• Startup
  • Summit
  • Mobility

Meet the Startups: モビリティ領域で注目のスタートアップ9社

2023/08/21

Plug and Play Japanでは、2023年6月〜2023年9月期のアクセラレータープログラムSummer/Fall 2023 Batchが進行中です。今回は、Mobility分野*1で採択されたスタートアップ9社を紹介します。現代の社会・経済活動に必要不可欠である「移動手段」としてのモビリティテックはもちろんのこと、私たちの「移動意欲」を促進する新たなイノベーションの創出に取り組む魅力的なスタートアップが国内外から揃いました。


Writer: Haruhito Suzuki

Marketing & Communications Intern


Mobilityプログラムとは?

車、電車、飛行機などの人の流動性、可動性、動きやすさを促進するモビリティ領域は、物流、インフラ、交通、通信、国境を超えた移動をつかさどる現代社会・経済の血流とも言うべき事業形態です。近年、急速な発展を遂げている情報通信、人工知能、IoTといった技術的な変革、そして脱炭素化、グローバリゼーションの拡大、少子高齢化といった社会・経済構造の変化はモビリティ領域におけるオープンイノベーションの加速をもたらしています。テクノロジー・社会的変革とともに、モビリティ業界のあり方も変容しつつあると言えるでしょう。

Plug and Play JapanのMobility プログラムではEV、IoT、AI、ビッグデータ、バーチャルセンサー、ナビゲーションなどの新興技術を活用して、移動のサービス化・人の流動性の促進に取り組む国内外スタートアップと大手企業を結び付け、モビリティ領域における新たなイノベーションを生み出しています。

*1 Plug and Play Japanのアクセラレータープログラムでは、企業パートナーの注力分野や技術ニーズに基づいて、「バーティカル」と呼ばれる業界テーマごとにスタートアップを採択している。2023年7月現在ではFintech(金融サービス), Insurtech(保険), Mobility(自動車・運輸・物流), Health(医療・製薬), Smart Cities(建設・不動産), New Materials(素材・化学), Energy(エネルギー), Food & Beverage(食品・飲料)の8バーティカルを運営。

採択スタートアップ紹介

1. 16Lab:指輪サイズのIoT/ウェアラブルモジュールを開発

会社概要

企業名:株式会社16Lab

所在地:神奈川県鎌倉市

代表者名:木島 晃

Website:http://16lab.net/

Keyword:#モーション解析 #ウェアラブル

近年、心拍数のモニタリング、睡眠時間の計測、スポーツ活動の記録が手軽にできるといった健康維持の側面、そしてキャッシュレス決済への対応やスマートフォンとの連動による利便性の高さから小型コンピューター端末であるウェアラブルデバイスの需要が高まっています。

16Labは独自の超低消費電力、超高精度3Dモーション解析技術、組込みセキュリティ技術を搭載した指輪型ウェアラブルデバイスの開発を行っています。従来の腕・頭に装着するウェアラブルデバイスと異なり、指輪型という極めて小型の電子デバイスに決済、スマートロック、Bluetooth、スマートフォンとの連動機能を持つIoT技術を組み込むことによって、より装着性と利便性に優れたとウェアラブルモジュールの実現を目指しています。特に、同機器が搭載するBLE(通信)、IMU(モーションセンサー)、認証用セキュアエレメントなどのIoT技術は、パスワードを入力しない形でのコンピューターデバイスの解除、指の動作のみの感知を通じた非接触型のドア開錠、そしてスマート決済などを実現し、利用者の日常生活の向上に繋がっています。

さらに、同デバイスが持つ動作認証機能とスマートロック機能は車のロック解除にも用いることも期待されており、モビリティ領域におけるウェアラブルデバイスの応用にも繋がることが予想されます。高度なIoT機能・デバイスの小型化を実現する同社の指輪型デバイスは、ウェアラブルデバイスのさらなる利便性と利用者の生活の質向上に貢献するのではないでしょうか。

2. Bareways:地方におけるモビリティイノベーションを実現するためのAI駆動型ナビゲーション

会社概要

企業名:Bareways GmbH

所在地:ドイツ シュレースヴィヒ・ホルシュタイン

代表者名:Moritz von Grotthuss

Website:https://bareways.com/

Keyword:#過疎地域 #ナビゲーション

従来のナビゲーションソリューションは、GPSを介した車両位置情報、そして目的地・現在地間の道路状況などをもとに利用者に対して、その都度、最短ルートを提案します。その反面、カーナビゲーションの多くは高精度な最短ルートの提供は可能であるものの、道路の舗装状況、天候データ、季節、あるいは目的地間にある景色・観光スポットといった情報がルート検索時に反映されない場合が多い傾向にあります。

