スタートアップイベント活用ガイド:効果的な参加方法を徹底解説!業界別おすすめイベントも紹介
2024/10/31
オープンイノベーションを通じた成長を模索する大手企業にとって、スタートアップイベントは理想的な出会いのチャンスを与えてくれる貴重な機会。せっかく時間とコストをかけて参加するなら、自社に合ったスタートアップとネットワークを築き、有意義な協業の機会につなげたいものです。そのための準備や当日の回り方、アフターフォローなど、イベント参加の効果を最大化するコツをご紹介します。
Writer: Fukui Hideaki
1. スタートアップイベントとは?
定義と目的
展示会や商談会、マッチングイベントなど、世界中で多種多様なビジネスイベントが日々行われています。その中でも、スタートアップ企業とのマッチング機会の提供やスタートアップ・エコシステムに関する情報提供などに特化したものがスタートアップイベントです。
主な開催目的は事業会社や投資家とのマッチングを通じたスタートアップの事業成長支援、およびスタートアップの成長を支えるエコシステムの発展にあります。また、有望なスタートアップと出会うことで協業や投資に向けた商談につながったり、最新のビジネストレンドや業界事情を知ることができたりするなど、参加者が得られるメリットもさまざまです。
主なコンテンツ
スタートアップイベントにもいくつかのタイプがあり、開催趣旨や規模によってコンテンツにもバリエーションがあります。多くの場合、スタートアップのピッチがメインコンテンツとして行われますが、その他に基調講演やパネルディスカッション、スポンサー企業によるブース出展、ネットワーキングやワークショップなども盛り込まれます。
また、大手企業や投資家によるリバースピッチや、人材採用を目的とした学生とのマッチングなど、特定のターゲットに向けたコンテンツが設けられるイベントも少なくありません。また、大型のカンファレンス系イベントになると、主催者以外の企業などが周辺の会場で企画するサイドイベントも多く見られます。
2. スタートアップイベントの歩き方
事前準備
規模にもよりますが、イベントに参加すれば数時間から丸一日を費やすことになります。また、有料のイベントも少なくありません。時間もお金もかけて参加する以上は、可能な限り多くの収穫を会社に持ち帰りたいもの。そのためにはしっかりとした事前準備が大切です。
- ①持ち物
広大なイベント会場を歩くには身軽な方が望ましくはありますが、最低限必要なアイテムは準備して臨みましょう。名刺に加えて資料やノベルティを入れられるバッグ、またモバイルバッテリーやポータブルWi-Fiがあれば会場の環境に左右されることなくインターネットに接続できます。近年はデジタル名刺やQRコードを名刺替わりに活用する人も増えています。
- ②スケジュール確認
参加前に必ず確認しておきたいのが、当日のタイムテーブルです。興味のあるセッションや、お目当てのスタートアップのピッチ登壇などを事前にチェックし、効率的に回るようにしましょう。セッションによっては事前予約が必要な場合や入場制限がかかる場合もあるため、それらの注意事項にも目を通しておきましょう。
- ③面会予約
最近は、参加予定者どうしで事前に面会の予約ができるサービスもあります。業種や職種などのプロフィールを登録すれば、他の参加者のプロフィールを見てメッセージを送ったり面会を申し込んだりできます。逆に、面会のオファーを受ける可能性もあります。ぜひ積極的に活用して、自社とシナジーのありそうな企業との出会いを逃さないようにしましょう。
- ④SNS活用
今やビジネスチャンスを広げる上でSNS活用は欠かせません。X(旧Twitter)やFacebook、LinkedInなどのプロフィールを充実させておき、イベントで出会った人と交流を深めるツールとして活用しましょう。
また、最近は事前にSNSで参加表明をするのがトレンド化しています。XやFacebookに「〇月〇日の〇〇〇〇に参加しますので、来場予定の方はぜひお声がけください」などと投稿しておくことで、出会いのチャンスを広げることができます。
イベント当日
- ①基調講演・パネルディスカッション
多くのビジネスイベントには、基調講演やパネルディスカッションなどのステージコンテンツが用意されています。イベント初日の最初のステージでは、有識者や著名な経営者などがイベントのテーマやコンセプトについて深掘りする「基調講演(Keynote Speech)」が行われるのが一般的です。パネルディスカッションでは起業家や投資家、大手企業の幹部など、数人のパネリストとファシリテーターでセッションテーマについて議論します。
