大手企業とスタートアップのPoC | 事前に問うべき7つの質問
2021/11/24
大手企業のイノベーション戦略の主な目的の1つは、その業界の最先端技術やイノベーティブなアイデアを持つスタートアップと協力し、最終的にそのスタートアップのテクノロジーやプロダクトを自社の主要製品に統合することや、新規事業として立ち上げることです。
その過程で行われるPoCとはProof of Conceptの略で概念実証を意味し、仮説やコンセプトをテストするための試験的なプロジェクトを指します。大手企業とスタートアップとのPoCでは、協業領域模索後の試験段階として大手企業の既存事業とのシナジーをみることや、新規事業としての協業実現性の模索を目的に実施します。
性質やスピードが違う大手企業とスタートアップの協業は決して容易ではなく、PoCに辿り着くまでも困難であるうえに、プロジェクトとして成り立ったとしても、スピードや効果検証に苦労することが多々あります。
そこで今回は大手企業がスタートアップとの協業を見据えたPoCを検討する際に問うべき7つの質問をご紹介します。
1. 具体的にどのようなソリューションを探しているのか?
大手企業のように事業が多角化している場合には、この質問が最も重要なものとなります。
各部署が興味のある分野や、具体的にどのようなプロジェクトに取り組みたいかというアイデアや意見を提出するブリーフィングシステムを導入している大手企業も存在します。また、四半期ごとに経営層でミーティングを実施して、ビジネスの課題領域を洗い出し、その課題をスタートアップの力を借りてどのように解決できるかを考える大手企業もあります。
スタートアップは非常に成長スピードが早いので、ニーズが不明確な企業と協業領域を模索することになれば、不必要に時間だけが消費されてしまいます。事業部のニーズを十分に理解した上で、具体的にどのようなスタートアップとどういった取り組みをしたいのか明確にしましょう。
2. 何を検証したいか
今回のPoCを通して、何を検証したいのかを明確にしましょう。スタートアップにPoCの成功評価基準やタイムラインを明確に示すことで、より透明性のあるディスカッションができるようになります。プロジェクト成功の状態はどういったものなのかを事前に決めることが重要です。
3. 自社の協業プロセスとは?予算やリソースは確保できるか?
協業に至るまでのプロセスは何か、まず洗い出しましょう。どのような部署を巻き込む必要があり、どのくらい予算やリソースを確保できるのか。大手企業の中には、ゼロペイ・パイロット・プロセスを採用しているところもあります。これは、PoCの費用を負担せず2週間のテストのみを行うことで、そのプロジェクト自体が大規模に展開するものであるかどうかを判断するものです。
4. どの部署が関与する必要があるのか、社内ではどのような賛同が必要なのか?
どの部署が関与する必要があるかを事前に知ることで、PoCプロセスを効率化することができます。特定の部署と協力して、今回のプロジェクトのロードマップを作成することをおすすめします。こうすることで、イノベーションチームと担当部署は、よりお互いのニーズを理解し、協力してプロジェクトを進めることができます。
また、PoCの時点では直接関与する部署の数を最小限に抑えることが望ましいです。プロジェクトを進めるにあたり、許可が必要な部署をなるべく少なくすることでより早くPoCを開始することができます。
5. スタートアップ側がどういった情報やリソースを必要としているか?
PoCにおいて、大手企業のコンプライアンス部門が取り組み分野のテクノロジーに関して厳しい見解を示すことがあります。そのため、コンプライアンス部署が精査する際に注視しているパラメータを事前に理解し、スタートアップと情報を共有することで、よりスムーズに議論を進めていくことができます。
6. 契約に必要な書面を簡素化できるか?
必要となるリーガルドキュメントはスタートアップに適したフォーマットであるか確認しましょう。NDAや関連書類を簡素化し、既存のフォーマットとして持つことで、効率的に契約を締結しより良い関係を築くことができます。
7. PoC実施後の計画は何か?
スタートアップは、「PoC地獄」をよく知っています。PoC地獄とはPoCをうまく回したとしても、大手企業側のPoC後の戦略が明確でない場合を指します。新しい技術を積極的にテストするものの、PoC後に協業の実装に至らないことを繰り返すとスタートアップ側からの評判が悪くなるだけではなく、企業のイノベーションがますます停滞してしまいます。
PoC実施後の明確な方向性は、経営層や意思決定者を含めたさまざまな部署を通じて戦略的に明確化される必要があります。
8. 最後に
以上が大手企業がPoCに取り組む際問うべき7つの質問です。
大手企業とスタートアップのPoCにおいては、実際のニーズについて各部署と密にコミュニケーションをとり、ターゲットを絞った取り組みをパートナーとして共同で行うことが重要です。透明性と迅速性が意識できるとより早く、効率的にプロジェクトが進められます。
PoCの実施に至ることはもちろん重要な第一歩ではありますが、PoCの先の計画を明確にすることでPoCで終わるのではなく、大手企業やスタートアップ両社にとって実りある協業まで繋ぐことに意味があることを念頭におきましょう。
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