Barewaysが開発したAI駆動型ナビゲーションは、ビッグデータを活用して舗装が不十分な道路の走破可能性、天候、地形、災害発生情報といった膨大な量の情報を取得・フィードバックし、独自のAI技術を用いてナビゲーションルートに反映します。この試みにより、道路状況が不完全であったり、災害・天候の変化に影響されやすい傾向にある僻地・過疎地における道路のモータリゼーションを向上させます。ドライバーが道中で遭遇する交通上のリスクを低減させるナビゲーションツールとして同社のソリューションは活躍が期待されます。

また、天候情報に加え、目的地までの道程に存在する観光・絶景スポットなどもナビゲーションに反映できます。これにより、移動の合間に絶景スポットや行楽ドライブに適した道路・地点を入れることができ、ユーザーの趣向や求めるドライブの質に合わせた車の旅を実現できます。

同社のソリューションは地方における車移動の利便性と安全性の向上に貢献するだけではなく、利用者にドライブの楽しみを体験させることも期待されます。

3. COMPREDICT:車両データの解析を大規模におこなえるバーチャルセンサーを開発

会社概要

企業名:COMPREDICT GmbH

所在地:ドイツ ダルムシュタット

代表者名:Stéphane Foulard氏

Website:https://compredict.ai/

Keyword:#車両データ解析 #クラウド

自動車の点検、補修、状態保全といった車両品質管理もモビリティ領域における重要な取り組みの一つになります。高水準での自動車の稼働状態維持と部品の破損・劣化等によって誘発される交通事故のリスク低減は、経済・社会インフラの活動維持、さらにはモビリティ利用者の生命を守るという側面においても無視できない要素です。

COMPREDICTが開発したバーチャルセンサーは自動車の状態管理を高精度かつ、低いコストで実施することを実現するソリューションです。同社が持つバーチャルセンサー技術のユニークさはハードウェアを追加することなく、車両のコンポーネント・部品から送られてくる信号・データをソフトウェア上で分析し、車両の使用状況、挙動、問題点などをモニタリングします。具体的には、自動車の足回りであるブレーキパッドやサスペンション、そして動力源であるエンジンやバッテリーなどのコンポーネントの挙動・状態を解析・測定することなどができます。

この技術により、ハードウェアの装着といったコストが発生しない形での設計・試作段階における車両の最適化、あるいは量産車のメンテナンス効率化をソフトウェアの能力向上のみで実現します。また、同ソリューションはユーザー・開発者が製品のライフサイクル全体にわたって排出するCO2の量なども推定することを可能とするため、環境への影響低減と自動車自体の脱炭素化にも寄与することが予想されます。

4. EAGLYS:秘密計算技術を採用したデータベース向けソフトウェア「DataArmor Gate DB」の開発

会社概要

企業名:EAGLYS株式会社

所在地:渋谷区東京都

代表者名:今林 広樹氏

Website:https://eaglys.co.jp/

Keyword:#データ共有 #暗号化

グローバル化とサプライチェーンの多角化が進む現在、企業間におけるデータ連携やその活用が必然的にどの事業領域においても求められる傾向にあります。一方、複数企業間のデータ共有・活用においては高い秘匿性の維持が求められると同時に、情報漏洩のリスクや高いセキュリティレベルの維持によって生じる金銭・時間的コストなどの課題が存在します。

EAGLYSは準同型暗号方式の秘密計算技術を中心としたデータセキュリティ、そしてAI設計技術による安全な企業間データ連携・活用基盤をソリューションとして提供しています。独自の秘密計算技術を採用したデータベース向けソフトウェア、「DataArmor(データアーマー)シリーズ」を用いることによって、クラウド上でのデータ通信・保管時のセキュリティレベル向上、さらにはデータの暗号状態を維持したままでの計算処理が可能となります。これにより、企業側は自社データを暗号化した状態のまま分析・検索・共有することができ、セキュリティと秘匿性の両面を担保した形での社内外でのデータ連携・利活用を実現できます。