登壇者のプロフィールなどを事前にチェックしておくとディスカッションの内容も理解しやすくなります。セッションによっては終了後に登壇者とのネットワーキングが行われることもありますが、名刺交換の長い列ができることも多いため、お目当ての登壇者を逃さないよう注意しましょう。
- ②スタートアップによるピッチ
多くのスタートアップイベントでは、注目のスタートアップによるピッチコーナーがあります。中には審査を経て受賞者を決めるコンテスト形式の場合もあります。
ピッチの時間は一般的に5分~10分程度と短いため、登壇企業についてより詳しい情報を知りたい場合は終了後に名刺交換をし、後日訪問できるようにしておきましょう。もし、登壇企業がブース出展している場合は、終わってから訪問するのもよいでしょう。
- ③ブース訪問
通常、ビジネス系のイベントではスポンサーのブース出展が行われます。出展する団体はスタートアップから大手企業、行政機関、大学・研究機関などさまざまです。同じ業種のブースはまとまって配置されていることも多いため、お目当てのブースを訪問したら、近隣のブースものぞいてみましょう。
ブースの形式もさまざまで、チラシなどの販促物を見ながら担当者と話をするだけのブースや、実際に商品・サービスを体験できるブース、アンケートに答えるとノベルティがもらえるブースなどがあります。事前に会場マップでお目当ての企業のブース位置を確認しておくと効率的に回ることができます。
小規模なスタートアップの場合、ブースに人員を割くのが難しく、訪問しても深く話をできないことがあります。そのため、ブース訪問時には次回のアポイントを入れておき、後日改めて面会する時間を設けるとよいでしょう。このアプローチにより、限られた時間を有効に活用し、持続的な関係を築く手助けとなります。
- ④ブレックファスト・ランチ・コーヒーブレイク
イベントの規模が大きくなると、長時間滞在する参加者のために飲食の提供が行われることもあります。大規模な会場には最初から飲食店が入っていることが多く、ランチミーティングなどに利用できます。店舗がない場合でもキッチンカーやコーヒースタンドが設置されることが多いので、事前に場所をチェックしておくと当日の動きがスムーズになります。
これらの飲食エリアは、情報収集の場としても重要です。イベントで知り合った人とカジュアルな打ち合わせや情報交換ができるほか、どのような属性の人が集まっているのかを観察するだけでもトレンド把握に役立ちます。イベントで久々に会う人がいる場合などは、事前にランチの約束をしておくのもよいでしょう。
- ⑤ネットワーキング
来場者どうしのつながりが生まれるのも、スタートアップイベントの魅力のひとつです。セッション後のフリータイムや、ネットワーキングを目的としたコンテンツを活用し、積極的にネットワークを広げましょう。予想外の出会いが自社の成長につながる可能性もあります。
また、一緒に参加している人や自分が知り合った人を別の人に紹介して輪を広げていくことも大切です。もし自分から声をかけづらい場合や、特定の属性の人を紹介してほしい場合は、主催者のファシリテーターにサポートをお願いするのも良いでしょう。
イベント後のフォローアップ
せっかくイベントでつながっても、その後の連絡が途絶えてしまっては意味がありません。継続的な関係を築くためのアフターフォローも忘れないようにしましょう。
- メール
まずは名刺交換をしたことへのお礼のメールを送りましょう。その際、当日の話題に関する詳細情報を記載したり、参考となるWebサイトへのリンクを貼ったりすると継続的な関係構築につながります。メールを送っておくことで、後から情報検索もできるので、連絡先を忘れてしまう心配もありません。また、自社でメールマガジンを配信している場合は、その配信先に加えてもらうようお願いするとよいでしょう。
- SNS
日本ではビジネスネットワーキングにFacebookを利用している人もいますが、海外ではLinkedInが主流です。SNSでつながっておけば、お互いの近況を手軽に知ることができるため、そこからビジネスチャンスが広がる可能性も期待できます。特にLinkedInでは、ビジネス関連の投稿を行うことで専門性をアピールし、相手の関心を引くことができます。さらに、自社のイベントやニュースを発信し、相手に関与してもらうことで、継続的なつながりを促進します。このようにSNSを積極的に利用することで、関係の深化とビジネスチャンスの拡大が期待できます。
3. 業界別 注目のスタートアップイベント
ここまで、スタートアップイベントの効果的な活用法について紹介してきました。では、実際にどのようなイベントが現在行われているのでしょうか。業界別に、注目のスタートアップイベントをご紹介します。
