する活動を主にしています。

ディスカッションでは、行政や自治体との取り組みの中で、防災DXは数値的目標を設定するのが難しく、進捗の見える化や周囲のステークホルダーの巻き込み力が課題になっていることについて触れられ、防災だけでなく他の事業にも絡めて取り組みを推進する必要性が強調されました。

全体を通して、スタートアップもしくは事業会社1社のみでは完結できない技術・事業的なミッシングピースを補う形で、多くのステークホルダーが手を取り合うことが何よりも重要であり、未着手な領域がまだあるからこそ対話の重要性があるとお話しいただきました。

「欧州先進MaaSトレンド」 | Siemens AG

続いて、シーメンス社にて先端技術の営業責任者であるGeert Vanbeveren様から、ドイツを中心とする欧州のMaaS(Mobility as a Service)トレンドについてご紹介いただき、シーメンス社とスタートアップ、自治体との協業事例についてお話しいただきました。

Speaker

Geert Vanbeveren氏:Head of Sales and Business Development for Innovative Technologies at Siemens AG, Mobility Management

出典:シーメンス

シーメンス社のMaaS成功事例として、スペイン政府100%出資の鉄道会社であるRenfe社との事例を紹介。より多くの人に鉄道を利用してもらうため、移動手段の選択〜予約〜支払い〜乗車までを網羅的にカバーし、一つのアプリで家から鉄道駅までの移動におけるワンストップソリューションを提供。また、データの取得とAIの利用により、サービス提供者側がどのように人々が鉄道駅まで辿り着くかのインサイトを得ることで、鉄道駅に着くまでに人々が欲しているサービスパッケージを導入できるようになることを述べました。

日本でも、移動における人々の行動が益々多様化しており、MaaSにおいてはシステムの堅牢性とサステナビリティがキーになる、と締めくくりました。

スタートアップピッチ&ネットワーキング

最後に、Smart Cities、Mobility、Sustainability領域のプログラム採択スタートアップがピッチし、参加者とのネットワーキングを行いました。

 

登壇スタートアップ一覧(ABC順)

*1参考:シャープ株式会社 適温蓄冷材と暑熱下でのリスクを検知するBiodata Bank社※1のウェアラブルデバイス「カナリア」を活用
https://corporate.jp.sharp/news/230711-a.html

*2参考:三菱地所設計 ベネチアの地域特性からデザインされた茶室「ベネチ庵」
https://www.mjd.co.jhttps://corporate.jp.sharp/news/230711-a.htmlp/common/pdf/venice2023.pdf 

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