同社が持つ秘匿性の高い計算・データセキュリティ技術とAI設計技術によって企業横断的な高いレベルのデータ活用を多くの企業が安全かつ、迅速に行うことが可能となります。

5. Easelink:自動導電性充電技術であるMATRIX CHARGINGを開発

会社概要

企業名:Easelink GmbH

所在地:オーストリア グラーツ

代表者名:Hermann Stockinger氏

Website:https://easelink.com/

Keyword:#e-mobility #Matrix charing

世界的な脱炭素化の潮流にある現在、化石燃料の使用に長らく依存してきたモビリティ業界も電気自動車(EV)など環境に優しくサスティナブルな事業への転換が求められています。EV車両の社会的な普及に伴い、EV充電インフラの整備を急速に拡大していく必要があります。こうした中、Easelinkが提供する自動導電性充電ソリューションはEVの効率的な充電を促進し、さらなるEV普及に貢献する技術になるでしょう。

同社が開発した自動導電性充電技術、「MATRIX CHARGING」は電気自動車の充電プロセスを自動化・迅速化するための強力な車両・充電器間での接続システムを採用しており、既存の非接触型充電ソリューションよりも高効率な形でのEV充電を実現します。MATRIX CHARGINGシステムは、コネクター(車両ユニット)とパッド(インフラストラクチャーユニット)の二つの中核ユニットを中心に構成されています。充電時は駐車スペースに設置されたパッドに、EV車体下部に取り付けられたコネクタを自動的に降ろすことによって自律的なワイヤレス充電がされます。

また、同製品パッドの優位点として、防水・防埃性の高さ、そして自宅・公共の駐車スペースをはじめ様々な地点に設置できるというメリットも挙げられます。高効率の充電機能とともに、高い耐久性と汎用性を持つ同ソリューションはEVのさらなる普及に貢献するのではないでしょうか。

6. Emsense Technologies:健康モニタリングのための車載レーダー

会社概要

企業名:Emsense Technologies AB

所在地:スウェーデン イェーテボリ

代表者名:Rickard Wahlström

Website:https://www.emsensetech.com/

Keyword:#人命救助 #ヘルスケア

モビリティ領域において避けることができない課題が交通事故です。特に近年、運転者の突発的な健康悪化などによって起きる交通事故が社会問題化しています。Emsense Technologiesが持つ健康モニタリング車載レーダーは、交通事故の予防や事故が起きてしまった場合の通報といった衝突後のサポート機能を通じて、モビリティ領域の課題解決に貢献します。

同社が開発した車載レーダー「Emsense」は、ドライバーや乗員の健康状態・ストレスレベルをリアルタイムで分析し、乗員個々の状況に合わせて車内環境を調整、または警告を発してドライバーの健康悪化による交通事故の発生を未然に防ぎます。また、事故発生時には衝突の衝撃を感知したデータを関係機関に送信し、事故の発生を知らせることで極めて早い段階での救護対応を可能とします。また、同レーダーシステムはハードウェアに依存しないソフトウェアを中心としたソリューションであるため、コスト面でも優れています。

モビリティ領域にて活用される「Emsense」ですが、健康管理・異常感知ツールとしての機能は今後、人の多い閉鎖空間であるオフィス・住居環境での応用も検討されており、スマートシティソリューションとしての貢献にも期待ができます。

7. GATARI:Mixed Reality(MR)でデジタルとリアルの融け合う未来のインフラづくりを目指す

会社概要

企業名:株式会社GATARI

所在地:千代田区東京都

代表者名:竹下 俊一

Website:https://gatari.co.jp/

Keyword:#MR #バーチャルエンターテインメント

駅構内、地下通路、大規模商業施設などは通勤や買い物で多くの人々が日常的に利用する場所ということもあり、常に人の目が触れることの多い空間です。GATARIが開発したMixed Reality (MR)ソリューションは、日常的に人が訪れる物理的な空間にデジタル技術を通じてバーチャルエンターテインメントを創出します。

「人とインターネットの融け合う世界を作る」というミッションのもとに事業を展開するGATARIは生活空間を把握し(どのような寸法の空間であり、どのような物が設置されているか)、その空間形状に合致した形のデジタル映像を投影する「複合現実」(MR)ソリューションを開発しています。同社のMR技術は、空間形状の把握に必要な「空間スキャン」とスキャンデータを基に作成するエンターテインメントコンテンツをノーコードで作成できる点、そして1つのスキャンデータから用途に応じて異なるいくつものコンテンツを作成できる点が強みです。柔軟性の高いMR技術によって、どこにいても用途に応じて多様なバーチャル体験を優れたコストで作ることが可能となります。