フィンテック(金融)
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2007年に始まった世界最大級のフィンテックイベントで、最初の開催地はニューヨーク。その後、シリコンバレー、香港、ドバイ、ケープタウンなど各地で開催され、最先端の金融テクノロジーが集結します。
オンラインイベントとして始まり、2023年からラスベガスでリアル開催。2024年は6,000人以上の参加者が集まり、60,000件以上の商談が生まれました。2025年は3月10日~13日までラスベガスで行われる予定です。
2012年にアメリカで始まった、金融サービスの最新動向を共有するカンファレンス。2018年にはアジアにも広がり、今では毎年アメリカ、ヨーロッパ、アジアの3か所で開催される世界最大級の金融カンファレンスに発展しました。
2016年よりシンガポールで開催されているカンファレンス。民間企業だけでなく各国首脳や世界銀行の幹部なども来場し、官民を超えた交流の場となっています。環境に配慮したイベント運営も特徴のひとつです。
インシュアテック(保険)
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2016年にラスベガスで初開催された保険業界の国際カンファレンス。現在はアジア、ヨーロッパにも拡大し、インシュアテック系のイベントとしては最大級。2025年3月5〜6日には東京でITC JAPANが開催される予定です。
香港で開催されるアジア最大級のインシュアテックイベントで、5,000人を超える保険業界の意思決定者が集まります。2024年は12月4日・5日の2日間にわたって香港のケリーホテルで開催されます。
2016年に創設されたDigital Insurance Agenda(DIA)と世界最大のインシュアテックネットワークであるInsureTech Connect(ITC)がタッグを組んで開催。ヨーロッパを中心に、テクノロジー起業家、投資家、保険業界の関係者が一同に会します。
ヘルステック(医療・ヘルスケア)
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J.P.モルガンが主催するヘルスケア業界最大規模の投資家向けシンポジウムで、これまでに42回開催されました。日本からも医療や製薬に関わる企業が登壇し、最新のヘルスケア事情について活発な情報交換が行われます。
2013年に小規模なイベントとしてスタートし、今では1,500社以上のヘルスケアスタートアップが集まるカンファレンスに成長。目玉企画のひとつに、先進的なプロダクトを持つベンダーを事業会社のバイヤーとマッチングさせる「Hosted Buyer Program」があります。
毎年秋にアメリカ、6月にヨーロッパで開催されるヘルステック系カンファレンス。10,000人を超える業界のリーダーが集まり、ヘルスケア市場を進化させるコミュニティを築いています。姉妹イベントとして、ヘルスケア関連のデジタル技術に特化したViVEがあります。
70カ国、5,300社の展示が並ぶ世界最大級の医療機器の見本市です。毎年、ドイツのデュッセルドルフで開催され、83,000人以上が来場します。1969年から続くイベントで、世界の医療市場に大きな影響を与えています。
モビリティ(自動車)
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アメリカのデトロイトで開催される世界5大モーターショーの一つです。各メーカーによる最新のコンセプトカーの展示のほか、家族連れでも楽しめるアトラクションやショーも充実しています。2023年にはPlug and Playデトロイトチームも出展し、スタートアップの革新的な技術やサービスを紹介しました。
電動バイク、キックボード、バギーなどのマイクロモビリティに特化したカンファレンス。メーカーやサービスプロバイダーだけでなく、法整備に関わる行政機関などもスピーカーとして参加し、マイクロモビリティ市場の展望について情報交換が行われます。
裾野の広いモビリティ関連市場のプレーヤーが一同に会するカンファレンス。自動車技術だけでなく、充電インフラやスマートシティ、法整備など幅広いテーマについて展示やパネルディスカッションが行われます。
Plug and Playの欧州チームが主催し、2016年にスタートしたカンファレンス。メルセデス・ベンツなどヨーロッパを代表するモビリティカンパニーをはじめ、関連メーカーやスタートアップとのマッチングが繰り広げられます。
クリーンテック・クライメートテック(エネルギー)
