イノベーションにおける人材の重要性とその要件とは
2024/09/10
「イノベーション人材」と聞くと、どのような人を思い浮かべるでしょうか。ビジネスとしてイノベーションを推進していく人材、特にイノベーションマネージャーと呼ばれる役割には、特有の適性とスキルセットが求められます。この記事では、イノベーション人材の定義や必要性、役割、必要なスキルとマインドセットについて解説します。
Writer: Chiyo Kamino
Content Marketing Associate
1. イノベーション人材とその役割
イノベーション人材とは、新しい価値を創造し、それを事業化していく役割を担う人材のことを指します。この記事では主に、大手企業の中でイノベーションや新規事業開発関連のプロジェクトを推進する人材について述べます。
イノベーション人材の所属する部署や肩書きは組織によりまちまちですが、一般的には以下のような部署に配属されるケースが多く見られます。
- 経営戦略/経営企画部門
- 新規事業開発部門
- 研究開発部門
- オープンイノベーション部門
- CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)部門
- DX(デジタルトランスフォーメーション)部門
これらの部署に所属するイノベーション人材は、従来の常識や制約にとらわれず、既存の枠組みを打ち破る新しいアプローチを模索することが求められます。彼らは「イノベーションのプロデューサー」として、以下のような多岐にわたる役割を担います。
- ①方針策定・全体とりまとめ:上記のような各任務において、全体の方向性を決定し、責任者としてチームを牽引します。
- ②テーマ創出・社内巻き込み:イノベーション創出に向けて情報収集と分析をおこない、新規事業のテーマを決定します。同時に社内のステークホルダーに対して適切なコミュニケーションを取って協力者を増やし、イノベーションに対する機運を向上させます。
- ③出口探索・事業開発:プロジェクトの進捗を管理し、リスクや問題に適切に対処しつつ、プロジェクトの成果に合わせた適切な出口を探索します。
- ④パートナー探索:イノベーション創出に必要な要素を特定し、不足している要素を補完できるパートナーを探索してパートナーシップを締結します。
2. なぜイノベーションにおいて人材が重要なのか
急速なテクノロジーの進化と市場環境の変化に対応するべく、企業はイノベーションを推進しています。複雑さを増すビジネス環境の中でイノベーションを起こすためには、一つの部署や専門領域にとどまらず、多様な視点を持ち既成概念にとらわれない発想力と、多くのステークホルダーを巻き込みながらプロジェクトを実現させる推進力を持つ人材を確保することが求められます。
イノベーションにおいて人材が特に重要視される理由として、新規事業と既存事業には大きな違いがあることがあげられます。既存事業は中期経営戦略に基づいて目標を定め、データと論理に基づいて具体的な施策を決定して実行していくものです。それに対して新規事業は不確実性が大きく、戦略立案に必要なデータや論理も不足している(そもそも得られない場合が大半である)ため、少ない情報から仮説を立てアジャイルに試行錯誤を繰り返しながらプロジェクトを進めていくことが求められます。そのため、精緻な戦略に基づいて着実に進行する能力がある人よりも、不確実な状況に対して臨機応変に対応しつつ牽引できるドライブ力のある人材に頼ることになります。困難に直面しても挫けずに次の打ち手を考えられる粘り強さや、さまざまな人を巻き込む人間的魅力、フットワークの軽さといった属人的な要素が新規事業においては重要になってきます。
しかし、これまで既存事業の伸展を担う人材を前提として採用活動をおこなってきた企業の中では、従業員の中でイノベーションに対する興味やマインドセットが十分に培われていないケースが多くみられます。また、既存事業のアウトプットを最大化する(いわゆる1を10にする)スキル・適性と、既存事業にはない視点からイノベーションを開拓していく(0から1を生み出す)スキル・適性は異なります。
イノベーションに特化した人材を見極め、採用・育成することは容易ではありません。トレンドを理解しつつ新たな価値を創造しつづけていくためには、新しいアイデアやビジネスチャンスを生み出せるスキルと適性を兼ね備えた人材を企業内で育成・開発していく必要があります。
3. イノベーション人材に求められる要件
上述したような任務を遂行するために、イノベーション人材には、プロジェクト管理能力、IT知識、事業開発経験、クリティカルシンキング、リサーチ能力などの多面的なスキルに加え、リーダーシップや自発的な行動力、先見性や探究心といった多様な資質が求められます。主な要件としては以下のようなものがあげられます。
- 事業推進力:イノベーションを牽引するうえで、新規事業を開発した経験は貴重なアセットです。事業規模の大小にかかわらず、新しい価値を創造するための企画力と実行力が必須です。プロジェクトにかかる時間やコストを見積もり、リソース配分と進捗管理を行います。特にイノベーションに関連する業務においては、法規制改革や技術進化に伴う変化に対応できるリスクマネジメントの観点を持つことが求められます。
- 思考力/発想力:イノベーションを創出・牽引していくためには、既成概念や前提を疑うことができる批判的思考力(クリティカルシンキング)が鍵となります。新しいアイデアを生み出しブラッシュアップするための思考と、問題解決のために型にとらわれない柔軟な発想ができることが重要です。
- 専門性:上述のような思考力のベースとして、自社のコア技術やプロダクトに関する専門知識を持っていることも前提となります。イノベーションはデジタル技術の進化と連動しているため、デジタル技術に関する知識を獲得していることも必要です。ただし、単なるスペシャリストではなく、日々進化するテクノロジーやビジネス環境に対して、広範に興味を持ち情報収集とアップデートを行える、感度の高さと探究心を持つ人がふさわしいと言えるでしょう。
- コミュニケーション能力:社内外の関係者と率直に意見交換できる対話力に加え、キーパーソンとのコネクションを確立していく積極性が求められます。チームメンバーやステークホルダーと交渉しつつ、ビジョンに向かってプロジェクトを推進していく統率力が必要です。
上記のようなスキルは必要ではありますが、イノベーションを起こすためにはスキルだけでは十分ではなく、不確実な状況にあっても仮説を立て、トライ&エラーを繰り返していくマインドセットが求められます。前例のないイノベーションに取り組む過程では困難がつきものですが、失敗を学びの機会としてとらえ、次に活かすという粘り強さが何よりも重要です。
(関連記事:新規事業が思いつかない時に試すべきアプローチとは)
4. 最後に
企業がイノベーションを推進するためには、さまざまなスキルセットを持つ人材を適切に育成し、活用することが不可欠です。Plug and Playでは、企業パートナーのイノベーション人材育成に向けて、ニーズに合わせたワークショップやセミナーの設計、実施まで一貫したサポートを行っています。ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問合せください。