同社のMRソリューションが可能とするデジタルとリアルな現実空間の融合は、日常生活におけるバーチャルエンターテインメントの活用を促進するとともに、駅を利用する通勤者といった潜在的なユーザーに新たな価値ある体験をもたらすのではないでしょうか。

8. iiba:子連れでいきたい「いい場所」を見つけるための子育て地図アプリ「iiba」の開発・運営

会社概要

企業名:株式会社iiba

所在地:東京都渋谷区

代表者名:逢澤 奈菜

Website:https://corporate.iiba.space/

Keyword:#子育て支援 #地図アプリ

社会におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する中、子供を育てやすい社会の実現に向けて子育て分野においてもオープンイノベーションの推進が求められています。iibaは、子育て世帯の負担軽減と子育てに奔走する人々が「楽しみ、笑い、幸せ」を感じられる時間を増やすことを目的に、子連れでいきたい魅力的なスポットを発見・情報提供する地図アプリを開発しています。

同社が手掛ける位置情報ソリューションは、遊び、食事、トイレといったカテゴリーを基に、子育てユーザーが子連れで行くのに適したスポットをアプリの地図上で情報提供するとともに、利用者同士がおすすめの施設・エリアを共有・閲覧することが可能です。この機能によって、子供と一緒に気軽かつ楽しく訪れることができる公園、レストラン、博物館といった施設や、「電車を見られるスポット」などといった特定の子育てニーズに叶うニッチな情報を取得することができ、アプリ上にて子育てに特化した地理空間情報を作り出すことができます。

さらに、子育てスポットに行く過程で発生したトラッキングデータをアプリ側が取得することに賛同した場合、子育てサービスなどに使えるポイントなどを得ることができ、ユーザーの位置データ自体を「金銭価値」に変換するというユニークな取り組みも実施しています。「子育てしやすい社会を目指し、新たな子育てインフラを構築する」サポートアプリとして同社の位置情報ソリューションは日本の子育て世帯に貢献していくでしょう。

9. レイ・フロンティア:位置情報取得及び分析技術を活かしたアプリの企画及び開発

会社概要

企業名:レイ・フロンティア株式会社

所在地:東京都台東区

代表者名:田村 建士

Website:https://www.rei-frontier.jp/

Keyword:#位置情報 #SDK #移動データ分析

利用者の位置情報を活かしたソリューションの開発に携わるもう一社のスタートアップがレイ・フロンティアです。アフターコロナ社会への移行により都市部での人流が増加傾向にある現在、屋外での消費者の購買動向、通勤手段、行動パターンをデータで把握することはモビリティ業界はもとより、防災、小売業、飲食、アパレル、金融といった多領域に応用が可能です。

レイ・フロンティアが独自開発した位置情報技術「SilentLog (サイレントログ)」は、ユーザーのスマホから得られた詳細な位置情報を匿名で取得し、利用者の1日の行動を可視化することを可能とします。ユーザーの移動距離、滞在時間、行動パターンはもとより、移動に使用したモビリティ手段、行動目的が買い物・通勤であるかなどといった情報を「SilentLog Analytics」と呼ばれる分析ツールを通じて解析を行い、ユーザー個々の行動プロファイルを作成します。

同社が提供する行動記録データ・ユーザープロファイルはMaaS、ヘルスケア、人流調査、情報銀行といった多種多様なビジネス機会の拡大とユーザーの生活利便性の向上に貢献することが可能です。「人・もの・場所・テクノロジーを掛け合わせることで人々を幸せにしていく」というミッションの下に価値のあるデータ・情報を提供する同社のソリューションの活躍が期待されます。

Summitのご案内

Summer/Fall 2023 Batchの採択スタートアップが登壇する「Japan Summit Summer/Fall 2023」は、2023年9月14日〜15日にかけて虎ノ門ヒルズにて開催予定です。どなたでもご参加いただけるイベントとなっておりますので、ぜひご来場ください。

Summer/Fall 2023 Batchに採択された他のスタートアップ詳細については、こちらのブログで随時掲載していきます。お楽しみに!

Plug and Play Japan の最新ニュースをNews Letter でお届けします!