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アメリカのサンディエゴで開催されるクリーンエネルギー関連技術に特化した国際フォーラムです。主催者が毎年発表する「Global Cleantech 100」の表彰や、参加者同士のネットワーキングの機会が豊富なことで有名です。
スペインのビルバオで開催され、気候変動へのソリューション技術が世界から集結。再生可能エネルギーをはじめ、カーボンクレジットやグリーン投資、政策提言などについても活発な意見交換が行われます。
7日間にわたりサンフランシスコで開催される、さまざまな団体による環境イベントが繰り広げられるフェスティバルのような企画です。昨年は750の団体や組織が参加し、合計350のイベントが行われ、18,500人が参加しました。
二酸化炭素除去技術である「CDR」の専門家やパイオニアが一同に会するイベント。2日間にわたり最新の市場動向や技術についての情報交換が行われ、カーボンニュートラル関連ビジネスが加速する場となります。
フードテック(食品)
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2年に一度、スペインのバルセロナで開催される食品、飲料、ガストロノミーの国際見本市です。2024年のイベントでは、4日間の会期中に10万人以上が来場し、68カ国から3,200社以上の出展企業が最新のプロダクトを展示しました。Plug and Play欧州チームも出展し、革新的な食品技術やビジネスモデルを紹介しました。
スペインのビルバオで開催される最新のフードテックに特化したグローバルのカンファレンスです。世界中から農業や食品製造に関する技術が集まり、大手企業、スタートアップ、研究機関などが知見を共有し、業界全体の発展を目指しています。
2015年のミラノ国際博覧会をきっかけに始まった、食とテクノロジーの融合によるイノベーションをテーマにしたカンファレンスです。最新のアグリテック、フードテックに加え、SDGsや生物多様性の観点も取り入れた情報交換が行われます。
アメリカ、シアトル発祥のカンファレンスで、「食×テクノロジー&サイエンス」をテーマにフード業界のDXを推進しています。2017年からは「SKS JAPAN」として日本でも開催されています。
ディープテック
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1,000人を超えるディープテック起業家に加え、大手企業や投資家、アカデミアなどが一同に会するフランスのグローバルサミットです。革新的な技術や研究成果が紹介され、社会実装の加速を目指しています。
パリで開催されるマテリアル系ディープテックの展示会です。複合材料の最新技術や製品が紹介され、世界中の業界専門家が集まります。2024年のイベントでは、4万人以上が来場し、8,000を超える商談が行われました。
中国最大級のスタートアップコミュニティであるTechnode Grobalが主催する、アジア圏のテクノロジーに焦点を当てたイベントです。多様な技術分野のスタートアップや企業が参加し、技術共有やコラボレーションを促進しています。
その他(業界横断型)
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ニューヨーク最大級のテックカンファレンスで、著名な投資家や世界的に影響力のあるビジネスリーダーが登壇することで有名です。会期中に多くの企業がサイドイベントを主催することでも知られ、トータルのイベント数は700を超えるともいわれます。
AIに関わる大手テクノロジー企業、スタートアップ、投資家、アカデミアが一同に会し、急成長するAI市場の展望を語り合うサミット。オランダのアムステルダムで開催され、最新のAI製品やサービスを発表する場として注目されています。
AIとビッグデータに関する最新技術およびサービスの国際見本市です。テクノロジー系のスタートアップ、大手企業、エバンジェリストなどが参加し、21,000人超の来場者を集める大型イベントで、アメリカとヨーロッパで開催されます。
4. Plug and Playが開催するスタートアップイベント
Plug and Playでは、大手企業とスタートアップとの協業を促すイベントを開催しています。また、弊社のプラットフォームにご参加いただくことで、優秀なスタートアップとのマッチングはもちろん、世界60以上で展開している当社の幅広いグローバルネットワークにより、世界のイノベーションの最前線に触れることができます。ご興味のある方は、こちらよりお気軽にご相談ください。